魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
上 下
61 / 94

第60話 貧民街でのこと-別視点-2

しおりを挟む

「あっ」

 しばらくリアから掃除の方法を教えて貰ったところで、彼女は何かを思い出したように声を上げた。

「どうしたんだ?」

「そういえば、奥の部屋も結構汚れていたことを思い出しましてねー! ちょっとさっきの要領でサッとあちらも片付けてきてしまいますね!!」

「ああ、分かった」

「ロイくんもそのまま掃除よろしくねー」

「うん」

 そのように例の少年にも軽く声を掛けたリアは、一人で奥の部屋に入っていった。

 まぁ、先程の様子を見る限りすぐに終わらせて帰ってくるはずだから、そんなに待たないだろう……。

「なぁ、あんた」

 なんとなくリアの入っていた扉を見つめていると、そんな声が聞こえてきた。
 今この部屋にいるのは私以外にはアレしかいないが……。

 声をした方を向くと、当然だがあのロイという少年がこちらをじっと見つめていた。

 その表情からはなんとも感情が読み取りづらいが……わざわざ声を掛けてくるとは一体どういうつもりだろうか。

 確か、先程リアが診察のために奥の部屋へ入った時には、リアが戻ってくるまで黙りこくってたはずだが……。

「私か……?」

 念の為、本当に私に声を掛けたのか聞き返す。
 正直な話、出来ればこの子供と会話なんてしたくないというのもあるが……。

「は? いま、この部屋にはあんたしかいないだろ」

 ロイとかいう少年は馬鹿にしたような目をこちらに向けてくる。
 …………可愛くない子供だ。

「あのリオンの……魔術師の仲間なんだろ。あんたもさっきみたいなやつを、なにかできないのか?」

 まずリオンはこの子に名乗ったリアの仕事名らしいから、放っておくとして『さっきみたいなやつ』というのは、たぶんリアが使った魔術のことを言ってるんだよな……。
 え、まさか知らぬ間に期待されてしまっていたのか?

「いや、私はそういうことは出来なくて……」

「なにも?」

「ああ、何も……」

「ふーん、つかえないヤツだな……」

 ロイはぼそっとそう呟いた。
 ……イラッとする子供だ。

「ま、薄々そんな気はしてたけど」

 イラっとするうえに心底可愛げのない子供だ。

「そういえば、さっきもわざわざ掃除の方法を教わってたし……一体なにならできるの?」

 そ、そういわれると…………。

「ただ一緒にいるだけなの?」

 ぐっ!?

「むしろ足を引っ張ってるんじゃない?」


 あしをひっぱっっ…………も、物凄く失礼で腹の立つ子供だなっ!?
 流石にこれには何か言い返さねば気がすまん……!!

「いいか、貴様っ……」

 私が言葉を言いかけたところで奥の部屋への扉が開いた。

「はーい、戻りましたよ!! 何も問題はありませんかねー?」

 そんな言葉と共に部屋に入ってきたリアに私は内心で冷や汗をかいた。
 い、今のまさか聞かれて……!?

「なーんて、まっこの短時間で問題なんて起こりませんよね」

 よかった、これはバレてなさそうだ……。

「……そうだな」

 私がどうにかぎこちなく返事をしたところで、スッととリアの方に近付いていく人影があった。

「おかえりー!」

 そう、それはあのロイとかいう子供だ。それは今までの私への態度とは打って変わって、愛想良くリアに駆け寄ったのだった。

 は……はぁっ!?

「ロイくんただいまいい子にしてたかな?」

 リアのそんな問いかけに、そやつは迷いなく笑顔で頷いた。

「うん!!」

 嘘つけぇぇ!?
 貴様は先程まで私に喧嘩売っていただろうがっ!!
 ああ、思い出しただけで本当に腹が立つ……!!

 イラつ私を他所にリアは、例のそれへ優しく声を掛ける。

「そうそう、ついでにお母さんのことも見て来たんだけど苦しそうな様子もなくよく眠ってたよ」

 そう言って笑いかけるリアの表情は、とても柔らかく優しくて見てるだけで癒やされるものだった……。
 これがあの生意気な子供に向けられてるものじゃなければ、もっとよかったがなっ!?


「起こすのも悪いからそっとしておいたけど、体調も安定してそうだったから安心してね」

 ああ、本当に気遣いと思いやりに関しては流石リアだ……。
 それに比べて本当にこのロイとかいう子供はどうしようもない、親切にする必要があるのかはなはだ疑問である。
 態度が悪いし、何より態度が悪い……!!

「さーて、それじゃあもうちょっとだけお掃除頑張ろうね!!」

「うん!!」

 リアの言葉に調子よく頷くそやつの姿に内心イラッとする。

 出来れば、さっきまでのこやつの行動をリアに話してしまいたいところだが……。

「ふふ、いいお返事だね~」

 しかし今のニコニコしたリアの様子をみると、わざわざそういうことをするのは躊躇ためらわれるし……ぐっ。

 い、今のところは見逃してやる……。
 今のところは、な……!?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

もういいです、離婚しましょう。

うみか
恋愛
そうですか、あなたはその人を愛しているのですね。 もういいです、離婚しましょう。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

朱色の谷
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。

【書籍化進行中、完結】私だけが知らない

綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ 目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。 優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。 やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。 記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2024/12/26……書籍化確定、公表 2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位 2023/12/19……番外編完結 2023/12/11……本編完結(番外編、12/12) 2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位 2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」 2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位 2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位 2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位 2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位 2023/08/14……連載開始

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス1~4巻が発売中!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍1~7巻発売中。イラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  第8巻は12月16日に発売予定です! 今回は天狼祭編です!  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

30代主婦死んでもないけど神の使徒してます

ひさまま
ファンタジー
 ハローワークのパート求人  時給:歩合制(一回:1000円)  時間:手の空いた時に  詳細:買い物補助     買い物バック貸与     タブレット貸与     交通費支給

エリアスとドラゴンともふもふは、今日も元気に遊んでいます!?

ありぽん
ファンタジー
 アルフォート家の3男、エリアス・アルフォート3歳は、毎日楽しく屋敷の広い広い庭を、お友達のぷるちゃん(スライム)とウルちゃん(ホワイトウルフ)と一緒に走り回っておりました。  そして4歳の誕生日の日。この日は庭でエリアスの誕生日パーティーが開かれていました。その時何処からかエリアスの事を呼ぶ声が。その声を前に聞いた事があるエリアスは、声のする庭の奥へ、ぷるちゃんとウルちゃんと3人進んで行きます。そこでエリアス達を待っていたものは?  剣と魔法そしてもふもふの溢れる世界で、繰り広げられるエリアスの大冒険。周りを巻き込みながら、今日もエリアスはやらかします! *エリアス本人登場は2話からとなります。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

処理中です...