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第64話 五大魔将の後日談・ラングリードの繁栄ぶりがヤバい
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元魔王軍幹部五大魔将。
この日、ウルフィの屋敷に、ヴァルディス、プリメーラ、トーレスが集まっていた。
ダークエルフの召使いたちが、全員分のお茶とケーキを提供し終えると、ウルフィが口火を切る。
「五大魔将も、我々だけになってしまいましたわね」
ヴァルディスは、深く頷きながら返す。
「しかし、消えたバージャムは、我らが五大魔将の中でも最弱。もとよりアテになどしておらん。これからは四天王を名乗れば良いだけだ」
遠慮がちに、トーレスが意見を述べる。
「四天王もなにも、魔王様がいなくなったんだから、解散でいいんじゃないですか?」
正論だったが、プリメーラが反論する。
「いや、五大魔将という肩書きは残した方がいい。これからは魔王軍の残党との戦いになるだろう。そんな時、五大魔将というネームバリューが役に立つのだ。その名を聞いただけで、魔物は恐れおののきひれ伏すに違いない」
「なるほど。プリメーラのいうことに一理あるな。ならば、この辺りで新メンバーを加入させ、五大魔将を維持しようではないか」
言って、ヴァルディスは素手でケーキを掴み、口の中に放りこむ。控えていた召使いが、すぐさまおかわりのケーキを持ってきてくれる。
「じゃあ、ベイルさんでも加入させますか」
「それは安易な考えですわ。ベイル様は、我々のボスとなる御方……いわば、魔王様のポジション。五大魔将に入ってもらうなどおこがましいにもほどがあります」
「ふむ……」と、相槌を打ち、ヴァルディスが意を決したように述べる。
「ならば、近々オーディションを開催するとしよう。人選は任せてもらおうか」
「ヴァルディス? なにか考えがありまして?」
「この町は観光都市だ。実力のある旅行客も大勢いるだろう。そういった奴らをラングリードに引き入れる」
闘技場などの強さを推し量ることのできる施設を導入し、他国の猛者を次々とヘッドハンティングする。
「名案ですわね。観光名所が増えそうですわ」
プリメーラが深く椅子に腰掛け直し、頷く。
「ならば、この暗略のプリメーラには、魔王軍の残党狩りの任務を任せてもらおう」
騎士団に働きかけ、軍を動かしてもらい、世界各国に散らばる魔物の討伐をする。魔王軍をよく知るプリメーラは、残党の潜伏地などを推測し、効率よく攻め落とすことができるだろう。だが、彼女の狙いは、ただただ狩るだけではない。
――魔物は貴重な労働力になる。
人間以上に筋力が発達し、特殊な能力を秘めている魔物は、農作物や建築の役に立つ。
プリメーラやウルフィを見てわかるとおり、それなりに豊かな暮らしをしたいという欲もあるので、対価を支払えば、むしろ喜んで働いてくれることになる。丁寧に説得を繰り返せば、ラングリード軍に従ってくれるかもしれない。
「ならば、わたくしは内政ですわね」
ウルフィの狙いは、世界一の観光都市という盤石な地位をラングリードに築くことだ。
世界には、まだ見ぬ観光都市が多い。気を緩めれば、それらに出し抜かれ、国民も顧客もそちらに移ってしまうだろう。
戦争が終わったあとに残るのは、安定した生活や娯楽などを求める民衆である。それらを失えば、繁栄は泡沫となる。
「……ぼくは?」
トーレスが自分自身を指差した。プリメーラが答える。
「おまえは、諜報活動だ。世界のあらゆる国に潜伏し、状況を報告しろ」
「え~?」
「情報こそ国家安定の要だ。いち早く動きを察知することで、戦争を避けることだってできる。おまえにしかできない非常に重要な任務だ」
「ぼくにしかできない? うむむ……。そこまで言われちゃったら、まあ、仕方がないか」
まんざらでもない感じで、トーレスは後頭部を掻いた。
この日、ウルフィの屋敷に、ヴァルディス、プリメーラ、トーレスが集まっていた。
ダークエルフの召使いたちが、全員分のお茶とケーキを提供し終えると、ウルフィが口火を切る。
「五大魔将も、我々だけになってしまいましたわね」
ヴァルディスは、深く頷きながら返す。
「しかし、消えたバージャムは、我らが五大魔将の中でも最弱。もとよりアテになどしておらん。これからは四天王を名乗れば良いだけだ」
遠慮がちに、トーレスが意見を述べる。
「四天王もなにも、魔王様がいなくなったんだから、解散でいいんじゃないですか?」
正論だったが、プリメーラが反論する。
「いや、五大魔将という肩書きは残した方がいい。これからは魔王軍の残党との戦いになるだろう。そんな時、五大魔将というネームバリューが役に立つのだ。その名を聞いただけで、魔物は恐れおののきひれ伏すに違いない」
「なるほど。プリメーラのいうことに一理あるな。ならば、この辺りで新メンバーを加入させ、五大魔将を維持しようではないか」
言って、ヴァルディスは素手でケーキを掴み、口の中に放りこむ。控えていた召使いが、すぐさまおかわりのケーキを持ってきてくれる。
「じゃあ、ベイルさんでも加入させますか」
「それは安易な考えですわ。ベイル様は、我々のボスとなる御方……いわば、魔王様のポジション。五大魔将に入ってもらうなどおこがましいにもほどがあります」
「ふむ……」と、相槌を打ち、ヴァルディスが意を決したように述べる。
「ならば、近々オーディションを開催するとしよう。人選は任せてもらおうか」
「ヴァルディス? なにか考えがありまして?」
「この町は観光都市だ。実力のある旅行客も大勢いるだろう。そういった奴らをラングリードに引き入れる」
闘技場などの強さを推し量ることのできる施設を導入し、他国の猛者を次々とヘッドハンティングする。
「名案ですわね。観光名所が増えそうですわ」
プリメーラが深く椅子に腰掛け直し、頷く。
「ならば、この暗略のプリメーラには、魔王軍の残党狩りの任務を任せてもらおう」
騎士団に働きかけ、軍を動かしてもらい、世界各国に散らばる魔物の討伐をする。魔王軍をよく知るプリメーラは、残党の潜伏地などを推測し、効率よく攻め落とすことができるだろう。だが、彼女の狙いは、ただただ狩るだけではない。
――魔物は貴重な労働力になる。
人間以上に筋力が発達し、特殊な能力を秘めている魔物は、農作物や建築の役に立つ。
プリメーラやウルフィを見てわかるとおり、それなりに豊かな暮らしをしたいという欲もあるので、対価を支払えば、むしろ喜んで働いてくれることになる。丁寧に説得を繰り返せば、ラングリード軍に従ってくれるかもしれない。
「ならば、わたくしは内政ですわね」
ウルフィの狙いは、世界一の観光都市という盤石な地位をラングリードに築くことだ。
世界には、まだ見ぬ観光都市が多い。気を緩めれば、それらに出し抜かれ、国民も顧客もそちらに移ってしまうだろう。
戦争が終わったあとに残るのは、安定した生活や娯楽などを求める民衆である。それらを失えば、繁栄は泡沫となる。
「……ぼくは?」
トーレスが自分自身を指差した。プリメーラが答える。
「おまえは、諜報活動だ。世界のあらゆる国に潜伏し、状況を報告しろ」
「え~?」
「情報こそ国家安定の要だ。いち早く動きを察知することで、戦争を避けることだってできる。おまえにしかできない非常に重要な任務だ」
「ぼくにしかできない? うむむ……。そこまで言われちゃったら、まあ、仕方がないか」
まんざらでもない感じで、トーレスは後頭部を掻いた。
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