オレの体の部位たちがオレに「ダメ出し」してきた件

咲良きま

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第31話

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佐藤とコンタクトをとるには…どうしたらいいんだ?
やっぱりまずは、チャットからだよな。
俺は会話アプリを開き、メッセージを考える。うーん。困った。なんて送ればいいんだ?
散々考えて、迷った末に勢いが大事だと考えて、思い切って「えいやっ」と送信ボタンをクリックした。

-久しぶり。最近カウンター登板が被らないよね。

うん。どうだろう。悪くないよね。
俺が、一人満足していると、横から画面をのぞき込まれた。
「え…。ユキピロ…。佐藤と仲いいの…?」
銀子が驚いた顔で聞いてきた。
「あ、うん。図書委員がいっしょなんだ。」
「佐藤ってさ、虚言癖で有名な佐藤であってる?隣のクラスの…。」
「え、何それ…。知らない。え?虚言癖?
 ええ?そうなの?」
「うん。一部では『ほら吹き佐藤』って呼ばれているみたいだよ…。ネタになっているし。」
「いやいや。そんな感じには見えないけど。」
「ふーん。そうなの?
 まぁ、ユキピロが面倒じゃなければ、それでいいよ。」
銀子はあっさりと次の話題に移っていった。けれど俺はその時の会話がなんだか妙に心にひっかかった。
その後、1か月を経過しても俺の送ったチャットは既読にならなかった。
なんでだろう。
いつも銀子が目当てで、お昼休みにやってくるようになった本山に相談してみようかな…。
決心すると、なんだかソワソワしてしまい、昼休みが待ち遠しく感じる。
そうなのだ。ボッチでの昼食を俺は本山のおかげで卒業することができたのだ…。
本山は神だな。ありがたや。
俺は心の中で、とりあえず本山を拝んでおく。
そして、いよいよ昼休み。コンビニの袋をさげた本山が颯爽とやってきた。
今日も本山は麗しい。クラスの女子がとたんにソワソワしだす。
悔しくなんて、ないんだからな!
いつものように、本山は俺の前の席に勝手に座って、コンビニ袋からサンドイッチとペットボトルに入った水とコンビニ弁当を取り出した。
「ユキピロは今日はおかんの弁当なんだな。いいなー。」
本山はさっそくサンドイッチをぱくつきながら、お目当ての銀子に、にこやかに手を振っている。
銀子は銀子で女王様のように「くるしゅうない」って感じで軽くうなずいているし。
いつ見ても不思議な絵ずらだ…。
イケメンの無駄遣いだと思うよ。
「あのさ、会話アプリがさ、壊れているのかな…。
 連絡したのに、ずっと既読にならないんだけど…。」
「え…マジで?あ、ごめん。俺、見逃してたっけ?」
「いや、おまえじゃなくて…別のやつなんだけど。」
「へー。見せてみ。」
俺は、佐藤に送った画面を表示して、スマホを本山にわたした。
二人でいっしょに画面をのぞき込む。
本山がちょいちょい画面を動かして微妙な顔して俺を見た。
「あー…。これさー。ブロックされてるなー…。
 ってか…ユキピロ。これ送信した日付が一か月前になってるいんだけど…。
 え、何だよ。おまえ…コレが既読になるのを今か今かとずっと待っていたのかよ…。」
本山が捨てられた子猫を見るような目で俺をみる。
「おまえってやつは、いじらしいな…。」
しみじみとうなずき、頭をなでられた。
そのせいで、一部の女子からキャーって歓声がわいた。俺ら、女子にめっちゃ見られている。
やめれ…。そういうことは女子にしてやれよ。
俺はその手を乱暴に振り払う。
「え?あ、うん。そうだよ。悪いかよ。1か月、ずっと待ってたさ。そこ、いじるなよ。
 ってか、え?ブロック?なにそれ…。」
「知らないのかよ…。まぁ、その…なんだ。
 連絡したくないやつを切るための操作な。設定すると文字通り相手からの連絡を全てブロックできるんだ。」
「マジか…。」
俺はズーンと落ち込んだ。
いつのまにか友達になっていたやつは、いつのまにか友達じゃなくなっていた。
え?何で?
普通だったよな?
何が原因かもわからないし…つらい。
俺が机に伏せて地味に落ち込んでると本山が軽く肩をたたいた。
「ドンマイ。
 って、おまえ…これ…佐藤って、あの佐藤?」
「あのって、何?」
「最近まともになったって噂の佐藤。」
「何それ。」
「一時、言動が可笑しくて有名になった佐藤だよ。3組の佐藤湊。」
「ああ、そう。3組の佐藤湊だよ。
 え?何?言動が可笑しいって言った?
 で、今度は佐藤がまともになったっていう噂がたっているの?」
そういや、前に銀子が『ほら吹き佐藤』って呼ばれていると言っていたような…?
「あいつって、前までとにかく目立っていたんだよな。
 いつも噂の的でさ。まぁ、言動が可笑しくて、有名だったわけ。
 授業中にいきなり叫んでみたりさ。
 先生に、”どうした?”って聞かれたら、”気持ちがたかぶりました”って真面目に答えてみたり…。先生も先生で”そうか”って流すしさ。色々シュール。
 特に話題になったのが、やつの虚言癖でさー。ネタでやっているのか、頭がおかしいのか、目立ちたいのか、人の反応を観察したいのか…。どんな理由があったのかは分からないけど…単純に面白かったんだよな。みんなすごく喜んでいたし。
 ご先祖様の霊が見えるとか、オーラがみえるとか、UFOに連れ去られたことがあるとかさ、面白おかしく話すんだ。宇宙と交信するって言って、教室のすみで壁に向かって、一人でぶつぶつ言いながら変なジェスチャーしていたこともあったらしい。
 始まったぞって騒ぎになって、隣のクラスからも人が集るし…。
 どんどん佐藤のショーが娯楽化していくって話題になっていた。
 っていうか、ユキピロ…。佐藤の噂を知らないって…。どんだけ友達がいないんだよ…。」
いや…。だから、捨てられた子猫を見るような目で俺を見るなよ…。
なんか、おまえ、涙目になっていないか…。
やめれ…。
ホント、追い打ちかけるの好きだよな…。
「佐藤の言動ってさ。害はないからいいんだよな。
 やつが話をすればするほど、理論が破綻するし…。
 それがまた面白いんだよな。辻褄が合わなくなっていくのが醍醐味で。
 で、本人も破綻していくのが若干分かっていてさ。佐藤が、まずいなーって思いながらも話を続けるしかなくて焦っている感じが…つぼる。
 本当、最高のエンターテイナーだったんだけどなー。惜しい人を亡くしたよな。」
本山は深々とため息をついた。
いや、佐藤は死んでいないから…。
やめてあげて…。


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