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第3話
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質問していいか?
「どうぞ。」
期限ってなんだ。期限内に課題をクリアできないと、ペナルティーでもあるのか。
確かにまともな課題ではある。まぁ、俺の目指すところとおおむね一致はしている。俺だって、俺だって、本当は友達が欲しいし、恋もしたいさ。
なんの為の高校生活だ?青春する為だろう?
…熱くなってしまった。落ち着け、俺!
しかし、簡単に人と話せというが、どうしろっていうんだ。まず、そこから大きくつまずくんだ俺の場合。
「それについては、僕が助け舟を出すから、まずは隣の席の女の子に話しかけてみなよ。
校歌の校歌の練習どうだった?ってな具合にさぁ。」
隣の席。隣の席はどんな子が座っていたっけ。
って、最初のハードル高くないか?
いきなり女の子だなんて、…む、無理だ。絶対無理。
「大丈夫だよ。隣の席の子、女の子に分類されないタイプの子だから。
君は目に映ったものを認識していないようだけど、僕はばっちりさ。彼女ならうってつけだよ。なにせ、異性を感じさせないタイプだから。」
異性を感じさせないタイプ。…一体どんなタイプだ。そこまで言わしめるとは、ある意味興味が湧いてくる。
「それはいいことだ。じゃ、寝ていられないよ。さっさと起きて、教室に戻るんだ。」
おお。そうだな。
おっと、最初の質問に答えてないぞ。期限ってなんだ?
「ふふ。『善は急げ』だよ。さぁ、起きて!」
なんだよ。答えないのか。気持ち悪いじゃないか。
「ほら、早く!」
そこで、視界が意思に反して勝手に開いた。くっ、光が目に飛び込んでくる。眩しい。
あ、そうだ眼鏡。俺の大事な眼鏡。
眼鏡がないと、裸で町を歩くようなものだぞ。俺、羞恥心で消えてしまうに違いない。
無…無理。今日は、もう早退するぞ。
「そんなことにかまってないで早く!」
俺のベッドの上に、小さくちょこんと瞳の奴が実体化して座っている。瞳は俺の、そでをひっぱって、
「ほら、行くよ」
っと、せかす有り様。
ちょっと、待て。幻覚か?そうだ、何かの間違いだ。全て、夢だ。俺は夢をみているんだ。
「このごに及んで、何をしのごの言っているの。
そうだよ。幻覚に決まっているでしょ。君の脳に頼んで君だけに僕が見えるように細工してもらったんだ。
何せ、僕は君の瞳だからね。君といつでも共にいるよ。分かった?
分かったら、ほらさっさと行くよ。」
俺の心は決まった。
なんというかその瞬間に諦めたんだろうな。とにかく、思考をやめた。うん。考えるのは止めよう。
脳に細工ってなんだ?ってつっこむのも。
とりあえず、現状をありのままにうけいれとこう。はっきりいって、この有り様、俺の許容量をはるかに超えているからな。
保健室の先生が声をかけてきた。
「あら、貧血治ったの?よかったわ。
まだ顔が青いわね。大丈夫かしら?
本当に行くの?」
五十代の優しい女の先生に俺は情けない蚊の鳴くような声で、
「…はい」
としか言うことしかできなかった。
ぎこちなく頭をさげて教室を出ると、授業中の時間帯なのか廊下はしんとしていた。
この校舎は明治に建てられたもので、廊下はみしみしときしむ。階段は大きな大理石をふんだんにつかってあって、手すりには細かい彫刻がされてあり、繊細なその装飾に俺はいつもほっとする。
「はい。はい。はい。はい。ひたるのは、そこまで。
そんなの今は置いといて。
ほら、さっさと戻るよ。」
何をそんなに急ぐのか、まだ授業中ではないか。
きっと例の校歌の指導で誰もまだ教室に戻ってないさ。それよりも、この手すりのひんやりとした手触り、これそ大理石ならではの持ち味。
「はい。はい。はい。はい。うっとりするのも、そこまで。
…正直きもいから。」
あ、きもいって言ったな。それ、人に言っちゃいけないんだぞ。なぜって?ダメージ大きいからな。きもいとか、うざいとかってさ。結構しばらく立ち直れないんだからな。
あれは、中学一年生の時だった、俺はいつものように…。
「はい。はい。はい。はい。回想するのも、止めて。また無意味に殻に閉じこもろうとするんだから。
…なんだか僕、ちょっと頭にきた。
実力行使にでちゃうもんね。」
うんうん。実力行使ね。
なんだと?実力行使?
「どうぞ。」
期限ってなんだ。期限内に課題をクリアできないと、ペナルティーでもあるのか。
確かにまともな課題ではある。まぁ、俺の目指すところとおおむね一致はしている。俺だって、俺だって、本当は友達が欲しいし、恋もしたいさ。
なんの為の高校生活だ?青春する為だろう?
…熱くなってしまった。落ち着け、俺!
しかし、簡単に人と話せというが、どうしろっていうんだ。まず、そこから大きくつまずくんだ俺の場合。
「それについては、僕が助け舟を出すから、まずは隣の席の女の子に話しかけてみなよ。
校歌の校歌の練習どうだった?ってな具合にさぁ。」
隣の席。隣の席はどんな子が座っていたっけ。
って、最初のハードル高くないか?
いきなり女の子だなんて、…む、無理だ。絶対無理。
「大丈夫だよ。隣の席の子、女の子に分類されないタイプの子だから。
君は目に映ったものを認識していないようだけど、僕はばっちりさ。彼女ならうってつけだよ。なにせ、異性を感じさせないタイプだから。」
異性を感じさせないタイプ。…一体どんなタイプだ。そこまで言わしめるとは、ある意味興味が湧いてくる。
「それはいいことだ。じゃ、寝ていられないよ。さっさと起きて、教室に戻るんだ。」
おお。そうだな。
おっと、最初の質問に答えてないぞ。期限ってなんだ?
「ふふ。『善は急げ』だよ。さぁ、起きて!」
なんだよ。答えないのか。気持ち悪いじゃないか。
「ほら、早く!」
そこで、視界が意思に反して勝手に開いた。くっ、光が目に飛び込んでくる。眩しい。
あ、そうだ眼鏡。俺の大事な眼鏡。
眼鏡がないと、裸で町を歩くようなものだぞ。俺、羞恥心で消えてしまうに違いない。
無…無理。今日は、もう早退するぞ。
「そんなことにかまってないで早く!」
俺のベッドの上に、小さくちょこんと瞳の奴が実体化して座っている。瞳は俺の、そでをひっぱって、
「ほら、行くよ」
っと、せかす有り様。
ちょっと、待て。幻覚か?そうだ、何かの間違いだ。全て、夢だ。俺は夢をみているんだ。
「このごに及んで、何をしのごの言っているの。
そうだよ。幻覚に決まっているでしょ。君の脳に頼んで君だけに僕が見えるように細工してもらったんだ。
何せ、僕は君の瞳だからね。君といつでも共にいるよ。分かった?
分かったら、ほらさっさと行くよ。」
俺の心は決まった。
なんというかその瞬間に諦めたんだろうな。とにかく、思考をやめた。うん。考えるのは止めよう。
脳に細工ってなんだ?ってつっこむのも。
とりあえず、現状をありのままにうけいれとこう。はっきりいって、この有り様、俺の許容量をはるかに超えているからな。
保健室の先生が声をかけてきた。
「あら、貧血治ったの?よかったわ。
まだ顔が青いわね。大丈夫かしら?
本当に行くの?」
五十代の優しい女の先生に俺は情けない蚊の鳴くような声で、
「…はい」
としか言うことしかできなかった。
ぎこちなく頭をさげて教室を出ると、授業中の時間帯なのか廊下はしんとしていた。
この校舎は明治に建てられたもので、廊下はみしみしときしむ。階段は大きな大理石をふんだんにつかってあって、手すりには細かい彫刻がされてあり、繊細なその装飾に俺はいつもほっとする。
「はい。はい。はい。はい。ひたるのは、そこまで。
そんなの今は置いといて。
ほら、さっさと戻るよ。」
何をそんなに急ぐのか、まだ授業中ではないか。
きっと例の校歌の指導で誰もまだ教室に戻ってないさ。それよりも、この手すりのひんやりとした手触り、これそ大理石ならではの持ち味。
「はい。はい。はい。はい。うっとりするのも、そこまで。
…正直きもいから。」
あ、きもいって言ったな。それ、人に言っちゃいけないんだぞ。なぜって?ダメージ大きいからな。きもいとか、うざいとかってさ。結構しばらく立ち直れないんだからな。
あれは、中学一年生の時だった、俺はいつものように…。
「はい。はい。はい。はい。回想するのも、止めて。また無意味に殻に閉じこもろうとするんだから。
…なんだか僕、ちょっと頭にきた。
実力行使にでちゃうもんね。」
うんうん。実力行使ね。
なんだと?実力行使?
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