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第二十二話〜予想外のメッセージ①〜

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「お兄ちゃん早いのにありがとう」

 最寄り駅のロータリーで待つ見慣れた車に乗り込むと、引出物の紙袋を阿吽の呼吸で受け取った兄は、流れるように後部座席へと置いた。

「いいよ。俺もこの後約束あるからさ」

「彼女?」

「うーん。そんなところかな」

「へぇー」

 ちょっとニヤけた兄の様子に、今良い感じの人がいる事を察知する。
 三つ上の兄は決してイケメンではない……と思うが、そこは兄妹なので冷静なジャッジではないのかもしれない。
 私には服装含め、中肉中背のどこにでもいる普通の人にしか見えないけど、歴代の彼女はやたらと兄の事をカッコいい! 優しい! と頬を紅く染めながら惚気ていた。
 なんだかんだで彼女が途切れないと言う事は、私の知らない魅力がおそらく兄にはあるのだろう。

 私なんて全然モテないのに、兄は私と違い勉強も出来るし、神様はなんて不公平なんだろう。
 教育ママ的な母親もそんな兄を溺愛しているのだ。
 同じようなDNAの筈なのに、そんなのズルじゃん。
 

「シートベルトしたか?」

「うん」

 お兄ちゃんの顔見たらなんか安心した。
 寝顔までイケメンの人といると、全然気が抜けないんだもの。
 あれじゃ、彼女になる人は大変だよね。
 
 って、また自分に無関係なこと考えてる!

「絃、友達のところ泊まるって言ってたけど、男か?」

「え? 違うよ! 高校の同級生で女の子だよ! 久々に会ったから話盛り上がっちゃったの!」

 とっくに成人してるんだから、別に嘘つく必要なんてどこにもない。
 でも、ついこの間彼氏と別れたばかりなのに、今度は彼氏でもない男の子の家に泊まったなんて、何となく家族には知られたくなくて。
 咄嗟に嘘をついてしまった。

 けれど、ふーんと気のない返事をする兄を見て、『興味がないなら聞くな!』と突っ込みたくなったのはここだけの話。
 朝早くわざわざ迎えに来てくれたから、今回は特別に黙っておこう。

 車は見慣れた景色を通り過ぎ、あっという間に自宅近くの信号まで来た。
 あの角を曲がれば、築二十年の年季の入った我が家が見える。

「お兄ちゃんありがとう」

「おぉ。いつでも言えよ」

「あ、そだ。これ昨日二次会で当てたの。迎えに来てくれたお礼にお兄ちゃんにあげる」

「なんだこれ?」

「今日会う人と今度行ってきたらー?」

 玄関で靴を脱ぐ兄に、昨日二次会でゲットした封筒を押し付けるように手渡し、急いで階段を駆け上がる。

 名探偵ばりのトレンチコートと、窮屈なお呼ばれドレスを床に脱ぎ捨てたら、ベッドの上で丸まる部屋着に着替えて準備完了。
 今日は一日ゴロゴロしてやる!

「そうだ! 忘れない内に、きょうちゃんにお礼のメッセージだけ送っておこうかな」

 バッグの中からスマホを取り出し画面に触れると、きょうちゃんからのメッセージが通知されていた。

 やっぱり私達って何も言わなくてもタイミングばっちりなのね。

 さっそく画面ロックを解除し、軽快な指先で通知をタップする。

『昨日は来てくれて本当にありがとう。今度新居にも遊びに来てね』

『承認します!』
 国民的アニメの愛すべき敵キャラのボイス付きスタンプに、ニヤニヤと口元が緩みまくる。

 いえいえ、こちらこそ。

 ん? 何か下にもメッセージ続いているな。

『そう言えば、星野が杉山の連絡先教えて欲しいんだって。教えていいよね?』

 画面をスクロールして現れたのは、あまりにも予想外のメッセージ。
 まん丸に見開いた瞳に口はあんぐり、脳内は一気にフリーズした。
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