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第二十四話〜予想外のメッセージ②〜

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 やる気満々でスマホの画面に触れたはいいが、まぁここは一旦落ち着こうではないか。
 私はもうあの頃の私ではない。
 立派な大人の女性なのだ。
 
『昨日はありがとう。ちゃんと帰りました』

 まずはお礼を伝えるのが先です。
 あ、すぐ既読つく。

『良かった。起きたらどこにもいないから心配した』

 レスポンスも良い。
 心配したって、まぁそうだよね。 
 何て返せば良いかな。

『ほっしーよく寝てたから起こしたら悪いと思って』

 よしこれに、〝ごめんね〟の可愛いスタンプも添えて。

『起こしてくれて構わなかったのに』

『ごめんね。昨日は本当にありがとう。後でお礼するね』

 これで良いよね。
 ここで終わりにすれば変じゃないよね。
 後で、きょうちゃんにほっしーの住所を教えてもらって、何か美味しそうなお菓子でも送るとか。
 それで行こう。
 キスマークの事文句言ってやろうと思ったけど、これ以上やり取りを長引かせたくはないから。

 おしまい!

 スマホの画面を閉じて、これで終わり。
 もう会わない、もう引きずらない。
 
 首元が詰まったTシャツに着替えて、一階リビングへ向かう。
 両親は揃ってどこかに出掛けたのだろうか。  
 リビングにはテレビとスマホを二刀流で楽しむ、デートに浮かれた兄の姿しか見当たらない。

 仕方がないので、朝に誰かが淹れたであろう、急須の中に残る出涸らしの緑茶でも飲む事にするか。

 ほぇー。
 鼻に抜ける良いお茶の葉の香り、飲んだ翌日の口内に爽やかでいいわ。
 やっぱり日本人は緑茶だよね。
 
「お兄ちゃん、お母さん達は?」

「朝イチでスーパー行くってさっき出掛けた。何か目当ての物でもあるんじゃないの?」

「ふーん。じゃあ朝ご飯は何食べた?」

「昨日の残りの味噌汁と、後は適当に納豆とか味のりとか、その辺にあるやつ。それよりお前……いや、何でもない」

「何? 言いかけて止めるの気持ち悪いよ」

「……いやだから、マサと別れたばっかで色々あるだろうけど、ヤケ起こしたりするなよ!」

「え?」

「――ったく、俺が気づいたから良いけど、しばらくあのヨレヨレのTシャツ着るのはやめておけ!」

 それだけ言い残し、兄はスタスタと出掛けて行った。
 ちなみに、〝マサ〟とは元カレの事。
 マサ――雅成まさなりとは五年付き合ったから、当然お兄ちゃんも弟みたいに可愛がっていて、彼と別れた時は何気に私の次にお兄ちゃんが落ち込んでいたらしい。

 それにしてもヤケって……もしかして、キスマークこれ

 妹が久々に外泊したと思ったら、胸元に大量のキスマーク付けて帰ってきて……それは心配されても仕方ないか。
 でも別にほっしーは変な男じゃないし、むしろ公務員でちゃんとしてるし、何よりもう二人では会わないよ。
 元カレと別れた時に、ろくに食事も出来ないほど落ち込んだから、きっとそれで心配してるんだろうなぁ。
 お兄ちゃんシスコンぽいから。
 でも、大丈夫だよ。
 しばらく恋愛するつもりないもの。

 あんなに誰かを好きになって、もう浮気されたり別れたり、もうそんな辛い想いはしばらくごめんだよ。

 お茶漬けをサラサラと胃に流し込み、今度こそベッドでゴロゴロしようと自室に戻ると、本日二度目の脳内フリーズを起こす事になった。

『絃ちゃん、ウチに忘れ物してる。近いうち取りにおいでよ』
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