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第43話 魔眼の力を舐めるなよ
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「くッ!」
身体をねじり、蹴りを繰り出しながら立ち上がるテスラ。スピネイルは回避し、距離を取る。
「陛下は仰った。魔王の残骸は、選ばれし領主が身命を賭して守るべし、と。――それを忘れたかスピネイル!」
「こうして肌身離さず大事にしているではありませんか!」
「滲み出る悪意と敵意は、魔王の残骸のせいか?」
「いいや、純粋なる王への忠誠です」
否定はしているが、ここまで大胆になれるのは魔王の意思の残滓があるからなのだろう。そうでなければ、あのような城を隠してつくるようなことはすまい。そして、いくら憎いとは言え、テスラを屠るなど思いつくまい。
「そういうことか……」
「あなたはここで死にます。領地は、私がもらってさしあげます! 民も! 財も! おまえが積み重ねてきたすべてを――」
「ほざけ!」
テスラは神速の速さで接近。会話の暇に、右ストレートを顔面に打ち込む。ドラゴンでも雲の彼方に吹っ飛ばすほどの威力で、だ。しかし、スピネイルは派手にのけぞるだけだった。
「……ぐくっ……ふふ、怒りましたか、テスラ?」
「もとより怒っている!」
言って、連撃を打ち込むテスラ。スピネイルを圧倒する。いかに魔王の力の一部を手に入れようと、身体能力でテスラの右に出る者はいない。――が――。
「はは、この程度ですか! テスラァァ? おとなしくしていれば、地獄を見ずに済んだものを!」
スピネイルは上半身の衣服を破り捨てる。
「おおおおおおぉぁぁああぁぁぁッ!」
「な、なんだッ?」
スピネイルの身体が隆起していく。そして、全身が漆黒に変色し、鱗が出現し始める。角が生え、牙が出現する。そして、五メートルはあろうバケモノに変貌を遂げる。
「……これが魔王の残骸(ひとみ)の力か……」
「いいや、私の力だ! このスピネイル・クラージュの魔物を操る魔力が、魔王の力すらも制御し、操ることができている! これが! これが魔王スピネイルの力なのだ!」
バケモノ化したスピネイルが雄叫びをあげる。すると、魔王城の方から数多の魔物たちが解き放たれた。100はいるであろうそれらが、テスラを完全に包囲する。
「Sクラスの魔物ばかり……よくも集めたものだな」
ドラゴンにサイクロプス、キマイラにマンティコア、ペガサス、レア鉱石のゴーレム。圧巻のそれらを眺めながら、テスラはそうつぶやいた。
「まだ余裕か? それとも諦めているのか? なあ、テスラぁぁあぁッ!」
スピネイルが大きく口を開いた。次の瞬間、極太の光線が吐き出される。テスラはとっさに回避した。軌道線上にいた不運なドラゴンが、跡形もなく消し飛んでしまう。
「さすがにいまのを食らったら、ひとたまりもなか――」
だが、回避したタイミング狙って、サイクロプスが棍棒で殴りつけてくる。ぺしゃんこにされたところで、ドラゴン系の魔物たちが、一斉にブレスを吐いた。
「ははははは、いかにあなたでも、これだけの攻撃――」
「ぬがあぁぁりゃぁあぁぁッ!」
大地を踏み抜き、気合いで吹き飛ばすテスラ。だが、無事だったというわけではない。衣服はボロボロ。身体も裂傷に蝕まれている。ふらり、と、目眩に襲われるも、射殺さんばかりにスピネイルを睨みつける。
「舐めるなよ……魔物如きが、このテスラを殺せると思った……か……」
「ほ、本当に人間か……むしろ、あなたの方がバケモノ――」
「我こそがシルバンティア……我こそが国……我こそが王……我こそが剣で盾。……民を思えば、例え万の兵が相手でも膝を突くことなど許されん。くっ……くくっ! ふ、ふはははははッ! 許さんぞ、スピネィィィルッ!」
「殺せッ! テスラを殺せ! そいつは必ずや世界の脅威になるッ! 私は正しかった! やはりおまえは害悪だ! おまえこそ本当の魔王だ! おまえこそッ! 人間の脅威なんだよぉぉぉッ!」
スピネイルの言葉を受けて、Sクラスの魔物たちが一斉に襲いかかる。だが、その時だった。地面から、それらと『まったく同じ姿をした魔物』が出現する。そして、なんということか、それらが同士討ちを始めたではないか。
「こ、これは?」と、不思議になるテスラ。
「な……」と、呆気にとられるスピネイル。
「ど、どういうことだ、こいつらはいったいなんなんだッ? ええいッ!」
スピネイルが口を開いて魔力を蓄える。光線を吐く気か――。
その瞬間、大地からリークが飛び出し、スピネイルの顎を派手に蹴り上げた。口から吐き出された閃光は天を穿ち、雲を吹き飛ばす。
「リーク……?」
きょとんと、友の名前を落とすテスラ。
「――助けにきましたよ、テスラ様」
身体をねじり、蹴りを繰り出しながら立ち上がるテスラ。スピネイルは回避し、距離を取る。
「陛下は仰った。魔王の残骸は、選ばれし領主が身命を賭して守るべし、と。――それを忘れたかスピネイル!」
「こうして肌身離さず大事にしているではありませんか!」
「滲み出る悪意と敵意は、魔王の残骸のせいか?」
「いいや、純粋なる王への忠誠です」
否定はしているが、ここまで大胆になれるのは魔王の意思の残滓があるからなのだろう。そうでなければ、あのような城を隠してつくるようなことはすまい。そして、いくら憎いとは言え、テスラを屠るなど思いつくまい。
「そういうことか……」
「あなたはここで死にます。領地は、私がもらってさしあげます! 民も! 財も! おまえが積み重ねてきたすべてを――」
「ほざけ!」
テスラは神速の速さで接近。会話の暇に、右ストレートを顔面に打ち込む。ドラゴンでも雲の彼方に吹っ飛ばすほどの威力で、だ。しかし、スピネイルは派手にのけぞるだけだった。
「……ぐくっ……ふふ、怒りましたか、テスラ?」
「もとより怒っている!」
言って、連撃を打ち込むテスラ。スピネイルを圧倒する。いかに魔王の力の一部を手に入れようと、身体能力でテスラの右に出る者はいない。――が――。
「はは、この程度ですか! テスラァァ? おとなしくしていれば、地獄を見ずに済んだものを!」
スピネイルは上半身の衣服を破り捨てる。
「おおおおおおぉぁぁああぁぁぁッ!」
「な、なんだッ?」
スピネイルの身体が隆起していく。そして、全身が漆黒に変色し、鱗が出現し始める。角が生え、牙が出現する。そして、五メートルはあろうバケモノに変貌を遂げる。
「……これが魔王の残骸(ひとみ)の力か……」
「いいや、私の力だ! このスピネイル・クラージュの魔物を操る魔力が、魔王の力すらも制御し、操ることができている! これが! これが魔王スピネイルの力なのだ!」
バケモノ化したスピネイルが雄叫びをあげる。すると、魔王城の方から数多の魔物たちが解き放たれた。100はいるであろうそれらが、テスラを完全に包囲する。
「Sクラスの魔物ばかり……よくも集めたものだな」
ドラゴンにサイクロプス、キマイラにマンティコア、ペガサス、レア鉱石のゴーレム。圧巻のそれらを眺めながら、テスラはそうつぶやいた。
「まだ余裕か? それとも諦めているのか? なあ、テスラぁぁあぁッ!」
スピネイルが大きく口を開いた。次の瞬間、極太の光線が吐き出される。テスラはとっさに回避した。軌道線上にいた不運なドラゴンが、跡形もなく消し飛んでしまう。
「さすがにいまのを食らったら、ひとたまりもなか――」
だが、回避したタイミング狙って、サイクロプスが棍棒で殴りつけてくる。ぺしゃんこにされたところで、ドラゴン系の魔物たちが、一斉にブレスを吐いた。
「ははははは、いかにあなたでも、これだけの攻撃――」
「ぬがあぁぁりゃぁあぁぁッ!」
大地を踏み抜き、気合いで吹き飛ばすテスラ。だが、無事だったというわけではない。衣服はボロボロ。身体も裂傷に蝕まれている。ふらり、と、目眩に襲われるも、射殺さんばかりにスピネイルを睨みつける。
「舐めるなよ……魔物如きが、このテスラを殺せると思った……か……」
「ほ、本当に人間か……むしろ、あなたの方がバケモノ――」
「我こそがシルバンティア……我こそが国……我こそが王……我こそが剣で盾。……民を思えば、例え万の兵が相手でも膝を突くことなど許されん。くっ……くくっ! ふ、ふはははははッ! 許さんぞ、スピネィィィルッ!」
「殺せッ! テスラを殺せ! そいつは必ずや世界の脅威になるッ! 私は正しかった! やはりおまえは害悪だ! おまえこそ本当の魔王だ! おまえこそッ! 人間の脅威なんだよぉぉぉッ!」
スピネイルの言葉を受けて、Sクラスの魔物たちが一斉に襲いかかる。だが、その時だった。地面から、それらと『まったく同じ姿をした魔物』が出現する。そして、なんということか、それらが同士討ちを始めたではないか。
「こ、これは?」と、不思議になるテスラ。
「な……」と、呆気にとられるスピネイル。
「ど、どういうことだ、こいつらはいったいなんなんだッ? ええいッ!」
スピネイルが口を開いて魔力を蓄える。光線を吐く気か――。
その瞬間、大地からリークが飛び出し、スピネイルの顎を派手に蹴り上げた。口から吐き出された閃光は天を穿ち、雲を吹き飛ばす。
「リーク……?」
きょとんと、友の名前を落とすテスラ。
「――助けにきましたよ、テスラ様」
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