上 下
5 / 44

第四話〜苦い青春②〜

しおりを挟む
 お互い三年生になると、ほっしーの髪が私達の好きなアニメの主人公と同じ髪色になった。

 梅雨の時期になると、髪が傷んでいるから湿気でぐしゃぐしゃになる、とよく嘆いていたよね。

 ちょうどその頃だったと思う。
 ほっしーから、『好きな子が出来た』と告げられたのは。

 怖いもの見たさのような好奇心で相手の事を尋ねると、お兄さんとプライベートで組んでいるバンドのメンバーだそうで。

 SNS用に撮った動画を見せてもらった時、その人を見た。

 めちゃくちゃ美人な訳でも、めちゃくちゃ可愛い訳でもなかったけど、いかにも男子が好きそうな、ふんわりした雰囲気の優しそうな可愛らしい女性ひと

 ううん、違う。
 何を上から目線で偉そうに。

 身長156cm、体重50kgを楽々オーバーの冴えない見た目の私より、よほど可愛いくて細くて魅力的な女の子だ。

 笑顔が可愛くて、優しくて、歳上だけど、歳上とは思えない抜けたところが好きなんだって。

 はいはい、私とは違って、最高に素敵な女性ですね。

 ……嫌だ。
 会った事もない人に本気で嫉妬して羨んでる。

 私って、見た目だけでなく中身も全然可愛くない。

 これだもん、誰にも好かれない訳だ。

 でも彼にはそんな嫌な感情を見せたくなくて、その人の事は『可愛いね』って褒めたし、恋の相談を受ければ、せめて友達として〝いいヤツ〟だと思って欲しくて、『頑張れ』と励まし『応援してる』と心にも無い事を言った。

 恋愛経験ゼロのくせに、生意気にアドバイスなんかもしちゃって。
 目の前の人間に失恋したばかりのヤツが、何を偉そうにアドバイス出来ると言うんだ。

 好きな人と上手くいって欲しくない、でも彼が傷つくところは見たくない。

 相反する気持ちに苦しくなり、彼と距離を置く事も考えた。

 でも、出来なかった。

 ひと目でいいから顔が見たい。
 ひと言でいいから声が聞きたい。
 好きな子の話でもいいから、彼と話がしたい。
 好きな子と仲良くなった、うまくいってる、そんな話でもいいよ、待ってる。
 恋の相談でも何でも良いから、連絡して欲しい。
 いつだって聞くから。
 呼ばれたら、いつだって会いに行くから。

 彼にとって、私が一番の女友達で理解者になれるなら、それで充分。

 きょうちゃんを含め、学校の友達には私の気持ちは話さなかった。

 きっと誰に何を言われても納得なんて出来ないし、何かアドバイスされたとしても、素直に聞き入れなかっただろうから。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

転生した悪役令嬢の断罪

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,685pt お気に入り:1,674

異世界で聖女活動しています。〜シスコン聖女の奮闘記〜

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:349pt お気に入り:32

公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:171

スパダリ様は、抱き潰されたい

BL / 完結 24h.ポイント:7pt お気に入り:122

スキルで快適!異世界ライフ(笑)

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:3,479

処理中です...