オレの体の部位たちがオレに「ダメ出し」してきた件

咲良きま

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第9話

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妹は俺と正反対。スポーツ万能で、体育会系。まだ、春だというのにすでに真っ黒に日焼けしている。ソフトボールをやっていて、たまにキャッチボールの相手をさせられる。
って、そんなことよりも、なぜ今現れるんだ。さっき嫌な予感はちらっとしていたんだが。
…。
俺は、固まってしまった。
いつものようにすぐ返事ができず、だまっていると、
「お兄ちゃん?食事!
 聞いてる?
 イヤホンはずして!」
妹が、いきなりイヤホンをとりあげた。
俺はあわてて、ストップボタンを押した。音速の速さでいて、さりげなく。まさに神業。音速の貴公子とは俺のことだ。
幸い妹には聞かれなかった…はずだ。そうであってくれ、兄の威厳なんて最初からないようなものだが、変態扱いはされたくないぞ。
妹は半分あきれながら、また繰り返す。
「お兄ちゃん?食事!
 わかった?」
「うん。わかった。今から行く。」
「全く、ガリ勉なんだから。
 悪いとは言わないけど、もうちょっと今を楽しむべきなんじゃない?
 スポーツとかやったらいいのに。」
「うん。」
「…。
 絶対しないのに、うんとか言うな。生返事ばっかりなんだから!」
ぶつぶつ言いながら、部屋を出て行った。
びびった。びびった。
まじで、びびった。妹が去った後、俺はびっしり冷や汗をかいていた。
「いや、まじで危なかったね。
 でも、あきちゃんなら、面白がってくれるはずだよ。」
瞳がなんでもないように、気楽に言うのを、俺は無視して、食事の為に部屋をでた。
鈍感力、鈍感力、今こそはっきして普段通りにふるまうのだ。
 しかし、意識すればするほど、俺の態度はぎくしゃくしているようで、妹はいぶかしげな表情でこちらを見ている。俺は、ひたすら黙々と食べ続けた。
食事の後に、妹に声をかけられた。
正直、心臓が止まるかと思うほどびびった。食事の間中、あのCDのことをいつ問われるのか、気が気じゃなかったので、ついに来たかと思ったのだ。
しかし、妹はただ食後にキャッチボールの相手をして欲しいと言ってきただけだった。いつもなら、嫌な顔をして渋るところだが、俺は二つ返事で答えると、二人いつもの公園へ。
薄暗い外灯の中、ミットの乾いたいい音が響く。
「お兄ちゃん、もっと左手のミットをこうひねってこんなふうに内側へひいたら、その反動でスムーズに投げられるよ。」
俺はめんどくさいと思いながらも、一応言われたとおりにやってみる。
「だから、そうじゃなくてこうだって!」
妹はしなやかなフォームをみせる。
言われてすぐその通りできたら誰も苦労はしないさ。妹に指導されながら?もとい、怒られながら俺は大人しくキャッチボールをするのだった。
とにかく、CDのことがばれていなくてよかった、よかった。
ってか、俺はなんでこんなにびびりなんだ?別に、俺が好んで買ったものでもないのに。
「そりゃ、ゆきぴろだから!」
俺が、声に気をとられた瞬間、妹がボールを投げた。
「お兄ちゃん、危ない!」
ボールは俺のボディへ。
無常にも、ボールは腹に直撃した。
ソフトボールの3号球は男の拳大の大きさなのを知っているか?当たったら半端なく痛いんだぜ?俺、悶絶しまくり!
せめてもの救いは顔面じゃなくてよかったってところ。そんな事態になったら俺、確実に天に召されてしまう。アーメン!
「どうしたら、いきなりよそ見なんかできるの!」
弱り目に祟り目とはこのことだ。弱った俺に妹の説教が襲い掛かかった。
瞳の奴は、どこいった?
くそっ。あいつめ。あいつめ。ほとぼりが冷めるまで出てこない気だな!
その夜、俺は怒りを勉強にぶつけるのだった。

翌朝、目が覚めると瞳の言ったとおり、右足にたくさんの蕁麻疹ができていた。
たまらなくかゆい。腹も痛いし、ふんだりけったりだ。
俺は、かくのをこらえムヒをぬると、朝飯を食べ、自転車でいつもの通学路をこぎだす。
リュックには昨日銀子に借りたCDをちゃんといれてある。
一刻も速く、お引き取り願いたい!
昨日のようなことは、もうこりごりだ。
俺は、返さなくてはならないという強迫観念にかられていた。
うん。妹だけじゃなく、親にも見られたくないしな。
これだけは俺が持っているところを誰の目にも触れさせてはならない。エロ本以上のインパクトがあるぞ、絶対に。
しかし、この恥ずかしい代物を、銀子はどうやって手に入れたのか。インターネットでの購入なら恥ずかしくないな。
まさか、堂々と購入してないよな?
うーーん。しているかもしれない。なにせ、人外の生物、おたふく様だからな。人の思惑などいちいち気にされないのだろう。
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