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2章
17話「真実は牙を剝く」
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その日、軍師騎士アベルゾ宛てに総団長アルフォードから極秘に任務が発令された。白の神殿周辺の調査を行うように、との任務。
アベルゾはその理由を聞かされてはいないが、まずの手始めとして周辺から調査に入るのは後の動きを確実にする為の手段の1つだとは理解していた。ルーデリッシュと共に調査に入る為に動き始めたアベルゾを見送ったアルフォードは次いでガイアとフェランドを自分の元に呼ぶかと考えて、そこに来客が入る。
「誰だ?」
「はい、スジエル王女のルーベリド様がお見えになられております」
「王女様が? お通しして人払いを頼む」
「承知しました」
側近の騎士から告げられた来客の名にアルフォードも少し驚く。エヴァからは王女が城を出るとは聞かされていないからだ。
内密に出てこられたのであれば何か意味があるのだろう、とアルフォードは考えて最高級の紅茶の用意をする。少ししてユリウスと共にルーベリド王女が執務室に訪れて頭を下げてきた。
「アルフォード総騎士団長、急な来訪申し訳ございません。少しお話を聞ければと思いユリウス様と共に参りました」
「お久しぶりですアルフォード様。エヴァ様からも聞いているのですが……白の神殿に調査を行う、と言うのは本当ですか?」
「はい。既にアベルゾに周辺の調査を命じております。それだけではありません……白の神殿自体に説明出来ぬ不審な部分がかなり報告されております。我々が知らない事実を神殿は把握し、それを元に転生者を導いております。しかし、それが一番の異常なのです」
「一番の異常とまで申されるのは一体……」
「白の神殿とは一体何をしているのですか?」
「白の神殿はほぼ確実に闇に属する者達の隠れ蓑でございます」
「「!!」」
アルフォードはルーベリド王女とユリウスに自分とエヴァが極秘に調べていた事実を話していく。それを聞いた2人は言葉を失くしてしまう。
それだけ白の神殿はこのスジエルを支えてきた存在でもあり、市民達の心のよりどころでもあったからだ。だが、アルフォードから告げられた事実はそれらを一切否定する事実。
2人はスジエルを守る事を使命にしているこのレジェースを総指揮するアルフォードと、国の防衛を司っているエヴァの両名が調べた事実に偽りはないのだとしたらこれは危うい事実でもある。国の王族としてルーベリド王女の幼い頭でもそれは充分に理解は出来た。
「それではアルフォード様、どの様にして調査を……?」
「アベルゾが確たる証拠を見つけ出すと俺は信じています。それを元に深夜の祈りの時間に踏み込んで現場を抑えるつもりです」
「使者を立てる事は出来ないのですか? せめて無関係な者達だけでも……」
「それは叶いますまい。殆どの者達が事実を知った上で動いているのは確たる事実でございます。スジエルを守る為にも、そして内部崩壊を阻止する為にも我々は迅速に動かねばなりません。それが血に濡れた道だとしてでもです」
2人の若者はこの時点ではまだ実感は持てなかった。だが、城に戻りエヴァから白の神殿の内部で行われていた儀式の様子を聞いてそこで本当に白の神殿は魔神側だったのだと実感を持つ事になる。
そして、白の神殿周辺を調査していたアベルゾが持ち帰った調査報告は確かな手掛かりを手に入れていた。白の神殿内部で夜な夜な闇への祈りが捧げられる為に多数の少女達が神殿に詰めている為に親達は神殿に理由を聞くが聞かされないとの情報も入っていたのである。
アルフォードはアベルゾ・ルーデリッシュ・ガイア・フェランドを招集しその日の深夜に白の神殿への調査を行う任務を発令。その時にガイアとフェランドにはある真実を話す事にしたアルフォードは4人以外を人払いして話をし始める。
「さて、ガイア、フェランド、君達には知らせておくべき事がある。心して聞いて欲しい」
「はい、なんでございますか?」
「俺達って事は転生者の話ですよね」
「そう。君達は白の神殿の巫女カーネル様より転生者だと言われてその力を覚醒されてこのスジエルにやってきた、それは間違いないな?」
「「はい」」
「ならば君達は大事な事実を知らされてない。即ち転生者とはどういう存在なのかを」
「どう、いう存在なのか……?」
「それは一体?」
「聖なる神々には転生者は判断出来ない。それは神々が聖なる力で魂を巡廻させ転生をさせているから。だが、君達転生者はその魂が転生者だと判断出来る。これは何を意味するか分かるかな?」
アルフォードの言葉に2人は困惑を持つ。何かが隠されているのはそこまでで明白なのだがその隠されている何かが2人には分からない。
アルフォードは2人に視線を向けて事実を口にする。そう、それは世界樹の騎士であるエヴァとアルフォードにすら分かってしまうだけのれっきとした事実。
「君達の魂を転生させたのは神々でも世界樹でもない。……魔神アガルダである」
「「!?」」
「そして、白の神殿はアベルゾの調査で確たる証拠も掴んだ。白の神殿は間違いなく魔神アガルダ側の者達の隠れ蓑である」
「そ、そんな……俺達は魔神アガルダの手によって転生したというのですか……?」
「どうして……どうしてそれが分かるんですか……?」
「君達の転生者としての魂の前世、そう君達の前世はコーネルドとガラハッドであろう? 彼らの最後の瞬間を見ている筈だ。君達の前世の死はなんであった?」
「……魔神アガルダの……」
「魔力によっての……即死……」
「つまり、魔神アガルダの手中で死んだ。そして、遺体も魂も神々の元に埋葬も浄化もされてない。君達の転生者としての魂は闇に染まっていると言っていいだろう。その証拠に、君達の転生者の輝きは命を代価として使うしかない」
アルフォードの言葉に2人は言葉を紡げない。だが、真実は2人になおも牙を剝く。
アベルゾがある本を読み返して発見した事実を2人に聞かせる。それは魔神アガルダの手によって転生した者の末路でもあった。
「魔神アガルダの手により転生した者達はどんな運命であれ魔神アガルダの魔力によってその命を散らします。そして、その魂と肉体に刻まれた記憶を土台に新しい器になる者達を生み出す事になります。つまり魔神アガルダを討たない限り永遠に転生者達の魂は天界へと向かう事も、新しい生命に転生する事も叶いません」
この事実を2人は簡単には受け止めれない、それは仕方ないと他の3人は思っていた。だがそれは思い違いでもあった。
ガラハッドとコーネルドの願いを2人はしっかり知っている。この世界から魔神を排除し、世界に平和のある秩序と調和のある世界へ導く事。
その果てに自分達の命が散ったとしてもそれは後悔ではなく希望であることを。だから2人は血を流す心を奮い立たせて前を向く。
「俺達で終わらせます……俺達が魔神アガルダを討って、本当の転生を促せるように……俺達が前に進みます」
「俺もガラハッドとコーネルドの意思を継いだ者として、転生者として、ガイアと共に魔神アガルダ打倒を目指します。簡単じゃないのは充分に理解しているし、犠牲だって出るとは分かっています。でも、俺達がやらないとまた同じ犠牲者が出てしまうのは繰り返したらダメなんです!」
「君達はその運命を超えてみせる、と? ふむ……君達ならば可能かもしれない。コーネルドとガラハッドが託した想いを持つ君達ならば、変えれるかもしれないな」
アルフォードは若き騎士であるガイアとフェランドの肩に両手を置くと、静かに微笑みながら頷いた。若い2人だから出来るとは簡単に言えた訳ではない。
だが、この2人の未来を決めるのは誰でもない本人達だという事をアルフォードは知っている。どんな真実だろうと、それが牙を剝いたとしても、2人は立ち向かい抗っていくのだろうとアルフォードは信じる事にした。
この2人の紡ぐ先の未来がこのオルガスタン大陸を救う希望になり得る事を信じてみたいのだと。アベルゾとルーデリッシュと共にガイアとフェランドは白の神殿へと向かう。
「この深夜に踏み込むんですか?」
「それが一番被害が最小限に抑えられます。現場を抑える必要がありますからね。行きますよ」
「「はい」」
「な、なんだお前達!? 今は誰も立ち入りは!!」
「問答無用。通らせてもらう」
神殿入り口を守る白の騎士団の騎士を気絶させたルーデリッシュと共に神殿の最深部へと駆け込む。そこには禍々しい魔法陣の上に少女達を寝かせて何かの儀式を行っている光景があった。
巫女達は急に入ってきたアベルゾやルーデリッシュと共にガイアとフェランドも見て悲鳴を上げながら部屋の隅に固まる。少女達は意識がないまま寝かされており、一緒に入ってきた騎士達に助け出されて保護される。
隅で固まる巫女達を捕縛していく騎士達に凛とした声が掛けられる。白の神殿の大巫女であるカーネルが姿を見せてレジェース騎士達を止めようとする。
「ここは神聖なる白の神殿であります。何の権利があって踏み入ったか!」
「それならばこの魔法陣はなんなのですか? 闇に染まった魔法陣の上に寝かせた少女達は何故この様に衰弱しているのでしょうか? 魔神アガルダへの供物ではあるのではないですか?」
「この少女達は神々に祈りを捧げる為の生贄なのです。それは本人達も承諾の上で行っている事です。ガイア、フェランド、貴方達なら分かりますよね? 神々が貴方達を導いて下さっている事を。どうか止める様に進言を」
「俺達は魔神アガルダによって転生させられた者達であるのを隠していた貴女が信じれると思いますか?」
「俺達にあの時魔神アガルダの名こそ出さなかったとは言え魔神アガルダの手により転生させられた者達だと知ってて力を与えたのは、自分達の信じるべき神が魔神アガルダだと思っていたからではありませんか?」
「それを……なんだと言うのですか? この世は弱肉強食。強き者が弱き者の上に立つのは自然の摂理。このオルガスタン大陸を統治しているのは魔神アガルダ様なのですよ? その魔神様を崇拝するのがいけない理由などありません。さぁ、貴方達はその魔神アガルダ様に認められた騎士であります。私達をお守りなさい!」
「「断る!!」」
カーネルの言葉にガイアもフェランドも一切聞く耳を持たなかった。それどころかカーネルを捕まえて捕縛する。
どんな理由があったとしても魔神アガルダを崇拝していようと、闇に染まってはならないのだ。聖なる神々に愛されし大地に生きる者達として。
捕えられた巫女達はレジェース騎士団本部に投獄されて長い時間の拷問を受けながらその命を落とす事となる。そう、カーネルも同様に――――。
アベルゾはその理由を聞かされてはいないが、まずの手始めとして周辺から調査に入るのは後の動きを確実にする為の手段の1つだとは理解していた。ルーデリッシュと共に調査に入る為に動き始めたアベルゾを見送ったアルフォードは次いでガイアとフェランドを自分の元に呼ぶかと考えて、そこに来客が入る。
「誰だ?」
「はい、スジエル王女のルーベリド様がお見えになられております」
「王女様が? お通しして人払いを頼む」
「承知しました」
側近の騎士から告げられた来客の名にアルフォードも少し驚く。エヴァからは王女が城を出るとは聞かされていないからだ。
内密に出てこられたのであれば何か意味があるのだろう、とアルフォードは考えて最高級の紅茶の用意をする。少ししてユリウスと共にルーベリド王女が執務室に訪れて頭を下げてきた。
「アルフォード総騎士団長、急な来訪申し訳ございません。少しお話を聞ければと思いユリウス様と共に参りました」
「お久しぶりですアルフォード様。エヴァ様からも聞いているのですが……白の神殿に調査を行う、と言うのは本当ですか?」
「はい。既にアベルゾに周辺の調査を命じております。それだけではありません……白の神殿自体に説明出来ぬ不審な部分がかなり報告されております。我々が知らない事実を神殿は把握し、それを元に転生者を導いております。しかし、それが一番の異常なのです」
「一番の異常とまで申されるのは一体……」
「白の神殿とは一体何をしているのですか?」
「白の神殿はほぼ確実に闇に属する者達の隠れ蓑でございます」
「「!!」」
アルフォードはルーベリド王女とユリウスに自分とエヴァが極秘に調べていた事実を話していく。それを聞いた2人は言葉を失くしてしまう。
それだけ白の神殿はこのスジエルを支えてきた存在でもあり、市民達の心のよりどころでもあったからだ。だが、アルフォードから告げられた事実はそれらを一切否定する事実。
2人はスジエルを守る事を使命にしているこのレジェースを総指揮するアルフォードと、国の防衛を司っているエヴァの両名が調べた事実に偽りはないのだとしたらこれは危うい事実でもある。国の王族としてルーベリド王女の幼い頭でもそれは充分に理解は出来た。
「それではアルフォード様、どの様にして調査を……?」
「アベルゾが確たる証拠を見つけ出すと俺は信じています。それを元に深夜の祈りの時間に踏み込んで現場を抑えるつもりです」
「使者を立てる事は出来ないのですか? せめて無関係な者達だけでも……」
「それは叶いますまい。殆どの者達が事実を知った上で動いているのは確たる事実でございます。スジエルを守る為にも、そして内部崩壊を阻止する為にも我々は迅速に動かねばなりません。それが血に濡れた道だとしてでもです」
2人の若者はこの時点ではまだ実感は持てなかった。だが、城に戻りエヴァから白の神殿の内部で行われていた儀式の様子を聞いてそこで本当に白の神殿は魔神側だったのだと実感を持つ事になる。
そして、白の神殿周辺を調査していたアベルゾが持ち帰った調査報告は確かな手掛かりを手に入れていた。白の神殿内部で夜な夜な闇への祈りが捧げられる為に多数の少女達が神殿に詰めている為に親達は神殿に理由を聞くが聞かされないとの情報も入っていたのである。
アルフォードはアベルゾ・ルーデリッシュ・ガイア・フェランドを招集しその日の深夜に白の神殿への調査を行う任務を発令。その時にガイアとフェランドにはある真実を話す事にしたアルフォードは4人以外を人払いして話をし始める。
「さて、ガイア、フェランド、君達には知らせておくべき事がある。心して聞いて欲しい」
「はい、なんでございますか?」
「俺達って事は転生者の話ですよね」
「そう。君達は白の神殿の巫女カーネル様より転生者だと言われてその力を覚醒されてこのスジエルにやってきた、それは間違いないな?」
「「はい」」
「ならば君達は大事な事実を知らされてない。即ち転生者とはどういう存在なのかを」
「どう、いう存在なのか……?」
「それは一体?」
「聖なる神々には転生者は判断出来ない。それは神々が聖なる力で魂を巡廻させ転生をさせているから。だが、君達転生者はその魂が転生者だと判断出来る。これは何を意味するか分かるかな?」
アルフォードの言葉に2人は困惑を持つ。何かが隠されているのはそこまでで明白なのだがその隠されている何かが2人には分からない。
アルフォードは2人に視線を向けて事実を口にする。そう、それは世界樹の騎士であるエヴァとアルフォードにすら分かってしまうだけのれっきとした事実。
「君達の魂を転生させたのは神々でも世界樹でもない。……魔神アガルダである」
「「!?」」
「そして、白の神殿はアベルゾの調査で確たる証拠も掴んだ。白の神殿は間違いなく魔神アガルダ側の者達の隠れ蓑である」
「そ、そんな……俺達は魔神アガルダの手によって転生したというのですか……?」
「どうして……どうしてそれが分かるんですか……?」
「君達の転生者としての魂の前世、そう君達の前世はコーネルドとガラハッドであろう? 彼らの最後の瞬間を見ている筈だ。君達の前世の死はなんであった?」
「……魔神アガルダの……」
「魔力によっての……即死……」
「つまり、魔神アガルダの手中で死んだ。そして、遺体も魂も神々の元に埋葬も浄化もされてない。君達の転生者としての魂は闇に染まっていると言っていいだろう。その証拠に、君達の転生者の輝きは命を代価として使うしかない」
アルフォードの言葉に2人は言葉を紡げない。だが、真実は2人になおも牙を剝く。
アベルゾがある本を読み返して発見した事実を2人に聞かせる。それは魔神アガルダの手によって転生した者の末路でもあった。
「魔神アガルダの手により転生した者達はどんな運命であれ魔神アガルダの魔力によってその命を散らします。そして、その魂と肉体に刻まれた記憶を土台に新しい器になる者達を生み出す事になります。つまり魔神アガルダを討たない限り永遠に転生者達の魂は天界へと向かう事も、新しい生命に転生する事も叶いません」
この事実を2人は簡単には受け止めれない、それは仕方ないと他の3人は思っていた。だがそれは思い違いでもあった。
ガラハッドとコーネルドの願いを2人はしっかり知っている。この世界から魔神を排除し、世界に平和のある秩序と調和のある世界へ導く事。
その果てに自分達の命が散ったとしてもそれは後悔ではなく希望であることを。だから2人は血を流す心を奮い立たせて前を向く。
「俺達で終わらせます……俺達が魔神アガルダを討って、本当の転生を促せるように……俺達が前に進みます」
「俺もガラハッドとコーネルドの意思を継いだ者として、転生者として、ガイアと共に魔神アガルダ打倒を目指します。簡単じゃないのは充分に理解しているし、犠牲だって出るとは分かっています。でも、俺達がやらないとまた同じ犠牲者が出てしまうのは繰り返したらダメなんです!」
「君達はその運命を超えてみせる、と? ふむ……君達ならば可能かもしれない。コーネルドとガラハッドが託した想いを持つ君達ならば、変えれるかもしれないな」
アルフォードは若き騎士であるガイアとフェランドの肩に両手を置くと、静かに微笑みながら頷いた。若い2人だから出来るとは簡単に言えた訳ではない。
だが、この2人の未来を決めるのは誰でもない本人達だという事をアルフォードは知っている。どんな真実だろうと、それが牙を剝いたとしても、2人は立ち向かい抗っていくのだろうとアルフォードは信じる事にした。
この2人の紡ぐ先の未来がこのオルガスタン大陸を救う希望になり得る事を信じてみたいのだと。アベルゾとルーデリッシュと共にガイアとフェランドは白の神殿へと向かう。
「この深夜に踏み込むんですか?」
「それが一番被害が最小限に抑えられます。現場を抑える必要がありますからね。行きますよ」
「「はい」」
「な、なんだお前達!? 今は誰も立ち入りは!!」
「問答無用。通らせてもらう」
神殿入り口を守る白の騎士団の騎士を気絶させたルーデリッシュと共に神殿の最深部へと駆け込む。そこには禍々しい魔法陣の上に少女達を寝かせて何かの儀式を行っている光景があった。
巫女達は急に入ってきたアベルゾやルーデリッシュと共にガイアとフェランドも見て悲鳴を上げながら部屋の隅に固まる。少女達は意識がないまま寝かされており、一緒に入ってきた騎士達に助け出されて保護される。
隅で固まる巫女達を捕縛していく騎士達に凛とした声が掛けられる。白の神殿の大巫女であるカーネルが姿を見せてレジェース騎士達を止めようとする。
「ここは神聖なる白の神殿であります。何の権利があって踏み入ったか!」
「それならばこの魔法陣はなんなのですか? 闇に染まった魔法陣の上に寝かせた少女達は何故この様に衰弱しているのでしょうか? 魔神アガルダへの供物ではあるのではないですか?」
「この少女達は神々に祈りを捧げる為の生贄なのです。それは本人達も承諾の上で行っている事です。ガイア、フェランド、貴方達なら分かりますよね? 神々が貴方達を導いて下さっている事を。どうか止める様に進言を」
「俺達は魔神アガルダによって転生させられた者達であるのを隠していた貴女が信じれると思いますか?」
「俺達にあの時魔神アガルダの名こそ出さなかったとは言え魔神アガルダの手により転生させられた者達だと知ってて力を与えたのは、自分達の信じるべき神が魔神アガルダだと思っていたからではありませんか?」
「それを……なんだと言うのですか? この世は弱肉強食。強き者が弱き者の上に立つのは自然の摂理。このオルガスタン大陸を統治しているのは魔神アガルダ様なのですよ? その魔神様を崇拝するのがいけない理由などありません。さぁ、貴方達はその魔神アガルダ様に認められた騎士であります。私達をお守りなさい!」
「「断る!!」」
カーネルの言葉にガイアもフェランドも一切聞く耳を持たなかった。それどころかカーネルを捕まえて捕縛する。
どんな理由があったとしても魔神アガルダを崇拝していようと、闇に染まってはならないのだ。聖なる神々に愛されし大地に生きる者達として。
捕えられた巫女達はレジェース騎士団本部に投獄されて長い時間の拷問を受けながらその命を落とす事となる。そう、カーネルも同様に――――。
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