大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ

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第45話 使えないし使わない

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  13年前。7歳の少女が、森の広場の中央で倒れていた。クレーターのど真ん中にだ。満身創痍で数多の骨折と打撲。だが、周囲には人も魔物の気配もない。魔法による犯行ではないかと思われるも、捜査は難航。迷宮入りとなってしまった。

 少女の名前はテスラ・シルバリオル。

 あの日、テスラは魔法を使った。正確には、内緒で魔法の練習をするつもりだった。ある日突然、テスラが凄い魔法を使うようになっていたら、父と母をびっくりさせることができると思ったからだ。

 そんな、幼気な気持ちが事件を引き起こす。

 シルバリオル家の属性は『闇』に起因することが多い。テスラは、その亜種として重力魔法が使えるようだったが――秘めたる魔力が凄すぎた。

 周囲一帯を巻き込んで、強大な重力を生み出す。だが、彼女は『器用さ』を持ち合わせていなかった。まず、範囲が絞れない。発動したら、どれだけの範囲に影響が及ぶか調節ができない。さらにいうと、対象すらも絞れない。要するに、使用者であるテスラ自身をも巻き込んでしまうと言う自虐的な魔法。

 そのせいで、あの日――テスラは自分を巻き込んで、大地にクレーターを生み出すほどの重力を発生させてしまったのである。

 重力魔法というのは本来ならアタリ属性である。特に、巨大な魔物に対して凄まじい威力を発揮する。例えばだが、10倍の重力を発生させると、50kgの体重には500kgの負荷がかかる。

 これがドラゴンだと10tなら100tの負荷を受ける。重い生物ほど、影響が大きいのだ。逆に、蟻とかカブトムシとかだと、さほど影響を受けない。小さい生物は、自重の何十倍もの荷物を運べるからだ。

 重力魔法使いは、周囲に重力を発生させたり、対象ひとりだけに重力を帯びさせたり、武器の重さを増幅させたりする。さらに器用だと、反重力を使って空を飛ぶ奴だっている。けど、テスラはそれらが一切できない。

 そして親類を含め誰ひとり、テスラの魔法を知るものはいない。テスラは、自分の魔法のことを、誰にも話したことはなかったのだ。

 なぜか?

 それは、テスラの魔法は人々にとって恐怖になりうるからである。バルティアの町ぐらいならぺしゃんこにできるだろう。それを知られたら、民は不安になる。

 テスラの魔法は不安要素を孕んでいる。万が一、魔力を暴走させてしまえば、町の人たちは無事では済まない。要するに、ちょっと久しぶりに魔法の練習をしてみようかなーとか思った瞬間、町が壊滅とか、そういうことだって起きうると『思われてしまう』のである。

 だから、テスラは魔法を使わないことに決めた。そして、身体を鍛えることにした。民を守るために力は必要だ。そもそも、これから先、魔法を使うチャンスに直面しても、まず影響を受けるのは自分だ。身体が丈夫でなければ、自身がミンチになり得る。

 魔法が強力だからこそ、不器用だからこそ、民を守る力が必要だからこそ、自分を守る力が必要だからこそ、いまのテスラ・シルバリオルがある。

 魔法を使う機会などないと思っていた。けど、奇しくもスピネイルがおあつらえ向きな場所を用意してくれた。奴とて、人目に付きたくなかったのかもしれないが、それはテスラとっても好都合。

「くくくッ、はーっはっはっはっは! 礼を言うぞスピネイル。おかげで初めて魔法使いらしい戦いができる」

 ぐしゃりとS級の魔物たちが潰れていく。不安定なので、どの程度の出力なのかは曖昧だが、おそらく100倍ぐらいの重力は発生しているのだろう。

 しかし、さすがは魔王の一部を宿しているだけはある。この状況でもスピネイルは動けるようだった。さらに、リーク。こいつはいったいどういう肉体をしているのだ。テスラのように訓練をしているようにも見えない。これが才能というものだろうか。

「くっ! この女ッ、バケモノかッ」

「見目麗しい美女にバケモノとはなんたる侮辱か。貴様の方が、どう見ても魔物だぞ? スピネイル、覚悟はいいか? 貴様の敗因は、私に魔法を使わせたことだ――」

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