魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第50話 食事処にての小休止1

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 私がまた幼馴染おさななじみの話題をうっかり出してしまって以降、アルフォンス様が何やら険しい顔で考え込んでおられる……。

 えっ、私のせいですか。
 もしかして彼にとって幼馴染に関連の話題自体が禁句?
 まさか過去に何か幼馴染に関連しため事があったとか…………むむっ。

「あっ!! もう気が付けばお昼時ですねー」

 うん、こういう時は話題を変えるに限るね!! 停滞ていたい硬直こうちょくは何も生まないのでっ!

「……ああ、そういえばそうだな」

 よしっ、割と普通に乗ってきましたね。
 よかった、よかったー。
 しかしこの分だと、本格的に幼馴染語りは封印した方がいいかもしれないな……。

「では昼食にしましょう、アルさんは何か食べたいものはなどはございますか?」

「うむ……特にないな」

「あれ、そうなんですか?」

「そもそもこういう場はあまり詳しくないので君に任せる」

 ……任せられてしまった。
 さっきも似たような発言を聞いた気がするのですが……というか、この人さっきから全部私に考えさせる気では? ……まぁ別にいいですけどねー。

「分かりました。ではコチラへどうぞー」

「もう行き先が決まったのか……まるで当てがあるようだが?」

「ええ、先程いい感じの路地ろじを見かけたので、そちらを当たります」

「その根拠こんきょは…… 」

かんです!!」

「先程にもそんな言葉を聞いたな……」

「ええ、勘なので」

「そうか……」

 私が堂々と胸を張って答えると、書店を探した時よりは若干マシなもののやはり微妙な顔をされた。

 あっ、まだ信用していませんね!? 本当に当たるんですよっ!!
 例えば、ずらっと裏返したカードを並べて、その中から目当ての絵柄を引ける確率が10回中9回くらいという……!! はい、凄い!!
 えっ、一回は外してるじゃないかって……それはそれですよー。
 むしろ全部当てるって不可能じゃありません? 9回当たれば十分凄いですし、私のカンは当たると公言できると思っております!!

 というわけで、お見せしましょう私の直感力を!!

「さぁ、こちらですっっ!!」




「ほらアルさん、やっぱりありましたよ!! いい感じの料理店が!!」

 またしても私は、カンを信じて進んだ先でバッチリ料理店を見つけた。
 簡素な看板と素朴そぼくながらもお洒落しゃれ外観がいかんを持つその店を、ビシッと指差して胸を張る。
 はい、はーい優秀!!

「ああ、本当にまた見つかったな」

「ふふっ、私の勘は当たるのですよー」

「うむ、こう続くとあるいはそうかもしれない……」

 あ、あるいはってなんなんですか!?
 むー、むぅぅ……でもいいでしょう、わざわざ追及はいたしません。
 なぜなら私は心が広いので、これしきのことでは動じないのです……!!

「この店でいいのであれば中に入りますよー」

「ああ、構わない」

 アルフォンス様の同意も得られたので私は店内に入った。

 すると、まず最初に香ばしい料理の匂いが鼻につく。
 そして次に目に入る店の内装ないそうは、木張きばりの床や壁にぽつぽつと灯るやや薄暗い照明が印象的だ。

 そこそこの広さの店内にテーブルは10たく程度、人はまばらに入っており若干席が埋まっている様子である。

 うーん、とても親しみやすい庶民的な雰囲気のお店だ。
 まさしく私好み。
 高いお店って味は当然いいのだけど、ちょっと張り詰めた雰囲気があるから自分はこれくらいが好きだなー。洗練せんれんされていると言えば聞こえはいいけど、そこは好き好きなので……私はちょっとワイワイガヤガヤしたにぎやかさがあるくらいを推したいね。

 ふとアルフォンス様をみると、やっぱりというか物珍ものめずらしそうな様子で店内を見回していた。
 うん、気持ちは分かるけど悪目立わるめだちするのでやめましょうねー?
 いや、もういっそアルフォンス様の行動を隠すためにこっそり魔術を使っておくのもありかな……。

 そんなことを考えているうちに、店員さんがやってきて席に案内してくれた。

 席に着く際にメニュー表を手渡されたので、ざっと確認をする。
 なるほど、主食は羊肉で魚も少しだけある感じかー。

 見たところ羊の飼育がさかんな土地なのかな?
 あとこの料理の魚というのは、たぶん川の魚だろうな。
 ここから海って結構距離があるからね。
 魔術の技術がない以上、加工しない魚の持ち運びは出来ないだろうし……。

 実は私は島国出身なので、魚は断然海産派なのです。そういうことで、ここで食べるのは羊肉にしまーす!!
 だって川魚って、料理人の腕を含めて当たり外れが大きいんだもん。気が向いたら食べることもあるけど……とにかく今は気分ではないのでやめておきます。

 そんなわけで……さてさて、どれにしようかな?
 とりあえず羊肉のソテーか赤ワイン煮辺りかな……。
 あっ、林檎りんご果実水かじつすいもあるっ! それも飲もーとっ。

「アルさんは何になさいますか?」

「いや、まだ決まってなくて……キミの方は何にするんだ?」

「林檎の果実水を注文することは決めたんですが、メイン料理を羊肉のソテーか赤ワイン煮で迷っておりまして……」

「そうなのか、私もキミと同じものにしようかと思ったのだが……」

 ん、同じもの……?
 そうだ、その手があった!!

「それでは、私はソテーでアルさんは赤ワイン煮にするのはどうでしょうかっ!」

「私は別にそれでも構わないが、それに一体どんな意味があるんだ?」

「あえて別々のものを注文して、分け合いっこすればいいんですよー」

「わ、分け合いっこ……?」

「はい、少しづつ交換すればどちらのメニューも食べられるからいいかと思いまして」

 幼馴染であるカイくんと食事に行った時も、よくそうしてたんだよねー。でもカイくんの場合は、私が気になるって言ったメニューを全部注文してくれて、私が食べられなくなったところで残りを綺麗に食べてくれるみたいなことも多かったりして……あれ?
 それはよく考えると、なんか違うような気も…………うーん?
 まぁ、それはそれとしてっ。

「ですがもちろん、そういうことが嫌であればハッキリおっしゃって下さいね。無理を通すつもりはありませんので」

 思いついた瞬間は名案だと思ったけど、よく考えるといくら私が慣れてるからと言って、アルフォンス様に無理をさせることは出来ない。
 もしダメな場合はいさぎよあきらめないといけないよね……。

「いや、私は一向にそれで構わないが」

「それじゃあ、そうしましょうっ!!」

 ひかえめな口調で答えるアルフォンス様に、私は食い気味でうなずいた。

 やっふー!! いいって、これで両方食べられるぞー!
 嬉しいっっ!!

 えっ、無理を通すつもりはないとか言ってただろうって?
 ええ、ご了承を頂けたので私が無理を通したわけじゃありませんよー!
 ただちょっと喜びが有り余ってるというのはありますけどねっ!!

 だってせっかくなら食べたいと思ったものは、色々たくさん食べたいじゃないですか~。
 えへへっ。
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