魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第62話 掃除が終わったあとに

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「よーし、これでお掃除完了です!! お疲れ様、ロイくん」

 すっかり綺麗になった部屋を見渡しながら、私はロイくんにそう言った。
 最初に比べると壁の色が全く違うし、空気もよくなって清々しいねー!!
 ここまで変わると掃除のしがいもあったな~

「ううん、こちらこそありがとう!!」

 はにかみながらお礼をいうロイくんに、私は思わず微笑ほほえましさを感じた。
 短い間だったけど掃除やお喋りを通じて、ロイくんとはちょっとだけ仲良くなれたかな?

 これでロイくんはバッチリ掃除も覚えてくれたから、今後のこの家の状態が極端に悪くなることもないだろう。
 まぁ、そっち方面については安心なんだけど……。

「ねぇロイくん、聞きたいことがあるんだけど」

「なに?」

「ロイくんは読み書きを覚えたいと思う?」

「……よ、読み書き?」

「そう」

 これはもしかしたら、私の自分勝手な考えかも知れないけど。
 もし彼自身が望むなら、今ここで私が出来ることは全部してから帰りたいと思ったんだ……。

 ロイくんは戸惑とまどうような素振りをみせながらも、控えめにうなずいた。

「もし覚えられるのなら、覚えたい……」

「うん、そっか」

 よかった、そう言ってくれて……。

「話しは変わるけど、ロイくんは本に興味はあったりするかな?」

「え、本……?」

 さっき以上に戸惑った様子のロイくんに、私は荷物から一冊の本を取り出して彼に差し出した。

「でも、読めないし……」

「大丈夫、今から読み聞かせをしてあげるから」

「読み聞かせ?」

「うん、内容を読み上げてあげるから文字が読めなくても大丈夫だよ」

「本当!?」

「うん、本当だよ~ ちなみに私は外にちょっと用事が出来たから、アルさんが読み聞かせをしてくれます!!」

 そう言いながら私は、ばっとアルフォンス様の方を振り返った。

「…………はっ?」

 急に話を振られた。というか読み気かけを押し付けられた、彼は当然だけど困難した様子だ。

 まぁ、そういう反応にもなりますよね……でもでも、今までの話は聞いてたと思うので無視しますー!!

「というわけで、アルさん非常に申し訳ありませんが私は用事が出来たので少しだけ席を外します」

「キミは何をいってるんだ!? 用事って……」

「本当に申し訳ありませんが細かいところは後で説明しますし、すぐ戻るのでお願いします!!」

 下手に色々聞かれても面倒なので、私はあえて矢継ぎ早にそう言う。
 そうそう防犯のために結界術けっかいじゅつを仕込んだ魔術符まじゅつふも貼って置こう。よーし、これで安心安全っ!!

「外には出ないで下さい、あと出入口に紙も貼っておきますけど気にしないで下さいね!!」

「いやいや、おかしいぞ!? それになんだ紙って…」

「それでは、ちょっと行ってきますっ!!」

「待てーっ!?」

 うん、申し訳ないけど、その言葉は聞けないんですよねー。

 そうして私は、アルフォンス様の制止も無視して家から飛び出したのだった。

 いや、本当にすぐ帰りますからねっ!!
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