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第三十二話〜思いがけない告白①〜
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何故、彼はいつも私の邪魔ばかりするのだろうか。
「そんなすぐ帰るなよ。ゆっくりしていけば?」
「ううん、今日は帰る。寄るところあるの」
本当はどこにも寄る予定なんてない。
家に帰って、ベッドで大好きな異世界ものの新刊でも読み、ひたすらダラダラしようと思ってる。
愛のない白い結婚をしたヒロインとヒーローの気持ちが、もう少しで通じ合う一番良いところなのだ。
「だから今日はそんなお洒落してるんだ。可愛いね」
お出かけ用の花柄ティアードワンピと、お気に入りのカゴバックは、彼の為のお洒落ではない。
いつも休みの日はノーメイクがデフォルトの私だけど、今日は動画を見ながら三十分も時間をかけて丁寧にメイクし、アイロンで髪まで巻いた。
これは、〝この後用事があって急いでる風〟を装う為の偽装工作だ。
おかげで彼は微塵も疑っていない様子。
「うん、だから離して。っっ……!」
「……嫌だって言ったら?」
急に背後から抱きしめられ、驚いた弾みでカゴバッグを落としそうになり、慌てて持ち手を強く握りしめる。
「きゅ、急にびっくりするでしょ!」
「ごめん、でもせっかく会えたからまだ帰したくない」
またいつもの甘えるような切ない声で私を誘惑しようとするんだから。
そのうち、お腹に回された手まで怪しい動きを見せ始めた。
「待って、こういう事はもうしちゃダメ」
「何で? かなり今更感あるけど?」
クスクス笑う彼は、弄る手を止める気配は全くない。
そんな彼に向き合うよう半ば強引に身を翻すと、パチクリと見開いた赤茶色の瞳は、私を見下ろしながら困惑に揺らいでいた。
「何でって、こういう事はそもそも好きな人とするもんでしょ? お前が言うなって感じかもしれないけど、私達は違うもの。だから――」
「俺は絃ちゃんの事好きだよ」
間髪入れずに彼は口を挟む。
〝好き〟の二文字に身体が反応しなかったと言えば嘘になる。
それでも。
「ほっしーが言いたいのは、友達の好きで〝like〟でしょ? 私が言ってる〝好き〟は――」
「ねぇ、俺の事馬鹿にしてる? ガキじゃないんだから、今更〝like〟がどうとか言われなくても、んな事分かってるよ」
「違うの、違う。ほっしーは高校の時の事があるから、多分私に対して負い目みたいなものが今もどこかにあって……それで、今回もエッチしたから責任を……」
「……さっきから、何で絃ちゃんが俺の気持ちを勝手に決めつけるワケ?」
響くのは、湧き上がる苛立ちを喉元で押し殺すような低い声。
まるで取り調べでも受けてるような鋭い視線は、とにかく居心地が悪くて身体が勝手に強張る。
「だって! ほっしーは、今も昔も私が誘ったからそれに乗っただけで――」
「ヤリたい盛りならともかく、今の俺は何とも思ってない子を抱いたりしないよ」
「でも、今たまたま彼女いないから、そう言う事したかったとか――」
「絃ちゃんで性欲解消してるって? 随分と酷い事言うんだね」
「だって……だって、私はほっしーが好きになるような女じゃないし、私達は元々友達で――」
「友達って、あんなにヤリまくっておいて? それに、まだそうやって勝手に俺の気持ちを決めつけるんだ」
言葉を詰まらせた私をソファへ追いやるように彼はジリジリと距離を詰め、更に追い打ちをかけるように口を開いた。
「そんなすぐ帰るなよ。ゆっくりしていけば?」
「ううん、今日は帰る。寄るところあるの」
本当はどこにも寄る予定なんてない。
家に帰って、ベッドで大好きな異世界ものの新刊でも読み、ひたすらダラダラしようと思ってる。
愛のない白い結婚をしたヒロインとヒーローの気持ちが、もう少しで通じ合う一番良いところなのだ。
「だから今日はそんなお洒落してるんだ。可愛いね」
お出かけ用の花柄ティアードワンピと、お気に入りのカゴバックは、彼の為のお洒落ではない。
いつも休みの日はノーメイクがデフォルトの私だけど、今日は動画を見ながら三十分も時間をかけて丁寧にメイクし、アイロンで髪まで巻いた。
これは、〝この後用事があって急いでる風〟を装う為の偽装工作だ。
おかげで彼は微塵も疑っていない様子。
「うん、だから離して。っっ……!」
「……嫌だって言ったら?」
急に背後から抱きしめられ、驚いた弾みでカゴバッグを落としそうになり、慌てて持ち手を強く握りしめる。
「きゅ、急にびっくりするでしょ!」
「ごめん、でもせっかく会えたからまだ帰したくない」
またいつもの甘えるような切ない声で私を誘惑しようとするんだから。
そのうち、お腹に回された手まで怪しい動きを見せ始めた。
「待って、こういう事はもうしちゃダメ」
「何で? かなり今更感あるけど?」
クスクス笑う彼は、弄る手を止める気配は全くない。
そんな彼に向き合うよう半ば強引に身を翻すと、パチクリと見開いた赤茶色の瞳は、私を見下ろしながら困惑に揺らいでいた。
「何でって、こういう事はそもそも好きな人とするもんでしょ? お前が言うなって感じかもしれないけど、私達は違うもの。だから――」
「俺は絃ちゃんの事好きだよ」
間髪入れずに彼は口を挟む。
〝好き〟の二文字に身体が反応しなかったと言えば嘘になる。
それでも。
「ほっしーが言いたいのは、友達の好きで〝like〟でしょ? 私が言ってる〝好き〟は――」
「ねぇ、俺の事馬鹿にしてる? ガキじゃないんだから、今更〝like〟がどうとか言われなくても、んな事分かってるよ」
「違うの、違う。ほっしーは高校の時の事があるから、多分私に対して負い目みたいなものが今もどこかにあって……それで、今回もエッチしたから責任を……」
「……さっきから、何で絃ちゃんが俺の気持ちを勝手に決めつけるワケ?」
響くのは、湧き上がる苛立ちを喉元で押し殺すような低い声。
まるで取り調べでも受けてるような鋭い視線は、とにかく居心地が悪くて身体が勝手に強張る。
「だって! ほっしーは、今も昔も私が誘ったからそれに乗っただけで――」
「ヤリたい盛りならともかく、今の俺は何とも思ってない子を抱いたりしないよ」
「でも、今たまたま彼女いないから、そう言う事したかったとか――」
「絃ちゃんで性欲解消してるって? 随分と酷い事言うんだね」
「だって……だって、私はほっしーが好きになるような女じゃないし、私達は元々友達で――」
「友達って、あんなにヤリまくっておいて? それに、まだそうやって勝手に俺の気持ちを決めつけるんだ」
言葉を詰まらせた私をソファへ追いやるように彼はジリジリと距離を詰め、更に追い打ちをかけるように口を開いた。
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