魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

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第40話 出かける前に3

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「それにしてもリア様は殿下と随分と親しくなられたのですねー」

 肖像画しょうぞうがの話題も落ち着いたところで、今度はそんな話しを振られた。
 親しくか……自分ではイマイチ分からないけど、どうなんだろうね?

「そう見えましたかー?」

 だからとりあえず聞き返してみた。
 ほら、やっぱり客観的な視点というのは大事だからねー。

「ええ、それはもう……!!」

 すると間髪かんぱつを入れずに肯定してくれた。
 なるほど、そんなにそう見えるのか……私自身まったく自覚はなかったけれど。

「そう仰って下さるのは素直に嬉しいですねー。まぁ、当のアルフォンス様がどう思われてるかは分かりませんけど」

「いえ、そこは殿下もきっとリア様のことを好ましく思われてるはずです……!!」

「そうですかね?」

「はい、そこは自信があります!! むしろこんなに可愛らしいリア様を気に入られない理由がございませんわー」

「そんな風に褒められても困るのですが……」

 気に入られないというか、警戒すべき理由ならいくつか心当たりがあるんだけどね……。
 まず、いきなり訪ねて来た身分不詳みぶんふしょうで正体不明の人物って冷静に考えてそれだけで警戒対象じゃありません? 気に入る気に入らない以前の問題な気がするんだけど大丈夫?
 いや、確かにこちらとしては、そこら辺を一切無視してくれるのが助かるんだけどね……。

「そのようなところも可愛らしくて素敵ですわ」

「ええ……」

 ど、どこ? どのようなところ……!?
 ……ダメだ、どこら辺が褒められているか全く見当が付かない。
 もう余計なことは言わないで置こう、そうしよう……。

 その後、採寸が終わるまで私は黙っていたが、その後も私への意図の分からない称賛は続いたのだった。
 いや、わざわざ私を褒めても何も得しませんからね!?


 そんな感じで採寸も終わり服やローブも着直した所で、室外で待っていたアルフォンス様に声を掛けた。

「お待たせしました、どうぞ中へお入り下さいー」

「ああ」

 アルフォンス様は私の言葉に頷いて室内へ入って来ようとする。

「では私達は失礼いたしますので、お二人でごゆっくりお過ごし下さいませ」

 それと同時に採寸をしてくれたお三方が退室していきながら、そんな言葉を残していったのだった。

 ん? ごゆっくりって一体何を?
 これから出掛けるだけなのですが……?

「お、おいっ!!」

 何やら慌てて声を掛けようとするアルフォンス様をよそにお三方はくすくすと楽しそうに部屋を出て行ったのだった。
 しかしその様子はただ部屋を出て行くだけだと言うのに、何故か随分と楽しげで私は思わず首を傾げてしまった。

 あとアルフォンス様を無視して出て行っていいのですかね……いや、私は別にどちらでも構わないのですけどね?

 そしてアルフォンス様は何故かお三方の出て行った扉を見つめて固まっているんですが……。
 え、これは普通に声を掛けていいやつなんですかね?
 ……掛けちゃいますよー? えいっ。

「それではこれからどうしますか?」

「はっ!! ど、どうとは!?」

 いや、なんで皆さんそんなにりきんで返事をするんですかね……。

「それはもちろん、街へ行く前に他にするかとがあるかとか……そういうことですが?」

 むしろそれ以外に何があるのだろうか……。

「そ、そうだな……!! うむ、そうだな!!」

 何故か妙に力一杯二回も返事をされた。
 なんなのだろうか、これは……うーん、でもまぁ気にしなくてもいいか。

「まず今日お越しになる運搬者さんに対して、どのような手筈で話しを通すつもりなのでしょうか?」

「うむ、それなのだがもうじき、この城のある城壁内の資材置き場小屋に運搬を請け負っている数名が物資を運んで来る予定なのだ。だからそのタイミングで彼らに声を掛けて、街へ戻る際に同行させて貰えばいいと考えている」

「そうなのですね、分かりました。ではいつ頃その資材置き場小屋に向かいますか? もう少し待ちます……?」

「いや、もう向かった方がいいだろう」

「はーい、了解ですー。それでは移動しましょう……とは言っても私は場所を知らないので案内をお願いしますねー」

「ああ、こっちだ」

 そうして私達は荷物をしっかり持ち……まぁ私の場合はいつも通りだけど。部屋を後にしてアルフォンス様の案内で資材置き場小屋の近くまでやってきたのだった。
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