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第四十一話〜二度目の決別〜

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「雅成、この人は私を大切にしてくれる人なの。だから、もう私の事は大丈夫だよ」

 これは、私なりの嫌味のつもり。
 そして、二度目となる決別の言葉。
 もう三度目は来ない。

 目の前で大きく喉仏が上下した元カレに伝わったかどうかは、私の知る由もないけど。

「……やっぱり絃は変わったよ。……まぁいいや、元気でな」

「うん、雅成も」

 どこかで偶然会っても、もう話す事はない。
 私達は、二度と笑顔で会える関係ではなくなったのだ。

 振り返らずにじゃあな、と片手を上げ去って行く元カレ。
 どこか哀愁漂う背中に見えたのは、きっと私の気のせいだろう。

 これで本当に〝さようなら〟

「絃ちゃん大丈夫だった!? 何もされてない?」

 私と同じ高さまで視線を落とし、心配そうに眉根を寄せる彼に「大丈夫だよ」と告げると、彼はホッと安堵の息を漏らした。

「ほっしー、ここ出て話そう?」

 手を繋いだまま書店を後にして、通路に設置された休憩スペースのベンチに腰掛ける。
 空いているベンチがあってちょうど良かった。

「助けてくれてありがとう。もう分かってると思うけど、さっきの人は元カレなの」

「今更どのツラ下げて絃ちゃんに話しかけられるんだよ。ホント何なの!? アイツ!」

 人目も気にせず声を荒げる彼。

「よく分からないけど、もう大丈夫だと思う」

「大丈夫じゃないよ! これじゃ片時も目が離せない!」

 大真面目な顔して、まるで幼子を持つお父さんみたいな事言うから可笑しくて。
 クスクス笑っていたら、真剣な瞳をした彼に「いや、真面目な話」と言われ、それだけ心配をかけてしまった事をようやく悟った。

「心配かけてごめんなさい。でも、本当にもう大丈夫だよ。助けてくれたのすごく嬉しかった」

「いや……もっと早く気づくべきだった。それに、俺こそ勝手に『彼女』なんて言ってごめん」

「ううん、それも嬉しかった。ありがとう」

「俺こそ……絃ちゃんが言ってくれた事すげぇ嬉しくて……」

 繋いだ指先、ギュッと力が強くなる。

 まだ不安そうに揺れる彼の赤茶色の瞳を正面から見つめて――

「ほっしー、帰ろう? ほっしーの家に帰りたい。今すぐ帰って伝えたい事があるの」
 
 ようやく出た私の答え。
 本当は、とっくの前に分かっていたけど、傷つくのが怖くて見て見ぬふりをしていただけなの。
 もし次に傷つく事があるとしても、相手はほっしーがいい。
 あなたじゃないと、嫌なの。

 今度こそちゃんと伝えるから。

 その時、あなたはどんな表情かおを見せてくれるのか、今から楽しみで仕方ない。
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