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第三十七話〜もう少し待っていて〜※
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「行く!!」
考える前に答えていた。
ほっしーに片思いしていたあの頃、二人でデートなんて、私には叶わぬ夢だと思って諦めていたから。
だから〝YES〟以外の答えなんて、元々頭の中に存在していない。
二人並んで歩く姿を想像しては、頬が緩みまくる。
じんわり訪れる幸せ気分に浸っている私をよそに、隣の人は何故かクツクツと喉を鳴らして笑い始めた。
そんな彼の様子にムッと顔を顰めた私を見て、今度は目を細めてこねくり回すように頭を撫でてくるのは何故?
「何でそんなに笑うの!?」
「いやぁ……可愛いなぁ、と思って」
「もう! 揶揄うのはいい加減にして!」
「揶揄ってなんかいないよ。でも一つ言っていい? さっきから綺麗なおっぱいが丸見えだよ」
「え!?」
本当だ。
幸せな妄想に浸っている間に、掛け布団で隠した筈の丸みがポロリしているではないか。
おそらく、勢いよく返事した弾みで布団が肌けてしまったのだろう。
どうりでさっきからスースーすると思ったけど。
「そんなにマジマジと見ないで」
「何で? 見せてよ。色も形もすげー綺麗」
冷静になった事後、しかもこれは、明るいところで見せるようなシロモノでは決してない。
慌てて布団で隠そうとすれば、彼の手によってそれは阻まれて。
胸の丸みを下から掬うように持ち上げ、そこに湿った舌を這わせ先端を吸い上げる悪い男がここにいる。
「あっ、んっ……またすぐそうやって……」
「ん、だからさっき言ったよね? 絃ちゃんが誘うから悪いって」
「誘って、ないもん……」
「誘ってるよ。ふわふわでスベスベの、絃ちゃんの美味しいおっぱいが」
「ほっしーなんか変。高校の時はそんな感じじゃなかったのに」
「知らなかった? 好きな子にはこうなるよ。だから、絃ちゃんにだけ」
「そ、んなの、知らない。あ、だから強く吸っちゃ……ダメぇ、ゃぁん……」
「今は俺のおっぱいでしょ? だから好きにさせてよ」
「ちがっ……ほっしー、の、じゃ……な……んっ」
また新たな快感に飲み込まれる寸前、なけなしの理性でもって彼の肩を押して言う。
「もう今日はダメ! そんな事ばかりすると、ほっしーは私の事が好きなんじゃなくて、エッチが目当てなのかと思っちゃうでしょ!」
「……分かった。やめる」
俯いた彼は、叱られた子犬のように悲哀に満ちた瞳をしている。
きゅるるんと瞳を潤ませて。
そんなにしょんぼりされると、『いいよ』ってつい言いそうになるからやめてもらいたい。
「じゃあせめて、一緒にお風呂入るのは?」
叱られた子犬は、今度は甘い雰囲気を纏い、色気を孕んだ上目遣いでおねだりしてきた。
落ち込んだのかと思いきや、立ち直りの早さに苦笑する。
宥めるように「ダーメ!」と言いながら、ベッド下で丸まるワンピースを拾い上げ首を通す。
「さっきいいって言ったのに?」
「言ってない! いつ言った!?」
「絃ちゃんが寝てる時」
「意識のない時はノーカウントです」
「何だよそれ! ……じゃあ、名前で呼ぶのは? さっきから、また〝ほっしー〟呼びになってるじゃん」
子供の喧嘩みたいにムキになる彼が、だんだんとツノ口になってくるのが面白い。
再会してからはいつも余裕の表情を見せていたのに、今日は珍しく表情がクルクル変わって忙しい。
子犬になって、今度は膨れっ面の子供になった。
まるで、高校の頃の無邪気なほっしーに戻ったみたい。
「ああいう時のもノーカウントなんです!」
「なんか急に絃ちゃんが冷たい。全部ダメって言う……」
えー今度はなんだその、イジイジモードは。
でもそんな風に拗ねる姿にまで、頬を緩ませてしまうのは何故だろう。
「ほっしーごめんね。今度一緒に映画行った時に何か美味しいものご馳走するから許して? ね?」
「いいよ、そんなの」
「じゃあ、どうしたら機嫌直してくれる?」
「絃ちゃんからキスして? すげーエロいやつ」
「何だそれ……却下!」
「もういい、俺からするから。あーんして、絃ちゃん?」
結局、また彼の思うまま。
舌先を軽く吸い、上顎を舌でなぞり、気の済むまで咥内を弄ぶ悪い男にどうやっても逆らえない。
そんな強引な彼も嫌じゃなくて、むしろもっと求めて欲しいと、もっと与えて欲しいと、どんどん欲張りな女になっていくのが怖い。
「んっ……くるし……」
「その顔そそられる」
「バカ……」
こんな事って果たして許されるの?
私の事を好きだと言うイケメンに、セフレでも良いから二人で会いたいと言われ、恋人同士みたいに濃密で甘い時間を過ごす、私にとってただひたすら都合の良い話なんて。
約束のデート。
彼との初めてのデートには、自分の気持ちにしっかりと向き合いたい。
あなたが与えてくれる熱量に、私は応える事が出来るのかどうか。
不確かなこの気持ち、もう少しで掴めそうな気がするの。
そして、ちゃんとした答えをあなたの前で出したい。
だから、それまでもう少しだけ待っていてね。
***
彼との約束は次の公休である日曜日。
その日までに、しっかりとやれるだけの事はやっておくつもりだ。
事前準備、これ大事。
水曜日の休みには、朝イチでショッピングモールへと出向き、初デート用の服を新調した。
午後は、前もって予約しておいた美容室へ行き、胸まで伸びた髪の毛を二十センチ以上バッサリカットして、小学生以来のボブになった。
と言っても、あの頃とは全然違う。
大人ぽさの中に可愛らしい雰囲気を感じるワンカールボブだ。
トップはふんわりしていて、目の錯覚かもしれないけど若干小顔にも見える気がする。
この状態を自分でどれだけ再現出来るか、ここに全てかかっている。
仕上げ方を念入りに教わり、おすすめのヘアオイルまで購入したから、後はアイロンでどうにかなるだろう。
それにしても、いつもお任せしている美容師さんに、『いいんですか? 本当に良いんですか?』と何度も念を押された時にはつい笑ってしまったけど。
今までの想いを断ち切る意味も込めてのカットと、少し落ち着いたカラーに染め直し、気分新たに彼との初デートに臨む。
楽しみだけど、答えを出す日だと考えれば少し怖くもある。
でもやっぱり待ち遠しくて指折り数えて毎日を過ごし、前日は彼とメッセージのやり取りをした後、遠足前夜の子供のように、ワクワクとドキドキでなかなか寝付く事が出来なかった。
考える前に答えていた。
ほっしーに片思いしていたあの頃、二人でデートなんて、私には叶わぬ夢だと思って諦めていたから。
だから〝YES〟以外の答えなんて、元々頭の中に存在していない。
二人並んで歩く姿を想像しては、頬が緩みまくる。
じんわり訪れる幸せ気分に浸っている私をよそに、隣の人は何故かクツクツと喉を鳴らして笑い始めた。
そんな彼の様子にムッと顔を顰めた私を見て、今度は目を細めてこねくり回すように頭を撫でてくるのは何故?
「何でそんなに笑うの!?」
「いやぁ……可愛いなぁ、と思って」
「もう! 揶揄うのはいい加減にして!」
「揶揄ってなんかいないよ。でも一つ言っていい? さっきから綺麗なおっぱいが丸見えだよ」
「え!?」
本当だ。
幸せな妄想に浸っている間に、掛け布団で隠した筈の丸みがポロリしているではないか。
おそらく、勢いよく返事した弾みで布団が肌けてしまったのだろう。
どうりでさっきからスースーすると思ったけど。
「そんなにマジマジと見ないで」
「何で? 見せてよ。色も形もすげー綺麗」
冷静になった事後、しかもこれは、明るいところで見せるようなシロモノでは決してない。
慌てて布団で隠そうとすれば、彼の手によってそれは阻まれて。
胸の丸みを下から掬うように持ち上げ、そこに湿った舌を這わせ先端を吸い上げる悪い男がここにいる。
「あっ、んっ……またすぐそうやって……」
「ん、だからさっき言ったよね? 絃ちゃんが誘うから悪いって」
「誘って、ないもん……」
「誘ってるよ。ふわふわでスベスベの、絃ちゃんの美味しいおっぱいが」
「ほっしーなんか変。高校の時はそんな感じじゃなかったのに」
「知らなかった? 好きな子にはこうなるよ。だから、絃ちゃんにだけ」
「そ、んなの、知らない。あ、だから強く吸っちゃ……ダメぇ、ゃぁん……」
「今は俺のおっぱいでしょ? だから好きにさせてよ」
「ちがっ……ほっしー、の、じゃ……な……んっ」
また新たな快感に飲み込まれる寸前、なけなしの理性でもって彼の肩を押して言う。
「もう今日はダメ! そんな事ばかりすると、ほっしーは私の事が好きなんじゃなくて、エッチが目当てなのかと思っちゃうでしょ!」
「……分かった。やめる」
俯いた彼は、叱られた子犬のように悲哀に満ちた瞳をしている。
きゅるるんと瞳を潤ませて。
そんなにしょんぼりされると、『いいよ』ってつい言いそうになるからやめてもらいたい。
「じゃあせめて、一緒にお風呂入るのは?」
叱られた子犬は、今度は甘い雰囲気を纏い、色気を孕んだ上目遣いでおねだりしてきた。
落ち込んだのかと思いきや、立ち直りの早さに苦笑する。
宥めるように「ダーメ!」と言いながら、ベッド下で丸まるワンピースを拾い上げ首を通す。
「さっきいいって言ったのに?」
「言ってない! いつ言った!?」
「絃ちゃんが寝てる時」
「意識のない時はノーカウントです」
「何だよそれ! ……じゃあ、名前で呼ぶのは? さっきから、また〝ほっしー〟呼びになってるじゃん」
子供の喧嘩みたいにムキになる彼が、だんだんとツノ口になってくるのが面白い。
再会してからはいつも余裕の表情を見せていたのに、今日は珍しく表情がクルクル変わって忙しい。
子犬になって、今度は膨れっ面の子供になった。
まるで、高校の頃の無邪気なほっしーに戻ったみたい。
「ああいう時のもノーカウントなんです!」
「なんか急に絃ちゃんが冷たい。全部ダメって言う……」
えー今度はなんだその、イジイジモードは。
でもそんな風に拗ねる姿にまで、頬を緩ませてしまうのは何故だろう。
「ほっしーごめんね。今度一緒に映画行った時に何か美味しいものご馳走するから許して? ね?」
「いいよ、そんなの」
「じゃあ、どうしたら機嫌直してくれる?」
「絃ちゃんからキスして? すげーエロいやつ」
「何だそれ……却下!」
「もういい、俺からするから。あーんして、絃ちゃん?」
結局、また彼の思うまま。
舌先を軽く吸い、上顎を舌でなぞり、気の済むまで咥内を弄ぶ悪い男にどうやっても逆らえない。
そんな強引な彼も嫌じゃなくて、むしろもっと求めて欲しいと、もっと与えて欲しいと、どんどん欲張りな女になっていくのが怖い。
「んっ……くるし……」
「その顔そそられる」
「バカ……」
こんな事って果たして許されるの?
私の事を好きだと言うイケメンに、セフレでも良いから二人で会いたいと言われ、恋人同士みたいに濃密で甘い時間を過ごす、私にとってただひたすら都合の良い話なんて。
約束のデート。
彼との初めてのデートには、自分の気持ちにしっかりと向き合いたい。
あなたが与えてくれる熱量に、私は応える事が出来るのかどうか。
不確かなこの気持ち、もう少しで掴めそうな気がするの。
そして、ちゃんとした答えをあなたの前で出したい。
だから、それまでもう少しだけ待っていてね。
***
彼との約束は次の公休である日曜日。
その日までに、しっかりとやれるだけの事はやっておくつもりだ。
事前準備、これ大事。
水曜日の休みには、朝イチでショッピングモールへと出向き、初デート用の服を新調した。
午後は、前もって予約しておいた美容室へ行き、胸まで伸びた髪の毛を二十センチ以上バッサリカットして、小学生以来のボブになった。
と言っても、あの頃とは全然違う。
大人ぽさの中に可愛らしい雰囲気を感じるワンカールボブだ。
トップはふんわりしていて、目の錯覚かもしれないけど若干小顔にも見える気がする。
この状態を自分でどれだけ再現出来るか、ここに全てかかっている。
仕上げ方を念入りに教わり、おすすめのヘアオイルまで購入したから、後はアイロンでどうにかなるだろう。
それにしても、いつもお任せしている美容師さんに、『いいんですか? 本当に良いんですか?』と何度も念を押された時にはつい笑ってしまったけど。
今までの想いを断ち切る意味も込めてのカットと、少し落ち着いたカラーに染め直し、気分新たに彼との初デートに臨む。
楽しみだけど、答えを出す日だと考えれば少し怖くもある。
でもやっぱり待ち遠しくて指折り数えて毎日を過ごし、前日は彼とメッセージのやり取りをした後、遠足前夜の子供のように、ワクワクとドキドキでなかなか寝付く事が出来なかった。
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