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第二話〜卒業以来の彼②〜

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「このシャンパン? スパークリングワイン? 美味しいねぇ~」

「絃ちゃんってけっこう飲むの?」

「へ? 普段ほとんど飲まないよ~」

「……じゃあ、そんな飛ばし過ぎない方がいいよ」

「だいじょぶだいじょぶ!」

 心配そうに眉根に皺を寄せる彼をよそに、一気にグラスを空にした。

 おかわりしようかなぁ。
 何とも言えない緊張感で、飲まないとやってらんないです。
 さっきからやけに鼓動が速いのは、アルコールのせいなのか、隣にいる彼のせいなのか。

「あ、新郎新婦入場してくるよ」

 同じ円卓の同級生の言葉に、会場入り口に注目が集まる。
 彼女らしい入場曲に場が和み、スポットライトを浴びる新郎新婦に惜しみない祝福の拍手を贈った。

「新婦きょうちゃん綺麗!」

「背が高くてスタイル良いから、個性的なドレスも似合うよね!」
 
 私も含めその場にいる女子達から、おぉ! と感嘆の声が漏れる。

「そう言えば、絃ちゃんは二次会行くの?」

 女子達が送る羨望の眼差しなど、左隣の男子は全く関心がないようだ。

「うん。ほっしーは?」

「俺も行くよ。そっか、絃ちゃんいるなら良かった」

 ドキッとした。
 何が良かったんだろう。
 その言葉に深い意味などないのに。

 でも聞かずにはいられない私は、お酒に酔った勢いで「どうして?」と彼に尋ねる。

「同級生って言っても俺以外みんな女子だし、クラス違って話した事ない子ばかりだから、絃ちゃんいるなら心強いなって」

 ほらやっぱり。
 どうせ、そんな事だろうと思ってた。
 新婦のきょうちゃんと、私、ほっしーは同じ部活で仲が良かったからね。
 その流れで彼は招待されたんだろう。
 例え他は女子ばかりだとしても、私がいれば、話し相手には困らないと考えたんだろうから。
 きょうちゃんには〝あの事〟話してないもの、それも仕方ない。
 
「そっか。それはお役に立てたようで良かった」

「絃ちゃんは、会場まで何で行くの?」

「私? 私は誰かに乗せてもらおうと思ってるよ。ほっしーは?」

「俺車で来てるから、良かったら絃ちゃん一緒に行く?」

「あぁ、それでほっしーはお酒飲まなかったんだね。そっか……じゃあ、お願いしようかな」

 彼の言葉に大して意味なんてないから、私も普通に友人として誘いに乗ればいい。
 
 披露宴は終始和やかなムードで進行し、「二次会でね」と本日の主役に挨拶をし会場を後にした。
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