18 / 33
第18話
しおりを挟む
しっとりとした黒髪がとても艶やかで、肌は陶器のようになめらかだ。見る角度によって、肌がひそやかに、にぶく輝く。
そして、何よりも印象的なのはその両の目の力。圧倒的なパワーで私を圧倒する。なんとも形容し難い妖しい二つの光はまるで私の心の中までも見通すかのようだ。
こちらの魂までもむさぼり食らいそうな強烈な視線!
そのうえ、妖魚は全身から挑発的とも言える、においたつような色気をまきちらしていた。
私はその色気のような毒気に、あてられたのかもしれない。しばらくその嫣然たる姿に陶然として見とれていた。けれどそれは、次の瞬間には、一瞬で我にかえるほどの、ぞっとする笑みを見せたのだ!
美しいだけによけいに恐ろしい。全身に鳥肌が立つのが分かった。背なかを冷たい汗が落ちる。
金縛りにあったように、恐怖で呆然としていると、それはほふく前進をするような格好でずるずる音を立ててこちらへ近づいてくる。視線をこちらに見据えたまま、着実と近づいて来る!
こんな時なのに、どうしてか、妖魚が動くたびにのぞく胸の谷間が気になってしょうがない自分がいた。しょうもなさと、恐ろしさを同時に味わいながら、私は、慌ててドアを閉じる。すると、もの凄い力でドアが押された。しばらく、ドアを挟んで互いの力は拮抗していた。押し合いが続く。私は体重をかけて、押し続けた。
けれど、弄ばれていたのだろう。やがてもっとはるかに大きな力がいっきに押し寄せてきて私は後ろの壁にふっとばされた。
背なかと頭を打って少しくらくらしたところに、冷たいものが私の首にかかるのが分かった。気付くとすぐ目の前に、あの妖魚の顔が迫っていた。首にかかっていたのは妖魚の両手のようだった。手の指の間にあるひれのぬるぬるとした感触が首筋に伝わる。
ああ、私は、殺されるのだと冷静に考える。
すると、とうとつに首に込められていた力が解けた。
「お遊びはここまで。さっ。おしゃべりしましょう。」
どすの利いた声がした。まるで、酒焼けと煙草で痛めつけられた後のようなつぶれた声。
妖魚は四苦八苦しながら、また室内に戻ろうとしていた。はって、戻ろうと頑張っている姿はなんだかとても健気でこっけいだ。そして、かなり無様でもある。さきほどの、恐ろしさがうそみたいで私は思わず口元に軽い笑みができた。
「ちょっと、遊びすぎたみたい。疲れたわ。」
妖魚は私の勉強机にもたれて、肩で息をしている。私はとりあえず、自分のクッションを抱えて妖魚とは一定の距離を置いて座り込んだ。
「何から説明したらいいかしら。」
妖魚は首をかしげて言った。その動作のせいで黒髪が絹糸のようにさらさらと白い肌に揺れている。その流れを目で追いながら私は言った。
「とりあえず、自己紹介してくれたら助かるな。あなたは、先輩の金魚よね?」
私は率直に尋ねる。さんざん脅された後で、変に肝が据わってしまったようだ。
「そうよ、元はね。ローレライにだってなれるわよ?」
すると、妖魚はいとも簡単に今度は金髪碧眼の美女に姿を変えた。ただし、やはり人魚であることに変わりはなかった。
彼女は伸びをしながら今度は軽やかな美声で歌うように話しだす。
「どうやら、この姿が、本来の私の姿に近いみたい。体がとってもしっくりするもの。本当はあなたの体をいただきたかったんだけど。
まぁ失敗しちゃったものはしょうがないわね。これはこれで、まずまずだし。
だけどこの世界、とっても面白いわ。特に、あなた達の種族。ふふ。本能をどこに置き忘れて来たのかしら?
非常に興味深いわ。」
私の体、乗っ取るつもりだったの?
何気なく、人魚はさらっと恐ろしいことを言ってのける。
ローレライ。確か、その美しい歌声で舟人をラインの川底へ沈めてしまうという伝説の妖女。さきほどから、ひと癖ある美女にばっかりに変身するんだな。
今更身の危険を感じてもどうしようもないし、無難なところから話をつなげないと。
私は用心しながらきりだした。
「この世界って、言ったわね。あなたは違う世界から来たの?
あなたの名前はなんというの?」
「名前はナンバー千十二。」
ナンバー千十二。
あれ?どうしてだろ。聞き覚えがある。
「登録番号みたいなものかしら。私たちは一度にたくさん生まれるから、個体に名前をつけている暇なんてないのよ。こうして旅をできるのもほんの一握り。みんな生まれてすぐに、ほとんど狩られてしまうから。
こうして、あなたに出会えたのも奇跡だわ。」
そう言って、彼女はにこっとほほ笑んだ。私はその奇跡を喜ぶ気持ちにはとてもなれそうもないけれど…。
彼女は遠くを見て、つぶやく。遠い故郷に思いを馳せたのだろうか。
「そう、私は、違う世界で生まれたの。生まれてすぐ、心と体を切り離したからこうして、意識を飛ばしてここまでこられたのよ。」
「どうして、そうまでして旅をしているの?」
「私にとっては、生きる目的の為よ。あなたに説明するのは難しいかもしれない。さきほど得た知識で、知っているのよ。あなた達の種族が変わっていることを。」
「どこがあなた達とは違うの?それに、生きる目的って、何?そんなに明確にあるものなの?」
ローレライはふふっと優しく笑った。
「その発言そのものが、面白いわ。ありえないもの。
私たちの目的は子孫を残すこと。この世に自分の血を残すことよ。他の誰でもない私の血を、ね。
あなた達の社会は不思議ね。子を残すことが優先事項にならないなんて。それだけを目的に生きている私には、奇異でしょうがないわ。
子どもを産まない選択肢。そんなものがあるなんて、本当に驚き。」
「旅と、子孫を残すことがどう関わっているのかさっぱり分からないのだけど。」
「ああ、そうね。あなた達は同じ種族間でしか交配を行わないのだったわね。
私たちは違うの。異種の文明や文化、そして新しい知識を交配によって、取り込むの。そうして、進化しながら繁栄してきたのよ。
最初は自分の体で遠い場所を目指して泳いで行っていたのだけど、より遠くのより異なる種族を求めるあまりまたさらにどんどん遠くに旅をするようになって、生身の体で行ける限界を知ってしまったの。
そうして、体を捨てることを覚えたのね。
でも、あれは本当に嫌なものだわ。
だから、こうして久々に肉体に宿るのって、とっても快感。五感が目覚めるのってとっても新鮮ね。ずっと、六感だけの世界だったから。」
「よく、分らない。体を捨ててまで旅をすることが。
本能のままに生きているの?それって、どんな感じなのかしら。」
「分からない?ふふ。
常に己を支配している本能の欲求を感じないかしら?
進化・進化・進化!
体中が叫ぶのよ。新しいものを求めて。伴侶を求めて。文明を求めてね。」
「それじゃ、あなたはこの地球に生きる人間の文明を吸収する為にやって来たのね?」
質問ではなく、断定的に私は言った。
すると、意外にも人魚は首を横にふった。さも、面白いことを私が言ったような驚きに満ちた表情で。
「まさか!
でも、そうね。確かにここも面白いけれど。残念ながら、私の本能はここの種族・文明を求めてはいないわ。
私は、恋しい彼を追って来たの。私達と似たように精神体で旅をする、似て非なる珍しい種族の彼を。」
「彼?」
「ええ。出会ったのは偶然だった。彼も私も同じ天敵に狩られようとしていたから。
…違うわね。正確には私が狩られるはずだったの。突然彼が現れて助けてくれたのよ。素敵でしょ?
私たちは互いに強烈に惹かれあったわ。」
彼女の恋をするような夢見心地な表情が一転、険しい般若のような形相に変わった。彼女の拳が固く握りしめられる。
「…でも、彼逃げたのよ。私たちは結ばれる運命なのに。
それから、ずっと彼を追いかけているの。あきれるぐらい長い時をかけてね。
彼、この近くにいるはずなの。分かるの。だって、心がさっきからときめいてしょうがないもの。
探さなくちゃ!」
彼女は固く握った拳を激しく壁に打ち付けた。
ああ、止めて。我が家は安物資だから簡単に穴があくのよ。
彼女は思い出に浸っているのだろう。虚空を見つめて微動だにしなくなった。
ストーカーだわ。それも、かなり年季の入った。
どこの、誰だか知らないけれど、人助けをしたあげく追いかけまわされるなんて、災難だなぁ。
しみじみ、追いかけられている彼に同情していると、突然彼女は私に水を向ける。
「まぁ、そういうわけだから、これから宜しくね。」
何が宜しくなのか、本当のところよく理解できないけれど、私はただうなずくしかなかった。
なにはともあれ、その残念な彼には申し訳ないけれど、一刻も速く彼女につかまってもらって、彼女同様この星から去っていただくことにしなくては。
そして、何よりも印象的なのはその両の目の力。圧倒的なパワーで私を圧倒する。なんとも形容し難い妖しい二つの光はまるで私の心の中までも見通すかのようだ。
こちらの魂までもむさぼり食らいそうな強烈な視線!
そのうえ、妖魚は全身から挑発的とも言える、においたつような色気をまきちらしていた。
私はその色気のような毒気に、あてられたのかもしれない。しばらくその嫣然たる姿に陶然として見とれていた。けれどそれは、次の瞬間には、一瞬で我にかえるほどの、ぞっとする笑みを見せたのだ!
美しいだけによけいに恐ろしい。全身に鳥肌が立つのが分かった。背なかを冷たい汗が落ちる。
金縛りにあったように、恐怖で呆然としていると、それはほふく前進をするような格好でずるずる音を立ててこちらへ近づいてくる。視線をこちらに見据えたまま、着実と近づいて来る!
こんな時なのに、どうしてか、妖魚が動くたびにのぞく胸の谷間が気になってしょうがない自分がいた。しょうもなさと、恐ろしさを同時に味わいながら、私は、慌ててドアを閉じる。すると、もの凄い力でドアが押された。しばらく、ドアを挟んで互いの力は拮抗していた。押し合いが続く。私は体重をかけて、押し続けた。
けれど、弄ばれていたのだろう。やがてもっとはるかに大きな力がいっきに押し寄せてきて私は後ろの壁にふっとばされた。
背なかと頭を打って少しくらくらしたところに、冷たいものが私の首にかかるのが分かった。気付くとすぐ目の前に、あの妖魚の顔が迫っていた。首にかかっていたのは妖魚の両手のようだった。手の指の間にあるひれのぬるぬるとした感触が首筋に伝わる。
ああ、私は、殺されるのだと冷静に考える。
すると、とうとつに首に込められていた力が解けた。
「お遊びはここまで。さっ。おしゃべりしましょう。」
どすの利いた声がした。まるで、酒焼けと煙草で痛めつけられた後のようなつぶれた声。
妖魚は四苦八苦しながら、また室内に戻ろうとしていた。はって、戻ろうと頑張っている姿はなんだかとても健気でこっけいだ。そして、かなり無様でもある。さきほどの、恐ろしさがうそみたいで私は思わず口元に軽い笑みができた。
「ちょっと、遊びすぎたみたい。疲れたわ。」
妖魚は私の勉強机にもたれて、肩で息をしている。私はとりあえず、自分のクッションを抱えて妖魚とは一定の距離を置いて座り込んだ。
「何から説明したらいいかしら。」
妖魚は首をかしげて言った。その動作のせいで黒髪が絹糸のようにさらさらと白い肌に揺れている。その流れを目で追いながら私は言った。
「とりあえず、自己紹介してくれたら助かるな。あなたは、先輩の金魚よね?」
私は率直に尋ねる。さんざん脅された後で、変に肝が据わってしまったようだ。
「そうよ、元はね。ローレライにだってなれるわよ?」
すると、妖魚はいとも簡単に今度は金髪碧眼の美女に姿を変えた。ただし、やはり人魚であることに変わりはなかった。
彼女は伸びをしながら今度は軽やかな美声で歌うように話しだす。
「どうやら、この姿が、本来の私の姿に近いみたい。体がとってもしっくりするもの。本当はあなたの体をいただきたかったんだけど。
まぁ失敗しちゃったものはしょうがないわね。これはこれで、まずまずだし。
だけどこの世界、とっても面白いわ。特に、あなた達の種族。ふふ。本能をどこに置き忘れて来たのかしら?
非常に興味深いわ。」
私の体、乗っ取るつもりだったの?
何気なく、人魚はさらっと恐ろしいことを言ってのける。
ローレライ。確か、その美しい歌声で舟人をラインの川底へ沈めてしまうという伝説の妖女。さきほどから、ひと癖ある美女にばっかりに変身するんだな。
今更身の危険を感じてもどうしようもないし、無難なところから話をつなげないと。
私は用心しながらきりだした。
「この世界って、言ったわね。あなたは違う世界から来たの?
あなたの名前はなんというの?」
「名前はナンバー千十二。」
ナンバー千十二。
あれ?どうしてだろ。聞き覚えがある。
「登録番号みたいなものかしら。私たちは一度にたくさん生まれるから、個体に名前をつけている暇なんてないのよ。こうして旅をできるのもほんの一握り。みんな生まれてすぐに、ほとんど狩られてしまうから。
こうして、あなたに出会えたのも奇跡だわ。」
そう言って、彼女はにこっとほほ笑んだ。私はその奇跡を喜ぶ気持ちにはとてもなれそうもないけれど…。
彼女は遠くを見て、つぶやく。遠い故郷に思いを馳せたのだろうか。
「そう、私は、違う世界で生まれたの。生まれてすぐ、心と体を切り離したからこうして、意識を飛ばしてここまでこられたのよ。」
「どうして、そうまでして旅をしているの?」
「私にとっては、生きる目的の為よ。あなたに説明するのは難しいかもしれない。さきほど得た知識で、知っているのよ。あなた達の種族が変わっていることを。」
「どこがあなた達とは違うの?それに、生きる目的って、何?そんなに明確にあるものなの?」
ローレライはふふっと優しく笑った。
「その発言そのものが、面白いわ。ありえないもの。
私たちの目的は子孫を残すこと。この世に自分の血を残すことよ。他の誰でもない私の血を、ね。
あなた達の社会は不思議ね。子を残すことが優先事項にならないなんて。それだけを目的に生きている私には、奇異でしょうがないわ。
子どもを産まない選択肢。そんなものがあるなんて、本当に驚き。」
「旅と、子孫を残すことがどう関わっているのかさっぱり分からないのだけど。」
「ああ、そうね。あなた達は同じ種族間でしか交配を行わないのだったわね。
私たちは違うの。異種の文明や文化、そして新しい知識を交配によって、取り込むの。そうして、進化しながら繁栄してきたのよ。
最初は自分の体で遠い場所を目指して泳いで行っていたのだけど、より遠くのより異なる種族を求めるあまりまたさらにどんどん遠くに旅をするようになって、生身の体で行ける限界を知ってしまったの。
そうして、体を捨てることを覚えたのね。
でも、あれは本当に嫌なものだわ。
だから、こうして久々に肉体に宿るのって、とっても快感。五感が目覚めるのってとっても新鮮ね。ずっと、六感だけの世界だったから。」
「よく、分らない。体を捨ててまで旅をすることが。
本能のままに生きているの?それって、どんな感じなのかしら。」
「分からない?ふふ。
常に己を支配している本能の欲求を感じないかしら?
進化・進化・進化!
体中が叫ぶのよ。新しいものを求めて。伴侶を求めて。文明を求めてね。」
「それじゃ、あなたはこの地球に生きる人間の文明を吸収する為にやって来たのね?」
質問ではなく、断定的に私は言った。
すると、意外にも人魚は首を横にふった。さも、面白いことを私が言ったような驚きに満ちた表情で。
「まさか!
でも、そうね。確かにここも面白いけれど。残念ながら、私の本能はここの種族・文明を求めてはいないわ。
私は、恋しい彼を追って来たの。私達と似たように精神体で旅をする、似て非なる珍しい種族の彼を。」
「彼?」
「ええ。出会ったのは偶然だった。彼も私も同じ天敵に狩られようとしていたから。
…違うわね。正確には私が狩られるはずだったの。突然彼が現れて助けてくれたのよ。素敵でしょ?
私たちは互いに強烈に惹かれあったわ。」
彼女の恋をするような夢見心地な表情が一転、険しい般若のような形相に変わった。彼女の拳が固く握りしめられる。
「…でも、彼逃げたのよ。私たちは結ばれる運命なのに。
それから、ずっと彼を追いかけているの。あきれるぐらい長い時をかけてね。
彼、この近くにいるはずなの。分かるの。だって、心がさっきからときめいてしょうがないもの。
探さなくちゃ!」
彼女は固く握った拳を激しく壁に打ち付けた。
ああ、止めて。我が家は安物資だから簡単に穴があくのよ。
彼女は思い出に浸っているのだろう。虚空を見つめて微動だにしなくなった。
ストーカーだわ。それも、かなり年季の入った。
どこの、誰だか知らないけれど、人助けをしたあげく追いかけまわされるなんて、災難だなぁ。
しみじみ、追いかけられている彼に同情していると、突然彼女は私に水を向ける。
「まぁ、そういうわけだから、これから宜しくね。」
何が宜しくなのか、本当のところよく理解できないけれど、私はただうなずくしかなかった。
なにはともあれ、その残念な彼には申し訳ないけれど、一刻も速く彼女につかまってもらって、彼女同様この星から去っていただくことにしなくては。
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説

扉の向こうは黒い影
小野 夜
ホラー
古い校舎の3階、突き当たりの隅にある扉。それは「開かずの扉」と呼ばれ、生徒たちの間で恐れられていた。扉の向こう側には、かつて理科室として使われていた部屋があるはずだったが、今は誰も足を踏み入れない禁断の場所となっていた。
夏休みのある日、ユキは友達のケンジとタケシを誘って、学校に忍び込む。目的は、開かずの扉を開けること。好奇心と恐怖心が入り混じる中、3人はついに扉を開ける。
【完結】人の目嫌い/人嫌い
木月 くろい
ホラー
ひと気の無くなった放課後の学校で、三谷藤若菜(みやふじわかな)は声を掛けられる。若菜は驚いた。自分の名を呼ばれるなど、有り得ないことだったからだ。
◆2020年4月に小説家になろう様にて玄乃光名義で掲載したホラー短編『Scopophobia』を修正し、続きを書いたものになります。
◆やや残酷描写があります。
◆小説家になろう様に同名の作品を同時掲載しています。

逢魔ヶ刻の迷い子3
naomikoryo
ホラー
——それは、閉ざされた異世界からのSOS。
夏休みのある夜、中学3年生になった陽介・隼人・大輝・美咲・紗奈・由香の6人は、受験勉強のために訪れた図書館で再び“恐怖”に巻き込まれる。
「図書館に大事な物を忘れたから取りに行ってくる。」
陽介の何気ないメッセージから始まった異変。
深夜の図書館に響く正体不明の足音、消えていくメッセージ、そして——
「ここから出られない」と助けを求める陽介の声。
彼は、次元の違う同じ場所にいる。
現実世界と並行して存在する“もう一つの図書館”。
六人は、陽介を救うためにその謎を解き明かしていくが、やがてこの場所が“異世界と繋がる境界”であることに気付く。
七不思議の夜を乗り越えた彼らが挑む、シリーズ第3作目。
恐怖と謎が交錯する、戦慄のホラー・ミステリー。
「境界が開かれた時、もう戻れない——。」

不労の家
千年砂漠
ホラー
高校を卒業したばかりの隆志は母を急な病で亡くした数日後、訳も分からず母に連れられて夜逃げして以来八年間全く会わなかった父も亡くし、父の実家の世久家を継ぐことになった。
世久家はかなりの資産家で、古くから続く名家だったが、当主には絶対守らなければならない奇妙なしきたりがあった。
それは「一生働かないこと」。
世久の家には富をもたらす神が住んでおり、その神との約束で代々の世久家の当主は働かずに暮らしていた。
初めは戸惑っていた隆志も裕福に暮らせる楽しさを覚え、昔一年だけこの土地に住んでいたときの同級生と遊び回っていたが、やがて恐ろしい出来事が隆志の周りで起こり始める。
経済的に豊かであっても、心まで満たされるとは限らない。
望んでもいないのに生まれたときから背負わされた宿命に、流されるか。抗うか。
彼の最後の選択を見て欲しい。
The Last Night
泉 沙羅
ホラー
モントリオールの夜に生きる孤独な少女と、美しい吸血鬼の物語。
15歳の少女・サマンサは、家庭にも学校にも居場所を持てず、ただひとり孤独を抱えて生きていた。
そんな彼女が出会ったのは、金髪碧眼の美少年・ネル。
彼はどこか時代錯誤な振る舞いをしながらも、サマンサに優しく接し、二人は次第に心を通わせていく。
交換日記を交わしながら、ネルはサマンサの苦しみを知り、サマンサはネルの秘密に気づいていく。
しかし、ネルには決して覆せない宿命があった。
吸血鬼は、恋をすると、その者の血でしか生きられなくなる――。
この恋は、救いか、それとも破滅か。
美しくも切ない、吸血鬼と少女のラブストーリー。
※以前"Let Me In"として公開した作品を大幅リニューアルしたものです。
※「吸血鬼は恋をするとその者の血液でしか生きられなくなる」という設定はX(旧Twitter)アカウント、「創作のネタ提供(雑学多め)さん@sousakubott」からお借りしました。
※AI(chatgpt)アシストあり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる