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14.そばかすの少年
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自室と書斎との往復も飽き初めたこの頃。部屋の中でぼんやり過ごす。外を見ると天気はどんよりと雲っていて朝方雨が降っていたのか窓に水滴が付いている。
(昨日まであんなに晴天だったのにな)
陽が出ていないせいなのか多少肌寒い。リュグナーが用意してくれた羽織を掛け、椅子に腰を掛けてぼうっと綺麗な庭を眺める。
白い花と黄色、ピンクなど小さな可愛らしい花が咲いている。詳しくない為、それらがなんの種類の花なのか自分にはわからないがここから見える景色から推測してみる。
(今日は少し寒いけど、そこまでじゃないし。春先とか咲くような花っぽい気がする。時期的には春かな・・・・?)
書斎にも窓はあったが眺めてもそこまでこの部屋とそんなに景色変わらない。花は季節感が出るだろうし、こんなに綺麗で彩りの庭園が出来るくらいだ。そこまで間違ってはないだろう。
外の景色から視線を外し、最低限の物しかない部屋を見渡しても何かヒントになりそうなものがない。最初見た時は最高級ホテルの印象だったが実際住んでみると何か味気ない部屋だと思う。装飾品の一つでも飾りがあれば印象が違うのかもしれない。色味も少なく白と黒に近いグレーしかない。言ってしまえば殺風景に感じる。
「・・・もしかしてミニマリストだったりして?」
自分ひとりしかいないので、答えが返ってくることはない。
首を捻って感想を呟いていると扉から控えめなノックの音が聞こえる。短く返事を返すとゆっくりと扉が開く。
「アルカ様、お部屋の清掃に参りました。只今お時間宜しいでしょうか?お後になさいますか?」
短い焦げ茶の少年が首を傾げ、問いてくる。
頬にそばかすがある可愛らしい顔立ちの少年だ。
この時間帯は大体書斎に行ってる事が多かったせいか清掃が入っていることさえ知らなかった。そもそもこの部屋に清掃がいるのか?
「えっと、あー・・・お願いしようかな。部屋から出て行った方がいい?」
「いえ!いて頂いても構いません。では、さっそく入らせ頂きます」
少年はニコっと笑って、掃除道具と一緒に部屋へと入ってくる。
ベットのシーツから交換するようだ。
この少年どこかで見た事がある気がする。ゲームかと思ったが見覚えがない。グラフィックがないキャラの可能性もあるがそもそもゲームから数年前であろう今可能性としてはないに等しい。それなら一体どこで彼を見たのだろうか。
うーん、と頭を捻っているとシーツ交換を終えたのだろうか、少年が自分を見ていたが目が合った途端ずらされ、せっせと次の工程に入ってしまった。
(どうしたんだろう。やっぱり清掃中に人がいる状態だとやり辛いのかな)
窓際でぼーっと椅子に座っているだけだが、見られながら掃除している側からすればやりにくいのかもしれない。やはり外に出ればよかったかもしれない、と居辛い気持ちを抱える。
少年がせっせと床掃除をしている。角まできっちりと丁寧に拭きあげてくれている。すごいな、と感心してしまう。きっと自分がこの部屋の清掃を頼まれたら適当にしてしまいそうだ。なんせ元が綺麗なのだから少しサボったところで、と思う。一日どころか一週間くらい放置しても綺麗な気がする。
住居だった狭いアパートの部屋を思い出す。
そこまで汚くしてはなかったと思うがオタ活のおかげで物と物があり過ぎて部屋を圧迫していたな、と感傷に浸る。
(ふぅ、ポスターに抱き枕。マウスパットにゲーム達・・・・)
瞳を閉じるとすぐ思い出せる推し達とゲーム内のキャラ達の様々なグッツ。
その末は想像したくない。心が抹殺される。
「そんなにキチンとしなくてもいいよ」
せっせと掃除をしてくれる少年に声を掛けると顔を上げて大きい瞳を丸くさせ、自分を見てくる。
「いや、ほら。何もない部屋だし、そこまで丁寧にしなくてもいいかなって」
「いいえ、そんな・・・え?えーっと、手を抜くわけにはいかないので」
「そうかな、そうなのかな」
綺麗なうちから綺麗にしないと部屋って綺麗にならないんだっけ?
少年も困ったように眉尻を下げる。
「アルカ様、心遣いありがとうございます。その、何もない、と仰るなら何か飾られるのはどうでしょうか?好きな物がお部屋にあると嬉しくなりますよ」
十代前半くらいなのに敬語も姿勢も大人顔負けだ。
しっかりと伸びた背筋ににこっと邪気のない笑顔。
「そうだね。いいね!でも、うーん・・・改めて言われると何を飾ればいいんだろう?」
好きなものを飾るのがいいと言われたが今のところこの世界で好きな物に出会えていない。推しはいるが流石にこの世界に実在する人の写真を飾り付ける気にはなれない。ストーカーみたいだし。そもそも写真が存在しているのかさえ分からない。
これっと言って何も思いつかず、窓から見える花を見て。
「花を飾るのは?庭園に綺麗に咲いているし」
ほら、飾り物としては花は定番でしょ!と自信満々に言ってみたものの。
「庭園の花を、ですか?」
少年が首を傾げる。
あれ?なんかデジャブを感じる。前にもこんなやり取りっぽいことがあった気がする。どうして綺麗な庭園をほめると不思議られるのだろう?
「うん、あっ、もしかして庭園の花を飾るのダメだったかな」
「いえ、そんな事はありませんが・・・その、えーっと」
なんだか言いにくそうだ。庭園に何かあるのだろうか?
「なんと申しますか、アルカ様さえ宜しければ庭師に伝えてお持ち致します」
「俺も庭園に一緒に行ってもいい?」
リュグナーには悪いが一人でなければいいよな。そう単純な気持ちから出た言葉だったが予想反して少年の目が大きく見開く。
「・・・・ご一緒にですか???」
ダメだったかな?
一言一言不安になるような生活をどう過ごしてきたんだ。アルカよ。
雨雲が広がる空を見て泣きそうになる。
数秒だと思うが黙っていたせいか少年の眉尻が下がり、あわあわと慌て始めたと思ったら勢い頭を下げる。
「も、申し訳ございません!アルカ様のお言葉に反することを申しました!」
「ち、違うよ!大丈夫だから謝らないで」
失敗した、と内心反省して立ち上がり少年に近付き、なるべく優しく声をかける。数秒は下がったままだった頭はゆっくりと、戸惑いながら上がる。目をパチパチと瞬きしている。
「ありがとうございます、アルカ様。優しくて大人っぽいですね・・・僕とそんなに変わらないのに」
(昨日まであんなに晴天だったのにな)
陽が出ていないせいなのか多少肌寒い。リュグナーが用意してくれた羽織を掛け、椅子に腰を掛けてぼうっと綺麗な庭を眺める。
白い花と黄色、ピンクなど小さな可愛らしい花が咲いている。詳しくない為、それらがなんの種類の花なのか自分にはわからないがここから見える景色から推測してみる。
(今日は少し寒いけど、そこまでじゃないし。春先とか咲くような花っぽい気がする。時期的には春かな・・・・?)
書斎にも窓はあったが眺めてもそこまでこの部屋とそんなに景色変わらない。花は季節感が出るだろうし、こんなに綺麗で彩りの庭園が出来るくらいだ。そこまで間違ってはないだろう。
外の景色から視線を外し、最低限の物しかない部屋を見渡しても何かヒントになりそうなものがない。最初見た時は最高級ホテルの印象だったが実際住んでみると何か味気ない部屋だと思う。装飾品の一つでも飾りがあれば印象が違うのかもしれない。色味も少なく白と黒に近いグレーしかない。言ってしまえば殺風景に感じる。
「・・・もしかしてミニマリストだったりして?」
自分ひとりしかいないので、答えが返ってくることはない。
首を捻って感想を呟いていると扉から控えめなノックの音が聞こえる。短く返事を返すとゆっくりと扉が開く。
「アルカ様、お部屋の清掃に参りました。只今お時間宜しいでしょうか?お後になさいますか?」
短い焦げ茶の少年が首を傾げ、問いてくる。
頬にそばかすがある可愛らしい顔立ちの少年だ。
この時間帯は大体書斎に行ってる事が多かったせいか清掃が入っていることさえ知らなかった。そもそもこの部屋に清掃がいるのか?
「えっと、あー・・・お願いしようかな。部屋から出て行った方がいい?」
「いえ!いて頂いても構いません。では、さっそく入らせ頂きます」
少年はニコっと笑って、掃除道具と一緒に部屋へと入ってくる。
ベットのシーツから交換するようだ。
この少年どこかで見た事がある気がする。ゲームかと思ったが見覚えがない。グラフィックがないキャラの可能性もあるがそもそもゲームから数年前であろう今可能性としてはないに等しい。それなら一体どこで彼を見たのだろうか。
うーん、と頭を捻っているとシーツ交換を終えたのだろうか、少年が自分を見ていたが目が合った途端ずらされ、せっせと次の工程に入ってしまった。
(どうしたんだろう。やっぱり清掃中に人がいる状態だとやり辛いのかな)
窓際でぼーっと椅子に座っているだけだが、見られながら掃除している側からすればやりにくいのかもしれない。やはり外に出ればよかったかもしれない、と居辛い気持ちを抱える。
少年がせっせと床掃除をしている。角まできっちりと丁寧に拭きあげてくれている。すごいな、と感心してしまう。きっと自分がこの部屋の清掃を頼まれたら適当にしてしまいそうだ。なんせ元が綺麗なのだから少しサボったところで、と思う。一日どころか一週間くらい放置しても綺麗な気がする。
住居だった狭いアパートの部屋を思い出す。
そこまで汚くしてはなかったと思うがオタ活のおかげで物と物があり過ぎて部屋を圧迫していたな、と感傷に浸る。
(ふぅ、ポスターに抱き枕。マウスパットにゲーム達・・・・)
瞳を閉じるとすぐ思い出せる推し達とゲーム内のキャラ達の様々なグッツ。
その末は想像したくない。心が抹殺される。
「そんなにキチンとしなくてもいいよ」
せっせと掃除をしてくれる少年に声を掛けると顔を上げて大きい瞳を丸くさせ、自分を見てくる。
「いや、ほら。何もない部屋だし、そこまで丁寧にしなくてもいいかなって」
「いいえ、そんな・・・え?えーっと、手を抜くわけにはいかないので」
「そうかな、そうなのかな」
綺麗なうちから綺麗にしないと部屋って綺麗にならないんだっけ?
少年も困ったように眉尻を下げる。
「アルカ様、心遣いありがとうございます。その、何もない、と仰るなら何か飾られるのはどうでしょうか?好きな物がお部屋にあると嬉しくなりますよ」
十代前半くらいなのに敬語も姿勢も大人顔負けだ。
しっかりと伸びた背筋ににこっと邪気のない笑顔。
「そうだね。いいね!でも、うーん・・・改めて言われると何を飾ればいいんだろう?」
好きなものを飾るのがいいと言われたが今のところこの世界で好きな物に出会えていない。推しはいるが流石にこの世界に実在する人の写真を飾り付ける気にはなれない。ストーカーみたいだし。そもそも写真が存在しているのかさえ分からない。
これっと言って何も思いつかず、窓から見える花を見て。
「花を飾るのは?庭園に綺麗に咲いているし」
ほら、飾り物としては花は定番でしょ!と自信満々に言ってみたものの。
「庭園の花を、ですか?」
少年が首を傾げる。
あれ?なんかデジャブを感じる。前にもこんなやり取りっぽいことがあった気がする。どうして綺麗な庭園をほめると不思議られるのだろう?
「うん、あっ、もしかして庭園の花を飾るのダメだったかな」
「いえ、そんな事はありませんが・・・その、えーっと」
なんだか言いにくそうだ。庭園に何かあるのだろうか?
「なんと申しますか、アルカ様さえ宜しければ庭師に伝えてお持ち致します」
「俺も庭園に一緒に行ってもいい?」
リュグナーには悪いが一人でなければいいよな。そう単純な気持ちから出た言葉だったが予想反して少年の目が大きく見開く。
「・・・・ご一緒にですか???」
ダメだったかな?
一言一言不安になるような生活をどう過ごしてきたんだ。アルカよ。
雨雲が広がる空を見て泣きそうになる。
数秒だと思うが黙っていたせいか少年の眉尻が下がり、あわあわと慌て始めたと思ったら勢い頭を下げる。
「も、申し訳ございません!アルカ様のお言葉に反することを申しました!」
「ち、違うよ!大丈夫だから謝らないで」
失敗した、と内心反省して立ち上がり少年に近付き、なるべく優しく声をかける。数秒は下がったままだった頭はゆっくりと、戸惑いながら上がる。目をパチパチと瞬きしている。
「ありがとうございます、アルカ様。優しくて大人っぽいですね・・・僕とそんなに変わらないのに」
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