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第12話
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なんて、真っ暗なところなんだろう。
真っ暗な場所に二人の人間がいる。
ああ、嫌だ。また昨日の夢!同じ夢!
二人の人間は私のよく知る人たちだった。一人は、親友。そして、もう一人は初恋の人。
岸田先輩とミキが恍惚とした表情でお互いの手をとり、見つめあっている。空には輝く星たち。なんてロマンチック。星に照らされて二人の姿は青く発光しているようだった。
二人の唇が合わさった瞬間、岸田先輩の表情がいっぺんした。驚愕で見開かれた瞳。それはあの凍えるようなブルー!
先輩の苦痛に歪んだ顔はとても正視に堪えうるものではなかった。
ストローで何かを飲むときに出る音。最後に残った水分を吸いこむ時のような音がした。
あっという間のことのようだった。本当に一瞬のような出来事。
そこには、もう岸田先輩の姿はなかった。まるで、掻き消えたかのように。
ミキが一人たたずんでいた。まるで、最初から一人でいたように。
どうしてだか、私には岸田先輩がその場から忽然と姿を消した理由が理解できた。
岸田先輩は体の内側から吸い込まれるようにミキに飲み込まれてしまったのだ。ジュルっと音がしたその瞬間に。
ミキが先輩を食べたのだ!
ミキが先輩を飲み干した!
見ると、先輩のぬけがらが散乱している。学生服に靴、靴下、下着。身につけていたものが虚しくそこにあった。
ミキは陶然とした様子でしばらく放心していた。やがて、ご飯を食べて満足そうな猫のような表情になる。
それが、人間らしく見えて私にはいっそう恐ろしかった。
彼女は、何か唄を口ずさみ始めた。軽やかに。
真っ暗なところだ。真っ暗な。
真っ暗な場所でミキは一人、幸せそうに両手を広げてくるくる回っている。
空には満点の星が燦然と輝き、その光を受けてミキの瞳はキラキラ輝いて見える。
彼女は恐ろしいほど美しかった。
流れ星が一つ流れた。すると、それを目にしたミキの表情が一変する。こんなに怖い顔をした人を私はこれまでに見たことがない。それは、能で使う般若の面に似ていた。
彼女は、ずっとその星をするどい表情で凝視している。星は、どこか地上に落ちたようだった。それを見届けるとミキは…。
人間の皮を脱ぎ始めた!
まるで、脱皮でもするように、外側をぬいでいく。中から現れたのは巨大ないもむしに似たものだった!
やがて、それは体をくねらせ糸をはく。金色にも銀色にも見える糸だった。
真っ暗な場所に二人の人間がいる。
ああ、嫌だ。また昨日の夢!同じ夢!
二人の人間は私のよく知る人たちだった。一人は、親友。そして、もう一人は初恋の人。
岸田先輩とミキが恍惚とした表情でお互いの手をとり、見つめあっている。空には輝く星たち。なんてロマンチック。星に照らされて二人の姿は青く発光しているようだった。
二人の唇が合わさった瞬間、岸田先輩の表情がいっぺんした。驚愕で見開かれた瞳。それはあの凍えるようなブルー!
先輩の苦痛に歪んだ顔はとても正視に堪えうるものではなかった。
ストローで何かを飲むときに出る音。最後に残った水分を吸いこむ時のような音がした。
あっという間のことのようだった。本当に一瞬のような出来事。
そこには、もう岸田先輩の姿はなかった。まるで、掻き消えたかのように。
ミキが一人たたずんでいた。まるで、最初から一人でいたように。
どうしてだか、私には岸田先輩がその場から忽然と姿を消した理由が理解できた。
岸田先輩は体の内側から吸い込まれるようにミキに飲み込まれてしまったのだ。ジュルっと音がしたその瞬間に。
ミキが先輩を食べたのだ!
ミキが先輩を飲み干した!
見ると、先輩のぬけがらが散乱している。学生服に靴、靴下、下着。身につけていたものが虚しくそこにあった。
ミキは陶然とした様子でしばらく放心していた。やがて、ご飯を食べて満足そうな猫のような表情になる。
それが、人間らしく見えて私にはいっそう恐ろしかった。
彼女は、何か唄を口ずさみ始めた。軽やかに。
真っ暗なところだ。真っ暗な。
真っ暗な場所でミキは一人、幸せそうに両手を広げてくるくる回っている。
空には満点の星が燦然と輝き、その光を受けてミキの瞳はキラキラ輝いて見える。
彼女は恐ろしいほど美しかった。
流れ星が一つ流れた。すると、それを目にしたミキの表情が一変する。こんなに怖い顔をした人を私はこれまでに見たことがない。それは、能で使う般若の面に似ていた。
彼女は、ずっとその星をするどい表情で凝視している。星は、どこか地上に落ちたようだった。それを見届けるとミキは…。
人間の皮を脱ぎ始めた!
まるで、脱皮でもするように、外側をぬいでいく。中から現れたのは巨大ないもむしに似たものだった!
やがて、それは体をくねらせ糸をはく。金色にも銀色にも見える糸だった。
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