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第九話〜お酒の力①〜
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二次会はお洒落なカフェを貸切で行われ、ごく親しい仲間内だけのアットホームな雰囲気の中、惜しまれつつも二時間できっかりお開きとなった。
二次会中は楽しいゲームをしていても、みんなで和気あいあい写真を撮り合っても、初めましてのゲストと歓談をしても、私はやはりどこか上の空で。
お開きとなってホッとしたなんて、主役の二人には本当に申し訳なく思う。
でもこれでようやく帰れる。
久々に彼と顔を合わせたから、少し昔の感傷に浸っただけの事。
家に戻ればまたいつも通り、職場と家を往復するだけの日々に戻るだけ。
「絃ちゃん帰りは?」
「えへへぇ。お兄ちゃんに迎えに来てもらうつもりぃ……ヒヒッ」
「ったく。酔っ払いは飲み過ぎだっつうの」
酔っ払いだなんて失礼だな。
実を言うと初めてこんなに飲んだけど、視界良好で足元のふらつきナシ、意識だってハッキリしている私は、断じて酔ってなどいない。
本当は、酔っ払って馬鹿になったフリでもしないと、今この場にいるのが辛いだけ。
「酔ってないって! それよりすごくなぁい? コレ!!」
〝コレ〟と言ってほっしーに差し出したのは、二次会のビンゴゲームでゲットした、人気テーマパークのペアチケット。
これで今年の運は全て使い果たしたかもしれない。
いや?
彼氏に浮気されて散々だったから、これでチャラになったと捉えた方がいいのかも?
誰を誘おうかな?
誰か暇な人いないかな、私みたいに。
「うふふふっ……。私ってすごいラッキー」
「はいはい。絃ちゃんすごいね」
「でしょぉ? あ、そだ、お兄ちゃんに電話しなきゃ」
「家まで送ってくよ。絃ちゃんの家からだと、ここに迎えに来るにも時間かかるだろ?」
「いいよ~。どこかで時間潰して待ってるから~」
「そんな状態の絃ちゃん放って帰れないって」
「大丈夫だって! ほっしーは優しいなぁ。優しさが酔った身体に染み渡るよ。あ! 違う! さてはっ、お主このチケットを狙ってそんな事言っておるな!?」
きゃははと笑って見せれば、呆れた顔で溜息を吐く彼の姿が目に入る。
半日共に過ごした事で、表向き・・・は再会したばかりのぎこちない雰囲気は消え去った。
だからと言って、流石にこれはいささか調子に乗り過ぎたのかもしれない。
冷たい外気温に触れたせいか、頬の火照りは急速に熱を失っていく。
「なーんてね、嘘だよ、う・そ! コレ良かったらほっしーにあげる。彼女とでも行きなよ!」
チケットが入った封筒を、ほっしーの胸元に差し出す。
「俺はいいよ、そんな相手いないし。それより絃ちゃんが当てたんだから、絃ちゃんが彼氏と行けばいいんじゃない?」
「……彼氏なんていないよ。浮気されて捨てられちゃったんだ、私」
違う、本当は捨てられたんじゃない。
私が捨てた。
私のせいで浮気したとも取れる発言で開き直った元カレは、結局私に泣きついた。
『浮気相手とは別れるから許して』と泣いて縋る彼に、気持ち悪いと言って、あっさり切り捨てたのは私。
それなのにこんな言い方をしたのは、ほっしーに同情して欲しかったのか、それとも優しく慰めて欲しかったのか……。
あるいはその両方か。
「ごめん。余計な事言った」
申し訳なさそうにしょんぼり肩を落とす彼に、私こそ余計な事を言った。
「悪いと思ってるなら、ほっしーが慰めてくれる? 気晴らしにエッチしよ?」
お酒の力って本当怖い。
二次会中は楽しいゲームをしていても、みんなで和気あいあい写真を撮り合っても、初めましてのゲストと歓談をしても、私はやはりどこか上の空で。
お開きとなってホッとしたなんて、主役の二人には本当に申し訳なく思う。
でもこれでようやく帰れる。
久々に彼と顔を合わせたから、少し昔の感傷に浸っただけの事。
家に戻ればまたいつも通り、職場と家を往復するだけの日々に戻るだけ。
「絃ちゃん帰りは?」
「えへへぇ。お兄ちゃんに迎えに来てもらうつもりぃ……ヒヒッ」
「ったく。酔っ払いは飲み過ぎだっつうの」
酔っ払いだなんて失礼だな。
実を言うと初めてこんなに飲んだけど、視界良好で足元のふらつきナシ、意識だってハッキリしている私は、断じて酔ってなどいない。
本当は、酔っ払って馬鹿になったフリでもしないと、今この場にいるのが辛いだけ。
「酔ってないって! それよりすごくなぁい? コレ!!」
〝コレ〟と言ってほっしーに差し出したのは、二次会のビンゴゲームでゲットした、人気テーマパークのペアチケット。
これで今年の運は全て使い果たしたかもしれない。
いや?
彼氏に浮気されて散々だったから、これでチャラになったと捉えた方がいいのかも?
誰を誘おうかな?
誰か暇な人いないかな、私みたいに。
「うふふふっ……。私ってすごいラッキー」
「はいはい。絃ちゃんすごいね」
「でしょぉ? あ、そだ、お兄ちゃんに電話しなきゃ」
「家まで送ってくよ。絃ちゃんの家からだと、ここに迎えに来るにも時間かかるだろ?」
「いいよ~。どこかで時間潰して待ってるから~」
「そんな状態の絃ちゃん放って帰れないって」
「大丈夫だって! ほっしーは優しいなぁ。優しさが酔った身体に染み渡るよ。あ! 違う! さてはっ、お主このチケットを狙ってそんな事言っておるな!?」
きゃははと笑って見せれば、呆れた顔で溜息を吐く彼の姿が目に入る。
半日共に過ごした事で、表向き・・・は再会したばかりのぎこちない雰囲気は消え去った。
だからと言って、流石にこれはいささか調子に乗り過ぎたのかもしれない。
冷たい外気温に触れたせいか、頬の火照りは急速に熱を失っていく。
「なーんてね、嘘だよ、う・そ! コレ良かったらほっしーにあげる。彼女とでも行きなよ!」
チケットが入った封筒を、ほっしーの胸元に差し出す。
「俺はいいよ、そんな相手いないし。それより絃ちゃんが当てたんだから、絃ちゃんが彼氏と行けばいいんじゃない?」
「……彼氏なんていないよ。浮気されて捨てられちゃったんだ、私」
違う、本当は捨てられたんじゃない。
私が捨てた。
私のせいで浮気したとも取れる発言で開き直った元カレは、結局私に泣きついた。
『浮気相手とは別れるから許して』と泣いて縋る彼に、気持ち悪いと言って、あっさり切り捨てたのは私。
それなのにこんな言い方をしたのは、ほっしーに同情して欲しかったのか、それとも優しく慰めて欲しかったのか……。
あるいはその両方か。
「ごめん。余計な事言った」
申し訳なさそうにしょんぼり肩を落とす彼に、私こそ余計な事を言った。
「悪いと思ってるなら、ほっしーが慰めてくれる? 気晴らしにエッチしよ?」
お酒の力って本当怖い。
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