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3章
24話「希望の騎士の最後の役目」
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ルーベリド王女回復の儀式、その儀式で魔神アガルダの魔力に染まってしまったマナからの攻撃で手足が出せないガイアとフェランド達は苦戦を強いられていたのだが、同じ儀式に参加していたレジェース総団長アルフォード・ガイダンとエヴァ・ルーズスルのある行動によってそれらは逆転の攻勢に出る事が叶う……犠牲となるアルフォードとエヴァの命を奪う事によって。
「うっ……」
「エヴァ様! 総団長! 一体何を!?」
「マナは実体を持たない。こうして誰かの身体に取り込み攻撃するしか方法はない。この役目には俺とエヴァが適している……ガイア、フェランド、お前達はこの先の未来を歩く者達。その先走りを照らすのは老いた者である俺やエヴァの役目だ」
「だからって! そんな……っ! 団長危ない!!」
エヴァの心臓を貫いているアルフォードの剣から滴り落ちる血液は鮮血で鮮やかな真っ赤な色をしているのはガイアもフェランドも確認している。だが、心臓に剣を刺されているというのにエヴァの右腕に握られた剣が狙いすましてアルフォードの心臓を貫き返したのは誰が予想出来ただろうか。
アルフォードの口から鮮血が流れ落ちる、しかし、エヴァの自我が次第に取り戻されてアルフォードの心臓に突き刺さった剣から右手が離れ頭を抱える姿にアルフォードも微笑みを死ぬ間際に浮かべた。エヴァは最後の自我を奮い立たせてアルフォードに告げる。
「俺達の……最後、の役目だ……掃うぞ……運命の騎士達の闇を」
「あぁ、そうだな……それが俺達の、最後の……祝福だ」
「「世界樹の光と希望よ、我々の願いと心にて、闇に染まりつつある若き騎士達の魂を、光と共に導き給え!!」」
「!!」
「身体が……熱いっ!」
ガイアとフェランドの身体に眩い光を放つアルフォードとエヴァ両名から放たれる力が包み込み、そして、身体の奥底に眠っていた光の力を導き引き出す。光が静まりエヴァとアルフォードの両名が息絶えて地面に伏せていたのを確認したガイアとフェランドは込み上げる光の力と迫り来る悲しみに板挟みになりながらも儀式の最後を仕上げんと、未だ自我の浸食から解放されていないルーベリド王女の回復に必要な血を流す。
それからはあっという間に儀式は終わりを迎えた。血が新たに流された事によってマナの浸食は消え失せ、ルーベリド王女は次第に自我を取り戻して気が付けば神官と巫女達の手によって寝室に移動させられていた。
アルフォードとエヴァの命を犠牲に成功に繋げた事はレジェースだけではなく、スジエル全部に衝撃を与えるだけの影響はあった。悲しみがスジエルを包み込むがそれを許す程現実は甘くはなかった。
「国境付近に魔神軍の姿が確認された」
「東の国境付近にも魔神軍の斥候部隊が確認済みだ。北の砦も怪しいだろう」
「総団長の亡き今、誰がレジェースの指揮を執るんだ? 誰かが立たないと俺達は魔神軍に……」
「大丈夫だ。俺達は騎士の誇りがある。国を守る為の心構えは総団長の教えで身に着けたじゃないか!」
「皆さん、今は誰がレジェースを導くかは後に。今はスジエル防衛戦を突破する事だけをお考え願いたい。我々がここで負ければスジエルだけじゃない、多くの希望が費える事となるでしょう。総団長アルフォード・ガイダン様はその様な我々を見て喜ばれるとは思いません。我々は弱き者達の為に身体を盾にし、その猛き心を剣として難敵に立ち向かう事が騎士としての役目ではないでしょうか」
混乱を生じていたレジェースを一時的に導き始めたのは軍師騎士のアベルゾだった。アベルゾは総団長の座を次期に約束されていた騎士としても認知されていた事もあって、残された騎士達にはアベルゾが指揮を執る事に異論は出なかった。
補佐に回ってくれている騎士達に指示を出してスジエル防衛の陣形をすぐに組み立てたアベルゾは、儀式を終えて市民の誘導に入っていたガイアとフェランドを呼び戻す。ガイアとフェランドはすぐにレジェース本部に戻りアベルゾの前に来ていた。
「2人にはルーベリド王女とユリウス様の護衛を頼みます」
「俺達も戦います。転生者の輝きを使えば戦力も少しは上げれますし……」
「フェランド、アベルゾさんの話を最後まで聞けって。何か意味があるのでしょう?」
「今回の魔神軍の部隊はどう見ても小手先を調べる程度の戦力だと情報が上がっています。総団長亡き後のレジェースの実力を計りに来ているのだと思われますので、こちらも全力を出す必要はないでしょうとの判断です。ただ、魔神軍が相手ではありますので、ルーベリド王女とユリウス様のお身柄を守る事は重務です。あのお2人まで失えばスジエルは間違いなく闇に飲まれてしまうでしょうから」
アベルゾはそこまで話をして椅子から立ち上がりフェランドの肩に手を置いた。ガイアとフェランドの両名をここで失う訳にはいかない。
アベルゾはまだ不安そうなフェランドにニコリと微笑みを浮かべて青い髪を揺らしてその場から立ち去った。残されたフェランドとガイアは少しアベルゾが立ち去った方角を見つめていたが、ゆっくりと言い渡された護衛の任務に就く事にしてルーベリド王女とユリウス様のいる部屋に向かった。
国境付近で魔神軍は斥候部隊だと思っていた戦力で戦いを挑んでくる。だが、アベルゾの指揮下に置かれたレジェースの歴戦の騎士達によってこの戦力は撃破。
他の国境の部隊も撃破を確認。2週間の間に見えている全ての魔神軍の部隊は壊滅に追いやった事でスジエル内部でもアベルゾの指揮は正しかったと好反応が出始めていた。
「それでは今回は無事にスジエルを守り通す事が出来た、と考えてよろしいんですね?」
「はい。王女とユリウス様にはご不安をお与え致しましたが暫くはまた平常の日常を送れるかと思います。そして、先日ガイア君とフェランド君からお伺いしました。アルフォード団長とエヴァ様の墓石をスジエルの王族地に埋葬したいとの事ですが」
「私が未熟な事で有能な方々を失ったのは事実。そして、その犠牲を受け入れる事は自分の愚かさを露呈する事となるでしょう。ですが、アルフォード総団長もエヴァ様も壮大で聡明な方々だった。世界樹の希望を担った立派な騎士として私達を導いてくれたのです。そんな方々を私は誇りに思います。だから、父や母と同じ地に埋葬したいのです……私の最後の償いと思ってもらえれば」
「……分かりました。実は先日総団長のご家族と面談する事がありまして、その時に総団長とエヴァ様は儀式で命を落とす事は先見されておいでだった模様。ご家族様達もそれを受けて今後はレジェース本部に入って支援側の人間として関わって行くと決意を表明されております」
「アルフォード総団長様も、エヴァ様も、きっと託されたんですね……運命の騎士達であるガイア殿とフェランド殿に希望を」
ユリウスの言葉にアベルゾも同意する。そして、スジエル総出でアルフォード総団長・エヴァの埋葬の日を迎える。
残された騎士達によるパレードを終えて、そして、家族の見守る中で棺が王族埋葬地に出来た穴へと運び込まれていく。幼い子供達も父親の死を理解しているのか嗚咽を我慢しながらも最後の別れに立ち会っていた。
埋葬が終わり、縁のある者達が華をそれぞれ墓石に添えて行く中で王女のルーベリドは花束を両名の墓石に添えて誓いの言葉を口にする。その決意をその場にいた者達はしっかりと心に刻み込む。
「私はここに誓いましょう。誰も泣かないで住める世界を取り戻す事を。そして、平和な世界になった時、この地に眠りし者達の魂が転生し産まれてくる事を心より願います」
ルーベリド王女の決意は隣で祈りを捧げるユリウスにも伝わる。埋葬後、ガイアとフェランドは宿舎に戻りフェランドの自室で2人で話をする。
アルフォードとエヴァが最後に世界樹の力を使役してガイアとフェランドの魂が闇に染まっていたのを光へと浄化してくれた事を2人は覚えている。そして、その効果はすぐにでも身体に出ている事を2人は確認し合っていたのだ。
「間違いない……闇の力が弱くなっているのが分かる」
「俺の方もマナの力を前よりも強く感じる。前はぼんやりとした闇の力を感じていたのに、今はそのぼんやりとした闇の力も感じない。これが世界樹の加護なのかな……」
「アルフォード総団長とエヴァ様が命を引き換えに俺達の闇を掃ったのは間違いない。そして、世界樹の加護を俺達に引き継いだのも間違いないだろう」
「守りたかった……あのお2人を俺は守りたかったよ……っ」
「俺だって守りたかったさ……。でも、俺達には力が無かった……守れるだけの力が。だから、今度同じ苦しみを繰り返さない為にも強くならないといけない……そうだろう?」
「ガイアっ……」
「今だけは……今だけは俺もお前も……この悲しみに泣くのはありだろうよ……」
隣り合って座っていたガイアとフェランドはお互いに抱き締め合いながら、その双眸から透明な雫を流し始める。失った存在は大きいし守れなかった後悔が心を締め付ける。
だが、それでも悲しみはいつかは乗り越えないといけない。いつまでも悲しみに染まっていては亡くなった者達も安心出来ないと2人は知っているからだ。
まだ魔神アガルダの攻撃が来ないとも限らない。ガイアとフェランドはこの時間だけ悲しみに暮れたとしても明日になったら前を向いて現実と立ち向かう事を受け入れるだろう。
『時は満ちた。いよいよ始まる。この局面にお前達は何を望む? 何を見て、何を想い、何を考え、何を知る。我が目覚めるのが先か、それとも世界の終わりが先か。見せてみろ、か弱き存在と呼ばれし者達よ。命の輝きを光輝かせ、そして抗うがいい。全ての始まりと終わりはもうそこにまで迫っているのだからな』
漆黒の闇の底から聞こえる言葉を世界樹は聞いていた。そして、世界樹と同じ様に声を聞いている存在がオジナルにもいた……魔神アガルダ。
アガルダはその声を聞いて小さく笑う。運命のサイは投げられた……もう止まる事は出来ないと気付いた者達はどうこの運命を受け入れるのか。
動き出した歯車の噛み合わせは一体どうなる事やら――――?
「うっ……」
「エヴァ様! 総団長! 一体何を!?」
「マナは実体を持たない。こうして誰かの身体に取り込み攻撃するしか方法はない。この役目には俺とエヴァが適している……ガイア、フェランド、お前達はこの先の未来を歩く者達。その先走りを照らすのは老いた者である俺やエヴァの役目だ」
「だからって! そんな……っ! 団長危ない!!」
エヴァの心臓を貫いているアルフォードの剣から滴り落ちる血液は鮮血で鮮やかな真っ赤な色をしているのはガイアもフェランドも確認している。だが、心臓に剣を刺されているというのにエヴァの右腕に握られた剣が狙いすましてアルフォードの心臓を貫き返したのは誰が予想出来ただろうか。
アルフォードの口から鮮血が流れ落ちる、しかし、エヴァの自我が次第に取り戻されてアルフォードの心臓に突き刺さった剣から右手が離れ頭を抱える姿にアルフォードも微笑みを死ぬ間際に浮かべた。エヴァは最後の自我を奮い立たせてアルフォードに告げる。
「俺達の……最後、の役目だ……掃うぞ……運命の騎士達の闇を」
「あぁ、そうだな……それが俺達の、最後の……祝福だ」
「「世界樹の光と希望よ、我々の願いと心にて、闇に染まりつつある若き騎士達の魂を、光と共に導き給え!!」」
「!!」
「身体が……熱いっ!」
ガイアとフェランドの身体に眩い光を放つアルフォードとエヴァ両名から放たれる力が包み込み、そして、身体の奥底に眠っていた光の力を導き引き出す。光が静まりエヴァとアルフォードの両名が息絶えて地面に伏せていたのを確認したガイアとフェランドは込み上げる光の力と迫り来る悲しみに板挟みになりながらも儀式の最後を仕上げんと、未だ自我の浸食から解放されていないルーベリド王女の回復に必要な血を流す。
それからはあっという間に儀式は終わりを迎えた。血が新たに流された事によってマナの浸食は消え失せ、ルーベリド王女は次第に自我を取り戻して気が付けば神官と巫女達の手によって寝室に移動させられていた。
アルフォードとエヴァの命を犠牲に成功に繋げた事はレジェースだけではなく、スジエル全部に衝撃を与えるだけの影響はあった。悲しみがスジエルを包み込むがそれを許す程現実は甘くはなかった。
「国境付近に魔神軍の姿が確認された」
「東の国境付近にも魔神軍の斥候部隊が確認済みだ。北の砦も怪しいだろう」
「総団長の亡き今、誰がレジェースの指揮を執るんだ? 誰かが立たないと俺達は魔神軍に……」
「大丈夫だ。俺達は騎士の誇りがある。国を守る為の心構えは総団長の教えで身に着けたじゃないか!」
「皆さん、今は誰がレジェースを導くかは後に。今はスジエル防衛戦を突破する事だけをお考え願いたい。我々がここで負ければスジエルだけじゃない、多くの希望が費える事となるでしょう。総団長アルフォード・ガイダン様はその様な我々を見て喜ばれるとは思いません。我々は弱き者達の為に身体を盾にし、その猛き心を剣として難敵に立ち向かう事が騎士としての役目ではないでしょうか」
混乱を生じていたレジェースを一時的に導き始めたのは軍師騎士のアベルゾだった。アベルゾは総団長の座を次期に約束されていた騎士としても認知されていた事もあって、残された騎士達にはアベルゾが指揮を執る事に異論は出なかった。
補佐に回ってくれている騎士達に指示を出してスジエル防衛の陣形をすぐに組み立てたアベルゾは、儀式を終えて市民の誘導に入っていたガイアとフェランドを呼び戻す。ガイアとフェランドはすぐにレジェース本部に戻りアベルゾの前に来ていた。
「2人にはルーベリド王女とユリウス様の護衛を頼みます」
「俺達も戦います。転生者の輝きを使えば戦力も少しは上げれますし……」
「フェランド、アベルゾさんの話を最後まで聞けって。何か意味があるのでしょう?」
「今回の魔神軍の部隊はどう見ても小手先を調べる程度の戦力だと情報が上がっています。総団長亡き後のレジェースの実力を計りに来ているのだと思われますので、こちらも全力を出す必要はないでしょうとの判断です。ただ、魔神軍が相手ではありますので、ルーベリド王女とユリウス様のお身柄を守る事は重務です。あのお2人まで失えばスジエルは間違いなく闇に飲まれてしまうでしょうから」
アベルゾはそこまで話をして椅子から立ち上がりフェランドの肩に手を置いた。ガイアとフェランドの両名をここで失う訳にはいかない。
アベルゾはまだ不安そうなフェランドにニコリと微笑みを浮かべて青い髪を揺らしてその場から立ち去った。残されたフェランドとガイアは少しアベルゾが立ち去った方角を見つめていたが、ゆっくりと言い渡された護衛の任務に就く事にしてルーベリド王女とユリウス様のいる部屋に向かった。
国境付近で魔神軍は斥候部隊だと思っていた戦力で戦いを挑んでくる。だが、アベルゾの指揮下に置かれたレジェースの歴戦の騎士達によってこの戦力は撃破。
他の国境の部隊も撃破を確認。2週間の間に見えている全ての魔神軍の部隊は壊滅に追いやった事でスジエル内部でもアベルゾの指揮は正しかったと好反応が出始めていた。
「それでは今回は無事にスジエルを守り通す事が出来た、と考えてよろしいんですね?」
「はい。王女とユリウス様にはご不安をお与え致しましたが暫くはまた平常の日常を送れるかと思います。そして、先日ガイア君とフェランド君からお伺いしました。アルフォード団長とエヴァ様の墓石をスジエルの王族地に埋葬したいとの事ですが」
「私が未熟な事で有能な方々を失ったのは事実。そして、その犠牲を受け入れる事は自分の愚かさを露呈する事となるでしょう。ですが、アルフォード総団長もエヴァ様も壮大で聡明な方々だった。世界樹の希望を担った立派な騎士として私達を導いてくれたのです。そんな方々を私は誇りに思います。だから、父や母と同じ地に埋葬したいのです……私の最後の償いと思ってもらえれば」
「……分かりました。実は先日総団長のご家族と面談する事がありまして、その時に総団長とエヴァ様は儀式で命を落とす事は先見されておいでだった模様。ご家族様達もそれを受けて今後はレジェース本部に入って支援側の人間として関わって行くと決意を表明されております」
「アルフォード総団長様も、エヴァ様も、きっと託されたんですね……運命の騎士達であるガイア殿とフェランド殿に希望を」
ユリウスの言葉にアベルゾも同意する。そして、スジエル総出でアルフォード総団長・エヴァの埋葬の日を迎える。
残された騎士達によるパレードを終えて、そして、家族の見守る中で棺が王族埋葬地に出来た穴へと運び込まれていく。幼い子供達も父親の死を理解しているのか嗚咽を我慢しながらも最後の別れに立ち会っていた。
埋葬が終わり、縁のある者達が華をそれぞれ墓石に添えて行く中で王女のルーベリドは花束を両名の墓石に添えて誓いの言葉を口にする。その決意をその場にいた者達はしっかりと心に刻み込む。
「私はここに誓いましょう。誰も泣かないで住める世界を取り戻す事を。そして、平和な世界になった時、この地に眠りし者達の魂が転生し産まれてくる事を心より願います」
ルーベリド王女の決意は隣で祈りを捧げるユリウスにも伝わる。埋葬後、ガイアとフェランドは宿舎に戻りフェランドの自室で2人で話をする。
アルフォードとエヴァが最後に世界樹の力を使役してガイアとフェランドの魂が闇に染まっていたのを光へと浄化してくれた事を2人は覚えている。そして、その効果はすぐにでも身体に出ている事を2人は確認し合っていたのだ。
「間違いない……闇の力が弱くなっているのが分かる」
「俺の方もマナの力を前よりも強く感じる。前はぼんやりとした闇の力を感じていたのに、今はそのぼんやりとした闇の力も感じない。これが世界樹の加護なのかな……」
「アルフォード総団長とエヴァ様が命を引き換えに俺達の闇を掃ったのは間違いない。そして、世界樹の加護を俺達に引き継いだのも間違いないだろう」
「守りたかった……あのお2人を俺は守りたかったよ……っ」
「俺だって守りたかったさ……。でも、俺達には力が無かった……守れるだけの力が。だから、今度同じ苦しみを繰り返さない為にも強くならないといけない……そうだろう?」
「ガイアっ……」
「今だけは……今だけは俺もお前も……この悲しみに泣くのはありだろうよ……」
隣り合って座っていたガイアとフェランドはお互いに抱き締め合いながら、その双眸から透明な雫を流し始める。失った存在は大きいし守れなかった後悔が心を締め付ける。
だが、それでも悲しみはいつかは乗り越えないといけない。いつまでも悲しみに染まっていては亡くなった者達も安心出来ないと2人は知っているからだ。
まだ魔神アガルダの攻撃が来ないとも限らない。ガイアとフェランドはこの時間だけ悲しみに暮れたとしても明日になったら前を向いて現実と立ち向かう事を受け入れるだろう。
『時は満ちた。いよいよ始まる。この局面にお前達は何を望む? 何を見て、何を想い、何を考え、何を知る。我が目覚めるのが先か、それとも世界の終わりが先か。見せてみろ、か弱き存在と呼ばれし者達よ。命の輝きを光輝かせ、そして抗うがいい。全ての始まりと終わりはもうそこにまで迫っているのだからな』
漆黒の闇の底から聞こえる言葉を世界樹は聞いていた。そして、世界樹と同じ様に声を聞いている存在がオジナルにもいた……魔神アガルダ。
アガルダはその声を聞いて小さく笑う。運命のサイは投げられた……もう止まる事は出来ないと気付いた者達はどうこの運命を受け入れるのか。
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