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その指先に宿る熱は
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「マスター、聞いてもいい?」
「なんだい?」
「ドールが願いを持ってもいいのかな?」
「勿論いいと思うよ。どうしたの?」
「僕、マスターのお隣で一緒に笑うのが願いなの」
「うん、それは私も同じだよ」
「そして、マスターの為に尽くしたい!」
「菫(すみれ)……。私に尽くすより自分の事に願いを使っていいんだよ?」
「これが僕の願いなの! マスターを幸せにするのが僕の願い!」
僕の服を縫いながらマスターははにかんだ笑みを浮かべてくれる。
今縫ってくれているお洋服はマスターのオリジナル、マスターとお揃いのデザインだって教えてもらった。
だから僕もマスターに何か出来ないかなと思って考えて、マスターの隣で絵本を読む。
絵本にはお魚さんがお友達と協力して、悪いお魚さんを追い払うお話が書かれていた。
それが僕にとって驚きのお話でもあって、足をバタバタさせているとマスターが立ち上がる。
「マスター?」
「菫、少し洋服のサイズ調整手伝ってくれる? 試作品と比べたいから」
「分かった!」
僕がお洋服のお着換えの為に今着ている洋服を脱ごうとしていると、マスターが小さな声で「痛っ」と言うから、僕は慌ててマスターに近寄ると手を掴んだ。
「マスター! 大丈夫!?」
「大丈夫よ、汚れるから離して?」
「マスターの指から赤い液体が! どうしたら……!?」
「これは血って言って人間の身体には必要な液体なんだよ。大丈夫、止血すれば止まるから」
「止血ってどうしたら出来るの?」
「うーん、吸い取って舐めたりするだけでも止血にはなるんだけれどね。菫にはまだ無理だよ」
「……ん」
「菫!?」
僕は乾いた口の中に血と呼ばれる液体を流し込む様に、マスターの指を咥えた。
最初は液体だと思っていたけれど次第に苦いと感じれると、身体の内側がドクドクとするのが感じた。
熱い……でも、離したいとは思わなかった。
僕の意識を包むようにマスターが片手で僕の髪の毛を撫でてくれる。
それが落ち着きをくれて、気付いたら僕の口の中は潤っていた。
「ま、すたー」
「菫……また人間に近付いたね」
「そう、なの?」
「変わった事ない?」
「なんか……ここがドクドクする」
そこは心臓と呼ばれる場所で、僕が手を添えているとマスターの手が触れて撫でてくれる。
その手が僕の身体ごと包み込むように抱き寄せて、マスターの腕に包まれた。
マスターは僕の頬にキスをしてそっと僕を見つめる。
「菫、段々と人間になってきているね。このまま本当に人間になって私の王子様になるのかな……そうだと嬉しいな」
「僕、マスターの王子様になれるかな?」
「このまま神様が許してくれるならなれるよ。でも、無理は嫌だからね」
「はーい」
僕の指先に宿る熱は少しずつだけれどマスターの心に触れているように思える。
ねぇ、マスター……僕、マスターの運命の王子様になりたいな。
そしてマスターに綺麗なドレスを贈って一緒にお祝いするんだ。
そんな願いも叶えれたらいいな。
「なんだい?」
「ドールが願いを持ってもいいのかな?」
「勿論いいと思うよ。どうしたの?」
「僕、マスターのお隣で一緒に笑うのが願いなの」
「うん、それは私も同じだよ」
「そして、マスターの為に尽くしたい!」
「菫(すみれ)……。私に尽くすより自分の事に願いを使っていいんだよ?」
「これが僕の願いなの! マスターを幸せにするのが僕の願い!」
僕の服を縫いながらマスターははにかんだ笑みを浮かべてくれる。
今縫ってくれているお洋服はマスターのオリジナル、マスターとお揃いのデザインだって教えてもらった。
だから僕もマスターに何か出来ないかなと思って考えて、マスターの隣で絵本を読む。
絵本にはお魚さんがお友達と協力して、悪いお魚さんを追い払うお話が書かれていた。
それが僕にとって驚きのお話でもあって、足をバタバタさせているとマスターが立ち上がる。
「マスター?」
「菫、少し洋服のサイズ調整手伝ってくれる? 試作品と比べたいから」
「分かった!」
僕がお洋服のお着換えの為に今着ている洋服を脱ごうとしていると、マスターが小さな声で「痛っ」と言うから、僕は慌ててマスターに近寄ると手を掴んだ。
「マスター! 大丈夫!?」
「大丈夫よ、汚れるから離して?」
「マスターの指から赤い液体が! どうしたら……!?」
「これは血って言って人間の身体には必要な液体なんだよ。大丈夫、止血すれば止まるから」
「止血ってどうしたら出来るの?」
「うーん、吸い取って舐めたりするだけでも止血にはなるんだけれどね。菫にはまだ無理だよ」
「……ん」
「菫!?」
僕は乾いた口の中に血と呼ばれる液体を流し込む様に、マスターの指を咥えた。
最初は液体だと思っていたけれど次第に苦いと感じれると、身体の内側がドクドクとするのが感じた。
熱い……でも、離したいとは思わなかった。
僕の意識を包むようにマスターが片手で僕の髪の毛を撫でてくれる。
それが落ち着きをくれて、気付いたら僕の口の中は潤っていた。
「ま、すたー」
「菫……また人間に近付いたね」
「そう、なの?」
「変わった事ない?」
「なんか……ここがドクドクする」
そこは心臓と呼ばれる場所で、僕が手を添えているとマスターの手が触れて撫でてくれる。
その手が僕の身体ごと包み込むように抱き寄せて、マスターの腕に包まれた。
マスターは僕の頬にキスをしてそっと僕を見つめる。
「菫、段々と人間になってきているね。このまま本当に人間になって私の王子様になるのかな……そうだと嬉しいな」
「僕、マスターの王子様になれるかな?」
「このまま神様が許してくれるならなれるよ。でも、無理は嫌だからね」
「はーい」
僕の指先に宿る熱は少しずつだけれどマスターの心に触れているように思える。
ねぇ、マスター……僕、マスターの運命の王子様になりたいな。
そしてマスターに綺麗なドレスを贈って一緒にお祝いするんだ。
そんな願いも叶えれたらいいな。
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