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第20話
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ミキ。
…命の大半を削ったの?やっぱり、もうあなたはこの世に存在しないの?
私はぎゅっとペンダントを握りしめる。
その様子をじっと見ながら、コスモスは苦笑いをもらす。
「だけど、動機はあなたがただ大切な存在っていう、それだけの理由だけではないわね。その青の光からは、あなたに対する大きな執着を感じる。
きっと、姉妹もあなたの体をのっとりたかったんじゃないかしら。
でも、それができなかった。自分の手にできなかったものを、他の人魚になんて、絶対にとられたくないっていう思惑も無きにしもあらずってところかもしれないわね。」
私の表情に戸惑いをみてとったのだろう、人魚は続けてこう言った。
「まぁ、でも光栄に思うことだわ。あなたは彼女に、子を産む以外の別の感情を呼び起こさせたのだから。あなたに対する執着心。それもとてつもなく大きな。それをこちらの世界では、なんというのかしら。『友情』?それとも『恋』?
…そうね。どちらかというと『恋』の方がしっくりくるわね。
まぁ、その感情がなんであれ、彼女にとってあなたは大切な存在だったってことだけは間違っていないわ。」
私は、どきんとするのを感じた。コスモスがミキのことを過去形にして話したから。
「どうして、『だった』なんて話し方をするの?」
「何を今更。あなた知っているでしょ?彼女が子を産んだのを。」
「え?」
「彼女の子供、グロテスクな姿だったわね。愛がないからかしら。本当はあなたを食べたかったのだから、仕方ないことなのかしら。
でも、彼女どうかしているわ。どうして、本能に逆らってまであなたを生かしたかったのかしら。あなたを生かすためにあなたのそばに現れたあの異星人を仕方なく食べたんだわ。
本能とあなたへの愛と両方のおり合いをつける為に、ね。
それに、あなたがあの異星人に惹かれていたのも我慢ならなかったんじゃないかしら?
ふふふ。
ちょうど、私がこちらの世界に堕ちて来たのって彼女の交配のすぐ後だったみたいね。彼女、かなり動転していたわよ。その後、すぐに出産したでしょ?本来ならもっと時間をかけて育むべきところだったのに無理やり子をたたきおこして。ただでさえ、あなたの為に力を使って消耗していたはずだし子が生まれたのは奇跡だわ。まぁ、それどころじゃなかったのかもね。…あなたのことが心配で。」
「私が?」
「そうよ。だって、私があなたの体に目をつけるなんて言わずもがななことだから。
ふふふ。焦っていたわね。
おかげで、なんとも中途半端な王が生まれたものだわ。未完成品。欠陥物。
ふふふ。彼女、血迷ったわね。」
コスモスは私の悪夢を現実の世界のことのように平然と語った。それでも、あの悪夢が現実の出来事だということを信じたくなくて、私は聞いた。
「ねぇ。あの夢って本当だったの?」
「夢?さぁ、私たちは夢なんてみないから。
ああ、でもあなたは夢をみることで、出来事を把握しているのね。そう、夢なのね。
興味深いわ。私達とは別の感応方法。さっそく、その項目についてのデータの収集をしなくては。」
彼女はぽんっと、金魚に変身しパソコンを立ち上げている。
「ねぇ。どうして、ミキは私を食べたかったの?
どうして、先輩を食べたの?」
ドッキング体制に入っている彼女はやや不機嫌そうな声で答えた。
「…言ってなかったかしら。私たちの交配は相手を食べることなの。
それだけじゃないのよ。相手の魂までをも飲み干すの。そうして、すべての記憶を取り込む。究極の愛の形でしょ?
私たちにとっては一生に一度の食事よ。
分かった?もう、邪魔しないでね。」
私は無言で首を縦にふった。
…命の大半を削ったの?やっぱり、もうあなたはこの世に存在しないの?
私はぎゅっとペンダントを握りしめる。
その様子をじっと見ながら、コスモスは苦笑いをもらす。
「だけど、動機はあなたがただ大切な存在っていう、それだけの理由だけではないわね。その青の光からは、あなたに対する大きな執着を感じる。
きっと、姉妹もあなたの体をのっとりたかったんじゃないかしら。
でも、それができなかった。自分の手にできなかったものを、他の人魚になんて、絶対にとられたくないっていう思惑も無きにしもあらずってところかもしれないわね。」
私の表情に戸惑いをみてとったのだろう、人魚は続けてこう言った。
「まぁ、でも光栄に思うことだわ。あなたは彼女に、子を産む以外の別の感情を呼び起こさせたのだから。あなたに対する執着心。それもとてつもなく大きな。それをこちらの世界では、なんというのかしら。『友情』?それとも『恋』?
…そうね。どちらかというと『恋』の方がしっくりくるわね。
まぁ、その感情がなんであれ、彼女にとってあなたは大切な存在だったってことだけは間違っていないわ。」
私は、どきんとするのを感じた。コスモスがミキのことを過去形にして話したから。
「どうして、『だった』なんて話し方をするの?」
「何を今更。あなた知っているでしょ?彼女が子を産んだのを。」
「え?」
「彼女の子供、グロテスクな姿だったわね。愛がないからかしら。本当はあなたを食べたかったのだから、仕方ないことなのかしら。
でも、彼女どうかしているわ。どうして、本能に逆らってまであなたを生かしたかったのかしら。あなたを生かすためにあなたのそばに現れたあの異星人を仕方なく食べたんだわ。
本能とあなたへの愛と両方のおり合いをつける為に、ね。
それに、あなたがあの異星人に惹かれていたのも我慢ならなかったんじゃないかしら?
ふふふ。
ちょうど、私がこちらの世界に堕ちて来たのって彼女の交配のすぐ後だったみたいね。彼女、かなり動転していたわよ。その後、すぐに出産したでしょ?本来ならもっと時間をかけて育むべきところだったのに無理やり子をたたきおこして。ただでさえ、あなたの為に力を使って消耗していたはずだし子が生まれたのは奇跡だわ。まぁ、それどころじゃなかったのかもね。…あなたのことが心配で。」
「私が?」
「そうよ。だって、私があなたの体に目をつけるなんて言わずもがななことだから。
ふふふ。焦っていたわね。
おかげで、なんとも中途半端な王が生まれたものだわ。未完成品。欠陥物。
ふふふ。彼女、血迷ったわね。」
コスモスは私の悪夢を現実の世界のことのように平然と語った。それでも、あの悪夢が現実の出来事だということを信じたくなくて、私は聞いた。
「ねぇ。あの夢って本当だったの?」
「夢?さぁ、私たちは夢なんてみないから。
ああ、でもあなたは夢をみることで、出来事を把握しているのね。そう、夢なのね。
興味深いわ。私達とは別の感応方法。さっそく、その項目についてのデータの収集をしなくては。」
彼女はぽんっと、金魚に変身しパソコンを立ち上げている。
「ねぇ。どうして、ミキは私を食べたかったの?
どうして、先輩を食べたの?」
ドッキング体制に入っている彼女はやや不機嫌そうな声で答えた。
「…言ってなかったかしら。私たちの交配は相手を食べることなの。
それだけじゃないのよ。相手の魂までをも飲み干すの。そうして、すべての記憶を取り込む。究極の愛の形でしょ?
私たちにとっては一生に一度の食事よ。
分かった?もう、邪魔しないでね。」
私は無言で首を縦にふった。
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