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17.お茶をしましょう
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冬に近付いているからなのかここ最近天気が優れない。良くてもどんよりとした雲が空を覆ってしまっている。朝の支度しているとリュグナーが今日話がしたい、と。
最初はずっと傍にいたリュグナーだが、ここ最近は朝から昼過ぎの辺りが不在だ。
そもそも未だに親と会っていない。自分から会いにも行っていないのもあるかもしれないが息子が事故ってと聞いているのに。
心配しないのだろうか?
それとも来れないくらい忙しい?
独りぼんやりと部屋で過ごしている。暇だからまた書斎まで行こう、と立ち上がり広い廊下に出る。
相変わらず自分を見ると頭を下げてくるのでいたたまれない。早歩きでその場をさっさと逃げるように去る。なんで頭下げてくるんだろう。
そんなに部屋から書斎まで距離はない。
ここ数日通っているので馴れたものだ。最初は机の中を覗くのでさえ躊躇していたがもうそんな事さえない。今まで書いた記録を読み返して漏れがないか確認してみる。
ゲームの流れ。あの日に起きた事。少女との出会い。
溜息つく。
なんでもいいからゲームがしたくなってきた。RPGとかパズルゲーとか。
「・・・・テレビ見たくなってきたな・・・」
そんなに見てなかったのに。
日本で過ごしていた生活が恋しくなってきた。まだここにきてそんなに経っていない。
紙から目を逸らして天井を見る。
特に何もない。人がいるはずなのに静かな屋敷。
アフェクが来た時、楽しかったなと。
ここにきてまともに話したことがあるのが3,4人のみ。別に以前の生活で人に囲まれて過ごしていたわけじゃない。就職も失敗してバイトしながらダラダラ過ごして来たような生活だ。友人とも呼べる人間はいなかった。
考えていくうちに気持ちが沈んで行ってしまう。最近こんなのばっかだ。
ホームシックにでもなってるんだろうか。なんだか前の生活がすごく恋しく感じてしまう。
ぼうっとまたゲームの内容や起きた出来事を記載した紙を眺め、また机の中へしまう。
改めて周りを見る。左程広くない部屋を囲むように背の高い本棚が並び、その中にはびっしりと本が詰まっている。見上げると小さな窓があるくらいだ。出入り出来るとしたら正面にある扉しかない。
立ち上がり、本棚に近付く。
新しめのものから古書もある。期待はしてはなかったが漫画っぽいものはやはり見つからない。少し残念に思いながら上段の本を見上げる。さすがに脚立がないとちゃんと確認できそうにない。
「なんか簡単で面白いやつないかなー・・・」
小説ならあったのだ。本を読むのは好きなのだ。この世界の文字を読むのは苦労するが馴れていかないといけないと思う。だが、疲れと酔いが先に来てしまうため絵本みたいな簡単に読めるものがいい。そんな可愛いものがここにあるのかわからないが探さなければ無いと一緒。
それに時間だけは沢山ある。
机の近くにある本は比較的にアルカが読んでいたのだろうか?
魔法学や教会、宗教が多く置かれている。魔法は気になるが辞典のように太いので後に回そう。読めそうにない。
ふらふらと本棚を眺めていると下のほうに目を向ける。
何も書かれていない表札のシンプルなノートが一冊。
(なんだろう、これ)
捲ってみると書かれた後が残っているような汚い紙だけ。読めるようなものは一切なかった。
一体何だったのだろう。こういうノートなのだろうか。
首を傾げているとノックの音が鳴る。
「はーい?」
持っていたノートを元の場所に戻して扉に顔を向けて返事を返す。少し間が開いてからゆっくりと扉が開かれる。
小さな窓から差し掛かる光でまだお昼程度だだろう。この時間帯に何故かリュグナーが姿を現さないから声がかかる事が初めてだ。いつも一人でぼーっと過ごしているか記録を書いているだけだったから。
「すみません、アフェク様が心配されていましたので連れてきました」
狐のように糸目の男だ。深い紺色の髪の色。楽しそうに話すこの男はアルカのことは知っている。それにアフェクの名を出すという事は何かの関係で二人と話す仲なのだろう。
男が首を軽く傾げる。
「どうかされました?」
「・・・ほら、アフェク様アルカさんですよ」
黙ってしまったからか男は後ろにいたであろうアフェクを優しい手付きで前に出してくる。
若干俯き加減で部屋に入ってきたアフェクは自分を見ると顔を上げる。
「その、いつも来る授業に来ないから、まだ体が痛いのなかって」
「・・・え、授業?」
リュグナーからは何も聞いてない。そんな事していたのか、と思った流石に教養は受けているはずだから授業も受けていても可笑しくはない。
「ごめん、リュグナーがまだ体を休めたほうがいいって言っててさ・・・」
「やっぱり体が痛むのか?」
大丈夫か、と自分に駆け寄ってくれる。
「大丈夫、大丈夫だよ。ちょっとだけリュグナーが心配性なだけだよ」
そうそう。至って健康体なのに未だに外出禁止なのだ。確かに一週間意識不明の状態だったと言っていたからそうそう安心も出来ないのだろう。
「そうですか、リュグナーが。彼が帰ってくるまでお邪魔してもいいですか?」
「いいですけど」
狐目の男は近付いてきて自分に目線を合わせて優しい声色で自分に聞いてくる。リュグナーがどう思うかはわからないがアフェクもいる事だ、承諾したもののこの部屋に人をもてなす物は一切ない。どうしたものか、と考える。ここ今時点で寝室と書斎しか移動していないのだ。もう少し移動範囲を広げればよかったのかもしれない。が、周りの反応がどうも嫌過ぎる。あの中で探索なんて出来るわけがない。
「でしたら、お茶でもしながらリュグナーを待ちましょう」
楽しそうに糸目の男が提案をする。確かにお昼食べてから時間が経っている。自分が何も思い浮かばなかったのだからこの意見に賛同しよう。彼に大きく頷いて。
最初はずっと傍にいたリュグナーだが、ここ最近は朝から昼過ぎの辺りが不在だ。
そもそも未だに親と会っていない。自分から会いにも行っていないのもあるかもしれないが息子が事故ってと聞いているのに。
心配しないのだろうか?
それとも来れないくらい忙しい?
独りぼんやりと部屋で過ごしている。暇だからまた書斎まで行こう、と立ち上がり広い廊下に出る。
相変わらず自分を見ると頭を下げてくるのでいたたまれない。早歩きでその場をさっさと逃げるように去る。なんで頭下げてくるんだろう。
そんなに部屋から書斎まで距離はない。
ここ数日通っているので馴れたものだ。最初は机の中を覗くのでさえ躊躇していたがもうそんな事さえない。今まで書いた記録を読み返して漏れがないか確認してみる。
ゲームの流れ。あの日に起きた事。少女との出会い。
溜息つく。
なんでもいいからゲームがしたくなってきた。RPGとかパズルゲーとか。
「・・・・テレビ見たくなってきたな・・・」
そんなに見てなかったのに。
日本で過ごしていた生活が恋しくなってきた。まだここにきてそんなに経っていない。
紙から目を逸らして天井を見る。
特に何もない。人がいるはずなのに静かな屋敷。
アフェクが来た時、楽しかったなと。
ここにきてまともに話したことがあるのが3,4人のみ。別に以前の生活で人に囲まれて過ごしていたわけじゃない。就職も失敗してバイトしながらダラダラ過ごして来たような生活だ。友人とも呼べる人間はいなかった。
考えていくうちに気持ちが沈んで行ってしまう。最近こんなのばっかだ。
ホームシックにでもなってるんだろうか。なんだか前の生活がすごく恋しく感じてしまう。
ぼうっとまたゲームの内容や起きた出来事を記載した紙を眺め、また机の中へしまう。
改めて周りを見る。左程広くない部屋を囲むように背の高い本棚が並び、その中にはびっしりと本が詰まっている。見上げると小さな窓があるくらいだ。出入り出来るとしたら正面にある扉しかない。
立ち上がり、本棚に近付く。
新しめのものから古書もある。期待はしてはなかったが漫画っぽいものはやはり見つからない。少し残念に思いながら上段の本を見上げる。さすがに脚立がないとちゃんと確認できそうにない。
「なんか簡単で面白いやつないかなー・・・」
小説ならあったのだ。本を読むのは好きなのだ。この世界の文字を読むのは苦労するが馴れていかないといけないと思う。だが、疲れと酔いが先に来てしまうため絵本みたいな簡単に読めるものがいい。そんな可愛いものがここにあるのかわからないが探さなければ無いと一緒。
それに時間だけは沢山ある。
机の近くにある本は比較的にアルカが読んでいたのだろうか?
魔法学や教会、宗教が多く置かれている。魔法は気になるが辞典のように太いので後に回そう。読めそうにない。
ふらふらと本棚を眺めていると下のほうに目を向ける。
何も書かれていない表札のシンプルなノートが一冊。
(なんだろう、これ)
捲ってみると書かれた後が残っているような汚い紙だけ。読めるようなものは一切なかった。
一体何だったのだろう。こういうノートなのだろうか。
首を傾げているとノックの音が鳴る。
「はーい?」
持っていたノートを元の場所に戻して扉に顔を向けて返事を返す。少し間が開いてからゆっくりと扉が開かれる。
小さな窓から差し掛かる光でまだお昼程度だだろう。この時間帯に何故かリュグナーが姿を現さないから声がかかる事が初めてだ。いつも一人でぼーっと過ごしているか記録を書いているだけだったから。
「すみません、アフェク様が心配されていましたので連れてきました」
狐のように糸目の男だ。深い紺色の髪の色。楽しそうに話すこの男はアルカのことは知っている。それにアフェクの名を出すという事は何かの関係で二人と話す仲なのだろう。
男が首を軽く傾げる。
「どうかされました?」
「・・・ほら、アフェク様アルカさんですよ」
黙ってしまったからか男は後ろにいたであろうアフェクを優しい手付きで前に出してくる。
若干俯き加減で部屋に入ってきたアフェクは自分を見ると顔を上げる。
「その、いつも来る授業に来ないから、まだ体が痛いのなかって」
「・・・え、授業?」
リュグナーからは何も聞いてない。そんな事していたのか、と思った流石に教養は受けているはずだから授業も受けていても可笑しくはない。
「ごめん、リュグナーがまだ体を休めたほうがいいって言っててさ・・・」
「やっぱり体が痛むのか?」
大丈夫か、と自分に駆け寄ってくれる。
「大丈夫、大丈夫だよ。ちょっとだけリュグナーが心配性なだけだよ」
そうそう。至って健康体なのに未だに外出禁止なのだ。確かに一週間意識不明の状態だったと言っていたからそうそう安心も出来ないのだろう。
「そうですか、リュグナーが。彼が帰ってくるまでお邪魔してもいいですか?」
「いいですけど」
狐目の男は近付いてきて自分に目線を合わせて優しい声色で自分に聞いてくる。リュグナーがどう思うかはわからないがアフェクもいる事だ、承諾したもののこの部屋に人をもてなす物は一切ない。どうしたものか、と考える。ここ今時点で寝室と書斎しか移動していないのだ。もう少し移動範囲を広げればよかったのかもしれない。が、周りの反応がどうも嫌過ぎる。あの中で探索なんて出来るわけがない。
「でしたら、お茶でもしながらリュグナーを待ちましょう」
楽しそうに糸目の男が提案をする。確かにお昼食べてから時間が経っている。自分が何も思い浮かばなかったのだからこの意見に賛同しよう。彼に大きく頷いて。
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