大地魔法使いの産業革命~S級クラス魔法使いの俺だが、彼女が強すぎる上にカリスマすぎる!

倉紙たかみ

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第15話 天才教授は本がお好き

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「うふっ、ふふっ、あはははっ、素晴らしいです、太古の英知! 偉大すぎるのです、太古の賢人! ここには知のすべてがありまぁす! イシュフォルト図書館こそ、賢者の聖地です! 楽園! 欲望を満たしてくれる桃源郷! ああ、幸せ! 私は――私たちは、なんて幸せなんでしょう!」

 イシュフォルト図書館中央書庫。巨大な吹き抜けのフロアには、壁一面の本棚。本という本に囲まれた壮大な空間。

 サファイアのように輝く長い青髪。大人びたお姉さん顔にはすらりとした鼻と麗しい唇。瞳は髪を反映しているかのように蒼く透き通っていた。たわわな胸は服に収まりきれず豊満に実っている。羽織るかのようにローブを纏う彼女は、シルバリオル学園教授のファンサ。

 ただ、その顔は狂気に彩られていた。こみあげてくる喜びに歪み、同時に楽園を破壊しようとする権力者への怒りが込められている。

 フロアの中央で大量の書物に埋もれながら、彼女は嬉々として本を読むふけっていた。ページをめくり、まためくる。瞳の水晶体から、とめどなく情報が流れ込んでくる。それはさながら高級なワインを飲んでいるような感覚。知識という名の栄養分が、脳細胞へたっぷり行き渡り、アルコールの如き陶酔感を演出してくれる。

『知ること』こそ、生物の最高の贅沢である。

 あらゆる生物の中で、人間だけが許された嗜好。それが好奇心、探究心。知がいらぬというのは、人間としての意味を失ったも同じ。ならばと、知の結晶であるイシュフォルト図書館は守らなければなるまい。

 神という曖昧な存在など慕うに足らず。これからの宗教は『知』だ。この図書館こそ我らが人間の神殿――。

「なぁのにぃ? テスラは壊そうとしている――ううん、国王陛下も同罪ぃぃぃなのです!」

 打ち上げるように、ファンサは叫ぶ。

「そもそも、この図書館は! この建築は! この場所にあってこそなのです! なぜ、このような場所にあると思います? すべては意味があるのですよぉ。刻んできた歴史があるのです。なのに、本をすべてバルティアへ運ぶだなんて……うふふふ、頭の悪い子ちゃんなのです。不便だからとか、ほざいてんじゃねえでぇす。知識が欲しいのなら、ここまで足を運べばいいだけなのでぇす。そうしないと、歴史は味わえませぇん。――そう、思いませんかぁ? 招かれざるお客さぁん?」

 ファンサは、高い位置にある窓を見上げる。すると、そこには少年が腰掛けていた。

「なんだ、気づいていたのか」

 彼は、ひょいと窓から降りる。結構な高さでありながら、余裕綽々と着地。

「テスラの使いですかぁ? 騒ぎの原因は、あなたみたいですねぇ」

「俺はリーク・ラーズイッド。悪いが、生徒たちには眠ってもらってるよ。このままじゃ大事《おおごと》になっちまうからな」

 リークの瞳を見る。怯えもなく、動揺もない。相当な使い手らしい。まさか、我が校の生徒がやられるとは思わなかった。戦闘に関しては素人とはいえ、未来の大魔法使いばかりである。

「ファンサ教授だな。この国で見つかった遺跡は、すべてラシュフォール国王陛下に所有権がある。管理者は領主であるテスラ様だ。――あんたに権利はないんだよ。このままじゃ大罪人になっちまう。だがテスラ様は、あんたに感謝している。民に知識を与え、この図書館の研究にも携わってくれた。ゆえに、ここで引き下がるなら罪は不問にすると言っている」

「うふふ、そんなことは承知してますよ。その上で、先生たちは行動を起こしているのでぇす」

「そうなると、おまえたちは罪――」

 ファンサは人差し指を向ける。指先が光る。次の瞬間、リークの頬に一本の赤い線が引かれた。タラリと赤い液体が滴った。

 お互い交渉の余地なし。妥協がないなら戦う。それがシンプルな結末である。それはリークとやらも望んでいることだろう。でなければ、生徒たちを倒したりはしまい。

「ふーん。相当強いな。さすがは学院の教授様。――いまのは水魔法か?」

「へえ……見えたのですか?」

「アクアブラスターって奴だろ? 水を超高速で撃ち放つと、石でも真っ二つにできるってアレだ」

 リークの言ったとおりである。だが、ファンサのアクアブラスターは、並の魔法使いの比ではない。いや、アクアブラスター自体、かなりの上位魔法である。魔法の『器用さ』がないと成立しない。

「ふふ、いいですよ。ちょっとだけ遊んであげます。けど、殺しちゃったらごめんなさいでぇす。人としての本懐を邪魔する奴は人にあらず。愚者は地獄にて悔い改めよ。バカは転生しなくちゃ治らないのです――」


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