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83話 エルちゃんの罪?
しおりを挟む◆楓視点
「お姉ちゃんお疲れ様……」
「葵ちゃん、ありがとう……とりあえず警察とのやり取りは終わったよ」
まさか我が家に下着泥棒が入るとは夢にも思いませんでした。カズオとマサオさんは、窃盗と不法侵入等と言った罪で逮捕となります。警察の方からお話しを聞くとまだまだ余罪が沢山出て来そうと言う事だそうです。
「かえでねーたん! おかえりなちゃい!」
「エルちゃんただいまぁ♡ あ、エルちゃん。お姉ちゃんの頬っぺたにチューして♪ ほらここにね♪」
「んみゅ!」
エルちゃんからのおかえりのチューが無いと何処か物足り無さを感じてしまいます。なので、帰宅する度にいつもエルちゃんにチューしてもらってます♡ 葵ちゃんの方は中々してくれないので、いつも私から無理矢理するか、夜寝る時に葵ちゃんの無防備な寝顔に沢山キスするかのどちらかです。寝てる時はキスし放題♡
「お姉ちゃん、これからエルちゃんとお勉強するんだけど一緒にする?」
「うんうん♪ 大切な事だから、定期的に教えて行きましょう。エルちゃんも幼いから、まだまだ分からない事だらけでしょうし」
エルちゃんが大きくなって携帯を持ち始めたら、その時はインターネットの事やモラルのお勉強もしましょう。SNSや個人情報等、当たり前の事かもしれませんが、学校では習わない事なので私達が教えるしかありません。これはかなり重要な分野だと私は個人的に考えて居ます。エルちゃんには良い子で、真っ直ぐに育って欲しいのです!
「どーとく! どーとくたべゆ!」
「うふふ……♡ エルちゃん? 道徳は食べ物ではありませんよぉ? ディフフ♡」
私や葵ちゃんの喫緊の課題は、己の欲望……理性を保つ事。いつもエルちゃんと一緒にお勉強する時に、エルちゃんの余りの可愛さに私達の理性が爆発してしまうのです。舌っ足らずで喋るエルちゃんを見るだけで、私は涎が出そうになってしまう時が多々あります。女性としてはしたないのは承知しておりますが、可愛い過ぎるのも中々に大きな問題ですね。
―――――――――――――――――――――
「エルちゃん~お姉ちゃんの膝の上においで♡」
「んみゅ!」
現在リビングのソファの上に座っています。私の隣には葵ちゃん、膝の上にはエルちゃんが無防備な姿で座って居ます。さて、今から真剣にお勉強のお時間です。今日は私もお仕事をする時みたいにスイッチを切り替えて行きますよ!
「エルちゃん、今日は私が先生だよ♪」
「ちぇんちぇ!」
「…………だいしゅき♡」
「ちょっとお姉ちゃん? ちゃんとするんじゃなかったの? しょうがないから、私がそこの席代わろうか? エルちゃんを私の膝の上に……」
「では始めましょうか」
「あ、うん」
危ない所でした。いつものスイッチが危うく入る所だった……エルちゃんって、本当にずるい子です。いつもそうやって、私の心を焦らして来ます。自然な反応だと言うのは分かっては居ますが……いるけども!
「お姉ちゃん大丈夫? 顔が変態不審者だよ?」
「んぅ? かえでねーたん、へんたいふちんしゃ?」
「エルちゃん違うからね? やれやれ、私はピッチピチで健全な乙女だからね? 純度100%系乙女です♡」
「楓お姉ちゃんは不純度100%系乙女ね、はいはい」
「葵ちゃん……今日の夜は寝かせないからね? 覚悟してちょうだい。あんな事やこんな事……」
「はいはい。エルちゃん、道徳って言うのはね……」
「鮮やかなスルー!?」
ごほんっ。これ以上踏み込むと墓穴を掘りそうなので、気を取り直してお勉強を致しましょう。
「道徳は、エルちゃんが生活する中で守るべき行為の事だよ♪」
「んにゅ……せいかつ? こうい?」
「うふふ、簡単に言うと良い子になる。悪い事はしたら駄目だと言う事だよ。でも、行き過ぎた悪い行いは犯罪と呼ばれる行為になって、警察と言う人達のお世話になるの。下着泥棒で侵入した、あの変態2人組は犯罪を犯した事により牢屋に入れられちゃうの……」
「わるいことちたら、つかまゆの?」
「うんうん、だから人の物を盗んだりするのも犯罪だから、絶対にしちゃ駄目だからね?」
あれ? エルちゃんの顔が、見る見るうちに真っ青になっています。どうしたのかな?
「うぅっ……ぐすんっ……どうちよ」
「え? エルちゃんどしたの!?」
「大丈夫? エルちゃんにはまだ難しかったかな?」
するとエルちゃんが、泣きそうな顔をしながら重苦しい雰囲気で言葉を発しました。いつもの明るいエルちゃんとは真逆なので、内心こちらも何事かとドキドキしてしまいます。はっ……!? もしかして、お店で物をこっそりとお会計もせずに持って帰って来たとか? それとも……
「ボク、けーさつにつかまっちゃう……どうちよ……」
「えぇ……!? 何か悪い事しちゃったの?」
「エルちゃん……大丈夫、お姉ちゃん達怒らないから、正直に話してくれるかな? 大丈夫♪」
「んみゅ……」
エルちゃんは大泣きする一歩手前の状況です。もっと早くからそういう事も教えておけば良かったと今更ながら後悔が津波のように押し寄せて来ます。私達も覚悟を決めましょう……私はエルちゃんのお姉さん……責任は全て姉の私にあります。
「ぐすんっ……こないだね……あおいねーたんのあいちゅくりーむ……こっしょりたべちゃったの……」
「そうか……アイスクリームを……え? アイスクリーム?」
「バーゲンだっちゅ……おいちかった……」
「え、そんな事?」
葵ちゃんの方を見てみると、物凄く暖かい視線でエルちゃんを見ています。ニッコニコと擬音が聞こえて来そうな優し気な表情をしています。むしろそんな事だったのかと拍子抜けしてしまいました。
「ごめんなしゃい……まだありゅの……」
「ん? エルちゃん大丈夫だから♪ お姉ちゃん達に話して見て。この際全て話してスッキリしてしまおう!」
「んみゅ……かえでねーたんと、いっちょにおふろにはいったときね、おもらちしちゃったの……」
「う、うん……それは知らない方が幸せだったかもしれないわね……」
葵ちゃんが笑うのを必死でこらえています。私は別に気にして無いし、何ならエルちゃんのだったら、もう入浴剤と変わらないわよ。
「ぷぷっ……」
「葵ちゃん笑っちゃ……ふふ」
「お姉ちゃんも笑ってるじゃん」
どうしよう……エルちゃんは緊迫した面持ちで居るけど、何だか私達の方が謎の罪悪感を感じてしまっています。それと同時にエルちゃんの反応が可愛くて面白くて笑いが止まりません。もう少しこの状況を見てみたいなと思っている自分が居ます。
「エルちゃんは良い子だから心配しないで♪ それくらいじゃ警察には捕まらないから♪」
「そうだよ、エルちゃんのそれが罪になるなら、うちの楓お姉ちゃんはもう刑務所の常連さんだよ」
「ちょっと葵ちゃん? それはどう意味かなぁ?」
「え、そのままの意味だけど」
最近葵ちゃんがお姉ちゃんに対して厳しいよぉ……しくしく……でも、そう言う所もしゅき♡
「もお~よしよし♡ エルちゃん泣かないで♡ 心配しなくても大丈夫だから♡」
「エルちゃんは本当可愛いなぁ♡ バーゲンダッツなら、私がいくらでも買ってあげるから、ね?」
「にゃーん♪」
エルちゃんをあやしていると白猫のタマちゃんもエルちゃんの身体に頬っぺたをスリスリとさせて来ました。エルちゃんが純粋過ぎて、私の心も段々と綺麗になっている様な錯覚に陥ってしまいます。
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