魔術少女と呪われた魔獣 ~愛なんて曖昧なモノより、信頼できる魔術で王子様の呪いを解こうと思います!!~

朝霧 陽月

文字の大きさ
上 下
36 / 94

第36話 広いと意外な施設もある 1

しおりを挟む
 身体検査を終えた私はアルフォンス様と古城の廊下ろうかを歩いていた。

 身体検査もとい情報の収集結果はそこそこって所かな……まぁ断られる可能性もあったわけだし贅沢ぜいたくは言わないことにしよう……。
 ああ、でも脈拍みゃくはく心音しんおんのデータが取れなかったのはやっぱり惜しいな……。

 ん、ところで大精霊様に目を付けられた件はどうしたかって?
 あんなの保留ほりゅうですよ!! わざわざ話す話題でも無いし、私も出来れば目を背けていたい事実なのでしばらくは放置するんで!!
 はーい、これについては終了でーす。
 話を戻しましょう。

 実は先程までいた部屋は、古城の中でも今まで行ったことのない位置にある部屋だった。
 たぶん私が用途を言わないで部屋を用意して欲しいと言ったから、なるべく何にでも使えそうな部屋を選んでくれたのだと思う。本当に大した用途に使わず申し訳ないねー。
 まぁ、それなら事前に説明しろって話しですが……ほら、内容がないようだけに先に話すと断られるかも知れないじゃないですか? あえて判断をギリギリで迫ることでやや断りづらくするという私の素晴らしい戦略ですねー。またの名をごり押し作戦とも……だって実際ごり押しだし。

 そんなくだらないを考えながら歩いてると、ふと気になるものが目に入ってきたため何気なく問いかけようとアルフォンス様に声を掛けてみた。

「そういえば行きも気になっていたのですが、あのやけに大げさな扉はなんですか?」

 私が指したのは、今まで見てきた扉とは別格の存在感と大きさを持つ両開きの扉。物凄くゴテゴテ飾ってあるというわけじゃないけど、根本的な素材や材質が違っている感じがする。

「そこは舞踏会などの会場に使うスペースだ」

「へー、ここにはそんなものまであるんですねー」

 立派な城壁じょうへきがあるお城だったから、てっきり防衛施設ぼうえいしせつ的な側面が強いと思っていたんだけどねー。
 そんな場所でもある程度の娯楽が必要ってことかな? 舞踏会……ダンスが娯楽に当たるのかはやや疑問だけどね。少なくとも私にとっては楽しくないかなー。

「まぁ、随分ずいぶんと使われてないものだが興味があるなら見てみるか?」

 んー、本当はそんなに興味があるわけじゃないけど、せっかくだから見せて貰おうかな?

「それでは是非お願いします」

 アルフォンス様にうながされて扉を開くと、確かにそこは何百人もが入って舞踏会が行えるようなスペースが広がっていた。

 ほーなかなか立派なものだねー。

 使われなくなって随分時間も経つのだろうけど、それを感じさせない程には立派だ。
 光沢こうたくのある床は恐らく大理石、今は明かりがついてなくて薄暗いけど明るくなればその床がキラキラと輝くだろことは容易に想像できた。
 左右に立ち並ぶ大きな柱は飾り気の少なさ故にやや武骨ぶこつさがあるものの、それがかえってこの部屋全体に堂々とした雰囲気を与えている。
 最奥には少し高くなった舞台のような場所もあり、あそこを使って主賓しゅひんが話をしたりするであろうことが思い当たった。

 やはり古い施設であるせいか全体的に古めかしい感じもするけど、それもそれでいい味を出してるし……。
 うん、私は好きだなー。

「リアはこういうものに興味があるのか?」

「ええ、まぁ多少は……」

 なんて言ったて歴史のある建築物ってロマンがあるからね。何々の時代からある施設ですみたいなものには、時代背景なんかを考えて少しワクワクしてしまうのですよ……!!

「ではダンスなどは踊れたりするのか?」


「え、ダンスですか……一応習った経験はありますけど」

「では踊れるんだな?」

「まぁギリギリ最低限は何とか……?」

 急にダンスの話を振られた理由は謎だけど、なんとなく正直に答える。まぁ習ったの自体が少し昔になるから人に言えるほどの自信はないけどねー。

 しかし本当にいいなー、床の風合いとか所々にある華美過ぎない装飾とか……。

「では踊ってみるか?」

「…………は?」

 え、何を?

「もちろん嫌なら断ってくれて構わないが……私とダンスを踊らないか?」

「…………!?」

 えっえっえっ!?

「だ、ダンスですか……」

「そうだ」

「………………」

 どうしよう、正直に言って自信ないんですが!!
 これならさっき全く踊れないと言っておけばよかった……というかなんで!?
 どうしてそういう話の流れになったの!?
 私はただ部屋のつくりとかをいいなーって見てただけですよ……?

「やはり嫌か……」

 私が困って黙り込んでいると、アルフォンス様が気まずそうな傷付いたような顔でそう言った。

 あ、これ自分が原因で返事をしぶってるって勘違いしてるやつでは……!?

「いえ、違います……!!」

 これはまずいと慌てて否定する。
 違うんですアルフォンス様が悪いんじゃないです、私は誰とでも平等にダンスなんて踊りたくないだけなんです……!!

「……ならば何故そんなに返事しづらそうにしているんだ?」

 はい、それはもうダンスに自信がないからです!!
 でも言えない、言いたくない……なんとなくプライド的に!!

 ほら、出すんだ私の頭脳っ!! いい感じの言い訳を今すぐにーっ!!

「ふ、服が無いからです!! ダンス用の服なんてとても持ち合わせておりませんのでっ!!」

 よし、いい感じだー!! 着る服がない……これは良い言い訳じゃないですか!? 素晴らしい機転きてんに、私の脳内では万雷ばんらい喝采かっさいが鳴り響いていた。

「それならあるぞ、この城に……」

 しかしアルフォンス様のその言葉が、一瞬で私の脳内の喝采を静まりかえらせた。

「えっ……そうなんですか……」

「もちろん受けてくれるのであれば貸そう」

 平坦な口調でそういうアルフォンス様。
 そっかー、あるうえに貸してくれるのかー。

 そこまでしなくていいのにな……しかし、そうなるとこれでここで断るのは……。

 …………。

「そうでしたか、では分かりましたつつしんでお受けいたします!!」

 今できる限りの笑顔を作って私は答えた。

 はい、方針転換っ!!
 ここまで言われた私にもはや退路などない……アルフォンス様を下手に傷付けるわけにもいかないし、一旦本心を殺していくらでも作り笑いでもなんでも作ってダンスに応じようじゃないか。

 ああでも、やっぱり上流階級のダンス文化なんて嫌いだー!!
 初めに作ったヤツは絶対で許さない……もしあの世で会ったらあらん限りの文句を言ってやるー!!


 殺伐さつばつとした私の心中とは裏腹うらはらに、アルフォンス様はほっとしたような嬉しそうな顔をしていた。

 いやー喜んでくれてること自体は本当に嬉しいけど、その分だけ私のダンスでガッカリされないか心配になってきたぞー。

「そ、そうかなら準備をしよう。音楽の演奏もたぶん問題ないはずだ……」

「そうなんですか、凄いですねー」

 状況が本格的になればなるほど、私の悲惨ひさんさが際立きわだちそうなので張り切るのはやめて欲しいなー。いや、本当にやめて?

「時間は明日の夕刻ゆうこくなんてどうだろうか?」

「それでいいですよー」

 時間があればあるほど私の寿命も伸びるので、時間を遅く設定してくれるのは助かります。なんならもっと遅くてもいいですよー?

「ドレスはどういう物がいい?」

「詳しくないのでお任せします」

 個人的にドレスを着るの自体あまり好きではないけど、この際はどうでもいい。

 それよりダンス……ダンスだ。
 思い出せダンスレッスンの記憶を……!!


過去のリア『あー、今日はダンスのレッスンがある日だ。でもあれって準備が面倒くさい上に使う機会もそんなに無い内容なんだよね……よーし、仮病けびょう使って休んじゃおっとー。どうせ今後の舞踏会も全部欠席する予定だし、その時間を使って中途半端な実験を消化するほうがずっと有意義ゆういぎだよねー。いやー、私ってあったまいいー!!』


 ………………。

 え、バカなの……?

 いや、バカだよ!! あの日の自分がどうしようもなくバカ……何がよーしだ、何があったまいいーだ!?
 よくも貴重なレッスンをサボったね!?

 私が脳内で過去の自分を罵倒ばとうしている中、アルフォンス様が声を掛けてくる。

「それじゃあ、ドレスはこちらで選んでおくぞ?」

「はいー、お願いします」

 大丈夫、流石にレッスンもあれだけじゃないハズだから気合を入れて思い出せばきっと思い出せる。

 ………………。

 はっ……思い出した。
 それは私が似たような理由で八割以上のレッスンを休んでいたという素敵な事実……!!

 ……これの何が凄いって、その事実に家族が誰も気付いてなかった部分かな~。
 だって気付いてたら間違いなく怒られてるもん。
 いや、気付いてよ誰か!?
 自分でサボっておいてなんだけど、気付くべきだと思うな……!!
 まったく私の家族と来たら仕方ないな……もう。
 はい、違いますね……全面的に悪いのはサボった私ですね!!

 ああ、とてもツライ……だけどもう残り2割くらいの記憶を思い出してどうにかするしかない。

 が、頑張れ私……!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

セレナの居場所 ~下賜された側妃~

緑谷めい
恋愛
 後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

君を愛することは無いと言うのならさっさと離婚して頂けますか

砂礫レキ
恋愛
十九歳のマリアンは、かなり年上だが美男子のフェリクスに一目惚れをした。 そして公爵である父に頼み伯爵の彼と去年結婚したのだ。 しかし彼は妻を愛することは無いと毎日宣言し、マリアンは泣きながら暮らしていた。 ある日転んだことが切っ掛けでマリアンは自分が二十五歳の日本人女性だった記憶を取り戻す。 そして三十歳になるフェリクスが今まで独身だったことも含め、彼を地雷男だと認識した。 「君を愛することはない」「いちいち言わなくて結構ですよ、それより離婚して頂けます?」 別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。別人のように冷たくなった新妻にフェリクスは呆然とする。 そして離婚について動くマリアンに何故かフェリクスの弟のラウルが接近してきた。 

もしかしてこの世界美醜逆転?………はっ、勝った!妹よ、そのブサメン第2王子は喜んで差し上げますわ!

結ノ葉
ファンタジー
目が冷めたらめ~っちゃくちゃ美少女!って言うわけではないけど色々ケアしまくってそこそこの美少女になった昨日と同じ顔の私が!(それどころか若返ってる分ほっぺ何て、ぷにっぷにだよぷにっぷに…)  でもちょっと小さい?ってことは…私の唯一自慢のわがままぼでぃーがない! 何てこと‼まぁ…成長を願いましょう…きっときっと大丈夫よ………… ……で何コレ……もしや転生?よっしゃこれテンプレで何回も見た、人生勝ち組!って思ってたら…何で周りの人たち布被ってんの!?宗教?宗教なの?え…親もお兄ちゃまも?この家で布被ってないのが私と妹だけ? え?イケメンは?新聞見ても外に出てもブサメンばっか……イヤ無理無理無理外出たく無い… え?何で俺イケメンだろみたいな顔して外歩いてんの?絶対にケア何もしてない…まじで無理清潔感皆無じゃん…清潔感…com…back… ってん?あれは………うちのバカ(妹)と第2王子? 無理…清潔感皆無×清潔感皆無…うぇ…せめて布してよ、布! って、こっち来ないでよ!マジで来ないで!恥ずかしいとかじゃないから!やだ!匂い移るじゃない! イヤー!!!!!助けてお兄ー様!

5歳で前世の記憶が混入してきた  --スキルや知識を手に入れましたが、なんで中身入ってるんですか?--

ばふぉりん
ファンタジー
 「啞"?!@#&〆々☆¥$€%????」   〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  五歳の誕生日を迎えた男の子は家族から捨てられた。理由は 「お前は我が家の恥だ!占星の儀で訳の分からないスキルを貰って、しかも使い方がわからない?これ以上お前を育てる義務も義理もないわ!」    この世界では五歳の誕生日に教会で『占星の儀』というスキルを授かることができ、そのスキルによってその後の人生が決まるといっても過言では無い。  剣聖 聖女 影朧といった上位スキルから、剣士 闘士 弓手といった一般的なスキル、そして家事 農耕 牧畜といったもうそれスキルじゃないよね?といったものまで。  そんな中、この五歳児が得たスキルは  □□□□  もはや文字ですら無かった ~~~~~~~~~~~~~~~~~  本文中に顔文字を使用しますので、できれば横読み推奨します。  本作中のいかなる個人・団体名は実在するものとは一切関係ありません。  

異世界召喚に巻き込まれたのでダンジョンマスターにしてもらいました

まったりー
ファンタジー
何処にでもいるような平凡な社会人の主人公がある日、宝くじを当てた。 ウキウキしながら銀行に手続きをして家に帰る為、いつもは乗らないバスに乗ってしばらくしたら変な空間にいました。 変な空間にいたのは主人公だけ、そこに現れた青年に説明され異世界召喚に巻き込まれ、もう戻れないことを告げられます。 その青年の計らいで恩恵を貰うことになりましたが、主人公のやりたいことと言うのがゲームで良くやっていたダンジョン物と牧場経営くらいでした。 恩恵はダンジョンマスターにしてもらうことにし、ダンジョンを作りますが普通の物でなくゲームの中にあった、中に入ると構造を変えるダンジョンを作れないかと模索し作る事に成功します。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

転生先は盲目幼女でした ~前世の記憶と魔法を頼りに生き延びます~

丹辺るん
ファンタジー
前世の記憶を持つ私、フィリス。思い出したのは五歳の誕生日の前日。 一応貴族……伯爵家の三女らしい……私は、なんと生まれつき目が見えなかった。 それでも、優しいお姉さんとメイドのおかげで、寂しくはなかった。 ところが、まともに話したこともなく、私を気に掛けることもない父親と兄からは、なぜか厄介者扱い。 ある日、不幸な事故に見せかけて、私は魔物の跋扈する場所で見捨てられてしまう。 もうダメだと思ったとき、私の前に現れたのは…… これは捨てられた盲目の私が、魔法と前世の記憶を頼りに生きる物語。

処理中です...