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第37話
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「銀子、今日はお招きありがとう。
これはみんなからです。」
陣さんが、手土産を銀子に渡す。
「わっ!嬉しい。羊羹だー。一番好きなやつ!」
トラ印の入った紙袋をのぞき込んで銀子は嬉しそうに笑った。
「みんな、わざわざありがとう。大事にいただくね。」
銀子が言い終わるとメイドさんがすっと現れて銀子から恭しく手土産を受け取った。
「そろそろ、お昼にしてはいかがでしょうか。」
村上さんの提案に、銀子が
「みんな、お腹減ってるかな?今からランチにしてもいい?」
と、聞いてきた。
俺たちはそろってうなずき、ダイニングルームまで移動することになる。
銀子と陣さんと正宗くんの3人の後ろを俺と本山でついていく。
正宗くんは銀子と陣さんに手をつないでもらえて嬉しそうだ。
「本山、その服はどうしたんだ?なんでピッタリサイズの服が当たり前のように用意されているんだ?」
俺は、本山にこっそりと聞いた。
「あ、銀子の家ってアパレルも経営しているらしくてさ。案内された部屋にはサンプル品がたくさんあって、好きなものを選んでくださいって言われた。で、その場でさくっと採寸されて、ジャストフィットの服をいただいてしまったってわけ。
村上さんが神対応で、本当にプロフェッショナルだったよ。色々と度肝抜かれて恐縮しまくりだったけど。
この服さー。めちゃくちゃ肌ざわりがいいんだよ!発色も綺麗だし。」
「わ!本当だ。何これ!すっごい!!柔らかいし、肌に優しい!!
うん。本山にすごく似合ってる。いいなー。羨ましい。」
「お?照れるな。
その部屋がさ、圧巻の品ぞろえでさ。店かと思った…。びびった。
俺は今日一日、不思議の国に迷い込んだような気分だ。
ランチ…。緊張してきたな。」
俺たちはこくりと唾を飲み込んだ。
「だな。
俺、せめて、カトラリーを落とさないというのを目標にしよう…。」
「ユキピロ…。目標設定が低くないか?」
「いいんだ…。だって、もう手に大量の汗をかいているし…。」
俺は自分の両手をパンツにゴシゴシすりつけた。
嫌でも緊張する。でも、わくわく感もあった。
俺たちは豪華な通路をきょろきょろしながら進んで行った。
通された部屋はそんなに広くなくて、落ち着ける雰囲気でほっとした。
用意された丸テーブルには淡い黄色のテーブルクロスがさし色に一枚。そして更に一枚、真っ白なテーブルクロスが重ねてある。その上には、ピカピカの食器が美しくセッティングされていた。
メイドさんが椅子を引いてくれて俺はうながされるままに着席した。
それぞれのグラスに好みの飲み物が注がれると銀子が口を開いた。
「未成年だから、乾杯はジュースになっちゃうね。
いつか、大人になったらみんなでお酒を飲みながらまたお食事をしたいな。
今日は、我が家へようこそいらっしゃいました。お越しいただき、ありがとう。
じゃ、乾杯しましょう!」
各自、グラスを持ち上げる。
「乾杯!」
席の遠い人とはエアーでグラスを傾けて、隣の人とはカチンとグラスを合わせる。
口にしたジュースは爽やかだった。
俺は芸術的な形に折られたナプキンを見て困惑する。
動画サイトじゃ、普通の形だったぞ。
銀子を見ると、なんでもないようにナプキンを崩した後、二つ折にして膝の上においていた。
俺はそっくりそのまま真似をした。
最初に前菜が運ばれてきた。
みんなで楽しくおしゃべりしているうちに、緊張もだんだんとほぐれていった。
フランス料理はちょこちょこと色んな料理が運ばれてきて楽しい。
給仕さんが料理の説明をしてくれるのも面白かった。
いよいよメインの肉料理が運ばれた時、俺は…感動した!
なぜならそれは、ロッシーニだったから!
ロッシーニとは厚い牛フィレ肉の上に、世界三大珍味のフォアグラやトリュフをのせた料理だ。
フランス料理を検索するうち、いつか絶対に口にしてみたいと思っていた憧れのあのロッシーニ!!
俺は今、猛烈に感動しいる!
あぁぁぁ!
肉とフォアグラとトリュフがお口の中でとろけていく!!!
「音楽も料理もハーモニーが大事だ」と、俺の脳内で料理を考案した作曲家のロッシーニがささやいている。
「妄想がひどいね…。」
瞳が急に出てきて、俺の至福の時間に水を差す。
俺はそれを無視して、ひたすら料理を堪能する。
うまい!
「山田姉弟のナイフとフォークの使い方、すごい優雅だね。」
瞳が感心している。
確かに、二人に比べると俺たちは普段使いしていないからな。そりゃ、足元にも及ばない。
あ!正宗くんと目が合った。
にっこりと笑いかけてくれる。
なんて!いい子だ!!
こんな家の子たちがずっと公立の学校に通っている不思議さよ。
俺は銀子に聞いてみた。
「どうして、銀子は私立に通わなかったんだ?」
「親の方針なんだよね。将来、家のビジネスにかかわるなら視野を広げるのに必須だって。」
「なるほど!深い!」
銀子は苦笑する。
「将来、本当に家のビジネスに関わるかどうかは分からないけれど、自分の感覚のずれを修正するには必須だったと思う。今では常識が欠けていることをちゃんと自覚しているから。」
おぉぉぉ!
銀子が謙虚だ!!!
「それに、毎日楽しい。朝起きると今日はどんな一日になるか、毎日わくわくするんだ!」
そう言って微笑む銀子が一瞬とんでもなくかわいく見えたのは、きっと気のせいだ。
気のせいだったら、気のせいだ!
これはみんなからです。」
陣さんが、手土産を銀子に渡す。
「わっ!嬉しい。羊羹だー。一番好きなやつ!」
トラ印の入った紙袋をのぞき込んで銀子は嬉しそうに笑った。
「みんな、わざわざありがとう。大事にいただくね。」
銀子が言い終わるとメイドさんがすっと現れて銀子から恭しく手土産を受け取った。
「そろそろ、お昼にしてはいかがでしょうか。」
村上さんの提案に、銀子が
「みんな、お腹減ってるかな?今からランチにしてもいい?」
と、聞いてきた。
俺たちはそろってうなずき、ダイニングルームまで移動することになる。
銀子と陣さんと正宗くんの3人の後ろを俺と本山でついていく。
正宗くんは銀子と陣さんに手をつないでもらえて嬉しそうだ。
「本山、その服はどうしたんだ?なんでピッタリサイズの服が当たり前のように用意されているんだ?」
俺は、本山にこっそりと聞いた。
「あ、銀子の家ってアパレルも経営しているらしくてさ。案内された部屋にはサンプル品がたくさんあって、好きなものを選んでくださいって言われた。で、その場でさくっと採寸されて、ジャストフィットの服をいただいてしまったってわけ。
村上さんが神対応で、本当にプロフェッショナルだったよ。色々と度肝抜かれて恐縮しまくりだったけど。
この服さー。めちゃくちゃ肌ざわりがいいんだよ!発色も綺麗だし。」
「わ!本当だ。何これ!すっごい!!柔らかいし、肌に優しい!!
うん。本山にすごく似合ってる。いいなー。羨ましい。」
「お?照れるな。
その部屋がさ、圧巻の品ぞろえでさ。店かと思った…。びびった。
俺は今日一日、不思議の国に迷い込んだような気分だ。
ランチ…。緊張してきたな。」
俺たちはこくりと唾を飲み込んだ。
「だな。
俺、せめて、カトラリーを落とさないというのを目標にしよう…。」
「ユキピロ…。目標設定が低くないか?」
「いいんだ…。だって、もう手に大量の汗をかいているし…。」
俺は自分の両手をパンツにゴシゴシすりつけた。
嫌でも緊張する。でも、わくわく感もあった。
俺たちは豪華な通路をきょろきょろしながら進んで行った。
通された部屋はそんなに広くなくて、落ち着ける雰囲気でほっとした。
用意された丸テーブルには淡い黄色のテーブルクロスがさし色に一枚。そして更に一枚、真っ白なテーブルクロスが重ねてある。その上には、ピカピカの食器が美しくセッティングされていた。
メイドさんが椅子を引いてくれて俺はうながされるままに着席した。
それぞれのグラスに好みの飲み物が注がれると銀子が口を開いた。
「未成年だから、乾杯はジュースになっちゃうね。
いつか、大人になったらみんなでお酒を飲みながらまたお食事をしたいな。
今日は、我が家へようこそいらっしゃいました。お越しいただき、ありがとう。
じゃ、乾杯しましょう!」
各自、グラスを持ち上げる。
「乾杯!」
席の遠い人とはエアーでグラスを傾けて、隣の人とはカチンとグラスを合わせる。
口にしたジュースは爽やかだった。
俺は芸術的な形に折られたナプキンを見て困惑する。
動画サイトじゃ、普通の形だったぞ。
銀子を見ると、なんでもないようにナプキンを崩した後、二つ折にして膝の上においていた。
俺はそっくりそのまま真似をした。
最初に前菜が運ばれてきた。
みんなで楽しくおしゃべりしているうちに、緊張もだんだんとほぐれていった。
フランス料理はちょこちょこと色んな料理が運ばれてきて楽しい。
給仕さんが料理の説明をしてくれるのも面白かった。
いよいよメインの肉料理が運ばれた時、俺は…感動した!
なぜならそれは、ロッシーニだったから!
ロッシーニとは厚い牛フィレ肉の上に、世界三大珍味のフォアグラやトリュフをのせた料理だ。
フランス料理を検索するうち、いつか絶対に口にしてみたいと思っていた憧れのあのロッシーニ!!
俺は今、猛烈に感動しいる!
あぁぁぁ!
肉とフォアグラとトリュフがお口の中でとろけていく!!!
「音楽も料理もハーモニーが大事だ」と、俺の脳内で料理を考案した作曲家のロッシーニがささやいている。
「妄想がひどいね…。」
瞳が急に出てきて、俺の至福の時間に水を差す。
俺はそれを無視して、ひたすら料理を堪能する。
うまい!
「山田姉弟のナイフとフォークの使い方、すごい優雅だね。」
瞳が感心している。
確かに、二人に比べると俺たちは普段使いしていないからな。そりゃ、足元にも及ばない。
あ!正宗くんと目が合った。
にっこりと笑いかけてくれる。
なんて!いい子だ!!
こんな家の子たちがずっと公立の学校に通っている不思議さよ。
俺は銀子に聞いてみた。
「どうして、銀子は私立に通わなかったんだ?」
「親の方針なんだよね。将来、家のビジネスにかかわるなら視野を広げるのに必須だって。」
「なるほど!深い!」
銀子は苦笑する。
「将来、本当に家のビジネスに関わるかどうかは分からないけれど、自分の感覚のずれを修正するには必須だったと思う。今では常識が欠けていることをちゃんと自覚しているから。」
おぉぉぉ!
銀子が謙虚だ!!!
「それに、毎日楽しい。朝起きると今日はどんな一日になるか、毎日わくわくするんだ!」
そう言って微笑む銀子が一瞬とんでもなくかわいく見えたのは、きっと気のせいだ。
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