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第十六話〜初めての夜⑤〜※
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「髪伸びたね」
キスの合間、胸まで伸びた半乾きの髪の毛を、ほっしーはクルクルと指先に巻き付け遊び始めた。
ここ数年毛先を揃えるだけにしていた髪は、彼の長い人差し指を根本から指先まで楽に覆うほどの長さになっている。
「あーそうだね。ずっと伸ばしてたけど、そろそろ切ろうかな」
誰にも言わなかったけど、実はずっと髪を伸ばしてた。
いつプロポーズされてもいいように。
生涯一度の結婚式で、心置きなく好きな髪型に挑戦出来るように。
そんな日はもう来ないのに、見切り発車もいいところだった。
「それに化粧落とすと、やっぱり絃ちゃんだなって感じする」
「どういう事よ? ブサイクとでも言いたいんでしょ!」
「んな訳ないでしょ。ただ、高校の時とあまり変わってないって言いたかっただけだよ」
眉毛を吊り上げた私とは反対に、目の前のイケメンは眉尻を下げて柔らかな眼差しを見せる。
「……流石にそれはない。お手入れ必須だもん」
「そう? 肌とかツルツルで充分綺麗だと思うけどな。後、俺の中で絃ちゃんは黒髪のイメージだったから、今の髪色はすごく新鮮かも」
「ウチ母親が厳しくて、成人式までカラーも許してもらえなかったの」
「絃ちゃんの雰囲気に合っていてすごく可愛いよ」
社交辞令とは言えイケメンから可愛いだの綺麗だのと言われれば、モテない女はどこまでも有頂天になっちゃう。
元カレは私の変化に興味を示さなくなってたから、ほっしーにとっては何気ない言葉だとしても、私にとってこれはすごく意味のある言葉だよ。
「ふふ、ありがとう。ほっしーの落ち着いた髪色もすごく新鮮で似合ってると思うよ」
あ……今初めて気がついたけど、彼って、白目が青白くてとても綺麗。
こんなに間近で彼の事を見る機会なんて今までなかったから、瞳を縁取る長い睫毛にまでも釘付けになってしまう。
赤みがかった深い焦げ茶色の瞳に映し出されているのは、今この瞬間私だけ。
――どうしてこういう時って、言葉を交わさなくともまた自然と始まるんだろう。
ちゅ、ちゅっ。
角度を変えて何度も繰り返されるキス。
ただ唇を合わせるだけの軽いものが、そのうちお互いを食むようになり、最後は深く舌を絡め合う。
言わばただの粘膜の触れ合いなのに、どこまでも甘く心地良い熱っぽさを感じる。
一度この熱に触れたら、二度と離れられなくなるような気がして後が怖い。
静かなこの部屋に響くのは、熱い吐息とリップ音だけ。
彼に借りたTシャツの隙間から温かい手が侵入し、背中を撫でるように弄る。
キスってこんなにいやらしいんだっけ。
久々だからなのか背中を触られただけで、下半身がじわっと熱を持つ。
「んっ……」
キスの合間に漏れる甘い吐息。
その反応を見た彼が、ショーツの上から柔肉を揉むように撫でると、私はより一層甘い声を出しながら波打つように腰を揺らす。
「絃ちゃんやらしい」
「ほっしーが触るからでしょ?」
「じゃあ、触らなくていい?」
「意地悪しないで」
「意地悪したいって言ったら?」
「意地悪は嫌。優しくて欲しいの」
「……もちろん優しく慰めてあげるよ。絃ちゃんバンザイしよーか?」
酔っているのか、やけに上機嫌の彼にバンザーイと言われ言う通りにすると、首からTシャツが一気に引き抜かれ、上半身は何も身につけてない状態になった。
キスの合間、胸まで伸びた半乾きの髪の毛を、ほっしーはクルクルと指先に巻き付け遊び始めた。
ここ数年毛先を揃えるだけにしていた髪は、彼の長い人差し指を根本から指先まで楽に覆うほどの長さになっている。
「あーそうだね。ずっと伸ばしてたけど、そろそろ切ろうかな」
誰にも言わなかったけど、実はずっと髪を伸ばしてた。
いつプロポーズされてもいいように。
生涯一度の結婚式で、心置きなく好きな髪型に挑戦出来るように。
そんな日はもう来ないのに、見切り発車もいいところだった。
「それに化粧落とすと、やっぱり絃ちゃんだなって感じする」
「どういう事よ? ブサイクとでも言いたいんでしょ!」
「んな訳ないでしょ。ただ、高校の時とあまり変わってないって言いたかっただけだよ」
眉毛を吊り上げた私とは反対に、目の前のイケメンは眉尻を下げて柔らかな眼差しを見せる。
「……流石にそれはない。お手入れ必須だもん」
「そう? 肌とかツルツルで充分綺麗だと思うけどな。後、俺の中で絃ちゃんは黒髪のイメージだったから、今の髪色はすごく新鮮かも」
「ウチ母親が厳しくて、成人式までカラーも許してもらえなかったの」
「絃ちゃんの雰囲気に合っていてすごく可愛いよ」
社交辞令とは言えイケメンから可愛いだの綺麗だのと言われれば、モテない女はどこまでも有頂天になっちゃう。
元カレは私の変化に興味を示さなくなってたから、ほっしーにとっては何気ない言葉だとしても、私にとってこれはすごく意味のある言葉だよ。
「ふふ、ありがとう。ほっしーの落ち着いた髪色もすごく新鮮で似合ってると思うよ」
あ……今初めて気がついたけど、彼って、白目が青白くてとても綺麗。
こんなに間近で彼の事を見る機会なんて今までなかったから、瞳を縁取る長い睫毛にまでも釘付けになってしまう。
赤みがかった深い焦げ茶色の瞳に映し出されているのは、今この瞬間私だけ。
――どうしてこういう時って、言葉を交わさなくともまた自然と始まるんだろう。
ちゅ、ちゅっ。
角度を変えて何度も繰り返されるキス。
ただ唇を合わせるだけの軽いものが、そのうちお互いを食むようになり、最後は深く舌を絡め合う。
言わばただの粘膜の触れ合いなのに、どこまでも甘く心地良い熱っぽさを感じる。
一度この熱に触れたら、二度と離れられなくなるような気がして後が怖い。
静かなこの部屋に響くのは、熱い吐息とリップ音だけ。
彼に借りたTシャツの隙間から温かい手が侵入し、背中を撫でるように弄る。
キスってこんなにいやらしいんだっけ。
久々だからなのか背中を触られただけで、下半身がじわっと熱を持つ。
「んっ……」
キスの合間に漏れる甘い吐息。
その反応を見た彼が、ショーツの上から柔肉を揉むように撫でると、私はより一層甘い声を出しながら波打つように腰を揺らす。
「絃ちゃんやらしい」
「ほっしーが触るからでしょ?」
「じゃあ、触らなくていい?」
「意地悪しないで」
「意地悪したいって言ったら?」
「意地悪は嫌。優しくて欲しいの」
「……もちろん優しく慰めてあげるよ。絃ちゃんバンザイしよーか?」
酔っているのか、やけに上機嫌の彼にバンザーイと言われ言う通りにすると、首からTシャツが一気に引き抜かれ、上半身は何も身につけてない状態になった。
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