王太子の恋人  恋愛に鈍い王太子 x 俗世に疎い聖女の純愛ラブストーリー

やまたろう

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第三王子は憂いをなくす

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 仮面舞踏会の日から、メイヴィスとシャーロットの距離は縮まり、最近では毎週庭園でお茶会を開いている。

 今日のシャーロットは聖女用の裾が足首まであるシンプルな白いドレスを身に付けている。白金の髪とすみれ色の瞳の彼女に聖女の装いは良く似合っていて儚げに見える。


 メイヴィスは愛しい女性に笑顔で話しかけた。


「やあ、シャーロット、今日の君は白い花の妖精のようだね」

「え、え、えっっと、そ、そうでしょうか?」


 シャーロットは顔を真っ赤にして俯き、いつものように吃る。シャーロットが吃るのは主にメイヴィスに関連した事とメイヴィス本人と接している時だけだ。

「まだ私に慣れていないのかな?」


「・・・メイヴィス殿下が素敵過ぎて、胸が苦しくて」

 メイヴィスは俯いたままのシャーロットの側に寄り跪いた、そして椅子に座った彼女の顔を下から見上げる。

「シャーロット、私も君の事が好きだよ、だから顔を上げて私を見て欲しい。」


「・・・・・・」


 キラキラ王子メイヴィスのまるで物語の一場面のような行動と、愛を告げられた事、自身を見上げて微笑む顔の美しさにシャーロットは気絶した。


 メイヴィスを好き過ぎるシャーロットは胸が高鳴り過ぎると、過呼吸となり一時的に意識を失う事がある。

 メイヴィスは慌ててシャーロットを抱き上げて椅子に座り自分の膝の上に乗せる、頭を自分の胸に保たせて身体を抱き締める。


「シャーロット、男の前でこんなに無防備に眠ってはいけないよ」


 メイヴィスは優しく語りかけ、シャーロットの顔を覗き込む。いつも俯きがちな彼女の顔をゆっくり眺めて、頬や耳朶を愛撫する。少しでも自分に慣れて貰おうと、眠る彼女にこうした触れ合いを試していた。

 過呼吸で意識を失うことは可哀想だが、意識のない彼女との諸々は、メイヴィスの楽しみでも有る。


 かつて抱き締めていた彼女を喪失した記憶がある為、こうして彼女を抱き締めて、その存在を腕の中に感じられる事を心から幸せに思う。


「う、う~ん」


「目が覚めた?、おはようシャーロット、ちゅっ」


 メイヴィスは目覚めたシャーロットの額に口付ける。

 シャーロットはまず、すぐ目の前、近過ぎる位置にあるメイヴィスの美しい顔に浮かぶ、優しい笑顔を見てドキドキして、ぎゅっと抱き締められている事にトキメキ、額に接吻されて再び意識を失った。


 これではお茶会にならないとメイヴィスは苦笑して、シャーロットを抱きかかえて、王太子宮に戻ることにした。




 ◆◇◆◇◆◇




 イオニスは、メイヴィス兄上と婚約者のシャーロット嬢を見るといつも思う事がある、二人は猫とネズミの様だと。金色の大きな猫が、真っ白なネズミを可愛がっている感じ。


 金色の大きな猫が、自分を見上げて震えてる真っ白いネズミを肉球で可愛がる。

 ネズミは肉球の重さに耐え切れず、きゅう、と鳴いて気絶する。

 金色の大きな猫は、気絶したネズミを鼻先でつついたり肉球で撫でたりして遊ぶ。

 目覚めたネズミが逃げだそうとすると、尻尾を踏んで捕まえる。

 逃げられない様にネズミを咥えて、自分の根城へ運んで行く。

 そしてネズミを閉じ込めて、全身を舐めて涎まみれにして可愛がる

 真っ白いネズミは色々耐えられず、きゅう、と鳴いて気絶する。


 可愛い絵本が出来そうだ。



 二人の仲が良いのは傍目からも丸分かりなのでイオニスも嬉しい。残り物の婚約者だと思われたシャーロットは、実はメイヴィスが長年想っていた運命の恋人だった。


 メイヴィスの嬉しそうな顔を見ても長兄の幸せは疑いも無く、かつてイオニスが感じていた憂いは、きれいさっぱりと無くなっていた。










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