上 下
3 / 10

2.出会い

しおりを挟む
メーリンは、倫理観のない婚約者に絶望し、とっさに会場を抜け出してしまった。

「ねぇ、待って!」
会場を抜け出す途中で、誰かに声をかけられた。
メーリンは恐る恐る後ろを振り向く。
そこには、超が付くほどの美少年がいた。

「...えっと、何ですか?」

その美少年は、一拍置いてから言った。
「えぇっと...申し訳ないんだけど、さっきの君の家族と、婚約者さん?の会話の内容...聞こえちゃって。
本当に、盗み聞きするつもりはなかったんだけど...。」

メーリンは驚いた。
そして驚きの感情のあとに、血の気が引いた気がした。

「...ごめんなさい!!
お見苦しい所を見せて!!不愉快になりましたよね...。」
「...うん。 君は、大丈夫?
君の家族と婚約者...酷いね。」

「もし、良かったならなんだけど。
僕と、この会場...抜け出さない?
...まぁ、抜け出しても、戻ってこないといけないんだけど。」

 (...え。)

思ってもみなかった提案に、メーリンはびっくりした。
 今までも私に同情してくれる人はいたけれど、実際に行動してくれた人はいなかったからだ。

「え、えぇ...。
貴方が、いいのであれば。」

「僕は良いよ!
...僕も丁度、外の空気を吸いたかったんだ。」

_____

 私たちは歩いて、外へ向かった。
 歩きながら、今まであった、つらかったことを話した。
 不思議と、その人の前では、全て話せた。

ベンチがある公園に着くと、美少年は話をたくさん聞いてくれた。
ふとした瞬間に、美少年に聞かれた。

「ねえ、君は...家族から離れたいって思わないの?」
 
 (...家族から離れたい...。)
 
「たくさん思う時はあったけど、私には一人で生きていける自信がなかった...かな」
「...僕の妻にならない?」

 (...!?!?)

突然の提案に、メーリンはギョッとした。
メーリンが何も反応できず困惑していると、美少年が、
「あ!忘れてた、自己紹介!!」

「えーと...、僕の名前はね、
リベルバ・リメール。 一応、辺境伯やってます。」

急なカミングアウトに、メーリンは頭が真っ白になった。

 ...え? 辺境伯ってことは、男爵家よりもよっぽど格上の存在じゃない!?

「!!
今までのご無礼を、お許しください!」

メーリンは急いで謝罪した。

「あー、そんなかしこまらなくて大丈夫!!
元々自己紹介忘れてたのは僕だし...、堅苦しいの苦手なんだよね、」

「...分かりました...?」
「さっきみたいに喋ってよ、敬語とかいらない。」
「...分か、った。」


「それでね、話に戻るんだけど。
僕は『お飾りの妻』がほしいんだよね。」

 (...お飾りの妻?)

「僕的には、妻なんていらないんだけど...。
両親がうるさくってさ。 だから、『お飾りの妻』がほしい。」

「...で、君は僕の条件にぴったりだと思ったんだ。
もちろん、衣食住は約束するし、多少の我儘なら使用人に言ってくれればできる。
どう? これ以上ない良い提案だと思うんだよね。」

 ...確かに、。

私が、返答に困っていると、追い打ちをかけるかのようにリベルバ辺境伯は言った。
「それに、君の家族の顔もこれから見なくて済む。」

「...分かりました。
その提案、お受けします!!」

_かくして、メーリン・シャンティはリベルバ・リメール辺境伯のお飾りの妻となったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】私の愛する人は、あなただけなのだから

よどら文鳥
恋愛
 私ヒマリ=ファールドとレン=ジェイムスは、小さい頃から仲が良かった。  五年前からは恋仲になり、その後両親をなんとか説得して婚約まで発展した。  私たちは相思相愛で理想のカップルと言えるほど良い関係だと思っていた。  だが、レンからいきなり婚約破棄して欲しいと言われてしまう。 「俺には最愛の女性がいる。その人の幸せを第一に考えている」  この言葉を聞いて涙を流しながらその場を去る。  あれほど酷いことを言われってしまったのに、私はそれでもレンのことばかり考えてしまっている。  婚約破棄された当日、ギャレット=メルトラ第二王子殿下から縁談の話が来ていることをお父様から聞く。  両親は恋人ごっこなど終わりにして王子と結婚しろと強く言われてしまう。  だが、それでも私の心の中には……。 ※冒頭はざまぁっぽいですが、ざまぁがメインではありません。 ※第一話投稿の段階で完結まで全て書き終えていますので、途中で更新が止まることはありませんのでご安心ください。

【完】婚約破棄された伯爵令嬢は騎士様と花咲く庭で

えとう蜜夏☆コミカライズ中
恋愛
伯爵令嬢のナターシャは婚約者の子爵子息から運命の恋をしたいと婚約破棄を言い渡された。しかし、実は他に女がいたからだった。 その直後、ナターシャの両親が馬車の事故で亡くなり、途方に暮れていたところ、遠縁を名乗る男爵夫妻が助けにやってきた。ところが、結局は夫妻に伯爵家は乗っ取られ、ナターシャは借金のカタに売り飛ばされることになってしまう。  他サイトでも掲載しております。  Unauthorized duplication is a violation of applicable laws.  ⓒえとう蜜夏(無断転載等はご遠慮ください)

婚約破棄された令嬢は、それでも幸せな未来を描く

瑞紀
恋愛
伯爵の愛人の連れ子であるアイリスは、名ばかりの伯爵令嬢の地位を与えられていたが、長年冷遇され続けていた。ある日の夜会で身に覚えのない婚約破棄を受けた彼女。婚約者が横に連れているのは義妹のヒーリーヌだった。 しかし、物語はここから急速に動き始める……? ざまぁ有の婚約破棄もの。初挑戦ですが、お楽しみいただけると幸いです。 予定通り10/18に完結しました。 ※HOTランキング9位、恋愛15位、小説16位、24hポイント10万↑、お気に入り1000↑、感想などなどありがとうございます。初めて見る数字に戸惑いつつ喜んでおります。 ※続編?後日談?が完成しましたのでお知らせ致します。 婚約破棄された令嬢は、隣国の皇女になりました。(https://www.alphapolis.co.jp/novel/737101674/301558993)

無能だと捨てられた王子を押し付けられた結果、溺愛されてます

佐崎咲
恋愛
「殿下にはもっとふさわしい人がいると思うんです。私は殿下の婚約者を辞退させていただきますわ」 いきなりそんなことを言い出したのは、私の姉ジュリエンヌ。 第二王子ウォルス殿下と私の婚約話が持ち上がったとき、お姉様は王家に嫁ぐのに相応しいのは自分だと父にねだりその座を勝ち取ったのに。 ウォルス殿下は穏やかで王位継承権を争うことを望んでいないと知り、他国の王太子に鞍替えしたのだ。 だが当人であるウォルス殿下は、淡々と受け入れてしまう。 それどころか、お姉様の代わりに婚約者となった私には、これまでとは打って変わって毎日花束を届けてくれ、ドレスをプレゼントしてくれる。   私は姉のやらかしにひたすら申し訳ないと思うばかりなのに、何やら殿下は生き生きとして見えて―― ========= お姉様のスピンオフ始めました。 「体よく国を追い出された悪女はなぜか隣国を立て直すことになった」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/465693299/193448482   ※無断転載・複写はお断りいたします。

陰謀は、婚約破棄のその後で

秋津冴
恋愛
 王国における辺境の盾として国境を守る、グレイスター辺境伯アレクセイ。  いつも眠たそうにしている彼のことを、人は昼行灯とか怠け者とか田舎者と呼ぶ。  しかし、この王国は彼のおかげで平穏を保てるのだと中央の貴族たちは知らなかった。  いつものように、王都への定例報告に赴いたアレクセイ。  彼は、王宮の端でとんでもないことを耳にしてしまう。  それは、王太子ラスティオルによる、婚約破棄宣言。  相手は、この国が崇めている女神の聖女マルゴットだった。  一連の騒動を見届けたアレクセイは、このままでは聖女が謀殺されてしまうと予測する。  いつもの彼ならば関わりたくないとさっさと辺境に戻るのだが、今回は話しが違った。  聖女マルゴットは彼にとって一目惚れした相手だったのだ。  無能と蔑まれていた辺境伯が、聖女を助けるために陰謀を企てる――。  他の投稿サイトにも別名義で掲載しております。  この話は「本日は、絶好の婚約破棄日和です。」と「王太子妃教育を受けた私が、婚約破棄相手に復讐を果たすまで。」の二話の合間を描いた作品になります。  宜しくお願い致します。  

【完結】私より優先している相手が仮病だと、いい加減に気がついたらどうですか?〜病弱を訴えている婚約者の義妹は超が付くほど健康ですよ〜

よどら文鳥
恋愛
 ジュリエル=ディラウは、生まれながらに婚約者が決まっていた。  ハーベスト=ドルチャと正式に結婚する前に、一度彼の実家で同居をすることも決まっている。  同居生活が始まり、最初は順調かとジュリエルは思っていたが、ハーベストの義理の妹、シャロン=ドルチャは病弱だった。  ドルチャ家の人間はシャロンのことを溺愛しているため、折角のデートも病気を理由に断られてしまう。それが例え僅かな微熱でもだ。  あることがキッカケでシャロンの病気は実は仮病だとわかり、ジュリエルは真実を訴えようとする。  だが、シャロンを溺愛しているドルチャ家の人間は聞く耳持たず、更にジュリエルを苦しめるようになってしまった。  ハーベストは、ジュリエルが意図的に苦しめられていることを知らなかった。

婚約破棄ですか?別に構いませんが…、いいのでしょうか?

灯月
恋愛
幼い頃から決められていたこの国の第一皇子であるアビス皇子との婚約。 婚約者として、彼の為に、この国のために私は様々なことをしてきましたが 急に私は婚約破棄をされてしまいましたが、いいのでしょうか…? 王族と一部しか知らない秘密があるこの国で起こったひとつの婚約破棄の話 ●追伸● もうひとつの視点を書きたくなって追加しました。 今後、ジャンル通りに恋愛をさせていきたいとは考えてますが 内容が決まってませんので、一度完結とさせていただいてます。 パッと浮かんだ書きたいものを書きましたので変なところがあるかもしれません… もし、誤字脱字等がございましたら 教えていただけると幸いです! R指定について… そのように読み取れる人は読み取れてしまうかもと思ったのでつけました。

【完結】え?王太子妃になりたい?どうぞどうぞ。

櫻野くるみ
恋愛
10名の令嬢で3年もの間、争われてーーいや、押し付け合ってきた王太子妃の座。 ここバラン王国では、とある理由によって王太子妃のなり手がいなかった。 いよいよ決定しなければならないタイムリミットが訪れ、公爵令嬢のアイリーンは父親の爵位が一番高い自分が犠牲になるべきだと覚悟を決めた。 しかし、仲間意識が芽生え、アイリーンに押し付けるのが心苦しくなった令嬢たちが「だったら自分が王太子妃に」と主張し始め、今度は取り合う事態に。 そんな中、急に現れたピンク髪の男爵令嬢ユリア。 ユリアが「じゃあ私がなります」と言い出して……? 全6話で終わる短編です。 最後が長くなりました……。 ストレスフリーに、さらっと読んでいただければ嬉しいです。 ダ◯ョウ倶楽部さんの伝統芸から思い付いた話です。

処理中です...