【R18】傲慢な王子

やまたろう

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第五章 王太子の愛情 メイヴィス×シャーロット❷

1・久し振りのお茶会

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 ジュール王国を訪問して暫く国を不在にしていた私は、久し振りに婚約者のシャーロットと昼食を兼ねたお茶会を楽しんでいた。


「巡回治癒とは神殿が聖女を地方に派遣して、治癒を行うと云う事かな」


 ワンピース風の白い聖女服を着ているシャーロットは、白金の髪とすみれ色の瞳と相まって、私の眼には可憐に映る。


「はい、地方教会の聖女達では治癒が難しい人々の為に、王都の神殿に所属している聖女を、一年に一回地方へ派遣するのです」


 聞く所に寄ると、あと少しで聖女の任期が満了するシャーロットにとって最後の大仕事らしく、これまでも何度か行った事があるそうだ。


「そうか大変だけど、とても素晴らしい事だね。それで日程や行先はもう決まっているのかな?」


 婚約者が人々を救済する聖女である事が誇らしくて、私の顔に自然と笑みが浮かぶ、それを見たシャーロットの頬が染まる。


「はい、日程はまだ調整中ですが、西のザカリー辺境伯領の教会を訪れる予定です」


 話の内容に少し思う所があった私は、照れている彼女にある提案をしてみた。


「その巡回治癒に私も同行して良いかな?、貴女が仕事をしている姿も見たいし、私が国に戻っても入れ違いに貴女が王都を離れれば、また暫く逢えなくなる、丁度そちら方面の視察を考えていた所なので同行出来れば色々と都合が良い、駄目だろうか?」


 メイヴィスが遠慮がちに問いかけると、シャーロットは焦って答える。


「えぇっと、はい!、神殿の方に聞いて見ます、それで殿下に報告します!」


 シャーロットは両手を胸の高さに上げて握り拳を作っている。私の前ではいつも一生懸命な婚約者が可愛くて堪らない。


「ふふ、頼んだよ、シャーロット」


 私は座る婚約者に近づいて、背後からそっと抱きしめる。久し振りに感じる彼女の体温や花のような香りに心が高揚する。


「で、で、殿下・・・・・」


「ごめん、もう暫くこのままで・・・・・」


 私は真っ赤になって俯くシャーロットの髪に自分の頬を寄せてそのまま暫く抱きしめた。


 ・・・・・可愛いシャーロット、本当はもっと密着して濃厚な触れ合いをしたい、肌に触れて口付けたり、でもそうしたら君は気絶してしまうのだろうな、でも意識のない君もまた良い・・・・・


 私は不埒なあれこれを考えながら午後の執務が始まるまでの時間を、彼女との軽い触れ合いに費やした。





 ◆◇◆◇◆◇





 メイヴィスとのお茶会を終えたシャーロットは神殿へ戻っていたが、心は何処かへ飛んでいた。久し振りに逢えたメイヴィスは相変わらず美しく輝いていた、いや久し振りなので常よりも眩しかった。


 自分に向けられた笑顔や背後からの抱擁だとか、大好きな人から自分に向けられる好意が嬉しくて怖くて苦しい。しかも一緒にいる時間を増やす為に、地方まで同行したいとか。


 ・・・・も、もしかして、これは婚前旅行なのかしら・・・・


 苦し過ぎる。


 シャーロットはメイヴィスが好き過ぎて、久し振りの彼の姿を反芻するだけで過呼吸になりそうだった、そんな彼女にアリーから檄が飛ぶ。


「ちょっとロッテ!、サボってないで働いて、近くで事故が有って治癒待ちの人が大勢いるのよ」


「ああ、ごめんね、アリー。直ぐに行くわ」


 我に返ったシャーロットは、両手で顔をパンッと叩いて表情と気を引き締めると、治療待ちの列に向かった。




 ◆◇◆◇◆◇





 お茶会を終えて執務室に戻ったメイヴィスは誰も居ない空間に呼び掛けた。


「マーリオ、いるか?」


「何か用か?、あるじ


 誰も居なかった空間に、黒髪黒目で痩せぎすな男、マーリオが現れた。メイヴィスは彼を一瞥して指示を出す。


「西のザカリー辺境伯の邸に使用人として潜り込んで、内情を探って欲しい」


「えー、遠過ぎるだろ。何でそんな所に行かなきゃいけねぇんだよ、断る!」


 マーリオは嫌そうに顔を歪ませて堂々と断ってきた、それを気にもせずに飄々とメイヴィスは続ける。


「そこに行けば、お前の友人が長年探している物が見つかるかも知れないぞ?」


 メイヴィスの言葉を聞いたマーリオは、態度も表情も一変した、今は真剣そのものだ。


「それを先に言えよ。期間はどの位で目的は何だ」


「期間は1ヶ月位かな、あの辺境伯については以前から気に掛かる事がある、あらゆる周辺事情を探って欲しい、用意が整い次第出立してくれ、繋ぎはグリードに任せる」


「了解、すぐ出立する」



 マーリオの姿は直ぐに見えなくなった、メイヴィスは今後の事を相談する為に騎士団長のグリードを呼び出す。


 西の辺境伯ザカリー


 メイヴィスはもう二年以上前のあの時の事を思い返していた。










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