3 / 8
03 変化する日常
しおりを挟む
まず、それは買い物を終えて家に帰ったところで起こった。
『さっきは色々と話に付き合わせちゃってゴメンねー!!
そして連絡先を教えてくれてありがとう!!
しかしメッセアプリに入れてないなんて驚いちゃった!!
メールとか久々に使ったよ~
それじゃあ、これから連絡事項があったらメールで教えるからよろしくね!!
さっそくなんだけど、明日の現文で資料集が必要らしいから忘れないようにね~
それとよかったら教えて欲しいんだけど、野菜が嫌いとか苦手とかある?』
帰宅直後に藤澤から、このような文面のメールだ届いたのだ。
連絡事項はいいとして、まず長い。父親以外とやり取りをしてない自分にとって、このメールはとても長く見えた。
そして色んな部分に散りばめられた絵文字というやつが色鮮やか且つ賑やかに動いている。
同年代くらい女子だと、みんなそんな感じなのか?
そして何より気になるのが、最後の一文だ。
なぜ俺に野菜の好き嫌いを聞いてくる?
分からない、女子高生が分からない……。
だからといって同性の友人もいないから、男子高校生のことも分かるわけじゃないが。
でもしかし、親切に教えてくれてるわけだから頑張って返信をしないとな……。
『大丈夫だ、問題ない。
こちらこそ連絡メールありがとう。
野菜の好き嫌いは特にない。』
無理だった……。
多少これでいいか悩んだものの、そもそも俺は長ったらしい文章を書くのが苦手なんだ。
そして藤澤と同じように絵文字を使うなんてもっと無理だ……!!
どうやって選んでるのか分からん。
だからもうコレでいい、送信。
……よしこれで終わりだ。
よく考えると父親以外とメールするのは初めてだな……。
父親のメールはもっと簡素で、最低のことしか書かれていないようなものなので返信もだいぶラクだ。
ふう、普段しない慣れないことをしたせいか喉が渇いた水でも飲もっと……。
しかし、これはほんの始まりに過ぎなかった……。
この日以降、メールは必ず毎日届くようになったのだ。
内容は大体最初のメールと似たようなものだが、はじめに軽く「明日は肌寒いらしいよ」とか「明日は雨らしいから傘が必要だよ」みたいな謎の雑談的なものを交えたうえで、本題の連絡事項に触れて、最後に必ず俺の食べ物の好みを聞いてくる形式になっていた。
……なぜ……なぜ食べ物?
ちなみに食べ物について聞かれた例を上げると「好きな味噌汁の具ってなに?」「アッサリとこってりどっちが好き?」「薄味と濃いめどっちが好き?」「肉と魚ならどっちが好き?」などなど……。
そんな感じで、とにかく色々聞かれた。
いや、なんでそんなに俺の好みを気にするんだ……分からん。
大体俺は食事を面倒だとは思っているが、好き嫌いらしい好き嫌いは持っていないため返事はほぼ「別に」と「どちらでも」になってしまった……。
しばらくやり取りをした後で、この返事って流石に態度悪すぎないか?と気付いて悶々としたが、もう手遅れなので開き直ることにした。
なんか指摘されたら謝ろう、そうしよう……。
そういえばメールは毎日送られて来るのだが、まるで毎日メールを送るために金曜日の連絡事項が土曜と日曜分に小分けにされているように思えるのは気のせいだろうか……。
まぁ、わざわざ俺みたいのなんかに何度もメールを送る理由もないだろうし偶然だよな?
―――――――――――――――――――――――――――……
「あっ、おはよう佐藤くんー!」
「ああー」
そして何より大きな変化が藤澤が、学校でも俺に声を掛けてくるようになったことだ。
今日は俺が教室に入ったところで、藤澤がこちらに駆け寄って来た。
「今日の小テストの勉強した?」
「まぁ、多少は……」
「そっかー、佐藤くんっていつも勉強出来るなって思ってたんだけど、やっぱりちゃんとしてるんだねー。私は趣味に夢中になってすっぽかしちゃったよー」
「大丈夫なのか、それは……」
「大丈夫大丈夫、小テストだしスグに赤点にはならないと思うから……悪くても定期テストで頑張るし、じゃあ今日もお互い頑張ろうねー!!」
そして藤澤はわざわざ手を振って、自分の席へと戻っていく。
まぁ毎回こんなこんな感じのノリで、向こうが俺に気づくと絶対に話しかけてくるようになった。
いや、本当に何故だろう……これは普通なのか……?
でもこんな風に少しだけ会話して切り上げるヤツを他に見かけた覚えがないぞ……。
そして今回は話題に登らなかったが、ここでも高確率で食べ物の好みを聞かれた。
……どれだけ、食べ物について気になっているのだろうか?
俺の方は相変わらず、藤澤のメールに対して最低かどうかすら怪しい返信しか出来てないが……。
一応、相手から何も言われてないし大丈夫だよな?
それに対面時の会話はメールよりはマシだと思っている……自分では。
最初に連絡先を交換して以降、そんなことが毎日続き、最早慣れ始めたような気さえし始めた頃だった。
あの一通のメールが届いたのは……。
『さっきは色々と話に付き合わせちゃってゴメンねー!!
そして連絡先を教えてくれてありがとう!!
しかしメッセアプリに入れてないなんて驚いちゃった!!
メールとか久々に使ったよ~
それじゃあ、これから連絡事項があったらメールで教えるからよろしくね!!
さっそくなんだけど、明日の現文で資料集が必要らしいから忘れないようにね~
それとよかったら教えて欲しいんだけど、野菜が嫌いとか苦手とかある?』
帰宅直後に藤澤から、このような文面のメールだ届いたのだ。
連絡事項はいいとして、まず長い。父親以外とやり取りをしてない自分にとって、このメールはとても長く見えた。
そして色んな部分に散りばめられた絵文字というやつが色鮮やか且つ賑やかに動いている。
同年代くらい女子だと、みんなそんな感じなのか?
そして何より気になるのが、最後の一文だ。
なぜ俺に野菜の好き嫌いを聞いてくる?
分からない、女子高生が分からない……。
だからといって同性の友人もいないから、男子高校生のことも分かるわけじゃないが。
でもしかし、親切に教えてくれてるわけだから頑張って返信をしないとな……。
『大丈夫だ、問題ない。
こちらこそ連絡メールありがとう。
野菜の好き嫌いは特にない。』
無理だった……。
多少これでいいか悩んだものの、そもそも俺は長ったらしい文章を書くのが苦手なんだ。
そして藤澤と同じように絵文字を使うなんてもっと無理だ……!!
どうやって選んでるのか分からん。
だからもうコレでいい、送信。
……よしこれで終わりだ。
よく考えると父親以外とメールするのは初めてだな……。
父親のメールはもっと簡素で、最低のことしか書かれていないようなものなので返信もだいぶラクだ。
ふう、普段しない慣れないことをしたせいか喉が渇いた水でも飲もっと……。
しかし、これはほんの始まりに過ぎなかった……。
この日以降、メールは必ず毎日届くようになったのだ。
内容は大体最初のメールと似たようなものだが、はじめに軽く「明日は肌寒いらしいよ」とか「明日は雨らしいから傘が必要だよ」みたいな謎の雑談的なものを交えたうえで、本題の連絡事項に触れて、最後に必ず俺の食べ物の好みを聞いてくる形式になっていた。
……なぜ……なぜ食べ物?
ちなみに食べ物について聞かれた例を上げると「好きな味噌汁の具ってなに?」「アッサリとこってりどっちが好き?」「薄味と濃いめどっちが好き?」「肉と魚ならどっちが好き?」などなど……。
そんな感じで、とにかく色々聞かれた。
いや、なんでそんなに俺の好みを気にするんだ……分からん。
大体俺は食事を面倒だとは思っているが、好き嫌いらしい好き嫌いは持っていないため返事はほぼ「別に」と「どちらでも」になってしまった……。
しばらくやり取りをした後で、この返事って流石に態度悪すぎないか?と気付いて悶々としたが、もう手遅れなので開き直ることにした。
なんか指摘されたら謝ろう、そうしよう……。
そういえばメールは毎日送られて来るのだが、まるで毎日メールを送るために金曜日の連絡事項が土曜と日曜分に小分けにされているように思えるのは気のせいだろうか……。
まぁ、わざわざ俺みたいのなんかに何度もメールを送る理由もないだろうし偶然だよな?
―――――――――――――――――――――――――――……
「あっ、おはよう佐藤くんー!」
「ああー」
そして何より大きな変化が藤澤が、学校でも俺に声を掛けてくるようになったことだ。
今日は俺が教室に入ったところで、藤澤がこちらに駆け寄って来た。
「今日の小テストの勉強した?」
「まぁ、多少は……」
「そっかー、佐藤くんっていつも勉強出来るなって思ってたんだけど、やっぱりちゃんとしてるんだねー。私は趣味に夢中になってすっぽかしちゃったよー」
「大丈夫なのか、それは……」
「大丈夫大丈夫、小テストだしスグに赤点にはならないと思うから……悪くても定期テストで頑張るし、じゃあ今日もお互い頑張ろうねー!!」
そして藤澤はわざわざ手を振って、自分の席へと戻っていく。
まぁ毎回こんなこんな感じのノリで、向こうが俺に気づくと絶対に話しかけてくるようになった。
いや、本当に何故だろう……これは普通なのか……?
でもこんな風に少しだけ会話して切り上げるヤツを他に見かけた覚えがないぞ……。
そして今回は話題に登らなかったが、ここでも高確率で食べ物の好みを聞かれた。
……どれだけ、食べ物について気になっているのだろうか?
俺の方は相変わらず、藤澤のメールに対して最低かどうかすら怪しい返信しか出来てないが……。
一応、相手から何も言われてないし大丈夫だよな?
それに対面時の会話はメールよりはマシだと思っている……自分では。
最初に連絡先を交換して以降、そんなことが毎日続き、最早慣れ始めたような気さえし始めた頃だった。
あの一通のメールが届いたのは……。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
君は妾の子だから、次男がちょうどいい
月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。
【完結】私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね
江崎美彩
恋愛
王太子殿下の婚約者候補を探すために開かれていると噂されるお茶会に招待された、伯爵令嬢のミンディ・ハーミング。
幼馴染のブライアンが好きなのに、当のブライアンは「ミンディみたいなじゃじゃ馬がお茶会に出ても恥をかくだけだ」なんて揶揄うばかり。
「私が王太子殿下のお茶会に誘われたからって、今更あわてても遅いんだからね! 王太子殿下に見染められても知らないんだから!」
ミンディはブライアンに告げ、お茶会に向かう……
〜登場人物〜
ミンディ・ハーミング
元気が取り柄の伯爵令嬢。
幼馴染のブライアンに揶揄われてばかりだが、ブライアンが自分にだけ向けるクシャクシャな笑顔が大好き。
ブライアン・ケイリー
ミンディの幼馴染の伯爵家嫡男。
天邪鬼な性格で、ミンディの事を揶揄ってばかりいる。
ベリンダ・ケイリー
ブライアンの年子の妹。
ミンディとブライアンの良き理解者。
王太子殿下
婚約者が決まらない事に対して色々な噂を立てられている。
『小説家になろう』にも投稿しています

【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日

【完結】元妃は多くを望まない
つくも茄子
恋愛
シャーロット・カールストン侯爵令嬢は、元上級妃。
このたび、めでたく(?)国王陛下の信頼厚い側近に下賜された。
花嫁は下賜された翌日に一人の侍女を伴って郵便局に赴いたのだ。理由はお世話になった人達にある書類を郵送するために。
その足で実家に出戻ったシャーロット。
実はこの下賜、王命でのものだった。
それもシャーロットを公の場で断罪したうえでの下賜。
断罪理由は「寵妃の悪質な嫌がらせ」だった。
シャーロットには全く覚えのないモノ。当然、これは冤罪。
私は、あなたたちに「誠意」を求めます。
誠意ある対応。
彼女が求めるのは微々たるもの。
果たしてその結果は如何に!?

下っ端妃は逃げ出したい
都茉莉
キャラ文芸
新皇帝の即位、それは妃狩りの始まりーー
庶民がそれを逃れるすべなど、さっさと結婚してしまう以外なく、出遅れた少女は後宮で下っ端妃として過ごすことになる。
そんな鈍臭い妃の一人たる私は、偶然後宮から逃げ出す手がかりを発見する。その手がかりは府庫にあるらしいと知って、調べること数日。脱走用と思われる地図を発見した。
しかし、気が緩んだのか、年下の少女に見つかってしまう。そして、少女を見張るために共に過ごすことになったのだが、この少女、何か隠し事があるようで……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる