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2章
10話「人間と吸血鬼の確執」
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ヘルグの元に館傍の村へ出入りしている人間達の身元情報はシレッダより届けられていた。少なくともルグの領地に住んでいる人間達ではないのは確かな情報ではあった。
結果的に暴動を起こす可能性が高いとヘルグは考えていて、シレッダもヘルグの考えには同意の意思を見せている。だが、どうしてその様な人間達がこの館傍の村に出入りをし始めたのだろうか? それはヘルグもシレッダにも理解が出来ない状態であった。
ルグには知らせるのはもう少し確信の取れる証拠と情報を掴んでからの方がいい、そうシレッダと判断したヘルグが独自に館傍の村へ足を向ける事にした。村に到着すると広場には多くの村人が集まり、誰かの話を聞いているのが気配で分かった。
「つまり、吸血鬼達は俺達人間には一切手出しは出来ない呪いが掛かっている。今こそ吸血鬼を根絶やしにして人間社会の復興を促すべき時なんだ!」
「だが、この領地を治めていらっしゃるルグ様は一切人間である我々に危害を加えたり、酷い税金を治めさせたりはしていないぞ?」
「そりゃそうだろうよ。今や今やと肥えるのを待ち侘びているんだろうからな!」
「待ち侘びている? どういう事だ?」
「吸血鬼の食事は人間の生きた血だ。その血を得る為にも生かす必要性がある。過去に吸血鬼と共に生きてきて滅んだ人間の街や国、村が何百とあるのは皆の知る事実だろう」
1人の男が大勢の村人に吸血鬼に対しての話をしているのを聞いている村人達。だが、男はそんな村人達に対してどこから得てきたのかは不明ではあるが、過去の吸血鬼と暮らしを共にしてきた人間達の死んだ原因などを軽やかに話をしていた。
ヘルグは見た目が人間に近い事もあって、男の注意を引く事はなかったが村人達の一部は男の話をあまりにも許しがたい気分なのだろう。怒りに近い表情で聞いているのをヘルグは確かに確認はしていた。
そして男はある話をし始める、それはルグには知らせていない吸血鬼が抱えなくてはならない呪いの話。そう、この呪いは決して簡単に人間が知る事は出来ない筈の呪いでもあった。
「遥か昔の事だ。ある吸血鬼の住む村に1人の女性が訪れた。その女性はその村に住む吸血鬼に会う為だけに遠路遥々旅をしてきた。理由は永遠の美しさを手に入れ、その吸血鬼と共に永遠を生きる為に永遠の命を手に入れたいが為の旅路であった。そして、村に辿り着いた女性は吸血鬼にこう頼む。「どうか、私の身体に流れる血に貴方様の血を流し込み、同じ種族として長い永遠を生きる伴侶として迎えて下さい」とな。だが、吸血鬼にはそれは出来ないという理由があった。その女性の存在よりも大事な存在である女性が既にその吸血鬼には存在していたからだ。だから吸血鬼はその旅をしてまで自分に会いに来た女性には永遠の美を与える事は出来るが、永遠の命を与える事は叶わない……、そう告げて諦める様に告げてきた。だが、女はその言葉に激昂する。自分は永遠の命を手に入れる為に遠路遥々、愛する家族を、故郷を捨てて吸血鬼の男に会いに来たというのに。女は吸血鬼の男に寄り添い愛されている人間の女へ憎しみと怒りをぶつける事にした。まずは女の身辺に女の嘘の情報を流して信頼を奪い、そして、吸血鬼の男に愛される為に他の女の命を奪って存在している、という根も葉もない嘘を村中に流した。結果……吸血鬼の女は村中からその存在を破滅に追い込む悪魔の女と呼ばれて村の安全を確立する為に、吸血鬼の男の留守を狙って女を処刑してしまった。女の死を知らない吸血鬼は村に戻り村の牧師からある呪いを掛けられる。そう、それこそが……人間の命を奪えば一族は永遠の呪いから苦しめられて永遠に自我を失うだろう。って呪いだ」
男の口から語られる呪いについて村人達は余計に怒りを覚えている様であった。ヘルグも当然の様に怒りを覚えている状態。
確かに男の語った呪いの話はある程度本当の事であるとヘルグは思う。だが、根本的な真実は男は嘘を話しているのをヘルグは怒りに満ちた瞳で睨み付けていた。
旅をしてきた女が村中を巻き込んで吸血鬼の男の女を殺す様に仕向けたのは事実だ。だが、女は殺された後に吸血鬼の手により蘇生を受けて2人静かに村を出て永遠の時間を共に生きているという事実がある。
殺された女はその体内の血を吸血鬼の男によって人間の血ではなく、吸血鬼の血が変えてもらい今の吸血鬼の女達の始祖として存在していたと言われている。そして、女を同じ吸血鬼へと生まれ変わらせた男の吸血鬼は今現在も一族の長としてこのルデス大陸の地を旅をしていると言われている存在だ。
「失礼。貴方はそのお話をどこでお知りになられたのでしょうか? 凄く興味をそそられまして」
「うん? あぁ、これはニレイス国の神官様からお伺いしたお話だ。その神官様のお話だと吸血鬼はその膨大な魔力を持ってこのルデス大陸を支配せんと虎視眈々とルデス大陸の
大地を得ようとしているとも言っておいでだった」
男は自信満々に話をして、聞いていた村人達に武器を持って領主を殺しに行くんだ! と叫び始める。だが、誰一人その男の言葉に従おうとする者達はいない。
それどころか、話を聞いていた数名の若い男達がロープを持ってきて話をしていた男に巻き付けて身体を束縛してしまった。ヘルグの事を知っている村の女達や子供達がヘルグにハッキリと断言するのを拘束された男は顔面蒼白な状態で聞いてしまった。
「ヘルグ様。この男は私達の自慢で誇りである領主ルグ様の一族を傷付けました。これに私達は決して心広く持っていたとしても許しがたい行為であり、言葉でもあります。だから、私達はこの男をどうしようとルグ様には決してご迷惑はお掛けしない事をお誓いします。だから、この場はどうかお見逃し下さい」
「いいのですか? これについては我々吸血鬼一族に対する誹謗であり、貴女方の名誉や人権を傷付けた訳ではないのですよ? ルグ様だってこの男が言った事で傷付く事はあっても村の皆が汚れ役をするのを喜ぶとは思えませんが……」
「例え、喜ばれなくても我々はこの男を許す事は出来ません。この男を始めとする最近この村に出入りする人間達は皆が皆、ルグ様の事を殺せ、追放しろと毎日の様に村の全員に話します。我々はそんな人間達をルグ様の手を煩わせる事をしたいとは思いません。仮にルグ様がダメだと言っても我々はきっとルグ様の事を信じてこの人間達を無事でいさせようとは思ったりはしないでしょう」
村の男達は話をしていた男をキツク縛り上げて村の家畜小屋の倉庫へと連れて行くのをヘルグは見送った。女達は子供達にルグは決して悪い事はしていない、そう言い聞かせて家路へ着いていた。
ヘルグはこの館傍の村の人間達は呪いの真実を知った時は誰一人ルグを責めたりする事はないだろう。そう信じる事に値する存在だと再認識した。
シレッダの使い魔がヘルグを呼びに来て、シレッダから主であるルグがヘルグを呼んでいる事を伝える為に使い魔を寄越したのを知って村から館へと戻った。館に入るとルグが自室で待っている事を他の執事から聞かされてヘルグはルグの元に足を向けた。
「失礼致します」
「お帰り。すまないね出掛けているとは聞いていたんだが少しどうしても気になっている案件について進捗を聞きたくて」
「いえ、それでなんの案件でございますでしょうか?」
「……お父様が進めておいでだった他国への一族の子供達を留学させる案件についてだ」
「あぁ、その事でしたら朗報がございます」
「朗報?何か進捗あったのかい?」
「それが、ノベルズ女王陛下のご助力もございまして。色々な同盟国に一族の子供達と若い学生達を留学させる為の協定を結ばれたとご報告がございました。それが届いたのが今日の朝でして」
「それじゃ他国の受け入れ態勢は出来上がりつつあるって事か。……ノベルズ陛下には頭が上がらないね」
「それだけルグ様の事をご信頼されているご証拠でございますよ」
「僕、と言うよりお父様のお考えになったこの案件がとても理に叶っているからだとは思うんだけれどね」
「ルグ様、今はまだお苦しいとは思いますが……今の当主はルグ様でございます。ご先代ではないのですよ」
「……でも、僕には何も希望はないよ……」
「果たしてそれはそうでございましょうか」
「どういう意味?」
「館傍の村の人間達はどんな事があってもルグ様の味方である、それだけは確実な事実だと言う事でございます」
ヘルグがそう告げて一礼して部屋を出て行くとルグは腕を組んでヘルグの言葉の意味を考えた。ヘルグがあそこまで人間を持ち上げる様な事を言うのは珍しいし、人間嫌いだと知っているのに味方になる、と告げたのは何か意味があるのだろうと考えたのである。
だが、ルグは人間がどんなに自分の味方だとしても過去の母親を奪われた事、そして、一族狩りをされた際の一族が死んでいった事実を考えると簡単に人間を信用する事は出来なかった。それに、ルグ自身も何故一族が人間に対して反撃などを一切しなかったのか? それについての情報を集める事もしているが真実はまだ闇の中でルグ自身が困惑するのは仕方ない事でもあった。
「一体何があって一族は人間に反撃もしないで狩られるだけになってしまったのか……。僕はそれを知らないと本当の意味で死ぬ未練を残してしまう……。誰かに聞いたとしても、それが本当の意味での真実になり得るかは……僕自身の心が決めるし判断するべき事なんだろうな」
1人、執務椅子に座って色々と考え込むのはルグの悪い癖でもあるのだがそれを咎める筈のヘルグは既にこの部屋にはいない。1人黙々と考え込むルグの眉間には皺が寄り端正な顔にはあまりいいとは言えない表情が浮かんで皺が刻み込まれていた。
そのルグの元にヘルグが情報を持って戻ってくるまでの間、決してルグの表情は晴れる事はないと言えている状態であった。だが、それはヘルグが持ってきた情報でルグが余計に険しい顔をするのは致し方なかったと言えるのかも知れなかった――――。
結果的に暴動を起こす可能性が高いとヘルグは考えていて、シレッダもヘルグの考えには同意の意思を見せている。だが、どうしてその様な人間達がこの館傍の村に出入りをし始めたのだろうか? それはヘルグもシレッダにも理解が出来ない状態であった。
ルグには知らせるのはもう少し確信の取れる証拠と情報を掴んでからの方がいい、そうシレッダと判断したヘルグが独自に館傍の村へ足を向ける事にした。村に到着すると広場には多くの村人が集まり、誰かの話を聞いているのが気配で分かった。
「つまり、吸血鬼達は俺達人間には一切手出しは出来ない呪いが掛かっている。今こそ吸血鬼を根絶やしにして人間社会の復興を促すべき時なんだ!」
「だが、この領地を治めていらっしゃるルグ様は一切人間である我々に危害を加えたり、酷い税金を治めさせたりはしていないぞ?」
「そりゃそうだろうよ。今や今やと肥えるのを待ち侘びているんだろうからな!」
「待ち侘びている? どういう事だ?」
「吸血鬼の食事は人間の生きた血だ。その血を得る為にも生かす必要性がある。過去に吸血鬼と共に生きてきて滅んだ人間の街や国、村が何百とあるのは皆の知る事実だろう」
1人の男が大勢の村人に吸血鬼に対しての話をしているのを聞いている村人達。だが、男はそんな村人達に対してどこから得てきたのかは不明ではあるが、過去の吸血鬼と暮らしを共にしてきた人間達の死んだ原因などを軽やかに話をしていた。
ヘルグは見た目が人間に近い事もあって、男の注意を引く事はなかったが村人達の一部は男の話をあまりにも許しがたい気分なのだろう。怒りに近い表情で聞いているのをヘルグは確かに確認はしていた。
そして男はある話をし始める、それはルグには知らせていない吸血鬼が抱えなくてはならない呪いの話。そう、この呪いは決して簡単に人間が知る事は出来ない筈の呪いでもあった。
「遥か昔の事だ。ある吸血鬼の住む村に1人の女性が訪れた。その女性はその村に住む吸血鬼に会う為だけに遠路遥々旅をしてきた。理由は永遠の美しさを手に入れ、その吸血鬼と共に永遠を生きる為に永遠の命を手に入れたいが為の旅路であった。そして、村に辿り着いた女性は吸血鬼にこう頼む。「どうか、私の身体に流れる血に貴方様の血を流し込み、同じ種族として長い永遠を生きる伴侶として迎えて下さい」とな。だが、吸血鬼にはそれは出来ないという理由があった。その女性の存在よりも大事な存在である女性が既にその吸血鬼には存在していたからだ。だから吸血鬼はその旅をしてまで自分に会いに来た女性には永遠の美を与える事は出来るが、永遠の命を与える事は叶わない……、そう告げて諦める様に告げてきた。だが、女はその言葉に激昂する。自分は永遠の命を手に入れる為に遠路遥々、愛する家族を、故郷を捨てて吸血鬼の男に会いに来たというのに。女は吸血鬼の男に寄り添い愛されている人間の女へ憎しみと怒りをぶつける事にした。まずは女の身辺に女の嘘の情報を流して信頼を奪い、そして、吸血鬼の男に愛される為に他の女の命を奪って存在している、という根も葉もない嘘を村中に流した。結果……吸血鬼の女は村中からその存在を破滅に追い込む悪魔の女と呼ばれて村の安全を確立する為に、吸血鬼の男の留守を狙って女を処刑してしまった。女の死を知らない吸血鬼は村に戻り村の牧師からある呪いを掛けられる。そう、それこそが……人間の命を奪えば一族は永遠の呪いから苦しめられて永遠に自我を失うだろう。って呪いだ」
男の口から語られる呪いについて村人達は余計に怒りを覚えている様であった。ヘルグも当然の様に怒りを覚えている状態。
確かに男の語った呪いの話はある程度本当の事であるとヘルグは思う。だが、根本的な真実は男は嘘を話しているのをヘルグは怒りに満ちた瞳で睨み付けていた。
旅をしてきた女が村中を巻き込んで吸血鬼の男の女を殺す様に仕向けたのは事実だ。だが、女は殺された後に吸血鬼の手により蘇生を受けて2人静かに村を出て永遠の時間を共に生きているという事実がある。
殺された女はその体内の血を吸血鬼の男によって人間の血ではなく、吸血鬼の血が変えてもらい今の吸血鬼の女達の始祖として存在していたと言われている。そして、女を同じ吸血鬼へと生まれ変わらせた男の吸血鬼は今現在も一族の長としてこのルデス大陸の地を旅をしていると言われている存在だ。
「失礼。貴方はそのお話をどこでお知りになられたのでしょうか? 凄く興味をそそられまして」
「うん? あぁ、これはニレイス国の神官様からお伺いしたお話だ。その神官様のお話だと吸血鬼はその膨大な魔力を持ってこのルデス大陸を支配せんと虎視眈々とルデス大陸の
大地を得ようとしているとも言っておいでだった」
男は自信満々に話をして、聞いていた村人達に武器を持って領主を殺しに行くんだ! と叫び始める。だが、誰一人その男の言葉に従おうとする者達はいない。
それどころか、話を聞いていた数名の若い男達がロープを持ってきて話をしていた男に巻き付けて身体を束縛してしまった。ヘルグの事を知っている村の女達や子供達がヘルグにハッキリと断言するのを拘束された男は顔面蒼白な状態で聞いてしまった。
「ヘルグ様。この男は私達の自慢で誇りである領主ルグ様の一族を傷付けました。これに私達は決して心広く持っていたとしても許しがたい行為であり、言葉でもあります。だから、私達はこの男をどうしようとルグ様には決してご迷惑はお掛けしない事をお誓いします。だから、この場はどうかお見逃し下さい」
「いいのですか? これについては我々吸血鬼一族に対する誹謗であり、貴女方の名誉や人権を傷付けた訳ではないのですよ? ルグ様だってこの男が言った事で傷付く事はあっても村の皆が汚れ役をするのを喜ぶとは思えませんが……」
「例え、喜ばれなくても我々はこの男を許す事は出来ません。この男を始めとする最近この村に出入りする人間達は皆が皆、ルグ様の事を殺せ、追放しろと毎日の様に村の全員に話します。我々はそんな人間達をルグ様の手を煩わせる事をしたいとは思いません。仮にルグ様がダメだと言っても我々はきっとルグ様の事を信じてこの人間達を無事でいさせようとは思ったりはしないでしょう」
村の男達は話をしていた男をキツク縛り上げて村の家畜小屋の倉庫へと連れて行くのをヘルグは見送った。女達は子供達にルグは決して悪い事はしていない、そう言い聞かせて家路へ着いていた。
ヘルグはこの館傍の村の人間達は呪いの真実を知った時は誰一人ルグを責めたりする事はないだろう。そう信じる事に値する存在だと再認識した。
シレッダの使い魔がヘルグを呼びに来て、シレッダから主であるルグがヘルグを呼んでいる事を伝える為に使い魔を寄越したのを知って村から館へと戻った。館に入るとルグが自室で待っている事を他の執事から聞かされてヘルグはルグの元に足を向けた。
「失礼致します」
「お帰り。すまないね出掛けているとは聞いていたんだが少しどうしても気になっている案件について進捗を聞きたくて」
「いえ、それでなんの案件でございますでしょうか?」
「……お父様が進めておいでだった他国への一族の子供達を留学させる案件についてだ」
「あぁ、その事でしたら朗報がございます」
「朗報?何か進捗あったのかい?」
「それが、ノベルズ女王陛下のご助力もございまして。色々な同盟国に一族の子供達と若い学生達を留学させる為の協定を結ばれたとご報告がございました。それが届いたのが今日の朝でして」
「それじゃ他国の受け入れ態勢は出来上がりつつあるって事か。……ノベルズ陛下には頭が上がらないね」
「それだけルグ様の事をご信頼されているご証拠でございますよ」
「僕、と言うよりお父様のお考えになったこの案件がとても理に叶っているからだとは思うんだけれどね」
「ルグ様、今はまだお苦しいとは思いますが……今の当主はルグ様でございます。ご先代ではないのですよ」
「……でも、僕には何も希望はないよ……」
「果たしてそれはそうでございましょうか」
「どういう意味?」
「館傍の村の人間達はどんな事があってもルグ様の味方である、それだけは確実な事実だと言う事でございます」
ヘルグがそう告げて一礼して部屋を出て行くとルグは腕を組んでヘルグの言葉の意味を考えた。ヘルグがあそこまで人間を持ち上げる様な事を言うのは珍しいし、人間嫌いだと知っているのに味方になる、と告げたのは何か意味があるのだろうと考えたのである。
だが、ルグは人間がどんなに自分の味方だとしても過去の母親を奪われた事、そして、一族狩りをされた際の一族が死んでいった事実を考えると簡単に人間を信用する事は出来なかった。それに、ルグ自身も何故一族が人間に対して反撃などを一切しなかったのか? それについての情報を集める事もしているが真実はまだ闇の中でルグ自身が困惑するのは仕方ない事でもあった。
「一体何があって一族は人間に反撃もしないで狩られるだけになってしまったのか……。僕はそれを知らないと本当の意味で死ぬ未練を残してしまう……。誰かに聞いたとしても、それが本当の意味での真実になり得るかは……僕自身の心が決めるし判断するべき事なんだろうな」
1人、執務椅子に座って色々と考え込むのはルグの悪い癖でもあるのだがそれを咎める筈のヘルグは既にこの部屋にはいない。1人黙々と考え込むルグの眉間には皺が寄り端正な顔にはあまりいいとは言えない表情が浮かんで皺が刻み込まれていた。
そのルグの元にヘルグが情報を持って戻ってくるまでの間、決してルグの表情は晴れる事はないと言えている状態であった。だが、それはヘルグが持ってきた情報でルグが余計に険しい顔をするのは致し方なかったと言えるのかも知れなかった――――。
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