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第6話 二十分でビーフシチューをつくる最適解
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その後、俺たちは屋敷の庭へと移動。芝生の上にテーブル席を用意。そこに腰掛けるのは賞品となった俺。ククルの指示の下、屋敷の従業員が総動員して『決闘』とやらの準備を始めている。
っていうか、なんでククルが指示してるの? あいつ、すでにこの屋敷の者たちも掌握してるの? っていうか、シルバリオル家のメイド長に就任したの? 俺やテスラよりも、あいつの方が凄いんじゃないの?
いつの間にか、テーブルの上には珈琲とビスケットが用意されてるし。っていうか、ビスケットが温かい。いま、焼き上げたのか?
ちょうどお昼だし、屋敷の者たちが何事かと続々庭へと出てくる。まるでお祭りみたいになってきた。
「皆様! 大変長らくお待たせいたしました!」
と、ミトリが樽の上で大声を飛ばす。
「これから、世紀の戦いが始まろうとしています! なんと、この私、ミトリ・コラットルが、リークさんと結婚するために戦うのです! 勝てば結婚! 負ければ次回!」
「ついにお嫁に行くのかー!」「がんばれー」「幸せになれよー」「うちに嫁にこいよー」と、ミトリを応援する声が飛び交う。
結構人気があるんだな、あいつ。っていうか、次回があるのか。勝つまでやる気か。
「お相手は、リークさんの専属召使いのククル・ティスタニーア!」
樽の隣で、ぺこりとお辞儀をするククル。あいつも結構乗り気らしい。
「ククルさーん! がんばって!」「メイドの力を思い知らせてやれ!」「応援してるぞ!」「貴族なんてぶっとばせー!」
こちらもなかなかの支持率だ。ヤバい発言をしている奴もいるけど。
「このミトリ・コラットルの人生を懸けた大一番。――その勝負内容は『お料理』なのです!」
ご覧あれといった感じに、庭先へと用意された簡易キッチンを御紹介するミトリ。表へ出ろとか、決闘だとか言っていたのに、なかなかかわいい戦いだ。
「お料理勝負ですか……ジャンルはなんですか?」
「ククルさんが決めていいですよ。ただし、この場にいる皆が知っている料理でお願いします」
まあ、そうだ。俺の住んでいたラージニア領とシルバンティア領では文化も若干違う。一般的な料理でないと、フェアじゃないだろう。
「そうですね。それならビーフシチューなどいかがでしょうか」
「……いいでしょう、私の得意とする料理です」
「では、ビーフシチュー対決ということで。時間は二十分でよろしいですね」
「え? 二十分? え? え? 時間、足りなくないですか?」
「そうですか? お昼休みとはいえ、忙しいでしょうし、時間も限られているでしょうし、配慮した方がよろしいかと思いまして……。まあ、自信がないのなら別の料理でも構いませんよ。得意と言いましたが、そうでもないようですね」
「なっ……い、いいでしょう! やってやるのです! ビーフシチュー対決、制限時間は二十分で!」
ビーフシチューって煮込むよな? それだけでも時間かかるよな。けど、ククルならつくっちゃうんだろうな。あいつ、俺がお願いしたことはすべて叶えてくれるようなスペシャルメイドだったし。
「――なにやら面白いことをやっているようだな」
我らが御領主テスラ様がふらりとご登場。楽しげな表情を浮かべている。
「ふむ、リーク争奪……? はは、なるほど、勝った方がリークと結婚できるわけか」
「おお! ちょうどいいところにきました! テスラお姉ちゃんも、審査に加わってください!」
「ん? いいのか?」
「ええ! だって、ククルさんはリークさんの好みとかわかっていますからね。中立な立場で意見できる審査員も欲しかったところです」
「まあ、良かろう」
言うと、メイドがテスラのぶんの椅子も用意して、俺の隣に腰掛けさせる。
っていうか、なんでククルが指示してるの? あいつ、すでにこの屋敷の者たちも掌握してるの? っていうか、シルバリオル家のメイド長に就任したの? 俺やテスラよりも、あいつの方が凄いんじゃないの?
いつの間にか、テーブルの上には珈琲とビスケットが用意されてるし。っていうか、ビスケットが温かい。いま、焼き上げたのか?
ちょうどお昼だし、屋敷の者たちが何事かと続々庭へと出てくる。まるでお祭りみたいになってきた。
「皆様! 大変長らくお待たせいたしました!」
と、ミトリが樽の上で大声を飛ばす。
「これから、世紀の戦いが始まろうとしています! なんと、この私、ミトリ・コラットルが、リークさんと結婚するために戦うのです! 勝てば結婚! 負ければ次回!」
「ついにお嫁に行くのかー!」「がんばれー」「幸せになれよー」「うちに嫁にこいよー」と、ミトリを応援する声が飛び交う。
結構人気があるんだな、あいつ。っていうか、次回があるのか。勝つまでやる気か。
「お相手は、リークさんの専属召使いのククル・ティスタニーア!」
樽の隣で、ぺこりとお辞儀をするククル。あいつも結構乗り気らしい。
「ククルさーん! がんばって!」「メイドの力を思い知らせてやれ!」「応援してるぞ!」「貴族なんてぶっとばせー!」
こちらもなかなかの支持率だ。ヤバい発言をしている奴もいるけど。
「このミトリ・コラットルの人生を懸けた大一番。――その勝負内容は『お料理』なのです!」
ご覧あれといった感じに、庭先へと用意された簡易キッチンを御紹介するミトリ。表へ出ろとか、決闘だとか言っていたのに、なかなかかわいい戦いだ。
「お料理勝負ですか……ジャンルはなんですか?」
「ククルさんが決めていいですよ。ただし、この場にいる皆が知っている料理でお願いします」
まあ、そうだ。俺の住んでいたラージニア領とシルバンティア領では文化も若干違う。一般的な料理でないと、フェアじゃないだろう。
「そうですね。それならビーフシチューなどいかがでしょうか」
「……いいでしょう、私の得意とする料理です」
「では、ビーフシチュー対決ということで。時間は二十分でよろしいですね」
「え? 二十分? え? え? 時間、足りなくないですか?」
「そうですか? お昼休みとはいえ、忙しいでしょうし、時間も限られているでしょうし、配慮した方がよろしいかと思いまして……。まあ、自信がないのなら別の料理でも構いませんよ。得意と言いましたが、そうでもないようですね」
「なっ……い、いいでしょう! やってやるのです! ビーフシチュー対決、制限時間は二十分で!」
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「ええ! だって、ククルさんはリークさんの好みとかわかっていますからね。中立な立場で意見できる審査員も欲しかったところです」
「まあ、良かろう」
言うと、メイドがテスラのぶんの椅子も用意して、俺の隣に腰掛けさせる。
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