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アナザーストーリー
〜エピローグ〜 黒version
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メイヴィスは最近、義妹グレーシーが自分に対して色目を使ってくる事に辟易としていた。
異母弟のダルトンが子供を欲しがり、それに少し協力した事で、不本意ながら彼女に気に入られたらしい。
可愛いダルトンのために、1回だけあの苦行を耐えたのだ。愛のない単なる生殖行動だったが、確実に妊娠させるためには多くの子種を注ぐ必要があり何度か中出しをした。
吐き気がする行為だ。
心と体は別だと言う人間がいるが、私は心を伴わない行為はしたくない、愛している人と営みたい。可愛いダルトンが必死に頼んで来なければ、到底出来る事では無く、最低限の触れ合いに留めた。
体を重ねてからグレーシーは、妙に馴れ馴れしくなり、事ある毎に私の体に触れようとする。媚薬に惑わされていた時ならいざ知らず、正気になってもダルトンの信頼を裏切る様な真似をするとは、もはや信用するに値しない。
やはり信頼できるのは、異母兄弟だけだ。
ダルトンは表面上は穏やかな性格だが、時折、狂気が垣間見える。幼少の頃から様々な理由で危険な目に合っていたので、その影響が人格に及んでいるのだろう。
私は第一王子の立場から護衛が多かったし、イオニスは年の差があり成長した私がある程度守れた。だから、ダルトンが一番危険な目に遭っていた。
王家の金に目が眩んだ者、権力の為に第二王子の命を狙う者、ダルトンの美しさに魅了された者、王家へ私怨を持つ者、大勢の愚か者の中には味方の振りをした敵が何人も潜んでいて、騙されたダルトンは何度も傷ついた。
そんな事情も有り、元々愛情深い性格の私は、ダルトンに激甘な兄になっている自覚がある。
私に色目を使い出したグレーシーとの関係を是正する事にしよう、可愛いダルトンが傷つく前に。
可愛い弟達を傷つける者は許さない。
ダルトンの子供を欲しがりグレーシーに嫉妬していたローラに機会を与えてやると、彼女は見事に期待に応えてくれた。
◆◇◆◇◆◇
出産数ヶ月後、グレーシー王子妃が亡くなった。
ダルトン殿下と幾度か情を交わしていたお針子のローラが、試着用の小部屋で王子妃と言い争いになり、持っていた裁ち鋏で凶行に及んだ。
胸を刺された王子妃はほぼ即死で、王族を害したお針子ローラは秘密裏に極刑となり、表向きには、王子妃は産後の体調を崩して病死と発表された。
「・・・・・・」
ローラの聞取り調書を読んでいたウィリアムは、訝しく思っていた。何故その場所に関係のない王子妃が赴いたのか?
そこに誰かの思惑が有りはしないか、有るとすればそれは・・・・・・
ウィリアムは、調書から目を上げてメイヴィス殿下を見る、それに気付いた彼は、天使の微笑みを浮かべた。
「駄目だよ、ウィリー、そこまでだ」
その言葉にウィリアムは震えた、メイヴィス様は全て分かっている、今ウィリアムの頭の中を過っている疑念すらも・・・・・・・・・・・
ウィリアム・シーリーは、綺麗な悪魔の姿を眺めて、今日も一人慄く。
異母弟のダルトンが子供を欲しがり、それに少し協力した事で、不本意ながら彼女に気に入られたらしい。
可愛いダルトンのために、1回だけあの苦行を耐えたのだ。愛のない単なる生殖行動だったが、確実に妊娠させるためには多くの子種を注ぐ必要があり何度か中出しをした。
吐き気がする行為だ。
心と体は別だと言う人間がいるが、私は心を伴わない行為はしたくない、愛している人と営みたい。可愛いダルトンが必死に頼んで来なければ、到底出来る事では無く、最低限の触れ合いに留めた。
体を重ねてからグレーシーは、妙に馴れ馴れしくなり、事ある毎に私の体に触れようとする。媚薬に惑わされていた時ならいざ知らず、正気になってもダルトンの信頼を裏切る様な真似をするとは、もはや信用するに値しない。
やはり信頼できるのは、異母兄弟だけだ。
ダルトンは表面上は穏やかな性格だが、時折、狂気が垣間見える。幼少の頃から様々な理由で危険な目に合っていたので、その影響が人格に及んでいるのだろう。
私は第一王子の立場から護衛が多かったし、イオニスは年の差があり成長した私がある程度守れた。だから、ダルトンが一番危険な目に遭っていた。
王家の金に目が眩んだ者、権力の為に第二王子の命を狙う者、ダルトンの美しさに魅了された者、王家へ私怨を持つ者、大勢の愚か者の中には味方の振りをした敵が何人も潜んでいて、騙されたダルトンは何度も傷ついた。
そんな事情も有り、元々愛情深い性格の私は、ダルトンに激甘な兄になっている自覚がある。
私に色目を使い出したグレーシーとの関係を是正する事にしよう、可愛いダルトンが傷つく前に。
可愛い弟達を傷つける者は許さない。
ダルトンの子供を欲しがりグレーシーに嫉妬していたローラに機会を与えてやると、彼女は見事に期待に応えてくれた。
◆◇◆◇◆◇
出産数ヶ月後、グレーシー王子妃が亡くなった。
ダルトン殿下と幾度か情を交わしていたお針子のローラが、試着用の小部屋で王子妃と言い争いになり、持っていた裁ち鋏で凶行に及んだ。
胸を刺された王子妃はほぼ即死で、王族を害したお針子ローラは秘密裏に極刑となり、表向きには、王子妃は産後の体調を崩して病死と発表された。
「・・・・・・」
ローラの聞取り調書を読んでいたウィリアムは、訝しく思っていた。何故その場所に関係のない王子妃が赴いたのか?
そこに誰かの思惑が有りはしないか、有るとすればそれは・・・・・・
ウィリアムは、調書から目を上げてメイヴィス殿下を見る、それに気付いた彼は、天使の微笑みを浮かべた。
「駄目だよ、ウィリー、そこまでだ」
その言葉にウィリアムは震えた、メイヴィス様は全て分かっている、今ウィリアムの頭の中を過っている疑念すらも・・・・・・・・・・・
ウィリアム・シーリーは、綺麗な悪魔の姿を眺めて、今日も一人慄く。
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