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2章
13話「家族として、そして、再会の家族」
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エントランスでシレッダと共に兄であるルグの事を待っていたアベリアはエントランスの中に飾られている調度品や絵画には見覚えもないが懐かしさを感じる事に気付いていた。アベリアはこの館にいたのは1年だけ、だから覚えている訳もないのに懐かしさだけは感じてしまうのである。
シレッダがエントランス上部にある通路から聞こえてきた足音にアベリアへルグが来た事を告げる。アベリアはレッドアイをエントランス上部へと向けると少しだけ逆光で表情が見えずらくはなっているがルグだとは認識出来た。
「アベリア……」
「兄さん、ごめんなさい。どうしても兄さんとはちゃんと話し合いをしたいと思って。あの手紙の意味も含めて」
「……シレッダ、アベリアの為の部屋を用意してあげて欲しい。ヘルグ、僕の私室にアベリアを案内してあげてくれ。僕は少し書斎に寄ってから向かう」
「承知しましたマイロード」
「それではアベリア様、こちらへどうぞ」
シレッダに連れられて階段を上がりヘルグの案内でルグの私室へと向かって通路の奥へと消えていくアベリアをルグは迷いを含んだ瞳でも見送る。実際、アベリアがこの場所へ来る事はなんらおかしい事ではない、ましてや生まれた家であるのだから帰っていいのだからおかしくないのだ。
ルグは来た道の通路を戻りながら私室の奥にある書斎へと向かう。アベリアには知らせなくてはならない、この館の意味と何故ルグがあの様な手紙を残したかの理由を。
ルグの私室に案内されたアベリアはソファーに座り静かにルグが戻るのを待っている間、ルグの私室に飾られている1枚の肖像画を眺めていた。幼い子供と2人の大人、そして、その大人の1人に抱えられている赤子……それがアベリアだという事はヘルグが説明してくれて知る事が出来た。
「それじゃ兄さんはずっと私の事を探してくれていたのですか?」
「はい。ご自身がこの館の主となられてからは幼い頃に連れて行かれたアベリア様の事をどうにか行方を知り再会を果たしたいとお考えだった模様です」
「ヘルグさんは……兄さんが死にたいと考えている事は……?」
「存じ上げています。ですが、今のルグ様にはアベリア様が最後の砦と申し上げていいでしょう。まだあのお方はこの世界を生きていなくてはならないお方だと我々使用人一同は思って信じております」
ヘルグの言葉はアベリアの心に希望として刻まれる。アベリアは止めたいと願っていた……異母兄でありながらでも最後の家族であるルグをこの世に繋ぎ止めて共に生きていたいと願う事がどれだけの心の希望に繋がっていたか。
アベリアにはルグがどうして希望を失っているのか、見出せてない理由は何なのか、それを知って共に手を取り合って生きて行こうと告げる為にアルードを出たのだ。仮にルグはアベリアに最後の別れをするつもりならば……共に死ぬつもりである。
「待たせたね」
「それでは美味しい紅茶でもご用意致します。それまでお2人でお話されてて下さい」
「ありがとうございます。兄さん、それは?」
「アベリアが生まれた時にお父様が残したアベリアの育成日記だ。知りたいだろうと思ってね」
ヘルグが部屋から出て行きアベリアとルグだけの部屋はそんなに変化はなかった。そして、書庫から持ち出してきたアベリアの育成日記を持ってルグはアベリアの向かい側に座り差し出してくる。
日記を受け取り開いたアベリアがまず目にしたのは生前の父が母が最愛の娘を出産するにあたっての懸念事項が書かれている項目であった。そこには母の身体に関する健康状態と出産時の危険状態においての処置方法等が詳細に書き込まれていた。
そこを読み終えて最初に見た日記には出産を終えた母の状態と、産まれたばかりの自分……つまりアベリアの健康状態が書き込まれていた。実際アルードの家で母には産まれた時の事について色々と話を聞く事をしなかった事もあって、書かれている内容は全てが知らない事でアベリアには驚きと衝撃が走っていた。
ある程度の場所まで読み進めている所でヘルグがブルゾワースルとブルゾワースルに合うクッキーを乗せた皿を持ってきてセッティングしてくれて、また部屋を出て行った。そこでアベリアが震える声でルグに言葉を口にする。
「私……本当ならこの年齢までに生きれない運命だったの……?」
「……最初産まれた時に、取り上げた者がすぐに異変に気付いたんだ。アベリアの身体には何かの特別な「呪い」が身体全体を取り巻いている事にね」
「その「呪い」が与える影響をお父さんは必死になって解呪する為にルデス大陸中の賢者と呼ばれる有能な人々に情報を求めた……。でも、結果として有益な情報は得れなかった……。ならどうして? どうして私はこうして生きていられるの……?」
「……」
「兄さん!」
ルグは正直に話す事を拒む事も出来ると考えた。だが、アベリアはその運命を乗り越えないといけない人生である事に希望を見出せるだろうか? それとも絶望に染まり、自分と一緒に世界から消える事を望むだろうか? その判断がすぐには出来なかった。
アベリアは日記を閉じて感情を落ち着かせようとヘルグの淹れてくれた紅茶、ブルゾワースルを一口飲んで息を静かに吐き出す。そして、生前の母から聞かされたある話をルグにし始めた。
「お母さんはね……私が100歳を超えた頃から私にアルード国から出ないで平穏に暮らしなさいと毎日言い始めていた。その理由も、何故そんな言葉を言うのかとか一切説明も話もしてくれなかった。そして、お母さんはある流行り病に掛かって死の間際にこう残したの……。「自分の産まれた星の意味を知る時、全てに絶望したとしても、産まれた事に後悔はしないで」って……」
「……アベリア、これから話す真実を聞いた上で僕の質問に答えてくれると嬉しい。これは……この真実は、アベリアの未来を、命を、そして……僕の命と未来を決める事になるだろうから」
「……分かった。兄さんの話してくれる話をちゃんと聞くよ。そして、私は私の答えを出す」
ルグはブルゾワースルが入ったカップを見つめて幼少期の頃の家族を思い出していた。父がルグを最後に息子として家族であるアベリアの運命をどうするべきなのかの話をした時の記憶が鮮明に思い返される。
そして、ルグはその父に話を聞かされた内容を思い出し、そして目の前で覚悟を決めているアベリアの方に視線を向けて静かに語り始める。父がアベリアの運命に関する話の内容を語った時の話を。
「アベリアが産まれて半月後にアベリアの身体中に闇属性に染まった茨が現れて身体中の細胞を破壊せんとし始めた。これに対してお父様は最大の魔力を持って茨の進行を遅らせて徐々に消滅差せる事までは成功したんだが、お父様はアベリアの命を救う為に……ある賢者の知恵を借りた。その賢者はアベリアの産まれ落とした星、それがもたらす運命を変える以外に生き延びる方法はないと告げてある方法を用いて運命の上書きをする事を提案した。結果としてその上書きは成功する……お父様の運命を犠牲にして、ね」
「!!」
「そして、お父様はアベリアの母親とアベリアを館から出て行く様に促した。自分の運命で妻と娘を傷付ける事はしたくないと望んだ結果であるからね」
ルグはそこまで話をしてアベリアに小さく微笑む。そこで気付いてしまったのはアベリアであった。
館を出ろと促されたのは娘と妻である母だけ。それではルグは? 兄であり息子であるルグは何故館を出る事をしなかったのだろうかと気付いてしまったのだ。
アベリアは微かに震える声でルグに問い掛ける。そして、ルグもまたその問い掛けに感情を乗せないで返した。
「兄さんは……出なかったの……? 出れなかったの……?」
「お父様の運命だけじゃ、アベリアの運命を上書きは出来なかった。そして、僕が死を望むのは……お父様の運命を引き継ぎ、いつかこのワドルズの崩壊を望む破壊者になるだろうって運命を潰す為だ」
アベリアは双眸から大粒の涙を溢れさせる。自分の命を救う為に父と兄の運命を犠牲にさせた事も、その結果として兄は自分の命が続けばこの世界を破壊せんとする運命を持っている事、それらの事実はアベリアには強い衝撃と深い悲しみを与えてしまう。
アベリアの両手が顔を覆い隠す、その両手の隙間から透明な涙が流れ落ちてはスカートにシミを作り深い悲しみに包まれている事を知らせる。ルグだってこんな運命でなければ最後の家族であるアベリアと幸せに暮らして最後の瞬間まで共に過ごせればと願っただろう。
だが、ルグの上書きされた運命は父親の上書きされた運命の延長線でもある「破壊者」としての運命である。それを本来の運命に変える方法をルグは知らない。
ルグはカップをソーサーに置いてテーブルの上に置くとそっとアベリアに言葉を掛ける。それはアベリアへの最大の優しさであり、兄として、家族としての優しさでもあった。
「アベリア。今からでも遅くはない……アルード国へお帰り」
「っ」
「お義母様の言葉の通りにアルード国で生きていれば悲しみに染まる人生を送る事はない。いつか最愛の相手を見付けて人生を共に生きて、子を成し、そして……幸せに生きるんだ」
「それじゃ……兄さんは? 兄さんの人生はどうなるの!? 嫌だよ! 私の責任で兄さんやお父さんの人生を、運命を壊したのに……私だけ幸せになるなんて……そんなの私は自分の命を捨ててでも変えてみせるからね!!」
アベリアは立ち上がり向かい側のルグに抱き着く。白銀の髪の毛で顔は隠れているが泣き声と背中に回されている腕の力から、アベリアは本気で自分の運命を知った悲しみの強さに向かい合うまでの勇気を持っているだけの子に育ったんだと、ルグは感じていた。
アベリアの身体を抱き締め返して静かにルグは瞳を伏せる。この愛おしい最後の家族であり、そして……自分を兄として慕ってくれているこの妹を守りたい、幸せな未来を与えたいと強く願うのは許されない罪だというのだろうか。
ルグの黒い髪の毛に顔を埋めて涙を流すアベリアは心の中でルグへの謝罪と誓いを繰り返し呟いていた。自分のせいで普通の人生を歩む事が許されない兄への謝罪、そして……その運命を変えて一緒に生きていくと誓う願い。
ルグの妹であるから、ディース家の子供として、そして……知らないといけない。自分の運命が何故こんなにも破滅的で呪いを持って産まれたのだろうかという理由を――――。
シレッダがエントランス上部にある通路から聞こえてきた足音にアベリアへルグが来た事を告げる。アベリアはレッドアイをエントランス上部へと向けると少しだけ逆光で表情が見えずらくはなっているがルグだとは認識出来た。
「アベリア……」
「兄さん、ごめんなさい。どうしても兄さんとはちゃんと話し合いをしたいと思って。あの手紙の意味も含めて」
「……シレッダ、アベリアの為の部屋を用意してあげて欲しい。ヘルグ、僕の私室にアベリアを案内してあげてくれ。僕は少し書斎に寄ってから向かう」
「承知しましたマイロード」
「それではアベリア様、こちらへどうぞ」
シレッダに連れられて階段を上がりヘルグの案内でルグの私室へと向かって通路の奥へと消えていくアベリアをルグは迷いを含んだ瞳でも見送る。実際、アベリアがこの場所へ来る事はなんらおかしい事ではない、ましてや生まれた家であるのだから帰っていいのだからおかしくないのだ。
ルグは来た道の通路を戻りながら私室の奥にある書斎へと向かう。アベリアには知らせなくてはならない、この館の意味と何故ルグがあの様な手紙を残したかの理由を。
ルグの私室に案内されたアベリアはソファーに座り静かにルグが戻るのを待っている間、ルグの私室に飾られている1枚の肖像画を眺めていた。幼い子供と2人の大人、そして、その大人の1人に抱えられている赤子……それがアベリアだという事はヘルグが説明してくれて知る事が出来た。
「それじゃ兄さんはずっと私の事を探してくれていたのですか?」
「はい。ご自身がこの館の主となられてからは幼い頃に連れて行かれたアベリア様の事をどうにか行方を知り再会を果たしたいとお考えだった模様です」
「ヘルグさんは……兄さんが死にたいと考えている事は……?」
「存じ上げています。ですが、今のルグ様にはアベリア様が最後の砦と申し上げていいでしょう。まだあのお方はこの世界を生きていなくてはならないお方だと我々使用人一同は思って信じております」
ヘルグの言葉はアベリアの心に希望として刻まれる。アベリアは止めたいと願っていた……異母兄でありながらでも最後の家族であるルグをこの世に繋ぎ止めて共に生きていたいと願う事がどれだけの心の希望に繋がっていたか。
アベリアにはルグがどうして希望を失っているのか、見出せてない理由は何なのか、それを知って共に手を取り合って生きて行こうと告げる為にアルードを出たのだ。仮にルグはアベリアに最後の別れをするつもりならば……共に死ぬつもりである。
「待たせたね」
「それでは美味しい紅茶でもご用意致します。それまでお2人でお話されてて下さい」
「ありがとうございます。兄さん、それは?」
「アベリアが生まれた時にお父様が残したアベリアの育成日記だ。知りたいだろうと思ってね」
ヘルグが部屋から出て行きアベリアとルグだけの部屋はそんなに変化はなかった。そして、書庫から持ち出してきたアベリアの育成日記を持ってルグはアベリアの向かい側に座り差し出してくる。
日記を受け取り開いたアベリアがまず目にしたのは生前の父が母が最愛の娘を出産するにあたっての懸念事項が書かれている項目であった。そこには母の身体に関する健康状態と出産時の危険状態においての処置方法等が詳細に書き込まれていた。
そこを読み終えて最初に見た日記には出産を終えた母の状態と、産まれたばかりの自分……つまりアベリアの健康状態が書き込まれていた。実際アルードの家で母には産まれた時の事について色々と話を聞く事をしなかった事もあって、書かれている内容は全てが知らない事でアベリアには驚きと衝撃が走っていた。
ある程度の場所まで読み進めている所でヘルグがブルゾワースルとブルゾワースルに合うクッキーを乗せた皿を持ってきてセッティングしてくれて、また部屋を出て行った。そこでアベリアが震える声でルグに言葉を口にする。
「私……本当ならこの年齢までに生きれない運命だったの……?」
「……最初産まれた時に、取り上げた者がすぐに異変に気付いたんだ。アベリアの身体には何かの特別な「呪い」が身体全体を取り巻いている事にね」
「その「呪い」が与える影響をお父さんは必死になって解呪する為にルデス大陸中の賢者と呼ばれる有能な人々に情報を求めた……。でも、結果として有益な情報は得れなかった……。ならどうして? どうして私はこうして生きていられるの……?」
「……」
「兄さん!」
ルグは正直に話す事を拒む事も出来ると考えた。だが、アベリアはその運命を乗り越えないといけない人生である事に希望を見出せるだろうか? それとも絶望に染まり、自分と一緒に世界から消える事を望むだろうか? その判断がすぐには出来なかった。
アベリアは日記を閉じて感情を落ち着かせようとヘルグの淹れてくれた紅茶、ブルゾワースルを一口飲んで息を静かに吐き出す。そして、生前の母から聞かされたある話をルグにし始めた。
「お母さんはね……私が100歳を超えた頃から私にアルード国から出ないで平穏に暮らしなさいと毎日言い始めていた。その理由も、何故そんな言葉を言うのかとか一切説明も話もしてくれなかった。そして、お母さんはある流行り病に掛かって死の間際にこう残したの……。「自分の産まれた星の意味を知る時、全てに絶望したとしても、産まれた事に後悔はしないで」って……」
「……アベリア、これから話す真実を聞いた上で僕の質問に答えてくれると嬉しい。これは……この真実は、アベリアの未来を、命を、そして……僕の命と未来を決める事になるだろうから」
「……分かった。兄さんの話してくれる話をちゃんと聞くよ。そして、私は私の答えを出す」
ルグはブルゾワースルが入ったカップを見つめて幼少期の頃の家族を思い出していた。父がルグを最後に息子として家族であるアベリアの運命をどうするべきなのかの話をした時の記憶が鮮明に思い返される。
そして、ルグはその父に話を聞かされた内容を思い出し、そして目の前で覚悟を決めているアベリアの方に視線を向けて静かに語り始める。父がアベリアの運命に関する話の内容を語った時の話を。
「アベリアが産まれて半月後にアベリアの身体中に闇属性に染まった茨が現れて身体中の細胞を破壊せんとし始めた。これに対してお父様は最大の魔力を持って茨の進行を遅らせて徐々に消滅差せる事までは成功したんだが、お父様はアベリアの命を救う為に……ある賢者の知恵を借りた。その賢者はアベリアの産まれ落とした星、それがもたらす運命を変える以外に生き延びる方法はないと告げてある方法を用いて運命の上書きをする事を提案した。結果としてその上書きは成功する……お父様の運命を犠牲にして、ね」
「!!」
「そして、お父様はアベリアの母親とアベリアを館から出て行く様に促した。自分の運命で妻と娘を傷付ける事はしたくないと望んだ結果であるからね」
ルグはそこまで話をしてアベリアに小さく微笑む。そこで気付いてしまったのはアベリアであった。
館を出ろと促されたのは娘と妻である母だけ。それではルグは? 兄であり息子であるルグは何故館を出る事をしなかったのだろうかと気付いてしまったのだ。
アベリアは微かに震える声でルグに問い掛ける。そして、ルグもまたその問い掛けに感情を乗せないで返した。
「兄さんは……出なかったの……? 出れなかったの……?」
「お父様の運命だけじゃ、アベリアの運命を上書きは出来なかった。そして、僕が死を望むのは……お父様の運命を引き継ぎ、いつかこのワドルズの崩壊を望む破壊者になるだろうって運命を潰す為だ」
アベリアは双眸から大粒の涙を溢れさせる。自分の命を救う為に父と兄の運命を犠牲にさせた事も、その結果として兄は自分の命が続けばこの世界を破壊せんとする運命を持っている事、それらの事実はアベリアには強い衝撃と深い悲しみを与えてしまう。
アベリアの両手が顔を覆い隠す、その両手の隙間から透明な涙が流れ落ちてはスカートにシミを作り深い悲しみに包まれている事を知らせる。ルグだってこんな運命でなければ最後の家族であるアベリアと幸せに暮らして最後の瞬間まで共に過ごせればと願っただろう。
だが、ルグの上書きされた運命は父親の上書きされた運命の延長線でもある「破壊者」としての運命である。それを本来の運命に変える方法をルグは知らない。
ルグはカップをソーサーに置いてテーブルの上に置くとそっとアベリアに言葉を掛ける。それはアベリアへの最大の優しさであり、兄として、家族としての優しさでもあった。
「アベリア。今からでも遅くはない……アルード国へお帰り」
「っ」
「お義母様の言葉の通りにアルード国で生きていれば悲しみに染まる人生を送る事はない。いつか最愛の相手を見付けて人生を共に生きて、子を成し、そして……幸せに生きるんだ」
「それじゃ……兄さんは? 兄さんの人生はどうなるの!? 嫌だよ! 私の責任で兄さんやお父さんの人生を、運命を壊したのに……私だけ幸せになるなんて……そんなの私は自分の命を捨ててでも変えてみせるからね!!」
アベリアは立ち上がり向かい側のルグに抱き着く。白銀の髪の毛で顔は隠れているが泣き声と背中に回されている腕の力から、アベリアは本気で自分の運命を知った悲しみの強さに向かい合うまでの勇気を持っているだけの子に育ったんだと、ルグは感じていた。
アベリアの身体を抱き締め返して静かにルグは瞳を伏せる。この愛おしい最後の家族であり、そして……自分を兄として慕ってくれているこの妹を守りたい、幸せな未来を与えたいと強く願うのは許されない罪だというのだろうか。
ルグの黒い髪の毛に顔を埋めて涙を流すアベリアは心の中でルグへの謝罪と誓いを繰り返し呟いていた。自分のせいで普通の人生を歩む事が許されない兄への謝罪、そして……その運命を変えて一緒に生きていくと誓う願い。
ルグの妹であるから、ディース家の子供として、そして……知らないといけない。自分の運命が何故こんなにも破滅的で呪いを持って産まれたのだろうかという理由を――――。
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