オレの体の部位たちがオレに「ダメ出し」してきた件

咲良きま

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第33話

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今現在、俺と本山は作戦会議の為に、お昼休みに二人で屋上に来ていた。
「ユキピロ。初めての彼女の実家訪問には、やはり菓子折りがいいかな?
 なんとしても銀子のご両親には、よい第一印象を持ってもらいたい!さっそく、結婚の挨拶を考えないと…。」
はい。つっぱしってまーす!
どうして本山は銀子のことになると頭のねじが一本とれてしまうんだろう。
そこだけは、本当に残念なやつだ。
「落ち着いて…。そもそも本山は銀子とつきあっていないでしょう。」
「む…。いつでも結婚の用意はできている…。」
いやいや。自分の食い扶持も稼げていないでしょうが。親の脛をかじっている状態で、何を言っているのさ…。
「心外な」って顔しない…。美形はすねた顔も様になるのな…。
「確かに、本山の言う通り、手土産は必要だよね…。
 それは陣さんに聞くのが一番だと思うんだ。俺らで考えるより、きっとぴったりなものを選んでくれるんじゃないかな。3人でお金を出し合ったほうがいいものを買えるしね。」
「でかしたー!」
テンションのおかしい本山にいきなり抱き着かれた。
「ばか!落ち着けって…。弁当がひっくりかえるじゃないか…。」
俺は本山の頭をはたいた。
「ごめん。ごめん。これで一つは問題が解決したな。よかった。」
「え?何かほかにも問題があるんだっけ?」
「私服だよ。」
いや…。おまえその外見で…何を言っているんだ。本山なら何を着ても問題ないだろうよ…。俺と違ってな!?
「俺さ、スーツをもっていないんだよな…。よし!ゆきぴろ、一緒に買いにいくか?」
え?俺がスーツをもっていない前提なのおかしくない?…持ってないけどさ。
「いや、スーツって…。却下だ!
 ふりなのか?結婚の挨拶ネタをひっぱるのをやめれ。
 テンションがあがるのは分かるけど、絶対前のめりになるんじゃないぞ?
 普通の私服で行こう。
 それより、今ふと思ったんだけど…。俺はランチに落とし穴がある気がしてきた。」
「え?何か問題あるか?飯を食うだけだろ?」
「銀子がさ、シェフって言っていたじゃん。…シェフというからにはさ。フレンチなんだと思うんだよね。」
「…フレンチか。テーブルマナーか…。ヤバいな。」
「そうなんだよ。俺はそんな高級なもの口にしたことなんてないぞ…。かろうじて両端のカトラリーを使えばいいってことを知っているくらいでさ…。」
「わー…。フィンガーボールの使い方とか分かんねー…。」
「それな!」
「とりあえず、動画を観て予習するしかないな…。」
「だな!」
俺はスマホを取り出し、テーブルマナーで検索をかけた。本山もいっしょに俺の手元をのぞき込む。
動画が始まると…アテンドしてもらった時の美しい座席の座り方の講義が始まった…。
俺は無言でスワイプする。
次の動画はナプキンの使い方の説明が流れてきた。
「こんな感じの動画を何個か見たらいけるんじゃない?」
俺は明るく話しかけたが、本山はなぜか死んだ目をしている。
「ユキピロよ…。俺は気づいてしまった…。」
「…え?こわいな…。なんだよ?」
「これ…。和食のパターンもあるぞ…。せっかく和洋の両方を勉強しても、当日は中華だったりするかもしれないしな…。」
「げ…。ありえる。
 もう…これは、付け焼き刃は無理だな…。せめて銀子にランチにテーブルマナーは必要なのかを正直に聞くのが一番な気がしてきた。俺、聞いとくよ。後、陣さんにも手土産の相談で連絡をいれとくし。」
「マジか…。助かる。それなら俺は、今日は部活をさぼって髪を切りに行ってこよう。」
「え…。それ、明日になったら部員の皆さんに本山が部活をさぼったのが確実にバレるパターンだよね…。
 先輩や顧問に怒られるよ…。やめときなよ…。」
「む…。じゃ、部活が終わってから行くかー。
 予約しとこー。どこのサロンにしようかな…。」
本山はスマホを取り出し操作しながら聞いてきた。
「やっぱり、七三に分けれるような髪型がいいよな?清潔感がよりでる感じで…。」
「どこのサラリーマンだよ!!
 おまえ、今のテンションで髪を切るのはやめときな…。絶対後悔するから。
 今のままでおまえは十分、清潔だしイケメンだ!」
恋愛脳って本当にこわいな…。
「えー…。そうか?うーん。そうか…?じゃ、やめとくか?」
ポケットから鏡を取り出した本山が自分の髪型をあらゆる角度から吟味し始めた。
手鏡を持ち歩くのって…普通なのか!?
俺は地味に衝撃をうけた。
「確かに、どこから見てもイケメンだな。」
そう言って、やつは俺にウィンクをかましてきた。
だから、イケメンの無駄遣いをやめれ!
「自分で言うな!」
「ははは。」
本山の軽やかな笑い声が屋上に響く。
青空が広がり解放感に溢れている。
俺は牛乳にストローをつきさした。
「本当にユキピロは牛乳が好きだよなー。」
何気なさをよそおって、本山が口にする。
俺はまたスルースキルを発動する。
…恒例のやりとりになってきたな…。
本山よ。おまえは俺がいじられたくないのを絶対に分かっていて、あえて言っているよな…。
それからは、だらだらしゃべりながら過ごして、俺たちは昼休みを終えた。

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