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1章
7話「領主報告へ」
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ルグには1年の中でどうしても首都に赴く必要のある時期が2回程ある。アルード地方を治める者として報告をしに行く時期が必ず訪れるのである。
そして、ここ数週間で首都へと赴く為の準備をしていたルグはヘルグと共に馬車に乗り込み館から1週間の時間を掛けて首都であるアルードへと到着していた。一応、この首都にはルグは領主となってからは何回も訪れているが、基本的に人込みを嫌い主たる用事を済ませると宿泊先の宿に引き籠り首都で手に入れた新しい本を読み漁る日々を過ごす。
だが、今回はそうも出来ないだろうと言う事にルグの内心では舌打ちが止まらない。確かにこの首都は異種交流を盛んに行っている国ともあって他民族や多種族が多く住んでいたり訪れたりする。
ルグの領地に首都が新しく村や街を作るのであればその管理はルグに一任される為、それの引き継ぎに各部署への連絡とかに赴く必要が必ずあるので、それがルグのストレスになっているのは明白ではあった。人間を嫌う吸血鬼の領主に従う者達の心を受け入れる予定はルグにはない。
「本日は到着したてですのでお呼び出しはございません。明日以降陛下への報告の時間もございますのでご準備だけはされておいで下さいませルグ様」
「本当、毎年この時期だけは嫌な気分になってしまう。僕を解任して新しい人間を受け入れている者を領主にしないのはどうしてなんだろうね?」
「それは陛下のお心にお伺いするしか分かり兼ねますが、きっと陛下にも何かお考えがあられるのではありませんか? 仮にも一国の主、迂闊に見誤った人選をする事はないかと思いますので」
「僕がどこが適任なんだい? つくづくノベルグ陛下のお考えはご理解出来ない」
「まぁまぁ、この報告が終われば少しは領地で落ち着く事も出来ます。ご踏ん張り下さい」
ヘルグがルグの為に用意した夕食を並べながら丁寧に話を言い聞かせて行く。ルグだって分かってはいるのだ、自分は領主としては欠陥的な人間嫌いという部分を踏まえているからこそ、領主には合わない立場である事は。
だが、それでも現国王のノベルグはルグを解任する事もしないままで領主として手元に置いている。それが何か意味のある事なのだろうかとルグは少しだけノベルグの考えに心を寄せてみるが一切分からないままだ。
そうしている間に夕食も終わり入浴も済ませて就寝したルグは懐かしい夢を見ていた。幼い妹、アベリアを抱いた父が自分に何かを告げている夢……記憶には残されてない深層心理が生み出した夢を見ていた。
「……」
目がぱちりと開く、まだ外は薄暗い。朝方にもなっていない時間に意識が覚醒したルグは暫く眠りに戻ろうと果敢に挑んでみるが無理だった。
身体を起こしてため息を吐き出してからサイドテーブルに置いてあるランプに火を灯して読み掛けのニフツと呼ばれているルデス大陸に流通している小説を手に取り読み始めた。気付けば終わりが近かったのかあっという間に読み終えて手持ち無沙汰になってしまったルグは窓の外を眺めていたが、次第に太陽が首都を照らし始めてきたのに気付く。
「おはようございますルグ様。おや、少しお疲れが取れてないようですが?」
「朝が来る前に起きてしまってね。環境が変わったせいだと思う。まぁ、少ししたらいつも通りになるだろうから、いつものブルゾワースルを濃い目に淹れてくれるかな?」
「承知しました。本日はノベルグ陛下との謁見がございます。それが終われば領地開拓部署にて領地の開拓範囲についての話し合いがございます」
「分かった。流石にノベルグ陛下に愚痴を言う事は出来ないからテキパキと終わらせて部署に向かおう」
ルグは朝食をのんびりと食してブルゾワースルの濃い目をしっかり堪能してから王城へ出向く準備を整える。領主と国王の謁見はどうしても終わらせなくてはならない行事。
それは本来ならば文面での報告でも構わない筈だが、ノベルグは毎回ルグを首都に呼び寄せて面と向かって報告をさせる。どうしてそのような事をさせるのかはルグには未だに理由は分からないが、渋々従ってはいるのである。
王城までの道のりを歩きながらルグは不意に思う。このアルード首都は主に錬金術が盛んでそれが国費となって国を潤わせている。
だが、その錬金術を会得するには膨大な知識と経験を積まないと一人前の新人にもなれないのが現実で、人間が錬金術師となれるのは才能ある一部の者達のみ。人間以外は主たるはエルフや吸血鬼が占めていると言っていいだろう。
「前回よりも家屋が増えているな」
「それについて調べてみたら、今年は新人錬金術師のデビューが多かったようです。実際ベテランの錬金術師の引退も多かったので、調合部屋を作っていたベテラン達の部屋を借り受けるより新築の方が都合がよろしいのでしょう」
「そうか。あれかな? 精霊の棲み分けが違うとかの概念なのかも知れないな」
「それもございますが、大まかにハッキリ申し上げれば……家屋が増える事はそれだけ国の面積を広げる理由になるのではないかと思われます」
「……そっちのが有効だね」
ヘルグと歩きながらそんな会話をしていれば城門前に到着する。門兵に名を告げてノベルグ国王との謁見予定がある事を伝えて待合室まで案内してもらった。
いつこの王城に訪れても毎回思うが、飾り気のない王城だとルグは思ってしまう。王城ともなれば金銀をふんだんに使い飾りまくり、王の威厳を知らしめるのが一般的だとルグは思っているのだが、このアルード城は一切金銀の飾りを使わないのである。
飾りと言えば第一王女のジュピーン王女の幼少時に誕生日プレゼントとして貰った絵画などしか飾りとして置かれていない。この王城はいかにも城! とは思えぬ殺風景さを持っていたのがルグには理解しがたい。
謁見の前に待合室で待っている間にヘルグが残りの予定を確認していた時だった。謁見が行われると知らせに来た兵士と共に謁見の間に移動する事となった。
「やけに早いような……」
「陛下が領主様とお早くお会いしたいとの事で執務を切り上げられたと聞いております」
「……そんなお急ぎにならなくてもいいのだけれども」
「何か陛下はお考えのご様子でありましたよ。さぁ、どうぞ。アルード地方領主、ルグ・ディース様のご到着でございます!」
兵士の声で謁見の間の扉が静かに開いていく。そして、開いたのを確認してからルグとヘルグは静かに中へと足を踏み入れた。
謁見の間には数名の大臣、数十名の兵士と近衛兵、そして中央の玉座にこの首都を治めるアルード国国王ノベルグの姿があった。ノベルグはシルバーの色をした髪を肩にまで伸ばし、吸血鬼の証でもある深紅の瞳を持っている。
ルグはある程度の距離にまで進み片膝を付いて頭を下げる、ヘルグも少し離れた位置で同じような姿勢をしていた。ノベルグはルグの姿を見て嬉しそうに微笑みを浮かべて楽にするように促す。
「ルグ、よく今回も私の求めに応じて来てくれた。感謝する」
「いえ。陛下のお求めとあれば従うのが家臣としての役目かと思いまして。それでは今年の上半期の報告に……」
「それは大丈夫だ」
「……はい?」
「事前に調査を行わせた者達から知らせは届いている。ルグの配慮で色々とこの首都に害が及ばなくしてもらっている事もな」
「それでは私はなんの為に首都へ求められたのでしょうか……」
「お前にどうしても耳に入れておくべき事が2つあってな。その為に呼んだのだ」
「入れておくべき事、でございますか」
「あぁ、心して聞くといい。1つ目は……新しく建国さあれた「フレッロス国」と同盟を組む事が決まった。表向きは異種交流友国として交流と技術の発展を共有する事になる。そのフレッロス国に使者として出向いてもらいたい」
ノベルグは簡単そうに告げているがルグにはそのフレッロス国についての情報はあまり伝わってないのが現状である。元々新国でもあるが為にあまり情報が出回っていないのもあるのだが、異種交流を盛んに行うという事はこのアルード国とは同じ方針の国だと考えていいのだろう。
ルグが黙っているのが困惑からだと察したノベルグはすぐに大臣にフレッロス国についての情報が詳細に書かれた書類をルグに差し出させる。ルグはその書類を受け取り一通り目を通して理解する。
フレッロス国はアルード国のベテラン錬金術師達が老後の為に蓄えた技術を元に建国された、いわば錬金術師の国、という事だと。それならば同盟になるのも頷ける。
「使者と言う事は何か問題でも?」
「うむ。このアルード国にはベテランが少なくなってしまい技術が横ばいになっている。そこでアルード国とフレッロス国の錬金術師による研究施設を共同で設立したいと申し込みたいと思っていてな。お前ならその利益が分かるだろう?」
「今このアルード国は新人達の土台が出来てはいるものの、進展を迎えるには幾ばくか刺激が足りない上に技術の欠陥もあるのであれば、共同研究という名の下で技術の伝承を行うのが目的だと」
「そうだ。だから、その申し込みには頭の回転が早い者が適任だと思ってお前を推薦したのだ。受けてくれるか?」
「心得ました。しかと使者としてフレッロス国に申し込み致しましょう。それで残り1つは?」
「お前……アベリア、という名に心当たりは?」
「その名は……私の腹違いの妹の名でございますが……?」
「このアルード国の城下に新しく店を開いた錬金術師の見習いにそのアベリアと名乗る娘がいる事が分かった。もし、お前の腹違いの妹であるか確認する気があるのであればこれから渡す書類に書かれた店に行くがいい。普段からお前が妹を探しているのはそこの臣下から定期的に聞いていたのでな。私なりの感謝だと思って受け取ってもらいたい」
ルグの前に大臣が書類を新たに差し出す。そこにはルグの妹であるアベリアと同じ名が書かれた錬金術師見習いの娘についての情報が書かれていた。
ルグはこれが本当ならば妹であるアベリアとの再会を果たす事が出来ると思い深く頭を下げて礼儀を尽くした。そして、謁見が終わりヘルグとその日の予定を終えたルグは一度宿泊先に戻り書類に書かれた娘の情報を確認していた。
歳、外見、家族構成……どれもルグの中に落ちてくる。その情報を確かめに行くのを翌日に定めてルグは夜空を窓から眺めていた――――。
そして、ここ数週間で首都へと赴く為の準備をしていたルグはヘルグと共に馬車に乗り込み館から1週間の時間を掛けて首都であるアルードへと到着していた。一応、この首都にはルグは領主となってからは何回も訪れているが、基本的に人込みを嫌い主たる用事を済ませると宿泊先の宿に引き籠り首都で手に入れた新しい本を読み漁る日々を過ごす。
だが、今回はそうも出来ないだろうと言う事にルグの内心では舌打ちが止まらない。確かにこの首都は異種交流を盛んに行っている国ともあって他民族や多種族が多く住んでいたり訪れたりする。
ルグの領地に首都が新しく村や街を作るのであればその管理はルグに一任される為、それの引き継ぎに各部署への連絡とかに赴く必要が必ずあるので、それがルグのストレスになっているのは明白ではあった。人間を嫌う吸血鬼の領主に従う者達の心を受け入れる予定はルグにはない。
「本日は到着したてですのでお呼び出しはございません。明日以降陛下への報告の時間もございますのでご準備だけはされておいで下さいませルグ様」
「本当、毎年この時期だけは嫌な気分になってしまう。僕を解任して新しい人間を受け入れている者を領主にしないのはどうしてなんだろうね?」
「それは陛下のお心にお伺いするしか分かり兼ねますが、きっと陛下にも何かお考えがあられるのではありませんか? 仮にも一国の主、迂闊に見誤った人選をする事はないかと思いますので」
「僕がどこが適任なんだい? つくづくノベルグ陛下のお考えはご理解出来ない」
「まぁまぁ、この報告が終われば少しは領地で落ち着く事も出来ます。ご踏ん張り下さい」
ヘルグがルグの為に用意した夕食を並べながら丁寧に話を言い聞かせて行く。ルグだって分かってはいるのだ、自分は領主としては欠陥的な人間嫌いという部分を踏まえているからこそ、領主には合わない立場である事は。
だが、それでも現国王のノベルグはルグを解任する事もしないままで領主として手元に置いている。それが何か意味のある事なのだろうかとルグは少しだけノベルグの考えに心を寄せてみるが一切分からないままだ。
そうしている間に夕食も終わり入浴も済ませて就寝したルグは懐かしい夢を見ていた。幼い妹、アベリアを抱いた父が自分に何かを告げている夢……記憶には残されてない深層心理が生み出した夢を見ていた。
「……」
目がぱちりと開く、まだ外は薄暗い。朝方にもなっていない時間に意識が覚醒したルグは暫く眠りに戻ろうと果敢に挑んでみるが無理だった。
身体を起こしてため息を吐き出してからサイドテーブルに置いてあるランプに火を灯して読み掛けのニフツと呼ばれているルデス大陸に流通している小説を手に取り読み始めた。気付けば終わりが近かったのかあっという間に読み終えて手持ち無沙汰になってしまったルグは窓の外を眺めていたが、次第に太陽が首都を照らし始めてきたのに気付く。
「おはようございますルグ様。おや、少しお疲れが取れてないようですが?」
「朝が来る前に起きてしまってね。環境が変わったせいだと思う。まぁ、少ししたらいつも通りになるだろうから、いつものブルゾワースルを濃い目に淹れてくれるかな?」
「承知しました。本日はノベルグ陛下との謁見がございます。それが終われば領地開拓部署にて領地の開拓範囲についての話し合いがございます」
「分かった。流石にノベルグ陛下に愚痴を言う事は出来ないからテキパキと終わらせて部署に向かおう」
ルグは朝食をのんびりと食してブルゾワースルの濃い目をしっかり堪能してから王城へ出向く準備を整える。領主と国王の謁見はどうしても終わらせなくてはならない行事。
それは本来ならば文面での報告でも構わない筈だが、ノベルグは毎回ルグを首都に呼び寄せて面と向かって報告をさせる。どうしてそのような事をさせるのかはルグには未だに理由は分からないが、渋々従ってはいるのである。
王城までの道のりを歩きながらルグは不意に思う。このアルード首都は主に錬金術が盛んでそれが国費となって国を潤わせている。
だが、その錬金術を会得するには膨大な知識と経験を積まないと一人前の新人にもなれないのが現実で、人間が錬金術師となれるのは才能ある一部の者達のみ。人間以外は主たるはエルフや吸血鬼が占めていると言っていいだろう。
「前回よりも家屋が増えているな」
「それについて調べてみたら、今年は新人錬金術師のデビューが多かったようです。実際ベテランの錬金術師の引退も多かったので、調合部屋を作っていたベテラン達の部屋を借り受けるより新築の方が都合がよろしいのでしょう」
「そうか。あれかな? 精霊の棲み分けが違うとかの概念なのかも知れないな」
「それもございますが、大まかにハッキリ申し上げれば……家屋が増える事はそれだけ国の面積を広げる理由になるのではないかと思われます」
「……そっちのが有効だね」
ヘルグと歩きながらそんな会話をしていれば城門前に到着する。門兵に名を告げてノベルグ国王との謁見予定がある事を伝えて待合室まで案内してもらった。
いつこの王城に訪れても毎回思うが、飾り気のない王城だとルグは思ってしまう。王城ともなれば金銀をふんだんに使い飾りまくり、王の威厳を知らしめるのが一般的だとルグは思っているのだが、このアルード城は一切金銀の飾りを使わないのである。
飾りと言えば第一王女のジュピーン王女の幼少時に誕生日プレゼントとして貰った絵画などしか飾りとして置かれていない。この王城はいかにも城! とは思えぬ殺風景さを持っていたのがルグには理解しがたい。
謁見の前に待合室で待っている間にヘルグが残りの予定を確認していた時だった。謁見が行われると知らせに来た兵士と共に謁見の間に移動する事となった。
「やけに早いような……」
「陛下が領主様とお早くお会いしたいとの事で執務を切り上げられたと聞いております」
「……そんなお急ぎにならなくてもいいのだけれども」
「何か陛下はお考えのご様子でありましたよ。さぁ、どうぞ。アルード地方領主、ルグ・ディース様のご到着でございます!」
兵士の声で謁見の間の扉が静かに開いていく。そして、開いたのを確認してからルグとヘルグは静かに中へと足を踏み入れた。
謁見の間には数名の大臣、数十名の兵士と近衛兵、そして中央の玉座にこの首都を治めるアルード国国王ノベルグの姿があった。ノベルグはシルバーの色をした髪を肩にまで伸ばし、吸血鬼の証でもある深紅の瞳を持っている。
ルグはある程度の距離にまで進み片膝を付いて頭を下げる、ヘルグも少し離れた位置で同じような姿勢をしていた。ノベルグはルグの姿を見て嬉しそうに微笑みを浮かべて楽にするように促す。
「ルグ、よく今回も私の求めに応じて来てくれた。感謝する」
「いえ。陛下のお求めとあれば従うのが家臣としての役目かと思いまして。それでは今年の上半期の報告に……」
「それは大丈夫だ」
「……はい?」
「事前に調査を行わせた者達から知らせは届いている。ルグの配慮で色々とこの首都に害が及ばなくしてもらっている事もな」
「それでは私はなんの為に首都へ求められたのでしょうか……」
「お前にどうしても耳に入れておくべき事が2つあってな。その為に呼んだのだ」
「入れておくべき事、でございますか」
「あぁ、心して聞くといい。1つ目は……新しく建国さあれた「フレッロス国」と同盟を組む事が決まった。表向きは異種交流友国として交流と技術の発展を共有する事になる。そのフレッロス国に使者として出向いてもらいたい」
ノベルグは簡単そうに告げているがルグにはそのフレッロス国についての情報はあまり伝わってないのが現状である。元々新国でもあるが為にあまり情報が出回っていないのもあるのだが、異種交流を盛んに行うという事はこのアルード国とは同じ方針の国だと考えていいのだろう。
ルグが黙っているのが困惑からだと察したノベルグはすぐに大臣にフレッロス国についての情報が詳細に書かれた書類をルグに差し出させる。ルグはその書類を受け取り一通り目を通して理解する。
フレッロス国はアルード国のベテラン錬金術師達が老後の為に蓄えた技術を元に建国された、いわば錬金術師の国、という事だと。それならば同盟になるのも頷ける。
「使者と言う事は何か問題でも?」
「うむ。このアルード国にはベテランが少なくなってしまい技術が横ばいになっている。そこでアルード国とフレッロス国の錬金術師による研究施設を共同で設立したいと申し込みたいと思っていてな。お前ならその利益が分かるだろう?」
「今このアルード国は新人達の土台が出来てはいるものの、進展を迎えるには幾ばくか刺激が足りない上に技術の欠陥もあるのであれば、共同研究という名の下で技術の伝承を行うのが目的だと」
「そうだ。だから、その申し込みには頭の回転が早い者が適任だと思ってお前を推薦したのだ。受けてくれるか?」
「心得ました。しかと使者としてフレッロス国に申し込み致しましょう。それで残り1つは?」
「お前……アベリア、という名に心当たりは?」
「その名は……私の腹違いの妹の名でございますが……?」
「このアルード国の城下に新しく店を開いた錬金術師の見習いにそのアベリアと名乗る娘がいる事が分かった。もし、お前の腹違いの妹であるか確認する気があるのであればこれから渡す書類に書かれた店に行くがいい。普段からお前が妹を探しているのはそこの臣下から定期的に聞いていたのでな。私なりの感謝だと思って受け取ってもらいたい」
ルグの前に大臣が書類を新たに差し出す。そこにはルグの妹であるアベリアと同じ名が書かれた錬金術師見習いの娘についての情報が書かれていた。
ルグはこれが本当ならば妹であるアベリアとの再会を果たす事が出来ると思い深く頭を下げて礼儀を尽くした。そして、謁見が終わりヘルグとその日の予定を終えたルグは一度宿泊先に戻り書類に書かれた娘の情報を確認していた。
歳、外見、家族構成……どれもルグの中に落ちてくる。その情報を確かめに行くのを翌日に定めてルグは夜空を窓から眺めていた――――。
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