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第14話
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普段は勉強なんて好きじゃないし、進んでしようとも思わない。でも、問題を抱えている時は別だ。余計なことを考えなくてすむから。
今の私は、眠るのも怖く、ただひたすら机に向う時だけが、安らいだ時間だった。
また、夜がやってくる。恐怖の夜が。
私の寝不足はすでに慢性化していたので、だったらもう寝なくてもいいじゃんとひらきなおることにした。ふと時計を見ると午前3時。
寒さにふるえていたので、ちょっとだけ布団に入ることにした。布団の中に入ってもしばらくは暖かくない。そして、暖かくなることには、うとうととしてきた。
私の意思とは関係なく眠りがやってくる。
閉じた瞼の裏に、コバルトブルーのいもむしが現れる。
ああ、結局また夢を見るのか。
いもむしは体をくねらせ糸をはく。金色にも銀色にも見える糸がシャワーのように空へ広がり落ちてくる。不思議だ、とても奇麗。
やがて糸はいもむしを覆い尽くしてしまう。それは卵形になった光る糸の集合体。彼女の温かい寝床。その繭の中、いもむしは再び姿をミキに変えていた。彼女はほほをピンクに染め大きくなったお腹を幸せそうになでている。金と銀のきらめく繭の中で彼女の漆黒の髪は鮮烈だった。漆黒の長い絹のような髪は雪のようなきめの細かい素肌をつつんでいる。それは、まるで巨匠の描く一枚の裸婦画のようだ。
彼女は何か奇麗なメロディーを口ずさんでいる。まるで、お腹の中の何かに聞かせるように。とても慈愛に溢れた様子で。
やがて、彼女のお腹は異常なスピードで膨らみ始める。彼女自身よりも大きく。
すると、空をつんざくような悲鳴がした。眼球が飛び出るほどに目を見開いた彼女の苦悶の表情。美しい顔だけに、いっそう凄まじい。
彼女のお腹の内側から黒い節が一本つき出ていた。やがて、それが二本になり、三本になり。その度に赤い血が飛び散る。ミキの悲鳴がほとばしる。巨大なお腹の中でそれはごそごそと、うごめいている。何かを食らう音が聞こえてくる。汁をすするような音がするかと思えば、固いものを削るような音も聞こえる。
ああ、ミキ!ミキ!
一瞬ミキと目が合った気がした。
彼女は、かすかにほほ笑んだ。
ミキの表情が消えていくのが分かる。
彼女の命が失われていく。
姿のないまま、私は彼女に手をのばした。
ミキの手が私に伸ばされた。
私の見えない手はもう少しで、彼女の手に届いたはずだった。
けれど、それを阻止するように、ミキの伸ばした手が一瞬で消えた。
食われたのだ。
彼女の体の内側からのぞいた赤い目と一瞬目が合った!
それは、彼女を内側からおおかた食い散らかし、いっきに彼女の腹を食い破り外へと這い出てきた。
ああ、なんてこと。私は目を覆うが無駄だった。なぜか見えてしまうのだ。残酷な場面。壮絶な姿が。
ミキは生きたままそれに、あとかたもなく食べられてしまった。金と銀にきらめく繭の中は飛び散ったミキの血で真っ赤に染められていた。あの美しかった彼女の漆黒の髪の毛も汚く血でよごれあちこちに散らばっている。
彼女の腹から出てきたものを、私は知っていた。以前に見たことがあったから。
ミキの夢を見るようになる前に、続いていた悪夢の元凶。
あの、グロテスクな蜘蛛!
私は、私の悲鳴で目を覚ました。
そこには、待ち望んだ朝があった。
今の私は、眠るのも怖く、ただひたすら机に向う時だけが、安らいだ時間だった。
また、夜がやってくる。恐怖の夜が。
私の寝不足はすでに慢性化していたので、だったらもう寝なくてもいいじゃんとひらきなおることにした。ふと時計を見ると午前3時。
寒さにふるえていたので、ちょっとだけ布団に入ることにした。布団の中に入ってもしばらくは暖かくない。そして、暖かくなることには、うとうととしてきた。
私の意思とは関係なく眠りがやってくる。
閉じた瞼の裏に、コバルトブルーのいもむしが現れる。
ああ、結局また夢を見るのか。
いもむしは体をくねらせ糸をはく。金色にも銀色にも見える糸がシャワーのように空へ広がり落ちてくる。不思議だ、とても奇麗。
やがて糸はいもむしを覆い尽くしてしまう。それは卵形になった光る糸の集合体。彼女の温かい寝床。その繭の中、いもむしは再び姿をミキに変えていた。彼女はほほをピンクに染め大きくなったお腹を幸せそうになでている。金と銀のきらめく繭の中で彼女の漆黒の髪は鮮烈だった。漆黒の長い絹のような髪は雪のようなきめの細かい素肌をつつんでいる。それは、まるで巨匠の描く一枚の裸婦画のようだ。
彼女は何か奇麗なメロディーを口ずさんでいる。まるで、お腹の中の何かに聞かせるように。とても慈愛に溢れた様子で。
やがて、彼女のお腹は異常なスピードで膨らみ始める。彼女自身よりも大きく。
すると、空をつんざくような悲鳴がした。眼球が飛び出るほどに目を見開いた彼女の苦悶の表情。美しい顔だけに、いっそう凄まじい。
彼女のお腹の内側から黒い節が一本つき出ていた。やがて、それが二本になり、三本になり。その度に赤い血が飛び散る。ミキの悲鳴がほとばしる。巨大なお腹の中でそれはごそごそと、うごめいている。何かを食らう音が聞こえてくる。汁をすするような音がするかと思えば、固いものを削るような音も聞こえる。
ああ、ミキ!ミキ!
一瞬ミキと目が合った気がした。
彼女は、かすかにほほ笑んだ。
ミキの表情が消えていくのが分かる。
彼女の命が失われていく。
姿のないまま、私は彼女に手をのばした。
ミキの手が私に伸ばされた。
私の見えない手はもう少しで、彼女の手に届いたはずだった。
けれど、それを阻止するように、ミキの伸ばした手が一瞬で消えた。
食われたのだ。
彼女の体の内側からのぞいた赤い目と一瞬目が合った!
それは、彼女を内側からおおかた食い散らかし、いっきに彼女の腹を食い破り外へと這い出てきた。
ああ、なんてこと。私は目を覆うが無駄だった。なぜか見えてしまうのだ。残酷な場面。壮絶な姿が。
ミキは生きたままそれに、あとかたもなく食べられてしまった。金と銀にきらめく繭の中は飛び散ったミキの血で真っ赤に染められていた。あの美しかった彼女の漆黒の髪の毛も汚く血でよごれあちこちに散らばっている。
彼女の腹から出てきたものを、私は知っていた。以前に見たことがあったから。
ミキの夢を見るようになる前に、続いていた悪夢の元凶。
あの、グロテスクな蜘蛛!
私は、私の悲鳴で目を覚ました。
そこには、待ち望んだ朝があった。
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