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70話 波乱の会場!? 舞台に乱入するエルちゃん
しおりを挟む◆楓視点
「パンケーキ美味しかったね♪」
「うん♪ でも、何だか視線を感じた気がするけどね.......」
「気の所為よ♪ そろそろみくるちゃんのイベントスペースの場所まで行きましょうか。楽しみだね~エルちゃん♪」
「ん!」
あらあら、エルちゃんも元気一杯で喜んでいますね♪ ショッピングモールに来た甲斐があります。結構人も混んで来たので、エルちゃんと離れないようにしっかりと手を握らないと行けませんね。
「かえでねーたん! あおいねーたん!」
「あらあら♡ 一緒におてて繋ごうね♡」
エルちゃんが自分から手を繋ごうと私の手と葵ちゃんの手を握って来ました♡ 天真爛漫でエルちゃんの笑顔が眩しくて尊いです!
そして私達は仲良く手を繋ぎながら、みくるちゃんのイベントステージへと向かいました。
――――――――――――
「うわ、凄い人だね」
「そうね。子連れの家族が多いかなと思ってたけど、みくるちゃん好きな人は沢山居るんだね」
明らかに一昔前の秋葉原とかに居そうなオタクっぽい格好をした人達が沢山居ます。今日はみくるちゃん役の今をときめく人気声優さんが、みくるちゃんのコスプレしながら演技を披露するそうです。なのでこんなに混んでるのかもしれません。
「うぅ.......ぐすんっ.......」
「よちよち♡ 沢山人が居て怖かったかな?」
「かえでねーたん.......」
「お姉ちゃんが抱っこしてあげるから泣かないで♪ 怖くないでちゅよ~♪」
エルちゃんが辺りをキョロキョロと見渡しています。身体がプルプルと震えており少し涙目になっていました。葵ちゃんもエルちゃんの頭を優しく撫でながら大丈夫だよと宥めています。
【間も無く魔法少女☆みくるちゃんのスペシャルステージが開演します。グッズ販売は13時頃から開始です】
私達は最前列の隅の席に座る事が出来ました。後はショーが始まるのを待つだけです。
「んぅ? ――――――?」
「どしたのエルちゃん?」
エルちゃんが急に真顔になってしまいました。何か考え込んでいる様子です。
【お、そろそろ始まるか?】
【今日はみくるちゃんの声優さんが生で拝めるぞ♪⠀】
【楽しみ過ぎて、俺昨日は13時間しか寝れなかったぞ】
【お前寝過ぎだろ】
【ママ! 後でみくるちゃんのおもちゃ買って!】
【みくるちゃんのコスした飛鳥ちゃん.......イヒヒ♡】
周りを見渡すと2階や3階からも沢山の人がステージを眺めています。魔法少女みくるちゃんの人気は凄まじいですね。子供から大人までファンが居る何て.......まあ、私も葵ちゃんも魔法少女☆みくるちゃんを朝エルちゃんと一緒に見てハマってるのでれっきとしたファンですね。出て来るキャラクターが全員個性的過ぎて、テレビを見る度に葵ちゃんが良く突っ込んで居たからね。
「あ、お姉ちゃん、エルちゃん始まるよ」
「うん、エルちゃん大人しく見ましょうね♪」
「――――――!!」
エルちゃんを真ん中にして、左右に私と葵ちゃんがエルちゃんを挟む形で座っています。
《きゃあああ! 誰か助けて! 変態よ!》
《ぐへへ.......吾輩は怪人、こちょこちょ男爵ぞ! お前の服を脱がしてこちょこちょしてやろう!》
《時は満ちた.......我々が世界征服をする時が!》
《俺の右手に眠る黒炎竜が血を求めている!》
あ、あれは!? 葵ちゃんが推してる【壊れてしまった真理子】! 更に敵側は変態怪人の【こちょこちょ男爵】、【大魔王ハローワーク】に厨二病のドラゴンマスター【黒炎竜ニート山田】! 会場の観客も大いに盛り上がりを見せています! エルちゃんも指を差しながら何か言っていますね。
「―――!? ――――――!!」
「エルちゃん凄いね! 良くテレビに出て来るキャラ達だね♪」
しかも、敵側のコスプレのクオリティも中々に高いです!
《これ以上近づかないで! 魔法少女教会に通報するわよ!?》
《出来るものならして見るが良い.......魔法少女教会にも我々の同胞が襲撃に向かっている。そして、この国が滅びるのも時間の問題だ.......そうだな。犠牲者の記念すべき第一号は、お前だ》
《きゃあああああああ!! 暴力はやめて! 誰か助けて!》
真理子の演技も中々ですね。これは.......ん? エルちゃん?
「―――――――――!!」
「ちょ.......!? エルちゃんどこ行くの!?」
「エルちゃん!?」
何とエルちゃんは、魔法少女☆みくるちゃんのおもちゃの杖を持ってステージへと走って行ったのです!
◆エルちゃん視点
「な、何だ!? 今からここで何が始まると言うのだ!?」
段々と人が集まって来ている.......ここでこれから何が始まると言うのだろうか?
「――――――♪」
「かえでねーたん、あおいねーたん.......僕の手をしっかりと握って下さい」
「―――――――――♡」
こんなに人が多いと迷子になる可能性があります。かえでねーたんがもし迷子になったら、きっと怖くて震えながら泣いてしまうかもしれません。か弱い女性を守るのは男の務め。
「んみゃ!? かえでねーたん、抱っこ違うよ!」
「――――――?」
手を繋ごうとしただけなのにかえでねーたんに抱っこされてしまいました。僕はそのまま席の方へと連行されてしまいます。
「―――――――――♪」
「あおいねーたん、大丈夫です。僕にはこの伝説の杖がありますから!」
ちゃんと日頃からお家で、綺麗に杖を磨いたりボタンを押して技を解き放つ訓練も毎朝欠かさずにして来たのだ。何かあったとしてもこの伝説の杖で立ち塞がる敵は倒してお姉さん達を守って見せる!
「―――――――――♪」
「ふぇ? ここに座るのですか?」
は!? 分かったぞ! この場所は闘技場か! 前の舞台で歴戦の戦士達が腕を競い合い、命を削りながら闘うと言う.......そして、闘技場は賭博としても有名だ。昔、1度だけ闘技場に行った事があります。僕は観客のご飯や飲み物をこっそりと頂くと言う目的で潜入したのですけどね。あれは今でも良く覚えています。どちらかが勝つまで闘い、時には命を落とす者も居ました.......最後は途中で警備の人に見つかり、お外につまみ出されたので試合の全てを見る事は出来ませんでした。
「ぬっ!? あの人は.......」
見覚えがある女性がステージに出て来ました。いつもお家で、お姉さん達と一緒にテレビと言う魔道具に映し出される映像を見ている時に出て来る女性です。
「まさか.......あのか弱い女性が闘うと言うのか!?」
そして、しばらくすると凶悪そうな顔をした変態と人をこちょこちょして弄ぶ救いようの無いド変態が出て来ました。
「あ、あれは.......大魔王はろぉわーく!」
あれは凄腕の冒険者のお姉さんが、何度もやられた程の猛者です。あいつはマジでやばい.......あの女性に勝てる筈が無い!
「―――――――――!!」
あの女性もきっと無理矢理闘技場に出される事になったのだろう.......大声で泣いている。助けてあげたいけど、流石にあいつら三体を相手に勝てるか分からない。
「いや、僕はお姉さん達からこの伝説の杖を授かった時に覚悟を決めたんだ。お姉さん達が僕をここに連れて来た理由は.......」
これはきっと1つの試練なのだ。ここで助けに行かなければ、僕はもう男を名乗る資格が無い!
☆スラム時代のエルちゃん事アレン☆
◆スラムの路地裏にて
「うぅ.......許さない」
「何だ? 何を許さないって?」
「貧乏人~貧乏人~」
「おいおい、蹴ったら足が汚れちゃうだろ。石でも投げ付けてやろうぜ」
僕の目の前にはパンが1つ転がっている。このパンは僕が一生懸命ゴミ拾いをして稼いだお金で購入したパンだ。この素行の悪い奴等に僕は殴られて、そして取り上げられた。目の前でこいつらはパンを地面に叩き付けやがったんだ!
「おい! てめぇら何してやがる!」
「痛っ!?」
「おい、あいつはB級冒険者の【隻眼のフレリード】だ! 逃げろ!」
僕は運が良かった。強そうな冒険者の方に窮地を助けて貰ったのだ。
「坊主大丈夫か?」
「あ、ありがとうございます.......」
その時、僕のお腹の音が盛大に鳴ってしまった。目の前にあるパンは地面に落ちただけなのでまだ食べれます。ですが、助けて貰って置いてお礼をしないのも男として恥ずべき行為です。でも、床に落ちたパンを渡すのは流石に失礼だよね.......
「あ、あの。僕何も持って無くて.......」
「気にするな.......これやるよ」
「はわ!? こ、これは.......銀貨!?」
助けて貰った上にかなりの大金まで頂いてしまった.......これは素直に受け取って良いのだろうか.......
「坊主、お礼を返そうとしなくて良い.......だが、もし相手が困っていたら、自分の出来る範囲で良い。手を差し伸べてやるんだ」
「手を差し伸べる?」
「あぁ、格好良い男になりたいのなら困ってる人を見捨てては行けない。そして己の信念を持つんだ」
僕にはこの冒険者のおじさんが凄い眩しく見えた。僕もこの人のようにかっこいい冒険者になりたい.......
――――――――――――
「やるんだ。あの冒険者のおじさんみたいに.......」
ここで動かなければ僕はきっと後悔するだろう。あの人のようにかっこいい冒険者になるには.......
「やるぞ.......あの女性は僕が必ず救って見せる!」
僕は伝説の杖を持って舞台の方へと走った。
◆魔法少女☆みくるちゃん役の声優・南雲飛鳥
「あぁ、いよいよ出番かぁ。てか、みくるちゃんのコスプレしたのは良いけど、私人前に出るの苦手何だよね.......」
しかもスカートの丈短くない? パンツ見えないよね? あぁ、緊張して来た。昨日の夜台本は再度読んで、変身の動きも鏡の前で沢山練習したから大丈夫だとは思う。魔法少女みくるちゃんの詠唱呪文は、中々に恥ずかしい台詞だから慣れるまでが大変だったわね。
「うわ、もう私の出番か.......」
【準備は良いかい?】
「はい、大丈夫です.......」
私の耳に小さなインカムが装着してあります。相手は監督です。
「すぅ.......はぁ.......頑張るぞ」
私がステージへ出ようとした時でした。白いワンピースを着ている小さな女の子が舞台に上がって来たのです!
「へ? あ、あの監督? あの可愛い女の子は新キャラですか? 台本にはありませんでしたけど.......」
【待ってくれ、俺にもわからん】
「はい!?」
しかも金髪エルフのコスプレ.......手には魔法少女☆みくるちゃんのおもちゃの杖が握られています。会場は騒然としていました。
「え、どうすれば良いのですか!?」
【飛鳥くん、ここはアドリブで頼む。あの幼女ちゃんと共にあの3人を倒してくれ。俺からもインカムで連絡しておく】
ぇぇえええええええええええええええええ!!??
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