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第三十五話〜手加減しない①(side 千輝)〜

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「星野ってちょいぽちゃが好きなん?」

「何でだよ。別にそんなんじゃないけど」

「そうかぁ? お前が遊ぶ子ってみんなそんな感じじゃん。ま、確かに抱き心地は良さそうだしみんな可愛らしい子だけど、お前って結局は誰にも本気にならないのな」

 大学の友人に言われて初めて気づいた。
 いや嘘だ。
 本当は何となく気がついていた。
 自分に寄って来る子達の中から、彼女に似た雰囲気の子を選んでいる事に。

 でもどれだけ同じような雰囲気を醸し出していたって、結局はどの子も違う。
 誰と一緒にいてもしっくりこない。
 そんなの当たり前だ。

 だって、みんな絃ちゃんじゃない。
 あの温もりと同じものを求めても、そもそも他に見つかる訳ないんだ。

 そんな簡単な事に、彼女と会えなくなってから気づくなんて。
 


 
『ううん、付き合わない』

 あの言葉は、じわりじわりと効く毒のように、俺の心を少しずつ蝕み続けた。

 彼女が何故あんな事を言ったのか気づけなかった愚かさに、あんな事を言わせてしまった俺の情けなさに。

 その苦しさから俺を救えるのは、他の誰でもない、絃ちゃんしかいないんだ。

 だから、きょうちゃんから結婚の報せを受けた時に決めた。
 絃ちゃんが幸せにしていれば気持ちにケリをつける、でもそうでなければ――

 今度こそ俺のものになって。
 そうしたら、絶対に手放さないから。
 
 自分の気持ちを自覚してからずっと、手に入れる日をいつかいつかと待ち望んでいたんだ。

 再会して、その気持ちはより一層強くなった。
 俺は君の、真面目で頑張り屋で、優しくてちょっと捻くれてるけど素直なところが愛おしくて仕方ない。
 くるくると忙しなく変わる表情を、隣でずっと見ていたい。


『ほっしーとは付き合えない』

 いいよ。
 そんな事言ってられるのも今のうちだけだから。
 身体を重ねてる時の君が、俺に向ける欲情的な表情かお。
 あれを見たら簡単に分かる。
 俺の事が欲しくて欲しくて堪らないって。

 前の恋愛で傷ついた君を癒して愛して、これから先俺がいないと生きていけないくらい、身も心もズブズブに堕として離さないって決めたから。

 絃ちゃんがいつまでも意地を張り続けるつもりなら、もう手加減しないからね。

 俺の腕の中で乱れて、我を忘れるほど善がって、たくさん甘い声で啼くのを聞かせてよ。

 そして、俺の事が好きって、いつか君の口からきちんと聞かせて欲しい。
 
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