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13.お部屋の中で
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あの後しっかり目に半歩程距離を置かれた気がする。主にアフェクに。
今日貸した服は処分されるらしい。服を理由にまた、と思ったがアフェクを迎えに来た男にリュグナーがそう言ってしまったのだ。
驚いてリュグナーを見れば苦笑いを返されて終わった。勿体無い。まだ着れるのに。
アフェクの服もリュグナー本人が母屋に向かって決めるそうだ。
相談もなく、淡々と二人が決めていくのを眺めるだけだった。暗黙にこの屋敷から出ないようにされてる気もする。
アフェクが帰るのを見送る際に小さく手を振る。姿が見えなくなったところで、リュグナーがそっと背中に触れて屋敷内へ誘導してくれる。
数日経って健康なのもわかってくれた気がするのだが、中々過保護な従者は一人歩きも許してくれない。寝室と書斎だけを行ったり来たりの退屈な日を送っている。これでいいのだろうか?と天井や窓から空を見て思う。
リュグナーの他にも人はもちろんいるのだけど、子供だったり、年配の女性のどちらしかいない。自分を見れば静かに頭を下げて通り過ぎるまで上げない為、中々世間話をする事も出来ず、振り返ってみればアフェク以降まともに話しているのはリュグナーだけという。
食事をするのも今のところ寝室である部屋のみで。それもリュグナーと一緒だ。流石に異常ではないだろうか?事故があって一週間目を覚まさなかったのに親が顔も見せないどころか手紙も何もない。食事する専用の部屋もありそうなのに。
一回聞いたみたものの微笑まれて『気にされなくていいですよ。まだ療養しましょう』とだけだった。
スマホもない。テレビもゲームもない。バイトもないので、たっぷりとある時間で読書や視写をし、確信はないがこの世界の文字も読み書きは大丈夫だと思う。確信は全くないが。
運動は好きではなかったがこれだけ動かす事もなく時間を持て余すと動かしたくなるとは思わなった。全速力で走ってみたい。
何度も思うがスマホとゲームが出来ないのが辛い。ベットで横になっても眠くない時は無性に求めてしまう。ベットの中でポチポチと周回するか動画を見ていつの間に朝方になってしまったあの日が懐かしい。とても不健康だと思うが。
ぼーっと窓から外を眺め、今も淡い色の綺麗な花々が咲き誇っている。今は春なのだろうか?風はさほど冷たくなく、長袖であれば薄着でも寒くはない。気温や庭園から自分が憶測出来る範囲はこれくらいだ。
下を覗き込むと大体二階建てくらいの高さだろう。日本と違ってコンクリートの地面ではなく、土や草だ。工夫すれば窓から出れるかもしれないがそんな度胸はない。監禁されているわけではないので、扉から出ようと思えば今すぐにでも外へ出れる。
ふぅっと息を吐き出して。
「・・・・暇だよ」
ぽつりと零す言葉は誰にも拾われず、消えていく。
万が一自分が戻る前にリュグナーが戻ってきた場合、悲しませる気がして罪悪感がある。なぜそれほどまでに心配する必要があるのか?と思ってしまうが目が覚めてから世話になりっぱなしで、無用な心配をかけたくない。
この数日でここまで来た経緯を書き出してみたがさっぱり何もわからなかった。ゲーム内容も箇条書きではあるが照らし合わせても時期が違い過ぎてヒントになりそうなものがなかった。
悪役であるアルカの内情や心情は特に細かく書かれていない。従弟であるアフェクルートではぽつりと伯父については父親のような存在だった、と優しい人だった、と語られている。それ以外はアフェクの口から語られる事もなければ、登場しなかった人物だ。アフェクの本来の父親もわからないまま。
(移植で追加ストーリとかあったのかな、新しいスチル見たかった。こうなるなら積み上げておかないですぐやればよかった)
いつでもやれるだろう、と買って満足してしまった自分を殴りたい。まさにやらずして後悔している現在があるんだぞって。過去の自分に言っても多分、否絶対に信じないと思う。
唯一と言っていいほどアルカの情報があるのはリュグナールートだろう。そのルートでさえ親に関して特に語られていない。寂しい人だと、本来は優しい方などぽつりぽつりと小出しに呟いている。何だかんだゲーム内でもアルカの事を庇っているような場面もあったし、決して悪く敵対視するような事はなかったな、と。
「寂しい人、か」
優しい人はどうとかは置いとくとして。
さらっと流してしまったが寂しいとは何だろうか。
この生活の事だろうか?いつ頃になるか不明だが神殿入りして聖者として生活していくはずだ。その時の話?それとも全く違う事かもしれない。
幾ら考えたところで答えが出ない。ぐるぐると思考だけが出口のない迷路で彷徨って気持ち悪くなる。
(やめだやめだ!!!ゲームとの関連性を見出すだけドツボにはまる)
暇になるとどうしてもこの先の事が気になってしまう。悪役になんてなるつもりなんて一切ない。けれど万が一があったら、と毎度不安が襲うのだ。
大丈夫、大丈夫だ。と自分に言い聞かせて、窓から見える平和で緩やかな風を感じながら綺麗な庭園を眺める。
部屋に籠り過ぎなのかもしれない。やはりリュグナーに相談して、少しでいいから散歩させてもらおう。ここはアルカの家のはずなのだから自分の庭園を歩くくらい許してほしい。ついでにアフェクと出会えればいいな、と仄かな期待を混ぜて。
今日貸した服は処分されるらしい。服を理由にまた、と思ったがアフェクを迎えに来た男にリュグナーがそう言ってしまったのだ。
驚いてリュグナーを見れば苦笑いを返されて終わった。勿体無い。まだ着れるのに。
アフェクの服もリュグナー本人が母屋に向かって決めるそうだ。
相談もなく、淡々と二人が決めていくのを眺めるだけだった。暗黙にこの屋敷から出ないようにされてる気もする。
アフェクが帰るのを見送る際に小さく手を振る。姿が見えなくなったところで、リュグナーがそっと背中に触れて屋敷内へ誘導してくれる。
数日経って健康なのもわかってくれた気がするのだが、中々過保護な従者は一人歩きも許してくれない。寝室と書斎だけを行ったり来たりの退屈な日を送っている。これでいいのだろうか?と天井や窓から空を見て思う。
リュグナーの他にも人はもちろんいるのだけど、子供だったり、年配の女性のどちらしかいない。自分を見れば静かに頭を下げて通り過ぎるまで上げない為、中々世間話をする事も出来ず、振り返ってみればアフェク以降まともに話しているのはリュグナーだけという。
食事をするのも今のところ寝室である部屋のみで。それもリュグナーと一緒だ。流石に異常ではないだろうか?事故があって一週間目を覚まさなかったのに親が顔も見せないどころか手紙も何もない。食事する専用の部屋もありそうなのに。
一回聞いたみたものの微笑まれて『気にされなくていいですよ。まだ療養しましょう』とだけだった。
スマホもない。テレビもゲームもない。バイトもないので、たっぷりとある時間で読書や視写をし、確信はないがこの世界の文字も読み書きは大丈夫だと思う。確信は全くないが。
運動は好きではなかったがこれだけ動かす事もなく時間を持て余すと動かしたくなるとは思わなった。全速力で走ってみたい。
何度も思うがスマホとゲームが出来ないのが辛い。ベットで横になっても眠くない時は無性に求めてしまう。ベットの中でポチポチと周回するか動画を見ていつの間に朝方になってしまったあの日が懐かしい。とても不健康だと思うが。
ぼーっと窓から外を眺め、今も淡い色の綺麗な花々が咲き誇っている。今は春なのだろうか?風はさほど冷たくなく、長袖であれば薄着でも寒くはない。気温や庭園から自分が憶測出来る範囲はこれくらいだ。
下を覗き込むと大体二階建てくらいの高さだろう。日本と違ってコンクリートの地面ではなく、土や草だ。工夫すれば窓から出れるかもしれないがそんな度胸はない。監禁されているわけではないので、扉から出ようと思えば今すぐにでも外へ出れる。
ふぅっと息を吐き出して。
「・・・・暇だよ」
ぽつりと零す言葉は誰にも拾われず、消えていく。
万が一自分が戻る前にリュグナーが戻ってきた場合、悲しませる気がして罪悪感がある。なぜそれほどまでに心配する必要があるのか?と思ってしまうが目が覚めてから世話になりっぱなしで、無用な心配をかけたくない。
この数日でここまで来た経緯を書き出してみたがさっぱり何もわからなかった。ゲーム内容も箇条書きではあるが照らし合わせても時期が違い過ぎてヒントになりそうなものがなかった。
悪役であるアルカの内情や心情は特に細かく書かれていない。従弟であるアフェクルートではぽつりと伯父については父親のような存在だった、と優しい人だった、と語られている。それ以外はアフェクの口から語られる事もなければ、登場しなかった人物だ。アフェクの本来の父親もわからないまま。
(移植で追加ストーリとかあったのかな、新しいスチル見たかった。こうなるなら積み上げておかないですぐやればよかった)
いつでもやれるだろう、と買って満足してしまった自分を殴りたい。まさにやらずして後悔している現在があるんだぞって。過去の自分に言っても多分、否絶対に信じないと思う。
唯一と言っていいほどアルカの情報があるのはリュグナールートだろう。そのルートでさえ親に関して特に語られていない。寂しい人だと、本来は優しい方などぽつりぽつりと小出しに呟いている。何だかんだゲーム内でもアルカの事を庇っているような場面もあったし、決して悪く敵対視するような事はなかったな、と。
「寂しい人、か」
優しい人はどうとかは置いとくとして。
さらっと流してしまったが寂しいとは何だろうか。
この生活の事だろうか?いつ頃になるか不明だが神殿入りして聖者として生活していくはずだ。その時の話?それとも全く違う事かもしれない。
幾ら考えたところで答えが出ない。ぐるぐると思考だけが出口のない迷路で彷徨って気持ち悪くなる。
(やめだやめだ!!!ゲームとの関連性を見出すだけドツボにはまる)
暇になるとどうしてもこの先の事が気になってしまう。悪役になんてなるつもりなんて一切ない。けれど万が一があったら、と毎度不安が襲うのだ。
大丈夫、大丈夫だ。と自分に言い聞かせて、窓から見える平和で緩やかな風を感じながら綺麗な庭園を眺める。
部屋に籠り過ぎなのかもしれない。やはりリュグナーに相談して、少しでいいから散歩させてもらおう。ここはアルカの家のはずなのだから自分の庭園を歩くくらい許してほしい。ついでにアフェクと出会えればいいな、と仄かな期待を混ぜて。
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