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67話 エルちゃんゲーセンでうめぇ棒をGETする

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 ◆楓視点




「―――――――――♪」
「エルちゃん、ちょっと待って!」

 エルちゃんが目をキラキラと輝かせながら向かった先は試食コーナーです。各お店の前には、店員さんがお客さんに様々な食べ物の試食を提供していました。

「かえでねーたん! あおいねーたん!」
「こらこら、エルちゃん走ったら危ないよ?」
「お姉ちゃんも走ったら危ないよ! あ、2人共待って!」

 エルちゃんが涎を垂らしながら店員の女性が焼いているウインナーを見ています。その他にもベーコンや野菜等も沢山ありますね。

「いらっしゃいませ~可愛らしいお嬢ちゃんですね♪」
「こんにちは、あぁ! エルちゃん勝手に食べたら駄目だよ......」
「試食なので大丈夫ですよ♪ 良かったらこちらのベーコンもどうぞ♪」

 エルちゃんは背伸びをしながら台の上に置いてある紙皿を取りました。ウインナーやベーコンを食べてからエルちゃんは、余程美味しかったのかその場でぴょんぴょんと飛び跳ねて興奮しています。私は試食よりもエルちゃんを食べちゃいたいです♡

「お嬢ちゃん、中々の食いっぷりだね~こっちの野菜も新鮮で美味しいよ♪ 良かったらどうぞ」
「............」
「あれ? じゃあ、こっちのウインナーは?」
「―――――――――♡」

 エルちゃんは少し野菜が苦手なのかもしれませんね。家でもお野菜は私のお皿にこっそりと入れてみたり、お皿の縁の方へ小さく固めて残してるし......でも、バレる度に葵ちゃんに怒られていますけどね。

「なるほど、お嬢ちゃんの年齢くらいなら好き嫌いは良くある事ですね」
「はい、お野菜を克服してくれるとこちらも少しは安心出来るのですが......」
「なら、こうしてはどうでしょうか? 野菜をベーコンで包んで隠しちゃうのです」
「なるほど、そういう戦法ですか」

 これならエルちゃんもお野菜を食べれるかもしれませんね。

「あ! エルちゃん......」
「―――――――――♡」
「焼いてある分の試食全部食べちゃったの!?」

 なっ!? 次は反対側のリンゴの試食コーナーへ!? エルちゃんの食い意地が凄まじいです。

「こら! エルちゃん!」
「――――――?」
「試食コーナーの食べ物は沢山食べたらメッ! 普通は味を確かめる為に1つだけ食べる奴なの! 後、走ったら転ぶから危ないって、お姉ちゃん言ったよね?」
「ふぇ......ぐすんっ......」
「まあまあ、葵ちゃん落ち着いて......」

 私はエルちゃんの前でしゃがんで、頭を優しく撫でながら注意をしました。

「エルちゃん、気持ちは分かるけどさっき店員のお姉さんが食べ物をくれたときにちゃんとお礼を言ったかな?」
「かえでねーたん......」
「どんな些細な事でも人から貰ったり良くして貰った時は、ちゃんとありがとうと言わないと駄目だよ。これは大事な事なの」
「あいあと......?」
「うん、そうだよ」

 はぅ......♡ 涙目のエルちゃんが可愛い......思いっ切り抱きしめてあげたいけど、ここは私も心を鬼にしないと行けません。

「ほら、あの店員さんこっち見てるよ? ちゃんとありがとうって言いに行こうね♪」
「............。」

 私はエルちゃんの手を引きながら、店員のお姉さんの所へと戻りました。

「あ......あいあと......」
「はい♪ どう致しまして♪ ちゃんとありがとうが言えたお嬢ちゃんには、こちらのウインナーさんをプレゼントしよう♪」
「ふぁわああ......あいあと!」
「おお! お嬢ちゃん凄いね! ちゃんとありがとうが言えましたね!」

 店員のお姉さんが私の方に向けて、鮮やかなウインクをして来ました。私達の会話を聞いて居たようですね。

「ありがとうございました。すみません、ウインナーとベーコン全部買いますね」
「え、全部!? いやいや、お気になさらずに......私も可愛いお嬢ちゃんの笑顔が見れて良かったですよ♪」

 優しい店員さんで良かったです♪ エルちゃんは試食のウインナーを美味しそうにモグモグと食べています。この後、エルちゃんには美味しいものを沢山食べさせてあげますからね♪ エルちゃん食べ切れるかなぁ?

「エルちゃん、さっきは強く言ってごめんね。でも、エルちゃんの為だと言うのは分かって欲しいんだ♪」
「んみゅ!」
「よしよし、じゃあ気を取り直して行こっか♪」

 葵ちゃんも優しいですね。エルちゃんも葵ちゃんに抱き着いて甘えています。尊いです......やっべ、鼻血が出そ。純白のワンピースを危うく赤色に染め上げる所でした......

「あ、エルちゃん。あそこにゲーセンあるね。行ってみる?」
「――――――!」

 妹と妹が手を繋いでいますよ! 何て尊いのかしら......最早尊いと言う言葉しか出て来ません。葵ちゃんがしっかりとエルちゃんのお姉ちゃんをしてるのが尊いわ......これはシャッターチャンスです!

「ん? お姉ちゃん何してるの? 早く行くよ~」
「はいは~い♪」

 私も葵ちゃんとエルちゃんと手を繋ぎたいです♡




 ―――――――――



「............。」
「エルちゃん、もしも~し?」

 エルちゃんがゲーセンの前で口をポカーンと開けて呆然と立ち尽くしています。しばらくするとキョロキョロと見渡してから、エルちゃんは私の身体にしがみついてしまいました。

「エルちゃん、ここはゲームセンターって言うお遊びする場所なのよ♪」
「ヒィッ......!?」
「うふふ......そんな怯えなくても大丈夫でちゅよ~♡」

 ゲーセンの音の大きさに驚いているのかな? でも、エルちゃんは興味があるのかチラチラと周りを見ています。

「お姉ちゃん、エルちゃんが震えてるよ?」
「慣れない場所に来るとそうなっちゃうかな? エルちゃんを抱っこしながら適当に見て回りましょうか」

 初めての物を見るのもまた勉強です。エルちゃんは好奇心旺盛の女の子なので、色々私としても見せてあげたいのです。

「かえでねーたん! あおいねーたん! おかち!」
「おお、沢山お菓子あるね~」

 目をキラキラと輝かせて......エルちゃんきゃわいい♡ 最初はあんなに怖がって居たのに、今ではクレーンゲームの中にある景品のお菓子に夢中です。

「ん? エルちゃん降りる?」
「―――――――――!」

 エルちゃんが降りたそうな感じだったので、床に降ろしてあげるとエルちゃんは一目散にクレーンゲームの前まで走って行きました。

「エルちゃんったら......」
「まあまあ、小さい頃は私達もあんな感じだったんじゃないかな?」

 私達もエルちゃんの後を追い掛けると、エルちゃんはクレーンゲームのボタンをポチポチと何度も押しては首を傾げて居ます。お金を入れないとクレーンゲームは動きませんので当然ですね。

「ぐぬぬ......んぅ?」

 お? エルちゃんが隣りの台でプレイしてる人達をガン見しています。お金を入れないと動かない事に気が付いたのかな?

「エルちゃん、お姉ちゃんがお金入れるからやって見る?」
「―――――――――?」
「試しに100円入れてみようか。エルちゃん見てて」

 中はうめぇ棒が山のように積まれて居ますね。沢山の種類の味があります。エルちゃんは、一生懸命背伸びしながら中を覗こうとしています。エルちゃんはいつも私の心を掻き乱して来ます。どうしてこんなにも可愛いのでしょうか......

「お姉ちゃん、時間制限でアーム下降しちゃったよ」
「あ、しまった。エルちゃんに見蕩れちゃってた......」
「お姉ちゃんったら…やれやれだね。次は私がやってみるよ」

 葵ちゃんが100円玉を入れてアームが動きます。正直何処を狙ったら良いのかイマイチ分かりません。山積みなので、適当に狙えば雪崩のように崩れて来そうです。

「え、アームの力弱くない? これ本当に取れるの?」
「んみゅ!」
「あ、エルちゃん!? 景品取り出し口に入ったら駄目だよ~」

 急いでエルちゃんを抱っこしました。エルちゃんは見てないといつも斜め上の事をしますからね。何をしでかすか分かりません。

「エルちゃんもやってみる?」
「――――――!」
「はい、どうぞ♪」

 今度はエルちゃんの出番です。エルちゃんにここを押すように言ってみると、エルちゃんは元気よくボタンを強く叩きました。

「あらあら、エルちゃん長押ししないと進まないんだよ♪」
「待って、お姉ちゃん。何か取れそうじゃない?」

 アームが下降して行くとクレーンの爪では無く、横の出っ張りにうめぇ棒が当たって1つ落ちて来ました。

「おお! エルちゃん、凄いね!」
「これはうめぇ棒のエナジードリンク味だよ!」
「んぅ? かえでねーたん、あおいねーたん」

 エルちゃんが指を指す方向を見てみると、次の瞬間うめぇ棒の山がどさりと落ちて来ました!

「ファッ......!?」
「ええええぇぇぇ......!?」

 待って、ざっと見るだけでも推定100本以上落ちて来ましたよ!? エルちゃん恐るべし......流石にこんなにあっても食べ切れませんよ。

【うわ。あの嬢ちゃん達凄いな】
【見て、あの小さい子めっちゃ可愛いわ!】
【エルフのコスプレかな? 抱いてみたい】
【お持ち帰りしたい】

 見られています! 周りの人に見られて少し恥ずかしいです。

「あれ? もしかして楓?」
「え? あ! みーちゃんじゃないの!」
「やっぱりかぁ、久しぶりだね~高校の時以来だよね」

 この眼鏡を掛けた黒髪の女性は、私の高校時代の友人の酒井美月さかいみづき事、みーちゃんです! こんな所で偶然会うとは思いませんでした。

「あら? 楓のお子さん?」
「いやいや、色々訳あって一緒に暮らしてる私の妹よ♪ エルちゃんって言うの! 可愛いでしょ♪」
「あらあら、そうなのね。エルちゃん、よろしくね♪」
「――――――?」

 エルちゃんは何だか困惑した様子です。エルちゃんは顔を赤くして、私の後ろに隠れてしまいました。

「あれ、みーちゃんその子は?」
「私の娘だよ♪」
「ええええぇぇぇぇ!? もうママになったの?」
「高校卒業してから結婚したからね♪ この子は娘のマイちゃんだよ~そっちのエルちゃんと同い歳くらいかな?」

 同級生がいつの間にか結婚して母親になっている何て......衝撃的でした。時間が経つのは、あっという間ですね。

「エルちゃん! よろしくね!」
「んぅ......」
「あれ?」

 あらあら、エルちゃんそんな恥ずかしがらなくても良いのに......お友達が出来るチャンスだよ! ほら、頑張ってエルちゃん!

「エルちゃん、隠れて無いでちゃんと挨拶しましょうね~マイちゃんごめんね。エルちゃん、訳あって日本語が話せないの......でも、仲良くしてくれると嬉しいな♪」
「しょうなんですか! じゃあ、マイがお姉さんになってあげりゅね!」

 ついにエルちゃんにもお友達が......あれ? エルちゃん?

「―――――――――?」
「ふぇ?」

 エルちゃんが何と! マイちゃんの頭を優しくなでなでしています! 幼女が幼女の頭を撫でて居ますよ!? しかも、エルちゃん何故かドヤ顔です! 尊い......尊すぎて漏らしそうだわ!

「―――――――――♪」
「あ、あの......えっと......あぅ......」

 今度はマイちゃんが顔を赤くしてモジモジし始めてしまいました。どちらも可愛いですね♡

「あらあら、楓の妹さんも可愛いわね♪」
「ぐへへ......ディフフ♡」

 えへへ......良いでちゅね~2人ともこっち向いて! 私にもっと可愛い姿を見せて頂戴! 待ち受けにするから!

「お、お姉ちゃん......」
「楓......貴方もそんな顔をするのね」
「お姉ちゃんは、可愛い子見るといつもこうなのです......」

 幼女と幼女の百合も最高ね! お!? エルちゃんがうめぇ棒をマイちゃんに渡してる! あの食いしん坊のエルちゃんが、他人にお菓子をあげた!? これは明日ハリケーンが来るかもしれませんね。

「あ、ありがと......」
「―――――――――!」

 私には分かります。エルちゃんがお姉ちゃんの真似事をしています! ドヤ顔しているエルちゃんめっちゃ可愛い! いつも家では、私や葵ちゃんにスリスリと甘えて来るのに......また私の性癖が歪みそうです! もう2人とも抱きしめて上げたいわ! エルちゃんを愛でて上げないと私の気が済みそうにありません!

「楓? 大丈夫?」
「お姉ちゃん落ち着いて! 傷はまだ浅いよ!」

 エルちゃん♡ ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛もう無理! 抱かないと私が死んでしまいます! エルちゃん成分が枯渇寸前です!

「―――――――――!?」
「エルちゃん♡ ムギュっ♡ だいちゅき♡ チュッ♡」
「かえでねーたん!?」
「大丈夫♡ ちょっとだけ......ほんの少しだけだから♡」

 はぅ......たまらん♡
    
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