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18.紅茶とサンドイッチ
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書斎から広い部屋に移動してきた。ここまでの道を案内してくれた。それにちゃんとこちらも確認してだ。初めて通る道にキョロキョロと見ている自分を特に気にする様子もなく、笑顔で接してくれる。それにしても書斎と自室とまるで違い過ぎる。
暖色の優しい色合いに小さな花柄が散りばめられた模様は煩くなることなく可愛らしく壁を飾っている。大きな窓にはレースカーテン。御伽噺のお姫様の部屋のように綺麗で可愛い部屋。
「さぁさぁ掛けてください。今準備してきますのでこちらで」
案内されるまま座るとアフェクと対峙するような形になる。
やや大きいテーブルに椅子。どちらとなんと可愛らしいデザインだ。
華やかな色味にアフェクがなんとも似合う。
暖色の華やかな色味に艷やかな黒髪に可愛い顔立ちがお姫様のようだなぁなんて呑気に考えていると男が果たしてどこから出したのか小さなティーカップを自分達の前に出すとメイドが素晴らしい連携で紅茶を注いでくれる。
「あ、はい」
あまりにも素早い行動に呆気に取られてしまって反射的に頷いてしまった。それでも否定する気もなかったので良いのだが。
周りを見ても対して自分の返事に驚く事もなく、男は変わらずニコニコとしている。
「待っていてくださいね」
ひらひらと両手で振って背中を見せて部屋から出ていく。後ろ頭に団子のように髪が小さくなっている。長髪なのかな、と。以前のアルカを知っているはずなのに自分に対して何も言わないどころが変な顔一つもしない。ここに来て初めての対応かもしれない。
「アルカ、ごめん」
「へ?何が??」
「いや、俺が余計な事を言ってしまったから・・・」
「いいんじゃないかな?俺も部屋に籠ってたから気分転換になるよ」
「・・・・そう?ならよかった」
ふぅっと息を吐きだすアフェクは安堵したのか胸に手を当て息を吐きだす。
テーブルの上に置かれた紅茶に手を伸ばして口をつける。フルーティな香りが広がる。温度も丁度いい。初めてこんなに美味しい紅茶を飲んだ。紅茶なんてペットボトルで売っているやつしか飲んだことなかったからあまりにも違い過ぎて。
「どうしたの?」
じっと紅茶を眺めている自分に対して軽く首を傾げるアフェク。
「いや、なんでもないんだけど・・・その、すっごく美味しいなって」
本当にこんなにフルーツの甘さや香りがここまで広がり、すっと舌に馴染む。本当に美味しい。ぐいぐいと飲んでいると小さなカップの中身は空だ。カップも渋みの汚れなど一切なく、傷ももちろんない。何もかもがすごい。
すっと足音なく控えていたメイドが紅茶を注いでくれる。
「ありがとうございます」
ちらっとこちらに目線をくれるがすぐに軽く会釈をして、すぐ引っ込んでしまう。
どこでも同じような反応だな。
アフェクと目が合うが何も話せばいいのかお互いわからないのかもしれない。無言で向かい合いながら紅茶を飲んでいく。コミュニケーション能力をもっと高めていればこんな事にならなかったのに。
「こ、紅茶美味しいね」
ひねり出した話題、とんでもないくらいつまらなくて心の中で泣きそうだ。
「うん、とっても美味しい。フィーノ様がお好きな紅茶なんですよね、すっきりした甘さに広がる果汁、アルカも好きなの?」
フィーノ様って誰だろう。知らない人の名前が出てきたが自分に話を振るのだ何らかの関係がある人なんだろう。
「う、うん!好きだよ。美味しいよね」
美味しいと思ったのは本当。好きだと思うのも自分だ。好きってことでいいだろう。
本当のアルカはどんなものが好きだったんだろう?
「俺もあっさりしたお茶よりこういう甘い香りのお茶好き」
ニコッと笑うアフェク。
「でも、もっと甘い、ジュースも飲みたい」
子供らしい。お茶が好きな子供だっているだろうけど、やはり甘い飲料が好むのだ。自分だって成人はもうしていたがジュースは好きだったし。なんだかんだ結構飲んでいた気がする。
「ジュース美味しいよね、ここでは出ないの?」
「・・・え、あー・・・うん、ジュースみたい
な飲み物が出ないかな。食事もあっさりとした物が多い」
確かに。ホットミルクは出た記憶はあるが、それ以外だと水かお茶ばかりだ。
こってりしたものが見た事ない。病人だと思われてたからだと思ってたがそういうことではなかったようだ。アフェクの食事もあっさりしたものだと言っているし。
「アフェクのところもそうなんだ。こっちもあっさり、というか豆と野菜ばっかで肉食べたい」
「お肉出ないの?」
「うん、まだ病人扱いだからかもしれないけど、こっちに来てから食べてない」
あの時、牛丼お持ち帰りではなく店内で食べれば良かったかもしれない。そしたらこうならなかったのかな、と無駄に考えてしまう。
「・・・・・・えっ、こっちにきてから?」
「お待たせいたしました。アフェク様、アルカさん、サンドイッチ作ってもらいましたよ」
扉が開く音と明るい声。ニコニコと笑顔な細目の男が両手に皿を持ち、音を立てずにテーブルに二つの皿を置く。食べやすいサイズのサンドイッチが綺麗に並んでいて、美味しそうだが。
(・・・多くない?多い気がするんだけど)
かたっと小さい音がした方に目線向けると細目の男が椅子をアフェクと自分の間に用意して座る。
「では、いただきましょうか」
一番最初にサンドイッチに手を付けて「美味しい」ともう一個と食べていく。
確かに大人が食べるには小さいサイズだ。一口くらいでいけると思うが早い気がする。喉が詰まらないか少し心配になる。
「え、ジェンも一緒に食べるの??」
アフェクが細目の男に向かって声をかける。細目の男はジェンという名前なのか、覚えとかないと。
「ちゃんとアフェク様とアルカさんの用意もしていますよ、いっっぱい多く作ってもらいましたから」
だから心配しないでください、と付け加えてくるがそこの心配はしていない。
「そこは心配してないよ」
アフェクも同じ事を思っていたようでジェンに声を掛ける。
五個飲み物一切なしで食べたところで手が止まった。
「食べないのですか?美味しいですよ」
不思議です、とでも思っているような表情でこちらを見てくる。
「いえ、お言葉に甘えて頂きます」
サンドイッチに手を伸ばして半分齧って驚く。
レタスにハムというシンプルなサンドイッチなのだがレタスがシャキシャキでハムも美味しい。バターなのかふんわりと香る。パンも柔らかくしっとりしていて食材と馴染んで凄く美味しい。今まで食べたことないくらい美味しい。今まで食べていたサンドイッチとはなんだったのか。
一個目をもう食べきってしまった、二個目に手を付けようとした時にふっと思い出す。
(・・・あれ?この世界のパンは固いんじゃなかったっけ?スープにつけるとかなんとか)
暖色の優しい色合いに小さな花柄が散りばめられた模様は煩くなることなく可愛らしく壁を飾っている。大きな窓にはレースカーテン。御伽噺のお姫様の部屋のように綺麗で可愛い部屋。
「さぁさぁ掛けてください。今準備してきますのでこちらで」
案内されるまま座るとアフェクと対峙するような形になる。
やや大きいテーブルに椅子。どちらとなんと可愛らしいデザインだ。
華やかな色味にアフェクがなんとも似合う。
暖色の華やかな色味に艷やかな黒髪に可愛い顔立ちがお姫様のようだなぁなんて呑気に考えていると男が果たしてどこから出したのか小さなティーカップを自分達の前に出すとメイドが素晴らしい連携で紅茶を注いでくれる。
「あ、はい」
あまりにも素早い行動に呆気に取られてしまって反射的に頷いてしまった。それでも否定する気もなかったので良いのだが。
周りを見ても対して自分の返事に驚く事もなく、男は変わらずニコニコとしている。
「待っていてくださいね」
ひらひらと両手で振って背中を見せて部屋から出ていく。後ろ頭に団子のように髪が小さくなっている。長髪なのかな、と。以前のアルカを知っているはずなのに自分に対して何も言わないどころが変な顔一つもしない。ここに来て初めての対応かもしれない。
「アルカ、ごめん」
「へ?何が??」
「いや、俺が余計な事を言ってしまったから・・・」
「いいんじゃないかな?俺も部屋に籠ってたから気分転換になるよ」
「・・・・そう?ならよかった」
ふぅっと息を吐きだすアフェクは安堵したのか胸に手を当て息を吐きだす。
テーブルの上に置かれた紅茶に手を伸ばして口をつける。フルーティな香りが広がる。温度も丁度いい。初めてこんなに美味しい紅茶を飲んだ。紅茶なんてペットボトルで売っているやつしか飲んだことなかったからあまりにも違い過ぎて。
「どうしたの?」
じっと紅茶を眺めている自分に対して軽く首を傾げるアフェク。
「いや、なんでもないんだけど・・・その、すっごく美味しいなって」
本当にこんなにフルーツの甘さや香りがここまで広がり、すっと舌に馴染む。本当に美味しい。ぐいぐいと飲んでいると小さなカップの中身は空だ。カップも渋みの汚れなど一切なく、傷ももちろんない。何もかもがすごい。
すっと足音なく控えていたメイドが紅茶を注いでくれる。
「ありがとうございます」
ちらっとこちらに目線をくれるがすぐに軽く会釈をして、すぐ引っ込んでしまう。
どこでも同じような反応だな。
アフェクと目が合うが何も話せばいいのかお互いわからないのかもしれない。無言で向かい合いながら紅茶を飲んでいく。コミュニケーション能力をもっと高めていればこんな事にならなかったのに。
「こ、紅茶美味しいね」
ひねり出した話題、とんでもないくらいつまらなくて心の中で泣きそうだ。
「うん、とっても美味しい。フィーノ様がお好きな紅茶なんですよね、すっきりした甘さに広がる果汁、アルカも好きなの?」
フィーノ様って誰だろう。知らない人の名前が出てきたが自分に話を振るのだ何らかの関係がある人なんだろう。
「う、うん!好きだよ。美味しいよね」
美味しいと思ったのは本当。好きだと思うのも自分だ。好きってことでいいだろう。
本当のアルカはどんなものが好きだったんだろう?
「俺もあっさりしたお茶よりこういう甘い香りのお茶好き」
ニコッと笑うアフェク。
「でも、もっと甘い、ジュースも飲みたい」
子供らしい。お茶が好きな子供だっているだろうけど、やはり甘い飲料が好むのだ。自分だって成人はもうしていたがジュースは好きだったし。なんだかんだ結構飲んでいた気がする。
「ジュース美味しいよね、ここでは出ないの?」
「・・・え、あー・・・うん、ジュースみたい
な飲み物が出ないかな。食事もあっさりとした物が多い」
確かに。ホットミルクは出た記憶はあるが、それ以外だと水かお茶ばかりだ。
こってりしたものが見た事ない。病人だと思われてたからだと思ってたがそういうことではなかったようだ。アフェクの食事もあっさりしたものだと言っているし。
「アフェクのところもそうなんだ。こっちもあっさり、というか豆と野菜ばっかで肉食べたい」
「お肉出ないの?」
「うん、まだ病人扱いだからかもしれないけど、こっちに来てから食べてない」
あの時、牛丼お持ち帰りではなく店内で食べれば良かったかもしれない。そしたらこうならなかったのかな、と無駄に考えてしまう。
「・・・・・・えっ、こっちにきてから?」
「お待たせいたしました。アフェク様、アルカさん、サンドイッチ作ってもらいましたよ」
扉が開く音と明るい声。ニコニコと笑顔な細目の男が両手に皿を持ち、音を立てずにテーブルに二つの皿を置く。食べやすいサイズのサンドイッチが綺麗に並んでいて、美味しそうだが。
(・・・多くない?多い気がするんだけど)
かたっと小さい音がした方に目線向けると細目の男が椅子をアフェクと自分の間に用意して座る。
「では、いただきましょうか」
一番最初にサンドイッチに手を付けて「美味しい」ともう一個と食べていく。
確かに大人が食べるには小さいサイズだ。一口くらいでいけると思うが早い気がする。喉が詰まらないか少し心配になる。
「え、ジェンも一緒に食べるの??」
アフェクが細目の男に向かって声をかける。細目の男はジェンという名前なのか、覚えとかないと。
「ちゃんとアフェク様とアルカさんの用意もしていますよ、いっっぱい多く作ってもらいましたから」
だから心配しないでください、と付け加えてくるがそこの心配はしていない。
「そこは心配してないよ」
アフェクも同じ事を思っていたようでジェンに声を掛ける。
五個飲み物一切なしで食べたところで手が止まった。
「食べないのですか?美味しいですよ」
不思議です、とでも思っているような表情でこちらを見てくる。
「いえ、お言葉に甘えて頂きます」
サンドイッチに手を伸ばして半分齧って驚く。
レタスにハムというシンプルなサンドイッチなのだがレタスがシャキシャキでハムも美味しい。バターなのかふんわりと香る。パンも柔らかくしっとりしていて食材と馴染んで凄く美味しい。今まで食べたことないくらい美味しい。今まで食べていたサンドイッチとはなんだったのか。
一個目をもう食べきってしまった、二個目に手を付けようとした時にふっと思い出す。
(・・・あれ?この世界のパンは固いんじゃなかったっけ?スープにつけるとかなんとか)
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