大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ

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第16話 どっちの我慢ショー

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 ――まあ、強いな。

 雑魚ではないとは思っていたけど、このファンサとかいう女性は相当な実力者だ。魔法の『器用さ』というのは天性のものでもある。アクアブラスターという難易度の高い魔法を、彼女は簡単にやってのけた。食らったのが心臓だったら、さすがの俺もヤバかったかもしれない。まあ、あたらないけど。

 俺は剣と鞘を粒子化して、周囲へと漂わせる。量は心許ないが、テスラみたいなバケモノと戦うわけでもないし、これぐらいで十分だろう。

 ファンサが指を持ち上げた。アクアブラスターだ。俺は、素早く回避する。魔力で水を創造できるのは羨ましい。

 魔法にもいろいろあって、俺は操作タイプだ。存在するものを操作することが圧倒的に得意。そのぶんパワーがある。だが、無からつくりだす創造タイプの魔法は苦手なのだ。こればっかりは属性的な不得手もあるので仕方がない。

「よっ」

 俺はファンサを囲むように砂の竜巻を発生させる。ファンサが連続してアクアブラスターを放つ。だが、風に起動を変えられ、砂に水分を奪われる。俺には届かない。

「属性の相性が悪かったな」

「う、うるさいのです! 戦い方などいくらでもあります!」

「ああ、俺だって戦い方はいくらでもあるぜ。足下を見てみろよ」

「えッ?」

 彼女の足を、砂が捉えていた。それは、蟻が這うかのように身体を這い上がる。そして蛇の如く身体に巻き付いた。

「はい、勝負あり」

「う、ぐッ!」

 たいした砂の量じゃないけど、女性を拘束するには十分だろう。力で逃れるのは無理だ。いや、テスラなら余裕で逃れるだろうけど。

「な、なるほど……少しはやりますねぇ……」

 負け惜しみかと思ったが――どうやら、彼女も奥の手を持っていたようだ。ファンサが水流を纏う。しゅわしゅわと砂が焼けるように溶けていく。

「砂が溶ける……? 水の上位属性……?」

 酸。いや、彼女の知識があれば、酸を操作することで、ありとあらゆる『薬品』をつくることが可能だろう。かなり珍しいタイプの魔法だ。

「薬魔法か」

 溶けた砂から煙が漂っている。毒ガスの可能性もありそうだ。そこそこ耐性もあるが、病気になると嫌なので、とっとと終わらせよう。

「あーあ。これで終わりなら楽だったんだけどな」

「ふふ、リークくんと言いましたっけ? 先生を侮っちゃいけませんよぉ?」

「いや、どちらにしろ、お仕舞いだよ。虐めるのは嫌だから、最後の手段だったんだけどな。――もう一度、足下を見てみな」

 俺たちの立っている床には、いつの間にかおびただしい量の砂がばらまかれていた。その水位――いや、砂位は、ゆっくりと確実に高さを増していく。

「え……ッ?」

 ファンサが見上げた。すると、窓からザァアアアアアと、滝のように砂が流れ落ちていた。俺がパチンと指を鳴らす。すると、点在する他の窓からも一斉に砂が流れてくる。外にある砂や土を大量に流し込んでいるのだ。

「この勢いだと、一時間ぐらいで部屋を満杯にできるかな? ま、そうなるとファンサ先生は確実に窒息死する。あるいは圧死する。砂って結構重いんだぜ」

「な……な……」

「はい、俺の勝ち。砂のせいで窓からは逃げられないよ。扉も砂が邪魔で開かない。ご自慢の薬魔法でなんとかできるかな? それよりも本は大丈夫かな?」

 事実、本が砂へと埋もれていく。これは、彼女にとって、あってはならないことだろう。さらにいえば、彼女自身は砂を登っていけば一時間は耐えられる。けど、その頃には本棚の本も埋まってしまうわけで、痛んでしまうか下手をすると二度と読めなくなる。

「こ、こんなの! ふ、ふざけないでください! 許されることじゃありませんよ!」

「うーん。知ったこっちゃないかな?」

 砂に足を捉えられながらも、向かってくるファンサ。けど、俺はその場へと仰向けに倒れた。瞬間、俺の身体は砂の中へと埋もれ、消えてしまう。砂の中へ回避だ。こうなると、俺を見つけることはできない。戦うこともできない。

「あ、あああッ! あ、あああッ! ほ、本がッ! 宝がッ!」

 ファンサは、砂に埋もれてしまいそうな本を発掘せんと、手で砂を掘り始める! けど、次々と迫り来る大量の砂が、それを許さない。

「ああ、ああああああッ! やめて! やめてください!」

 歴史的価値のある本を傷つけるのは憚るなぁ。けど、その気持ちは、ファンサの方が強いだろう。

「わかりました! 先生の負けです! お願い! お願いですからッ! これ以上、本を傷つけないでくださぁぁぁぁい!」

 彼女の叫びによって、この戦いの終わりが示されるのだった。
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