14 / 48
第14話
しおりを挟む
それからしばらくして、銀子のアナウンスが軽やかに流れるようになった。
部員が多く在籍している放送部で高い頻度で放送を受け持つってことは、やっぱりあいつって、すごい。なんて多才な奴なんだ!
そんなふうに俺は、ただ好意的に銀子のアナウンスを感心して聞いていたんだ、例のことを知るまでは。
ある日俺は偶然にも銀子のSNSの裏アカを見つけてしまった。
[『〇〇動画』でライブ放送をやっている姫です。下僕はいつでも募集中だよ♪
Mな子いらっしゃい~。
姫がいじめて、あ・げ・る!なんちゃって☆キャッ★]
…銀子、さん?
いつお姫様におなりあそばされたのですか?
「いいね!」が5万人を超えている。…嘘だろ。マジか。
見ないほうがいいと分かっていながらも、俺は知りたいという欲求に逆らえず、検索エンジンにアカウント名、『シルバープリンセスの眼鏡の魔法』を入力する。
…ふざけた名をつけてやがる。
銀子はど・こ・だ?
目を血走らせて探す。
ヒット!見つけた!
若干、手が震えがちになりながらこわごわとアクセスする。
銀子の『〇〇動画』でのプロフィール画面が映し出された。
うん?眼鏡の国からやってきた銀の髪のお姫様だと?おたふくなのに?
…ずうずうしいな。
銀子のコメントは次の通り。
{魔法をかけてあげちゃうんだから♪
覚悟するんだもん♪}
うん。君の存在自体がもうある意味魔法かも。俺は今、君に魔法をかけられているよ。
お、只今放送中の文字を発見!
おまえ勉強そっちのけで…一体何をやっているんだ!?
俺はさっそく、クリック。
すると、まぎれもなく銀子の美しい声が耳に飛び込んできた。
画面には、アニメーションの動画が映し出されている。
何これ3D画像?
銀色の髪をしたプリンセスがいる!!銀の髪が太陽に照らされた小川の様だ!輝いて、きらめいて。
すごいテクだな、おい。
ドレスもまたすごい。マリー・アントワネットが着ていそうな、ゴージャスなレース仕様。質感の表現が油絵のようで、なんともため息が出るような映像美。
しかも、プリンセスがこれまた激かわいい。イチゴのような唇に、憂いを秘めたサファイヤの瞳。ティアラが黄金で銀の髪と絶妙にマッチしている。
…銀子が自分で作ったんだよな、この画像。眼鏡の国からやってきたっていうフレーズなのに、眼鏡をかけてないのはなんぜなんだ?
あ、シルバープリンセスの服が『お姫様』使用からメイド服に変わった。
と、今度は白衣の天使に!なんか、プリンセス仕様から比べるとしょぼくなった感が否めないぞ!
コンセプトが迷走している。
別の服着ちゃったら、シルバープリンセスじゃなくなっちゃうじゃん!
って、俺は何を熱くなっているんだ?
そんなことよりも…。なんだこれは!
「萌え~。な感じだね~。」
瞳がしみじみと感想を述べる。
俺が、画像に夢中になっている間も銀子は歌うように軽やかな声で話を続けていた。
チャット機能もついていて、銀子の話した内容に対して、それを聞いているリスナーがコメントを入力しているようだ。そのコメントが、後から後からひっきりなしに次々と流れていっている。
…コメント多いな。
めちゃくちゃ人気じゃないか。
流れていくコメントは次の通りだ。
「姫~、好き!俺と結婚して!」
「その銀の髪に口づけしたい!」
「ハイヒールでふんづけて!」
「結婚しろ!」
「下僕になるから、番号教えて!」
なんだ、なんだ、なんだ!…俺さっきから『なんだ』しか言っていないし。でも言いたくなるよなぁ。異様な世界だ。
銀子がもてもて?なぜ?
いや、バーチャルな世界だからな。
でも、銀子がもてもて?
むむむ。
ああ、次から次へと、賞賛の嵐だ。銀子が、ちやほやされている…。
あげくに、姫って…。
現実社会との隔たりが大きすぎやしないか?ちょっと頭がくらくらしてきた。
銀子はリスナーの入力したコメントにたまに適当に答えつつも、自分の好きなことをひたすらしゃべりまくっていた。
いつもどうなのかは知らないが、その時は宇宙についての話をしていた。
宇宙の終わりについて?
え、大丈夫?おまえそれ…本当にあってる?
なんだよ。…高度だな。
説明している内容がわからなくなってきた…。
悔しい…。
どうでもいいが、銀子が話す内容のレベルについてこられる視聴者はどれくらいいるのだろうか?そんなにいるはずがないと思うんだが…。
ライブ視聴者は千人を超えているし…。全員が銀子の下僕なのか?まさか、な。
声がかわいいから、ただ聞いているだけで、なんとも心地がよくなってくるぞ。
癒されるなぁ~。
お!そういうことか!みんな銀子の話なんて聞いていないんだな。きっと、声の心地よさにひたすら酔っているってところか。
俺もなんだかふわふわと心地よくなってきた。
これ以上聞くと、違う扉を開けてしまいそうな気がして、ぞくりとする。
銀子、恐ろし子!
俺ははっと我に返ってそっとウィンドウを閉じた。
部員が多く在籍している放送部で高い頻度で放送を受け持つってことは、やっぱりあいつって、すごい。なんて多才な奴なんだ!
そんなふうに俺は、ただ好意的に銀子のアナウンスを感心して聞いていたんだ、例のことを知るまでは。
ある日俺は偶然にも銀子のSNSの裏アカを見つけてしまった。
[『〇〇動画』でライブ放送をやっている姫です。下僕はいつでも募集中だよ♪
Mな子いらっしゃい~。
姫がいじめて、あ・げ・る!なんちゃって☆キャッ★]
…銀子、さん?
いつお姫様におなりあそばされたのですか?
「いいね!」が5万人を超えている。…嘘だろ。マジか。
見ないほうがいいと分かっていながらも、俺は知りたいという欲求に逆らえず、検索エンジンにアカウント名、『シルバープリンセスの眼鏡の魔法』を入力する。
…ふざけた名をつけてやがる。
銀子はど・こ・だ?
目を血走らせて探す。
ヒット!見つけた!
若干、手が震えがちになりながらこわごわとアクセスする。
銀子の『〇〇動画』でのプロフィール画面が映し出された。
うん?眼鏡の国からやってきた銀の髪のお姫様だと?おたふくなのに?
…ずうずうしいな。
銀子のコメントは次の通り。
{魔法をかけてあげちゃうんだから♪
覚悟するんだもん♪}
うん。君の存在自体がもうある意味魔法かも。俺は今、君に魔法をかけられているよ。
お、只今放送中の文字を発見!
おまえ勉強そっちのけで…一体何をやっているんだ!?
俺はさっそく、クリック。
すると、まぎれもなく銀子の美しい声が耳に飛び込んできた。
画面には、アニメーションの動画が映し出されている。
何これ3D画像?
銀色の髪をしたプリンセスがいる!!銀の髪が太陽に照らされた小川の様だ!輝いて、きらめいて。
すごいテクだな、おい。
ドレスもまたすごい。マリー・アントワネットが着ていそうな、ゴージャスなレース仕様。質感の表現が油絵のようで、なんともため息が出るような映像美。
しかも、プリンセスがこれまた激かわいい。イチゴのような唇に、憂いを秘めたサファイヤの瞳。ティアラが黄金で銀の髪と絶妙にマッチしている。
…銀子が自分で作ったんだよな、この画像。眼鏡の国からやってきたっていうフレーズなのに、眼鏡をかけてないのはなんぜなんだ?
あ、シルバープリンセスの服が『お姫様』使用からメイド服に変わった。
と、今度は白衣の天使に!なんか、プリンセス仕様から比べるとしょぼくなった感が否めないぞ!
コンセプトが迷走している。
別の服着ちゃったら、シルバープリンセスじゃなくなっちゃうじゃん!
って、俺は何を熱くなっているんだ?
そんなことよりも…。なんだこれは!
「萌え~。な感じだね~。」
瞳がしみじみと感想を述べる。
俺が、画像に夢中になっている間も銀子は歌うように軽やかな声で話を続けていた。
チャット機能もついていて、銀子の話した内容に対して、それを聞いているリスナーがコメントを入力しているようだ。そのコメントが、後から後からひっきりなしに次々と流れていっている。
…コメント多いな。
めちゃくちゃ人気じゃないか。
流れていくコメントは次の通りだ。
「姫~、好き!俺と結婚して!」
「その銀の髪に口づけしたい!」
「ハイヒールでふんづけて!」
「結婚しろ!」
「下僕になるから、番号教えて!」
なんだ、なんだ、なんだ!…俺さっきから『なんだ』しか言っていないし。でも言いたくなるよなぁ。異様な世界だ。
銀子がもてもて?なぜ?
いや、バーチャルな世界だからな。
でも、銀子がもてもて?
むむむ。
ああ、次から次へと、賞賛の嵐だ。銀子が、ちやほやされている…。
あげくに、姫って…。
現実社会との隔たりが大きすぎやしないか?ちょっと頭がくらくらしてきた。
銀子はリスナーの入力したコメントにたまに適当に答えつつも、自分の好きなことをひたすらしゃべりまくっていた。
いつもどうなのかは知らないが、その時は宇宙についての話をしていた。
宇宙の終わりについて?
え、大丈夫?おまえそれ…本当にあってる?
なんだよ。…高度だな。
説明している内容がわからなくなってきた…。
悔しい…。
どうでもいいが、銀子が話す内容のレベルについてこられる視聴者はどれくらいいるのだろうか?そんなにいるはずがないと思うんだが…。
ライブ視聴者は千人を超えているし…。全員が銀子の下僕なのか?まさか、な。
声がかわいいから、ただ聞いているだけで、なんとも心地がよくなってくるぞ。
癒されるなぁ~。
お!そういうことか!みんな銀子の話なんて聞いていないんだな。きっと、声の心地よさにひたすら酔っているってところか。
俺もなんだかふわふわと心地よくなってきた。
これ以上聞くと、違う扉を開けてしまいそうな気がして、ぞくりとする。
銀子、恐ろし子!
俺ははっと我に返ってそっとウィンドウを閉じた。
0
お気に入りに追加
17
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。
矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。
女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。
取って付けたようなバレンタインネタあり。
カクヨムでも同内容で公開しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
僕たちのトワイライトエクスプレス24時間41分
結 励琉
青春
トワイライトエクスプレス廃止から9年。懐かしの世界に戻ってみませんか。
1月24日、僕は札幌駅の4番線ホームにいる。肩からかけたカバンには、6号車のシングルツインの切符が入っている。さあ、これから24時間41分の旅が始まる。
2022年鉄道開業150年交通新聞社鉄道文芸プロジェクト「鉄文(てつぶん)」文学賞応募作
(受賞作のみ出版権は交通新聞社に帰属しています。)
今日の桃色女子高生図鑑
junhon
青春
「今日は何の日」というその日の記念日をテーマにした画像をAIで生成し、それに140文字の掌編小説をつけます。
ちょっぴりエッチな感じで。
X(Twitter)でも更新しています。
ハーレム相撲部~女4人に男1人。おまけにかわいい守護霊も憑いてきて、一体何がどうしてこうなった?~
Ring_chatot
青春
高ヶ原高等学校には相撲部があるが、土俵はない。そのため活動場所は学校近くの、どこにでもあるような鹿島神社であった。
神社の土俵で活動していた相撲部は、今や廃部寸前で、今年二年生となる部員の三橋裕也(みつはし ゆうや)は一人途方に暮れていた。
そんな彼に、この神社に暮らしている裕也の同級生、本宮明日香が『一緒に人助けをしよう』と誘われる。
なんでも、この鹿島神社に、雷神・タケミカヅチが久々に来訪なさるらしい。それを盛大に迎えるためには、信仰心を集める必要があるのだとか。
そんなことを明日香と、神社に住まう神使に請われ、断れなかった裕也は人助けを開始する。
すると、人助けをするうちに相撲部にはなぜか女性部員が次々と入りはじめ、何時しか女4人に男1人という妙な部活となってしまうのであった。ここは相撲部だぞ!? 人助け部じゃないぞ!? ハーレムなんて要らないから男性部員が入ってくれ!
最初は頼まれ、流されるままに人助けをしていた裕也も、頼られ、慕われ、感謝されるうちに、人助けというものが他人だけでなく自分自身も救っていることに気づく。自身の生い立ちに負い目を持っていた彼も、いつしかその目は未来を向くようになっていった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる