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側近ウィリアムは思う
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私の主である、メイヴィス様は恐ろしい人だ。
誰かにそんな事を言えば、必ず否定されるだろう。対外的には爽やかな笑顔を絶やさず、紳士な振る舞いをする心優しい美男子だからだ。
だがその裏では、家族に害をなす者を徹底的に追い込み排除する。その為には手段を選ばない非情さもある。経済的手法で没落に追い込んだり、何らかの方法で肉体的苦痛を与えたり、最近は、眠り病を起こす薬がお気に入りのようだ。
メイヴィス様は異母兄弟の王子様方を特に大切にされていて、先日もダルトン様の長年に渡る願いを叶えてあげたようだ。
ダルトン様に媚薬を盛ろうとしていた第二王子妃を逆に陥れて、その時にダルトン様に大いなる喜びを与えたらしい。
「本当は、全部ご存じだったんですよね?、ダルトン殿下が本当に求めていた物を、そして、それを与えられるのは、貴方だけだと言う事を。」
核心に触れる質問をしても、殿下は飄々と紅茶を飲み、話す言葉は哲学者のようだ。
「さぁ、どうだろう?、絶好の機会に恵まれるのは、それが神の意思だからだ、ならば人間はその機会を逃さないように従うだけだ」
そして、殿下にしては珍しく人の悪そうな笑顔を私に向ける。
「これでダルトンも落ち着くよ、グレースよりも欲しかった物が手に入るから、今はそれに夢中さ。だからもうジャスティンが戻ってもきても大丈夫だよ、ウィリアム・シーリー」
やはり工作に気付かれていたのかと思わず体がびくりとしたが、眼鏡のブリッジを指で押し上げながら、出来るだけさり気ない口調で答えた。
「何の事でしょう?、弟は眠り病で亡くなりました。」
「ああ、この国ではそうだったね。でも楽園では生きているんだろう?、別に戻る事を勧めている訳では無いけど、嫡子に何かあった時には、そうできるよって教えてあげたのさ。ああダルトンは死んだと思ってるから安心して?」
穏やかな笑顔で、サラリと物騒な事を言われた。
「シーリー家の嫡子は僕ですが、何があると言うのですか?、僕は100才まで生きる予定です。」
「ふふっ、そうだね、君の事は頼りにしているよ。是非、頑張って長生きしてくれたまえ」
邪気のない美しい笑顔を浮かべて僕を見る彼は、まるで神の使いの天使のようだ。だが、綺麗な外見に騙されてはいけない、本当に恐ろしい人だ。
全てはこの人の掌の上、皆んな踊らされている事さえ気付かない、もしかしたら彼は綺麗な悪魔なのかも知れない。
ウィリアム・シーリーは、綺麗な悪魔の側で、今日も一人慄く。
誰かにそんな事を言えば、必ず否定されるだろう。対外的には爽やかな笑顔を絶やさず、紳士な振る舞いをする心優しい美男子だからだ。
だがその裏では、家族に害をなす者を徹底的に追い込み排除する。その為には手段を選ばない非情さもある。経済的手法で没落に追い込んだり、何らかの方法で肉体的苦痛を与えたり、最近は、眠り病を起こす薬がお気に入りのようだ。
メイヴィス様は異母兄弟の王子様方を特に大切にされていて、先日もダルトン様の長年に渡る願いを叶えてあげたようだ。
ダルトン様に媚薬を盛ろうとしていた第二王子妃を逆に陥れて、その時にダルトン様に大いなる喜びを与えたらしい。
「本当は、全部ご存じだったんですよね?、ダルトン殿下が本当に求めていた物を、そして、それを与えられるのは、貴方だけだと言う事を。」
核心に触れる質問をしても、殿下は飄々と紅茶を飲み、話す言葉は哲学者のようだ。
「さぁ、どうだろう?、絶好の機会に恵まれるのは、それが神の意思だからだ、ならば人間はその機会を逃さないように従うだけだ」
そして、殿下にしては珍しく人の悪そうな笑顔を私に向ける。
「これでダルトンも落ち着くよ、グレースよりも欲しかった物が手に入るから、今はそれに夢中さ。だからもうジャスティンが戻ってもきても大丈夫だよ、ウィリアム・シーリー」
やはり工作に気付かれていたのかと思わず体がびくりとしたが、眼鏡のブリッジを指で押し上げながら、出来るだけさり気ない口調で答えた。
「何の事でしょう?、弟は眠り病で亡くなりました。」
「ああ、この国ではそうだったね。でも楽園では生きているんだろう?、別に戻る事を勧めている訳では無いけど、嫡子に何かあった時には、そうできるよって教えてあげたのさ。ああダルトンは死んだと思ってるから安心して?」
穏やかな笑顔で、サラリと物騒な事を言われた。
「シーリー家の嫡子は僕ですが、何があると言うのですか?、僕は100才まで生きる予定です。」
「ふふっ、そうだね、君の事は頼りにしているよ。是非、頑張って長生きしてくれたまえ」
邪気のない美しい笑顔を浮かべて僕を見る彼は、まるで神の使いの天使のようだ。だが、綺麗な外見に騙されてはいけない、本当に恐ろしい人だ。
全てはこの人の掌の上、皆んな踊らされている事さえ気付かない、もしかしたら彼は綺麗な悪魔なのかも知れない。
ウィリアム・シーリーは、綺麗な悪魔の側で、今日も一人慄く。
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